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「その本、なんですか?」
私が本を覗き込むと、スジェルクはにっこり笑って、
「可愛い女の子を口説くための台詞百科☆」
「即刻お帰りください」
「うそうそ、冗談だカラ!」
素っ気無く返した私に彼は慌てた様子で手を振ると、ペラペラと本をめくり始めた。
「これはこの国とか近隣諸国のこととか、その他諸々が書かれた本ー☆」
「ふぅん……?」
「はいココー。世界地図が乗ってマース☆ さてクイズです、ボクたちがいるのはどこでしょーカ?」
スジェルクが開いたページに視線を落とす。確かに地図らしき絵が載っていた。線で区切られた場所に文字と思しきものが踊っている。しかし文字が読めない私にはこの地図を読み解くことはできない……というかそもそも私はそういえばこの国の名前も知らないのだった。
「流石に文字が読めない上にこの国の名前が何なのかわからない状態じゃ、ちょっと……」
「あ、そっカ☆ 忘れてタ☆ 正解はねー、ココ! 「リネッカ王国」。つまりキミはここの女王様ってことだネ♪」
スジェルクが指さしたのは、あまり大きいとは言えない、海に面した国だった。反対側には森が広がっており、その森が国の三分の一くらいを有している。左手には山もあるらしく、平地はかなり狭いようだ。
「資源には恵まれていそうだね」
「そうそう。だから、面積の割にかなり栄えているんだよねェ☆」
スジェルクは笑い、この国について話し始めた。
それからひとしきり話すと、今度はこの国から若干離れた国を指さした。面積的にはかなり大きい。
「ここは一応、キミの故郷ってことになるカナ? コーネリア帝国。キミは元々ここのお姫様。政略結婚でリネッカに来たんだよね☆ 結婚式はかなり盛大だったミタイー♪ メイドとか何人も引き連れて来たみたいだしネ。でも貧乏になってからは全員解雇されたって聞いたなァ。というかむしろ白雪姫が解雇したって聞いたことがあるカモ☆」
うわ……。その使用人さんたちはほんとに大丈夫だろうか……。路頭に迷ってたりしないかな……
「でも、貧乏説はちょっと怪しいんだよねェ♪」
スジェルクの言葉に地図から顔を上げると、彼は少し真面目な顔つきで地図を見ていた。
「リネッカは今でもかなり栄えた国なんだヨ。王家も当然それに見合った財を持っていた。だから白雪姫が食いつぶして終わるとは到底思えないんだよネ。そうじゃなくても、いきなり財政危機に陥るのはオカシイ。実際未だに街の方は栄えているし、貴族も普通に優雅な暮らしをしているカラネ」
もう一度地図を見る。
確かに、小さいけれどほんとに資源に恵まれた国だ。こんな国の王家が白雪姫一人の暴走でダメになるとは思いにくい。
「王家が借金をしている……とかは?」
「それも考えたけど、ないみたいヨ。白雪姫が強奪をやめてからは城には誰も来てないって噂だし……。借金取りとかが来ないのなら王家の再建もできそうなのにその様子はないのも不思議だよネ」
何で突然王家はダメになったんだろう……?
私は地図を睨みながら、物思いにふけった。
それからしばらく、彼はこの世界の常識やこの国における文字など、様々な情報を教えてくれた。
それらを全部覚えることはできそうになかったが、文字に関しては少しは上達したと思う。というか、この国の文字は文字の形さえ覚えてしまえば日本語そのものだ。わかりやすい。どういうカラクリかはわからないが、元々ゲームの世界のようだし……まぁ何にせよわかりやすいに越したことはない。
と、かれこれ数時間彼の講義を聴き続け、勉強に疲れた私は一旦講義を中止してもらい、スジェルクに連れられて森の中を探索していた。
「どこに向かってるんですか?」
「それは、着いてみてからのお楽しミ♪」
スジェルクはからからと笑いながら鬱蒼とした森の中、私の手を引きどこかへ連れて行く。
妖精たちに、というかルーヴァスから「森から出ることなくこの家にいて欲しい」と言われている上に、迷いの森の中を全く把握できずリオリムもいない私はあまり森の中を歩きたくはなかった。間違えて森から出たりしてそれが妖精たちに露見でもしたら、家から追い出されかねないからだ。
しかしスジェルクにそれを伝えると、彼は笑って「ボクがそんなヘマをするわけないジャナイ☆」と半ば強引に連れてこられてしまった。……いいのだろうか……
悶々とする私をよそに、スジェルクが「あ、そろそろだね」と言う。
何かと彼を見てみると、彼は振り向きにっこりと笑い、そのまま歩く。
すると、突如開けた場所に出た。
「え……っ」
視界一面の花、花、花――
そう、そこは美しい花畑だった。
その花畑を二分するように澄んだ小川が流れている。とても幻想的な風景だ。
「……綺麗」
「だよねー。気分転換には最適でしょ☆ 妖精たちもここでたまに気分転換とか休憩とかしてるんだよー。気に入ってもらえた?」
頷くと、スジェルクは満足そうな顔になった。
「じゃ、しばらくここで休んでるといいよ。ボクもどっかフラフラしてくるね~♪」
「えっ?」
スジェルクは鼠の姿になると、制止するもなくどこかへと駆け出していってしまった。
「ちょっ……あ、あとで迎えに来て……もらえる、の、かな……?」
やっぱり付いてこなければ良かったかも。
そう思った時だった。
私は小川の向こうに、小さな人影を見つけたのだった。
私が本を覗き込むと、スジェルクはにっこり笑って、
「可愛い女の子を口説くための台詞百科☆」
「即刻お帰りください」
「うそうそ、冗談だカラ!」
素っ気無く返した私に彼は慌てた様子で手を振ると、ペラペラと本をめくり始めた。
「これはこの国とか近隣諸国のこととか、その他諸々が書かれた本ー☆」
「ふぅん……?」
「はいココー。世界地図が乗ってマース☆ さてクイズです、ボクたちがいるのはどこでしょーカ?」
スジェルクが開いたページに視線を落とす。確かに地図らしき絵が載っていた。線で区切られた場所に文字と思しきものが踊っている。しかし文字が読めない私にはこの地図を読み解くことはできない……というかそもそも私はそういえばこの国の名前も知らないのだった。
「流石に文字が読めない上にこの国の名前が何なのかわからない状態じゃ、ちょっと……」
「あ、そっカ☆ 忘れてタ☆ 正解はねー、ココ! 「リネッカ王国」。つまりキミはここの女王様ってことだネ♪」
スジェルクが指さしたのは、あまり大きいとは言えない、海に面した国だった。反対側には森が広がっており、その森が国の三分の一くらいを有している。左手には山もあるらしく、平地はかなり狭いようだ。
「資源には恵まれていそうだね」
「そうそう。だから、面積の割にかなり栄えているんだよねェ☆」
スジェルクは笑い、この国について話し始めた。
それからひとしきり話すと、今度はこの国から若干離れた国を指さした。面積的にはかなり大きい。
「ここは一応、キミの故郷ってことになるカナ? コーネリア帝国。キミは元々ここのお姫様。政略結婚でリネッカに来たんだよね☆ 結婚式はかなり盛大だったミタイー♪ メイドとか何人も引き連れて来たみたいだしネ。でも貧乏になってからは全員解雇されたって聞いたなァ。というかむしろ白雪姫が解雇したって聞いたことがあるカモ☆」
うわ……。その使用人さんたちはほんとに大丈夫だろうか……。路頭に迷ってたりしないかな……
「でも、貧乏説はちょっと怪しいんだよねェ♪」
スジェルクの言葉に地図から顔を上げると、彼は少し真面目な顔つきで地図を見ていた。
「リネッカは今でもかなり栄えた国なんだヨ。王家も当然それに見合った財を持っていた。だから白雪姫が食いつぶして終わるとは到底思えないんだよネ。そうじゃなくても、いきなり財政危機に陥るのはオカシイ。実際未だに街の方は栄えているし、貴族も普通に優雅な暮らしをしているカラネ」
もう一度地図を見る。
確かに、小さいけれどほんとに資源に恵まれた国だ。こんな国の王家が白雪姫一人の暴走でダメになるとは思いにくい。
「王家が借金をしている……とかは?」
「それも考えたけど、ないみたいヨ。白雪姫が強奪をやめてからは城には誰も来てないって噂だし……。借金取りとかが来ないのなら王家の再建もできそうなのにその様子はないのも不思議だよネ」
何で突然王家はダメになったんだろう……?
私は地図を睨みながら、物思いにふけった。
それからしばらく、彼はこの世界の常識やこの国における文字など、様々な情報を教えてくれた。
それらを全部覚えることはできそうになかったが、文字に関しては少しは上達したと思う。というか、この国の文字は文字の形さえ覚えてしまえば日本語そのものだ。わかりやすい。どういうカラクリかはわからないが、元々ゲームの世界のようだし……まぁ何にせよわかりやすいに越したことはない。
と、かれこれ数時間彼の講義を聴き続け、勉強に疲れた私は一旦講義を中止してもらい、スジェルクに連れられて森の中を探索していた。
「どこに向かってるんですか?」
「それは、着いてみてからのお楽しミ♪」
スジェルクはからからと笑いながら鬱蒼とした森の中、私の手を引きどこかへ連れて行く。
妖精たちに、というかルーヴァスから「森から出ることなくこの家にいて欲しい」と言われている上に、迷いの森の中を全く把握できずリオリムもいない私はあまり森の中を歩きたくはなかった。間違えて森から出たりしてそれが妖精たちに露見でもしたら、家から追い出されかねないからだ。
しかしスジェルクにそれを伝えると、彼は笑って「ボクがそんなヘマをするわけないジャナイ☆」と半ば強引に連れてこられてしまった。……いいのだろうか……
悶々とする私をよそに、スジェルクが「あ、そろそろだね」と言う。
何かと彼を見てみると、彼は振り向きにっこりと笑い、そのまま歩く。
すると、突如開けた場所に出た。
「え……っ」
視界一面の花、花、花――
そう、そこは美しい花畑だった。
その花畑を二分するように澄んだ小川が流れている。とても幻想的な風景だ。
「……綺麗」
「だよねー。気分転換には最適でしょ☆ 妖精たちもここでたまに気分転換とか休憩とかしてるんだよー。気に入ってもらえた?」
頷くと、スジェルクは満足そうな顔になった。
「じゃ、しばらくここで休んでるといいよ。ボクもどっかフラフラしてくるね~♪」
「えっ?」
スジェルクは鼠の姿になると、制止するもなくどこかへと駆け出していってしまった。
「ちょっ……あ、あとで迎えに来て……もらえる、の、かな……?」
やっぱり付いてこなければ良かったかも。
そう思った時だった。
私は小川の向こうに、小さな人影を見つけたのだった。
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