ワールド・オブ・ランク

NTIO

文字の大きさ
20 / 22

第20話

しおりを挟む
 ルークは今赤い絨毯が敷き詰めらてた廊下を歩いていた。
 目に映る装飾は全てそういう関連に疎いルークでも一級品と分かるほど、精巧にできており目を楽しませる。
 まあ、これと同じ装飾は部屋にもされているのだがあれは逆に神経をすり減らすだけだ。
 何かの拍子で壊してしまうのではないかと心配でならない。
 特にクロエが心配だ。さっきなんてーー

「ねえルークくん! これを鞍にするから動かないでね」

 そう言ってクロエが持ってきたのはいかにも高級な皿だった。縁が金で彩られ、派手さはないものの気品が溢れ出していて、触れるのが憚られる。そんな一品だ。

 クロエにはあんまり言いたくないがバカじゃないかと言いたい。どこをどうたどれば皿を鞍にするなんて発想が出るんだ。
 全く子供というのはとても恐ろしい。無自覚で見ている方の心臓を仕留めにくるような事をするんだから。

 これが一回だけならまだ心臓の持ちようがあるのだが、複数回しかも複数人で掛かってこられたらたまったもんじゃない。
 さっきのおままごとでは死ぬ思いをした、2度としない、これは絶対に。誰に頼まれたしてもだ。

 ルークは頭が痛いとばかりに額に手を当ててため息を吐く。

「それにしても、あの3人まだおままごとやってるのか……よく飽きないな」

 時々聞こえてくる元気な声にゲンナリとした顔を浮かべた。今まであそこにいたと思うとよく無事に帰還したと自分を褒め称えてやりたいくらいだ。
 まあ、自分の力で抜け出した訳ではないので抜け出す手助けをしてくれた救世主にお礼をしなければならないが。

 ルークがそんなことを考えていると、ガチャと扉が開く音が聞こえ、件の救世主ーーイリアが現れた。

「お待たせしました。クロエちゃんとエルちゃんを振り切るのに手古摺りまして」
「いや、いいさ。イリアのおかげで助かったからな、あれを続けていたらきっと俺は死んでいた」
「それはまた大袈裟なことで」

 身震いするルークをイリアは笑う。しかしこれは本当のことだ。精神年齢が今世を合わせて20歳を超えている俺からしたらお飯事ははっきり言って地獄に等しい。
 これがまだ普通のおままごとで相手がクロエとかの可愛い子ならば忽ちご褒美に様変わりするのだが、残念ながらクロエ達の行うおままごとはかなり特殊だ。
 普通のおままごとは座席犬なる訳の分からん役など出てこないし、ペットであるはずの犬に騎乗しようなんてしないだろう。
 もうちょっと普通に寄せていただきたきたいものだ。

「大袈裟ではないさ。抜け出させてくれたことに関してはかなり感謝している、ありがとう。で、本題に入ろうか」

 ルークは軽く頭を下げた後、そう切り出した。それに合わせてイリアも顔を引き締める。
 まあ、今回のことはイリアから切り出したことなのだから当たり前か。

 イリアは俺をおままごとから救いだす際に耳元で、「先ほどのお話をします。そとで待っていてください」と言っていた。
 十中八九先ほどの俺の質問に対する回答だろう。

「わかっていますよ、そんな焦らないでください。まずはあなたの部屋に入りましょう、ここで話すことではありませんので」
「ああ、わかった」

 確かに誰の目があるともしれないところで話すものではなかった。
 ルークはイリアを連れて、自分の部屋に入り、ルーク自身は自分のベットに座りイリアは適当な椅子に見つけ腰を下ろした。暫く2人の間に静寂が満ちる。

 イリアは俯きなにやら考えているようだ。なにから話すか頭の中で順序だてているのだろう。
 ルークはそれをじっと待つ、すると数分経ったところでイリアが顔を上げた。

「ルークさん、私はーーただの一般庶民です」
「……またそれか、わざわざ誤魔化しの言葉を言うためにこんなことをしたのか? 」

 ルークの視線は自然と鋭くなる。話を聞けると思ってきてみれば先ほどと変わらないことを言うときた。一体イリアはなにをやりたいんだ? 

「ああ、勘違いしないでくださいね。けして嘘はついていません、これは真実です。ただ、少し特殊な一般庶民ですが」
「特殊な一般庶民? 」
「ええ、言ったでしょう? 少し魔法の扱いに詳しい一般庶民だって。まさか私の始めて掛けると言いましたのに信じてくれなかったんですか? 」
「だれが、あんなので信じるか。残念ながらそれだけで信じるほど俺はウブじゃないんだ」

 本当のところは女性の女も語れないウブ中のウブなのだがそれは言葉には出さない。いったらなんか舐められる気がするからだ。
 まだ7歳のガキがなにを言うと思うかもしれないがこれは重要な事なので、だれに言われようと言うつもりはない。

「……そうですか、変態クソ野郎の分際で生意気ですね。でもいいです、最初から説明して差し上げます。そのためにあなたの部屋なんぞにきてあげたんですから」
「おいおい、俺なんぞの部屋なんて言っていいのか? ここはクロエの部屋でもあるんだがな」
「修正します、ルークには分不相応な素敵な部屋に来てあげたんですから」

 イリアはフッと浮かべていた冷酷な笑みを引っ込めて淡々とそう言った。
 クロエの事を出すとこうもわかりやすく修正するとは、侮れない幼女と思っていたが案外扱いやすいのかも知れない。
 ルークは自然と口元に笑みが浮かぶのがわかる。

「なにをニヤニヤしているんですか、気持ち悪い。はぁ、気分が害されました。すぐさま説明を終えて2人を愛でに行くとしましょう」

 イリアは目を細めてルークを睨みつけてから、1つ咳払いをした。

「なぜ私が魔法の扱いに詳しいかと言いますと、簡単に言えばそういう家系と言った方が分かりやすいと思います。母も祖母もずっとその前から私の家系は女性限定で生まれつき魔力を視認することが出来る能力があります。俗に魔眼と呼ばれるものですが、これが魔法の扱いに極めて関わってくる。それが私が魔法の扱いに長けている理由です、満足できましたか? 」
「なるほど……魔眼な」

 魔眼、聞いた事のある言葉だ。勿論こっちの世界ではないが。
 あそこの世界では見たものを石にするとか、即死させるとか恐ろしいものだったがここでは魔力を見ることが出来る事を指すらしい。

「そっちの説明についてはな。じゃあ次、なんでイリアがランク分けの事について知っている? 」
「ああ、その事ですか。そんなのは簡単な事ですーー私が審査する側だからに決まっているじゃないですか」
「っ!? 」

 ルークは目を見開き、手に持っていたコップを落としそうになった。
 ギリギリのところでコップを落とさずに済んだが、それでも戸惑いは収まるどころか揺れる水面のように広がっていく。
 大変信じがたい事だが、目の前の幼女は確かに自分が審査する側と言った。
 つまり目の前のいたいけな幼女は俺がいま現在もっとも警戒するべき人間であるという事だ。

「お、おい。いま審査する側って言ったか……? 」

 ルークがかすれた声を出すと、イリアは薄く笑みを浮かべて足を組んだ。その顔はまさしく見下すと言った方が正しい。

「言いましたよ、聞こえませんでしたか? この歳で難聴とは幸先不安ですね」
「そういう話ではない! それは本当なのか、という事だ。そしてその話が本当としてなんで今俺に言った? 言う必要なんてなかっただろう」

 ほんとうにその通りだ。ランク分けに関する話題は禁句の筈だ、それを俺と同い年の子供が知っていること自体異常だというのに、それすら超えてあちら側とは一体どういう事だ。
 その事を言うこともそう、言う必要なんてなかったのに……なぜだ、本当になんでなんだ。

 ルークは頭の中でぐるぐると思考をまわしていると目の前の幼女がニヤリと口元に笑みを浮かべているのが見えた。
 なるほど、これはイリアの戦略、本当かどうかは置いといて今現在俺自身が乱されているのは事実。
 「今は考えるより動く事が先決だ」と考えたルークは行動を起こす事にした。
 しかし、それよりも前にイリアが動いたようだ。

「そう、その通りですね。言う必要は全くありませんでしたーーあなたが普通の人間だったらの話ですけどね」
「……それはどういう意味だ? 」
「そのままの意味ですよ。あなたは普通の人間じゃない」

 イリアは組んでいた足を解いて目に真剣な光を宿らせる。

「すべての能力値が測定限界、これが意味する事はあなたが人ならざるものと言う事です。人は本来何かに秀でた場合、何かが欠落するのは必定。しかし、あなたそれを成し得た。これはあなたが人ではない何かと断定するに足る理由です。そして怪物に人間のルールを当てはめるべきではない、こう上は判断したようでして……つまりそう言う事です」

 どういう事だ、全く分からん。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。 2020/9/19 第一章終了 続きが書け次第また連載再開します。 2021/2/14 第二章開幕 2021/2/28 完結

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...