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にしても……
私は七人全員を見回してみる。
「えーと……あの、皆さんの名前を教えていただいてもいいですか?」
そう聞くと、真っ先に答えてきたのは紫の髪に紺の瞳をした青年だった。
「はい! 俺、リリツァっしゅ!!」
「……リリツァッシュさん?」
「違うよ!! リリっくしゅ!」
「……リリ……クス?」
「彼はリリツァスだ。……本人曰く一年中花粉症らしい。大目に見てやってくれ」
くしゃみばかりする青年はどうやらリリツァスというらしい。銀髪の青年が教えてくれる。
い、一年中……花粉症? それはその……あの、お大事に。
「わたしの名はルーヴァスだ。よろしく頼む」
銀髪に紫の双眸の青年――ルーヴァスは律儀に頭を下げてくる。それに釣られて私も頭を下げると、
「俺はカーチェスだよ。よろしくね」
白髪に赤の双眸の青年――カーチェスがそう挨拶してくる。それから少しはにかんで、
「……その……恥ずかしながら、あまり女の子と話したことないから、失礼があったらごめんね」
と困ったように笑った。
「あ、僕ユンファスね。女の子見るの僕も初めてだから緊張しちゃうなー。可愛いねー。女の子ってみんな君みたいに可愛いの?」
とわざわざ口説き文句まで入れてきたのは金髪に緑の双眸を持つ青年。へらりと笑う彼はしかし、おそらく私を“可愛い”等とは思ってないのだろう。多分ただのお世辞に過ぎない。まぁ別にいいけれども。あと口説くのは貴方ではなく私の仕事ですよー、ユンファスさん。
「ぼく……エルシャス。よろしく、おねがい、します……ふぁ……」
ぺこ、と緩慢に頭を下げつつ欠伸あくびをするのは、若草色の髪に青い双眸の少年。よく見てみると上着のポケットから大きな茶色の熊のぬいぐるみが無邪気な顔を覗かせている。物凄く見ていて癒される。かわいい。
「俺はノアフェス」
簡潔にそれだけ告げてきたのは黒髪の青年。……ん?
黒髪の青年――ノアフェスは、着ているシャツとかは他の人と似た感じだけど、大きく違うところがいくつかあった。まず、和風な感じの羽織みたいなものを羽織っている。不思議と違和感は無いけど彼らの中では割と目立った。それと、右に垂らした長い髪にさしているのは金の簪。明らかに日本人の様相だ。
黒い眼帯を右目に当てているのは、失明でもしているのだろうか……
「……で、あの、あなたは?」
いつまで経っても名乗ろうとしない紺の髪の青年に、おずおずと尋ねると彼は微笑み、
「名を問うなら己が先に告げるべきでは?」
と、何とも嫌なことを聞いてきた。
「確かによくよく考えたら、僕、君の名前知らないやー。コーネリアのお姫様なのはわかるんだけど。何て名前だっけ?」
「……」
さて。
赤髪の男は何も言ってなかったけど、私はこの世界でなんて名前なんだろう。
適当な名前を言っても、後で違うとばれたら厄介だし……女王なら調べようと思えばすぐに名前もわかるはず。滅茶苦茶なことは言えない。
「……あの……えっと」
こんなときこそ鏡に聞きたいんだけど。まぁこの状況下で、聞けないよね。
「その……」
どうしよう。
いつまで経っても名乗らない私に、
「……えっと、もしかして……わからない、のかな?」
はにかむように口元を少し隠しながら、白髪の――カーチェスがそう問うてきた。
鋭いですね!!
そうです!と答えようとした時だ。
「……はい?」
紺の髪の毒舌青年がそれに顔を歪めた。
「そんな訳はないでしょう」
いえ、あの。
「名乗れないんですか? それとも名乗ったらいけないとか? そんな訳はありませんよね。仮にも一国の女王が名を名乗れないなどとバカげたことは言わせませんよ」
「えっと……」
……ど、どうすればいいんだろう。
「……まぁいいだろう。シルヴィス、無理に聞く必要はない」
そう言ってくれたのは銀の髪の、七人の中でも一際美しい美貌を持つ青年、ルーヴァスだった。
「待ってください、名も名乗れない者を置いておく必要がどこに?」
「彼女は“本当に答えよう”とするからこそ、答えられないのではないか。ならば我々と同じだ。咎められないだろう」
ルーヴァスが私を見てきた。視線が絡むと、目をそらしてはいけないのではないかという思いに駆られ、私は自然と彼と見つめ合う状態になる。
それにしても、“本当に答えよう”としたというのは何だろう。聞かれたのだから、答えるのは当たり前ではある。この場合、悲しいかなシルヴィスの言い分は全くもって正しいはずだ。
ルーヴァスは何を考えて私が名乗らないことを許容したのだろうか。
「呼び方に困るのなら姫と呼べばいい。――それに」
彼はそっと目を細めると、
「……嘘を吐いているようには見えない」
「これだから、貴方は……どこまで甘いんです」
毒舌青年の苦々しい表情を、しかしルーヴァスは意に介さなかった。そして、
「姫。彼はシルヴィスだ。態度は悪いが、根は悪い男ではない」
「シルヴィスさん……ですか」
本人の代わりに毒舌青年を紹介してくれる。そういえばさっきから何回か呼ばれてたな。
「人を悪ガキのように言わないで下さい。不愉快ですよ。それから、さんなど付けなくて結構。尊敬しているでもないのにさん付けされたところで虫唾が走るだけなので」
「シルヴィス、言い過ぎだよ」
カーチェスが窘たしなめても、シルヴィスが意に介することはない。つんとそっぽを向き、
「どのみち貴方たちとて、さん付けされてもこの上なく白々しく感じるだけでしょう」
「それはそうかもだけどさぁ。女の子に対して礼儀がなってないよねぇ、ほんと。ヤな男ー」
「心底貴方にだけは言われたくありませんね」
シルヴィスはユンファスに吐き捨てる。するとユンファスの方はひらひらと手を振って笑って見せた。
「あーはいはいごめんねー。あ、姫、僕のこともさん付けなくていいよー。仲良くしようね?」
「あ、俺も俺も! ひくちっ」
「まぁ、そのあたりはあなたの好きにすると良いのではないか。とやかく言うものもいないだろう」
「俺もどちらでも構わん」
「ぼくは……エルシャスって……よんでほしい」
「あ、俺も姫の好きなように呼んでくれて構わないよ。えっと、よろしくね」
次々と親しげに話しかけてくれる六人を認めたシルヴィスは心底不愉快そうに鼻を鳴らした。不快さに歪んだ顔は「気に入らない」と雄弁に語っている。
「……仕方ありません。約束を違えないうちは置いてあげます。しかし少しでも不穏な素振りを見せたなら――その時はその中身のさして詰まっていなさそうな頭に大きな風穴が開くと思うことです」
こっわ!!
っていうかそんだけ厳重警戒してんなら白雪姫にも警戒して下さいよ! あんまりだよ!!
「ねねね姫、姫!! 殺されそうになってるって誰に? くしゅん!! 誰に殺されそうになってるの?」
楽しそうに聞いてくるのはリリツァス。くしゃみばかりしてるから印象に残るな。
「えっと……しら、……」
はて。
この場合、白雪姫と言って、通じるのだろうか。
先ほどの家の前での会話を思い出してみると、我侭姫という単語はあった気がするけど、彼らの口から「白雪姫」の単語は出ていない。そも、彼らの自己紹介からして横文字の名前が妥当だろう。なら、白雪姫で通るかどうかは甚だ疑問だ。
……娘、とか言うべきかな。
凄まじく抵抗がありますけれども。
「あの……その、娘、に」
「あぁ、あの我侭なお姫さま?」
「そうです」
「確かに滅茶苦茶横暴だって話は聞いてるけどさぁ。なんでまた、君を殺そうとかそう言う過激な話になるわけ?」
それは私のほうが聞きたいよ! 王子様と引っ付きたいなら勝手に引っ付いてればいいものをさぁ!! なんで継母を巻き込むんだろうね!?
お陰でこの世界がRPGなら私のHP完全にゼロですよ、瀕死状態! 訳わかんなくて混乱してるのに城から逃亡親切な筈の小人さん達に銃突きつけられるしね!!
と、ここで喚き散らしたところでどうしようもない。やかましいとシルヴィス辺りに一蹴されるだけならまだいいけど全員にドン引きされて叩きだされる可能性も否めないので、流石に不満を当たり散らすのは控えておく。
「その……私のことが、嫌いなんだと、思います」
とりあえずは無難にそう答えてみる。
まぁ間違っていないだろうしね。嘘じゃないからね。殺そうとするんだもんね、好きではないよね。
「きらい? ……いじわる、したの?」
してないよ! ってか意地悪された感じだよ! 借金押し付けられて貧乏にされて挙句に死ねとはこれ如何に!!
「覚えは、ないんですけど……私の行動が、気に障ったのかもしれません」
多分気に障る云々以前に、白雪姫の頭の中が大変ファンタジックだからという理由が大きいと思うけどね。
私の答えを聞くと、しばらくその場に沈黙が舞い降りる。やがてルーヴァスが口を開いた。
「いい。――無理に話していく必要はない」
気遣わしげな視線に、少しだけ良心が痛んだ。
いきなり面倒事を押し付けてホントにごめんなさい。
しかし私の胸中など、当然知る由もないルーヴァスは他の六人に向かって一喝した。
「あなた方も無理に聞かなくていいだろう」
「はーい」
手を挙げてへらへらとそんな返事をしたのはユンファス。
「姫。体調が落ち着いたなら一階に下りて来るといい。夕食ができている」
えっ。夕食作ってくれたのか。
どう考えても歓迎されているとは思えなかったので、意外というか予想外だ。ありがたい。
「ちなみにまだ毒はいれてませんから早めに召し上がったほうが賢明ですよ」
シルヴィスはにっこりと笑い、そう言って部屋を去っていく。
……は? え、あのごめんなさい意味がわかりません。少しでも遅くなったら毒を入れる気なんですか。
……嘘でしょ。
「じゃあ後でね~、姫」
「後っくしゅ! でねっ!!」
「後でね」
「……後でな」
「無理に来なくてもいい、体は大事にしてくれ」
「夕食……食べにきてね……」
七人はそれぞれ個性の強い言葉を残し、部屋を去っていくのだった。
私は七人全員を見回してみる。
「えーと……あの、皆さんの名前を教えていただいてもいいですか?」
そう聞くと、真っ先に答えてきたのは紫の髪に紺の瞳をした青年だった。
「はい! 俺、リリツァっしゅ!!」
「……リリツァッシュさん?」
「違うよ!! リリっくしゅ!」
「……リリ……クス?」
「彼はリリツァスだ。……本人曰く一年中花粉症らしい。大目に見てやってくれ」
くしゃみばかりする青年はどうやらリリツァスというらしい。銀髪の青年が教えてくれる。
い、一年中……花粉症? それはその……あの、お大事に。
「わたしの名はルーヴァスだ。よろしく頼む」
銀髪に紫の双眸の青年――ルーヴァスは律儀に頭を下げてくる。それに釣られて私も頭を下げると、
「俺はカーチェスだよ。よろしくね」
白髪に赤の双眸の青年――カーチェスがそう挨拶してくる。それから少しはにかんで、
「……その……恥ずかしながら、あまり女の子と話したことないから、失礼があったらごめんね」
と困ったように笑った。
「あ、僕ユンファスね。女の子見るの僕も初めてだから緊張しちゃうなー。可愛いねー。女の子ってみんな君みたいに可愛いの?」
とわざわざ口説き文句まで入れてきたのは金髪に緑の双眸を持つ青年。へらりと笑う彼はしかし、おそらく私を“可愛い”等とは思ってないのだろう。多分ただのお世辞に過ぎない。まぁ別にいいけれども。あと口説くのは貴方ではなく私の仕事ですよー、ユンファスさん。
「ぼく……エルシャス。よろしく、おねがい、します……ふぁ……」
ぺこ、と緩慢に頭を下げつつ欠伸あくびをするのは、若草色の髪に青い双眸の少年。よく見てみると上着のポケットから大きな茶色の熊のぬいぐるみが無邪気な顔を覗かせている。物凄く見ていて癒される。かわいい。
「俺はノアフェス」
簡潔にそれだけ告げてきたのは黒髪の青年。……ん?
黒髪の青年――ノアフェスは、着ているシャツとかは他の人と似た感じだけど、大きく違うところがいくつかあった。まず、和風な感じの羽織みたいなものを羽織っている。不思議と違和感は無いけど彼らの中では割と目立った。それと、右に垂らした長い髪にさしているのは金の簪。明らかに日本人の様相だ。
黒い眼帯を右目に当てているのは、失明でもしているのだろうか……
「……で、あの、あなたは?」
いつまで経っても名乗ろうとしない紺の髪の青年に、おずおずと尋ねると彼は微笑み、
「名を問うなら己が先に告げるべきでは?」
と、何とも嫌なことを聞いてきた。
「確かによくよく考えたら、僕、君の名前知らないやー。コーネリアのお姫様なのはわかるんだけど。何て名前だっけ?」
「……」
さて。
赤髪の男は何も言ってなかったけど、私はこの世界でなんて名前なんだろう。
適当な名前を言っても、後で違うとばれたら厄介だし……女王なら調べようと思えばすぐに名前もわかるはず。滅茶苦茶なことは言えない。
「……あの……えっと」
こんなときこそ鏡に聞きたいんだけど。まぁこの状況下で、聞けないよね。
「その……」
どうしよう。
いつまで経っても名乗らない私に、
「……えっと、もしかして……わからない、のかな?」
はにかむように口元を少し隠しながら、白髪の――カーチェスがそう問うてきた。
鋭いですね!!
そうです!と答えようとした時だ。
「……はい?」
紺の髪の毒舌青年がそれに顔を歪めた。
「そんな訳はないでしょう」
いえ、あの。
「名乗れないんですか? それとも名乗ったらいけないとか? そんな訳はありませんよね。仮にも一国の女王が名を名乗れないなどとバカげたことは言わせませんよ」
「えっと……」
……ど、どうすればいいんだろう。
「……まぁいいだろう。シルヴィス、無理に聞く必要はない」
そう言ってくれたのは銀の髪の、七人の中でも一際美しい美貌を持つ青年、ルーヴァスだった。
「待ってください、名も名乗れない者を置いておく必要がどこに?」
「彼女は“本当に答えよう”とするからこそ、答えられないのではないか。ならば我々と同じだ。咎められないだろう」
ルーヴァスが私を見てきた。視線が絡むと、目をそらしてはいけないのではないかという思いに駆られ、私は自然と彼と見つめ合う状態になる。
それにしても、“本当に答えよう”としたというのは何だろう。聞かれたのだから、答えるのは当たり前ではある。この場合、悲しいかなシルヴィスの言い分は全くもって正しいはずだ。
ルーヴァスは何を考えて私が名乗らないことを許容したのだろうか。
「呼び方に困るのなら姫と呼べばいい。――それに」
彼はそっと目を細めると、
「……嘘を吐いているようには見えない」
「これだから、貴方は……どこまで甘いんです」
毒舌青年の苦々しい表情を、しかしルーヴァスは意に介さなかった。そして、
「姫。彼はシルヴィスだ。態度は悪いが、根は悪い男ではない」
「シルヴィスさん……ですか」
本人の代わりに毒舌青年を紹介してくれる。そういえばさっきから何回か呼ばれてたな。
「人を悪ガキのように言わないで下さい。不愉快ですよ。それから、さんなど付けなくて結構。尊敬しているでもないのにさん付けされたところで虫唾が走るだけなので」
「シルヴィス、言い過ぎだよ」
カーチェスが窘たしなめても、シルヴィスが意に介することはない。つんとそっぽを向き、
「どのみち貴方たちとて、さん付けされてもこの上なく白々しく感じるだけでしょう」
「それはそうかもだけどさぁ。女の子に対して礼儀がなってないよねぇ、ほんと。ヤな男ー」
「心底貴方にだけは言われたくありませんね」
シルヴィスはユンファスに吐き捨てる。するとユンファスの方はひらひらと手を振って笑って見せた。
「あーはいはいごめんねー。あ、姫、僕のこともさん付けなくていいよー。仲良くしようね?」
「あ、俺も俺も! ひくちっ」
「まぁ、そのあたりはあなたの好きにすると良いのではないか。とやかく言うものもいないだろう」
「俺もどちらでも構わん」
「ぼくは……エルシャスって……よんでほしい」
「あ、俺も姫の好きなように呼んでくれて構わないよ。えっと、よろしくね」
次々と親しげに話しかけてくれる六人を認めたシルヴィスは心底不愉快そうに鼻を鳴らした。不快さに歪んだ顔は「気に入らない」と雄弁に語っている。
「……仕方ありません。約束を違えないうちは置いてあげます。しかし少しでも不穏な素振りを見せたなら――その時はその中身のさして詰まっていなさそうな頭に大きな風穴が開くと思うことです」
こっわ!!
っていうかそんだけ厳重警戒してんなら白雪姫にも警戒して下さいよ! あんまりだよ!!
「ねねね姫、姫!! 殺されそうになってるって誰に? くしゅん!! 誰に殺されそうになってるの?」
楽しそうに聞いてくるのはリリツァス。くしゃみばかりしてるから印象に残るな。
「えっと……しら、……」
はて。
この場合、白雪姫と言って、通じるのだろうか。
先ほどの家の前での会話を思い出してみると、我侭姫という単語はあった気がするけど、彼らの口から「白雪姫」の単語は出ていない。そも、彼らの自己紹介からして横文字の名前が妥当だろう。なら、白雪姫で通るかどうかは甚だ疑問だ。
……娘、とか言うべきかな。
凄まじく抵抗がありますけれども。
「あの……その、娘、に」
「あぁ、あの我侭なお姫さま?」
「そうです」
「確かに滅茶苦茶横暴だって話は聞いてるけどさぁ。なんでまた、君を殺そうとかそう言う過激な話になるわけ?」
それは私のほうが聞きたいよ! 王子様と引っ付きたいなら勝手に引っ付いてればいいものをさぁ!! なんで継母を巻き込むんだろうね!?
お陰でこの世界がRPGなら私のHP完全にゼロですよ、瀕死状態! 訳わかんなくて混乱してるのに城から逃亡親切な筈の小人さん達に銃突きつけられるしね!!
と、ここで喚き散らしたところでどうしようもない。やかましいとシルヴィス辺りに一蹴されるだけならまだいいけど全員にドン引きされて叩きだされる可能性も否めないので、流石に不満を当たり散らすのは控えておく。
「その……私のことが、嫌いなんだと、思います」
とりあえずは無難にそう答えてみる。
まぁ間違っていないだろうしね。嘘じゃないからね。殺そうとするんだもんね、好きではないよね。
「きらい? ……いじわる、したの?」
してないよ! ってか意地悪された感じだよ! 借金押し付けられて貧乏にされて挙句に死ねとはこれ如何に!!
「覚えは、ないんですけど……私の行動が、気に障ったのかもしれません」
多分気に障る云々以前に、白雪姫の頭の中が大変ファンタジックだからという理由が大きいと思うけどね。
私の答えを聞くと、しばらくその場に沈黙が舞い降りる。やがてルーヴァスが口を開いた。
「いい。――無理に話していく必要はない」
気遣わしげな視線に、少しだけ良心が痛んだ。
いきなり面倒事を押し付けてホントにごめんなさい。
しかし私の胸中など、当然知る由もないルーヴァスは他の六人に向かって一喝した。
「あなた方も無理に聞かなくていいだろう」
「はーい」
手を挙げてへらへらとそんな返事をしたのはユンファス。
「姫。体調が落ち着いたなら一階に下りて来るといい。夕食ができている」
えっ。夕食作ってくれたのか。
どう考えても歓迎されているとは思えなかったので、意外というか予想外だ。ありがたい。
「ちなみにまだ毒はいれてませんから早めに召し上がったほうが賢明ですよ」
シルヴィスはにっこりと笑い、そう言って部屋を去っていく。
……は? え、あのごめんなさい意味がわかりません。少しでも遅くなったら毒を入れる気なんですか。
……嘘でしょ。
「じゃあ後でね~、姫」
「後っくしゅ! でねっ!!」
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