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第7話
しおりを挟む目の前に広がるなにも阻むことのない大空。
青く澄み渡り、遠くに大きな山が見え、そこにもはや鳥と呼んで良いのか分からない大きさの怪鳥や、鱗に覆われた爬虫類を思わせる体に翼を生やしたいわゆるドラゴンと呼ばれるものが飛んでいた。
才華はそれを見て、目を輝かせ大きく手を広げる。
「異世界来たーー!! 」
「そ、そんなこと言っている場合じゃないでしょっ! キャアァァアッ!! 」
「落ちてます! 落ちてますぅぅ!! 」
雫と美鈴は目に涙を浮かべながら、悲鳴を上げた。
その涙は雫と美玲の目を離れ、あっという間に置き去りにされた。
そう、今才華達は絶賛落下中である。
「ハハハ! 良いじゃないか! パラシュートなしのスカイダイビングなんて絶対一生に経験できないことだぞ? 」
才華は子供のように手足をバタバタとさせてはしゃぐ。
雫はそんな才華に靴を投げつけた。
その靴は見事に才華の顔面に直撃して、ドゴッ! という音を立てる。
「痛っ! 何すんだよ! 」
才華は赤くなった鼻を押さえながら、靴を投げた雫に抗議の眼差しを送った。
しかし、雫は更にもういっちょと靴を投げつけてから、声を荒らげる。
「あんたねえ! 経験したら即死のもので何喜んでんのよ! 死ぬの!? 死にたいの!? 」
「なにで楽しんだって俺の勝手だろうが! バーカ! バーカ! ちなみにパンツ見えてるから! 」
才華は自分の下半身を指差して言った。その才華の表情はまさしく特定の書物を読んでいる時の男子高校生の顔だ。
とてもいやらしい。
雫はハッと気づいてスカートを抑える。
そして、キッっと才華を睨みつけた。
「こ、ここ、このよくも見たわね。ぶっ殺してやるわ。」
「し、雫さん。地面が、地面がもうすぐそこに……! 」
美鈴は下を見ながら顔を真っ青にさせた。
雫は美鈴の視線を辿って、下を向く。
するとそこにはもう目の前まで迫った草もなにも生えていないゴツゴツとした地面があった。
「え? ええ!? 死ぬ! 死んじゃうぅぅ!! 」
「ププ ぶっ殺してやるって言ってた奴が死ぬって言ってやんの 」
才華は口に手を当てて、笑い声を漏らす。
その才華の目は三日月になっている。
おちょくる気が前面に出た表情だ。
「あんたバカァァァ!! 」
どこまでもとどろくような怒号、はたまた悲鳴とも取れる雫の声を最後に才華達はドゴォォォン! という音を立てて、地面に激突したのだった。
---
地面には大きくクレーターができ、その時の衝撃でもともとなにもなかった地面がめちゃくちゃなことになっている。
砂ぼこりが舞い散る中、スクっと立ち上がる者がいた。
その者はうーんと背伸びをして、体を捻りボキッと骨をならす。
「なんとかなったな。あー楽しかった。」
才華だ。
才華達は地面に衝突する寸前に、なにかしら、おそらく邪神の力が働いて、地面すれすれに浮くことで助かっていた。
だが、パラシュートなしのスカイダイビングの衝撃が強すぎたのか、才華以外は地面にへたり込んでしまっている。
まあ、そのような体験をしてピンピンしている才華の方がおかしいのだが。
才華はとても満足げな顔を浮かべて辺りを見回す。だが、周りにはなにもない。
あるとすれば岩だけだ。
うーん? と才華は首を傾げた。
「邪神の奴、『我の世界の知識に言語、そして邪神の加護と神器をつける 向こうに着いたら確認して欲しい』とか言っていたよな? それらはどうやって確認すればいいんだ? 」
すると突然頭の中に、なにかがが流れ込んできた。
「おお! なるほど! 頭の中に直接知識を入れているのか! すげー 」
今才華の頭の中に草木の名前から、この世界の地理に至るまでの膨大な情報がすべて流れ込んできている。
才華はその全ての情報を必要なもの、必要じゃないものと選別していく。
「なるほど、この世界の名前はなしと……そしてコレがこの世界の大陸か、なんだか丸いな。そして肝心な俺たちのいる場所は……魔族の国の辺境か。人がいる場所はおいおい、随分と遠いなこれはしばらくサバイバル生活になりそうだ。」
ま、それも楽しいかと呟いてから才華は雫と美鈴に向き直った。
「ん? なにやってんの? 」
才華はへたり込んでいたはずの雫と美鈴が、頭を抱えて呻いているのを見て、そう言葉を漏らした。
雫と美鈴は苦痛に顔を歪ませながらも頭を上げ、疑問符を浮かべている才華を見て目を見開く。
「な、んで、あんたケロッとしてるわけ? 頭痛くないの? 」
「才華さんは頭の中に情報が流れ込んできていないのですか? 」
「いや、流れ込んできているけど? 」
才華は雫と美鈴の話を聞いて更に首を傾げた。
雫と美鈴は才華の反応を見て、そうだった!と痛みに襲われながらも、思い出した。
『目の前のこいつは化け物』だったと。
「そうだったわ。あんた化け物なんだった……」
「才華さんと私たち人間の作りは違うんだった……」
才華は雫と美鈴の2人に人間じゃないと言われて少しムッとなった。
確かに色々と人間離れしているけども、俺はれっきとした人間だと才華は思う。
それに言われて傷つくものが才華にもある。
それは色々とあるが、その中に『人間じゃない』という言葉が含まれている。
今でこそ、才華はムッとする程度ですんでいるが、コレが本当に悪意を込められて言われた場合、キレる。
言った相手を心身ともに砕き、2度と外に出られないくらいにする程。
才華は嫌なことを思い出したなと頭を掻いてから、雫と美鈴に目を向けた。
今から2人にお母さんのように、人が嫌がることを言ってはいけませんよ? と説教するつもりのようだ。
頭がいたい2人にとってこれはかなりの苦痛だろう。
才華はそれを承知でやるので、結構なSなのかもしれない。
「ちょっと雫! 美鈴! 人が嫌がることをやっちゃダメだってお母さん何度も言ったよね! どうしてそんなことするの!? メッ! だよ! 」
才華は人差し指をピシッと立てて、声真似までしてそう言った。
ウザいことこの上ないが、雫と美鈴は頭を押さえるだけで、何もできない。
才華はそれを見て、ニヤリと口を歪め、楽しそうに笑った。
「「あ、頭が~」」
このあと雫と美鈴がどれほど才華のお母さんトークに苦しめられたのか言うまでもない。
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