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悪役令嬢のシスコンすぎる兄
8 悪役令嬢の私(妹)ですが、兄の手の平で転がされたい(?)
しおりを挟む「お兄ちゃんが、なんでここにいるの!?」
「うーーーん。前世で死んだ後気がついたら、この世界に生まれてたからなー」
『死んだ』そのワードを聞くと体がビクついてしまい、私はお兄ちゃんの顔を直視できなくなる…………
「ごめんね。お兄ちゃん…………私のせいで…………」
「なーに、梨々が悪いんじゃないさ。
あいつを思い出すと今でもハラワタが煮え繰り返りそうになるが、何より梨々が無事でいてくれたんならそれでいいさ。
俺も強かったら刺されはしなかったんだがな~。研究ばかりしてないで少しは鍛えとくんだった。
強いていうなら梨々の可愛いすぎるところがいけなかったってとこだなっ!
まぁ、過去のことだし気にするなっ。この世界も気に入ってるしな~~」
私が感傷に浸っていると、あっけらかんと冗談を混ぜながら兄は言葉を発した。
兄の口調からは昔と変わらない優しさが伝わってきた。
「お兄ちゃん…………ありがとう」
「ん。どういたしましてっ!
それより梨々もなんでこの世界にいるんだ!?」
私は兄が死んでからのあれこれと、妹を守って車に轢かれ死んでしまったことを兄に伝えた。
「せっかくお兄ちゃんに救ってもらった命なのにごめんね…………。
でも私後悔はしてないよ!可愛い麻里ちゃんを守れたんだもの!」
「おお!さすが俺の妹だな!血は争えないってことか!
それに!!!こうしてまた会えたのも運命だな!
やっぱり梨々と俺には切っても切れない縁が————
「はいはい始まった始まった。
ところで、やっぱりお兄ちゃんは前世の知識を使ってここまで領地を整えて来たの?」
私は兄の暴走が始まる前に話題をふった。
「そうだな!一度なってみたかったんだよなーチートってやつ?
それに前世学んだことを遺憾なく発揮できるし、この世界でないと学べないこともたくさんあるから勉強になるよ」
——まだ学ぶ気ですか…………。
でも、兄に任せておけば没落ルートも回避できるはず…………。
こ、これは使える!ふふふふ
「さすがですわお兄様!!!
お兄様に任せてておけばこのアルマニャック家は安泰ですわね!!!」
「おおなんだリリ、応援してくれるのか!!!」
——兄よ…………ちょろいぜ…………。
なんか悪役令嬢っぽくなってきているかも?
「もちろん応援いたしますわ!!!」
「そうかそうか!!では、これからも一緒にアルマニャック領を盛り上げていこうな!!!」
「そうですわね!!一緒に————
えっ?」
「早速、明日は鉱山に視察に行ってみようと思うんだ!だから歩きやすい格好をしてくるんだよ?」
「え?え?え?」
「では、私は先に降りて母様に明日のことを話してくるよ」
いつの間にか馬車は停止していて、兄は颯爽と馬車から降りお屋敷の中に入って行った。
「ええええええええええええええ」
◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日、私はまたしても馬車に揺られていた。
ニコニコ笑顔の兄を横目に窓を見やりながらポッと呟く。
「エリック兄様。鉱山で何をしようと言うのですか?」
「ちょっと、調べたいことがあってねっ」
調べたいこと…………。
アルマニャック領のことは基礎の基礎として学んだのだが、アルマニャック領の鉱山はほとんど鉱物を取り尽くしており、近年では年に数回発見されるかどうかだ。かつてはこの鉱山のおかげて栄えていたアルマニャック領も今では衰退の一途を辿っている。そんなところで一体兄は何を考えているのだろうか…………。
鉱山に進むにつれて気温も低くなり、通る村々も小さくそして貧しいのが目見みてわかるほどだった。
アルマニャック領の中心部は規模は大きくはないもののそれなりに栄えていたため、私は自分がいかに狭いところでいい暮らしをしていたことを思い知らされる。
馬車がだんだんゆっくりになると、止まった。
「リリ、ここからは少し歩くよ」
「わかりました」
私は、兄に手を貸してもらい降りると吐く息が若干白くなり吹く風が肌にピリピリと感じた。
「寒いですね。まだ、秋にもなっていませんのに…………」
「そうだね。急ごうか」
私たちは何人かの護衛をつけ鉱山へと足を向かわせた。
少々歩くと小さな小屋のような建物があり、その奥には鉱山の洞窟が見えて来た。
「お待ちしてました、エリック様。
私は鉱山の管理を任されておりますガエルと言います。」
「ガエルさんありがとう、早速案内してもらいたいんだけどいいかな?」
「もちろんです。ご案内します」
「リリ、私は行くけど小屋で休ませてもらうかい?」
兄が私を気遣ってくれる。
「いえ、私も一緒に参ります」
私たちは鉱山の洞窟へと足を踏み入れた。
「これです」
「これは!やはり石灰岩だ」
「エリック兄様石灰岩というのは————
「キャーーーー!!」
私が兄に問いかけようとすると鉱山の奥から悲鳴が響いた。
ガヤガヤと騒がしくなると、数人の大人に担がれ私と同じくらいの年頃の女の子が運ばれて来た。
「どうした?」
「マリーが落石の下敷きになって怪我をした!」
「俺が診る」
「私も行きましょう」
「あっ私も」
ガエルさんに兄と私もついて行く。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「左腕は折れているな…………。右足の傷は浅いようだから歩けるだろうが、
数週間は仕事を休んで安静にしていなさい」
ガエルさんがそういうと、私はホッと安心した。
「それじゃあ困るんです!私も働かせてください!
なんでもいいんです!できることがあればなんでもします!」
マリーと呼ばれる女の子はガエルさんに懇願する。
——この世界ではこんなに小さいうちから働いているのか…………
マリーの着ているものはボロボロで服の袖から伸びる腕は私よりもずっと細かった。
「右手は使えるだろうから簡単な仕分けの仕事くらいならできるだろう。
私からみんなに言ってくよ」
「ありがとうございます」
私は二人の会話を頭の隅に置きながら、これまでの自分を振り返った。
私は記憶が戻ってからはノルマンディー領のルカのお家に行く以外ではあまり外に出たことがなかった。
平民だと子供のうちから働いていることは教えてもらっていたものの、こんなに小さいうちから働かないと食べていけないという事実は知らなかった。
日本では特別な理由もなしに13歳未満の児童が働くことは原則的に就労させることはできない法律があったし、現場で怪我を負った場合は労災保険でお給料も出ていた…………。
当たり前だと思っていたことが、当たり前ではないのだ………。
——日本の常識に少し囚われ過ぎていたのかも………。
「エリック様、申し訳ないですが————
「ああ、大丈夫ですよ。また改めて伺います。
先ほどの石を少し持ち帰ってもいいでしょうか?」
「あの石ですか?
たくさんあるので好きなだけ持って帰ってください」
「ありがとうございます!リリ帰ろう」
「・・・・ええ行きます」
私はあの少女に後ろめたさを感じながらも来た道を戻ると、馬車に乗り込んだ。
私はさっきの出来事のことをずっと考えていた。3年間自分はこの領のために何かして来ただろうか…………。
エリックは自分で動けるようになってから、すぐに領の改善に取り組んでいると前にお母様からお聞きした。
私がこうやってすくすくと成長できたのは、お父様やエリックの頑張りや領民がきちんと税を納めてくれているからということに初めて気づいたのだった。
それにあんなに小さな女の子も必死に働いていた。
怪我をしてまで…………
——私も…………私も…………この領の為に何かしたい!
という気持ちがふつふつと湧いて来た。
いつか日本のように、みんなが安心して暮らせる領地を作りたい!
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「エリック兄様!!!
私にも領地改革を手伝わせて下さい!!!!」
「ふふふ、そのつもりだよ」
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