白雪姫の継母に転生しました。

天音 神珀

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 目を凝らしてみると、木陰に隠れたその人物が、小さな影であることが知れる。

「……そこにいるのは、誰ですか?」

 尋ねてみると、木陰からぴょこんと影が飛び出す。

 現れたのは、茶色の髪を頭の横で二つに結わえていたのだろう、年端も行かぬ少女だった。年の頃はおそらく、五、六歳といったところだろう。
 頭の横で結わえていたのだろう、というのは、彼女の髪が片方だけ結えられておらず、そのまま肩に流れているところからの推察だ。可愛らしい赤と白のリボンで髪を結わえているその少女は、残りの髪を結わえるような様子は見せず、くしゃりと顔を歪めて大きな目にいっぱいの涙を湛えて私を見上げている。

「……あなたは……人間?」

 私がそう問うたのは、彼女の耳が尖っていないからだ。尖っていない丸みを帯びたそれは私と同じ、人間の耳に思われた。

 しかし少女が私の問いに答えることはなかった。何事かを小声でつぶやいたようだがその声が私に届くことはない。そのまま、一目散にどこかへ走り去ってしまう。

「ま、待って! 迷子ならあんまり歩き回らない方が――!」

 私は思わず少女を追いかけて駆け出し、小川を越えて――川からところどころ浮き出ている石を辿りながらだったのでかなり遅くはあったのだが――少女の消えた方を見やった。

 しかし少女の姿はどこにも見当たらない。

「……どうしよう。ここは迷いの森なんだから、人間じゃ私と同じように迷っちゃうのに……」
「どうしたノー?」
「うわぁ!?」

 いきなり背後から両肩に手を添えられ、私は飛び上がった。

「あはは、いい反応ー☆」
「あははじゃありません! 人で遊ばないでください!」
「いいじゃん楽しいんだカラ♪」
「私は楽しくないです!」
「ボクは楽しいヨ☆」
「楽しくないです!」
「ボクは楽しいデス~♪」

 さ、帰るヨ☆、と手を引かれる。

「え、どこに」
「どこって家に決まってるでショ♪ 何かここでやりたいことでもあるの?」
「やりたいこと、ってい言われると微妙なんですけど……さっきここで女の子を見て」
「女の子~?」

 私を連れて帰ろうとしていたスジェルクがこちらを振り返る。

「人間の女の子です。五、六歳くらいの」
「ここ近辺に人間なんてついぞ来ないけどなァ♪ ゲシュペンストでも見たんじゃナイ?」
「げしゅ……?」
「幽霊☆」
「ゆっ」
「ん? あれ、もしかして☆ ……幽霊、怖い、トカ?」
「ち、違います」
「ふーん? そーう☆ ……夜眠れないんじゃない? 一緒に寝てあげよっか☆」
「あ、それだけは勘弁してください」
「なぜ真顔!?」

 何げにショック、とかなんとかいいながらスジェルクは私の手を引き、結局そのまま帰ったのだった。
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