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第七章 レベル上げ目的のダンジョン攻略
86話
「ギルドカードの提示をお願いします」
「ん」
ギムルに剣の作製を依頼した翌日の朝、ダンジョン入り口に立つ屈強なギルド職員に、冒険者の身分を表すギルドカードを秋雨は提示する。
そのまま歩を進めると、少し開けた広場のような所に地面が青色に光り輝いている部分があった。それは円形の幾何学模様のようなもので、そこに冒険者が入ると、少しだけ輝きが増したと思った瞬間、冒険者の姿が消える。
転移魔法陣と呼ばれるそれはダンジョン特融のもので、一体いつから存在しているのかわからないくらい昔からあるものであり、その用途は目的の階層まで飛ぶことができるという便利なものだ。
ただし、一度踏み入ったことがある階層でなければ利用できず、いきなり未知の階層に飛ぶことはできないとされている。
学者の話では、古代文明の遺産ともダンジョン自体が生み出した副産物の一種とも言われているのだが、実際のところそれが何なのかは未だ解明には至っていない。
異世界ファンタジーにある謎技術の一つであり、そういったものであると早い段階から解釈した秋雨は特に躊躇うことなくこの転移魔法陣を利用していた。
魔法陣に入ると、視界が光で包まれ今まで見ていた景色が一転し、まったく別の光景が目の前に広がっている。
結果自体は秋雨が使う転移魔法と変わらないものの、魔力を使った転移と魔法陣による転移では感覚が異なるのか、彼は少しだけ違和感を覚える。
「とりあえず、この前の続きからだな」
TVゲームのコンティニューのように攻略途中だった階層からの再開となり、そういった部分ではTVゲームっぽさが強く出ていた。
途中階層からの攻略再開となった秋雨だが、実力的にはまだまだ余裕があり、特に苦戦するようなモンスターは出現しない。
「せいっ」
「ギィ」
「たあっ」
「ギュピィ」
「そいやー」
「キャシャァー」
ゴブリン・一角ウサギ・ダンジョンマンティスといった、Fランク冒険者が攻略可能な階層で出現するモンスターたちを蹴散らしていき、確実に素材と経験値を確保していく。
秋雨がラビラタにやってきた目的は、あくまでも魔族に対抗するために自身を強化することであり、他の冒険者と違い一攫千金や名声を手に入れるためではない。
そのため、手に入れた素材を人知れず冒険者ギルドに納品して換金しているのだが、剣を新調したことで金が入用になった。
「金貨十五枚か……お前、金貨にならないか?」
「キュピィ?」
「そんな都合よくはいかないな」
出現するモンスターに話し掛けるという傍から見れば異常な言動を取る秋雨であったが、ここにきて少しばかり毛色の異なるモンスターが出現する。
「ん? あれは」
「ぷるぷる」
それはぱっと見はスライムであった。だが、まるで鉛色のようなそれは、どこからどう見ても某国民的RPGに登場する経験値をたくさん吐き出してくれそうなあのモンスターと酷似しており、秋雨にとってそうとしか思えないほどによく似ていた。
「まさか、本当にメタルなスライムなの、か?」
「ぷるぷる、ぷるぅ!」
「うおっ、襲い掛かってきやがった。そこは、逃げるんじゃないのか?」
本当にこのスライムが例のモンスターであるならば、まず逃げようとするのではないかと秋雨は思っていた。だが、意外にも好戦的だったらしく素早い動きで彼に向って体当たりをしてきたのである。
「こういうときこそ先生の出番だ。というわけで【鑑定先生】やつの詳細カモン!」
突如現れたメタルなスライムのようなモンスターの詳細を知るべく、秋雨は鑑定を使って調べる。すると、こんな結果が返ってきた。
【スチールスライム】
ステータス:
レベル20(ランクE)
体力 4
魔力 133
筋力 22
持久力 3000
素早さ 4000
賢さ 10
精神力 111
運 7777
スキル:逃走術Lv5、体当たりLv4、メタリングボディLv3、炎魔法Lv1 討伐時獲得経験値Lv3
「やっぱ、メタルなスライム的なやつか」
ステータスの振れ幅といい、所持しているスキルといい、完全にあのスライムに酷似している。
それがわかっただけでも僥倖だが、こいつを相手にするにはいくつかの問題点があった。まず秋雨とスチールスライムの素早さを比べると、圧倒的とはいかないまでも相手の方が素早い。そのため秋雨の攻撃が当たる可能性が低く、苦戦するのが目に見えている。
それに加えて、スチールスライムの持つ【メタリングボディ】というスキルは、受ける物理ダメージを1に固定し、魔法攻撃に至っては全く効果がないというどこのチートだと突っ込みたくなるほどの破格の性能を持っていることがわかった。
しかしながら、【討伐時獲得経験値】というスキルがあり、レベルが1上がるごとに獲得できる経験値が千倍になるという今の秋雨にとってはありがたいスキルを所持しており、このモンスターを倒すことができれば、かなりの経験値を獲得することができる。
「まさにメタルなスライムだな。それにしても経験値三千倍か。感度さんぜ……いや、やめておこう」
何やら余計なことを口にしようとした秋雨だったが、そんなことよりも今は目の前の経験値に集中するべきだと頭を切り替え、手に持つ剣を強く握り込む。幸いなことに目の前のモンスターは好戦的で今は彼に向かってきてはいるものの、スチールスライムが持つスキルの中に【逃走術】が含まれているということは、形勢が不利になったら逃げられる可能性があるのだ。
せっかくやってきた大量経験値獲得のチャンスをみすみす逃す手はなく、珍しく秋雨の目に欲望の炎が灯っている。
「大人しく、俺の経験値になれ!!」
「ぷるっ!? ぷるぷるぷるぅ!!」
最近放った秋雨の攻撃の中でも渾身の一撃だったが、スチールスライムの持つ【メタリングボディ】によっていかなる攻撃もダメージが1となってしまうため、致命傷とはならない。
――残り体力3。
「ぷるぅー!」
「うおっ、魔法か!」
秋雨の攻撃を受け、まるで怒ったような動きを見せるスチールスライムは、反撃するように炎の玉を放ってきた。しかしながら、秋雨も素早さに関してはそれなりに高く、余裕を持ってその攻撃を難なく躱す。
「お返しだ!」
「ぷるっ、ぷるるぅー!」
まるで「やったなぁー!」と言っているかのようにスチールスライムが左右に揺れるような動きを見せる。それは、威嚇するかのようなこちらの様子を窺っているかのような動きであった。
――残り体力2。
「今度はこっちから行くぞ!!」
「ぷるっ!? ぷるぷるぷるぷる!」
さらなる追い打ちをかけるべく、秋雨がスチールスライムに接近する。そして、怒涛の攻撃を加えてくがそのほとんどが空を切る。やはり相手の方が素早さは上のようで、残り二撃を与えることができない。
一旦距離を取り、お互い牽制するかのうように相手の様子を窺う。そして、先に動いたのは秋雨であった。
「くらえっ」
「ぷる。……ぷるるぅー!?」
横なぎに払った秋雨の斬撃を「この程度なんでもないわ」とばかりに躱したスチールスライムであったが、次の瞬間自身がダメージを受けていることに気づく。その正体はその辺に落ちていた何の変哲もないただの石ころであり、自分の攻撃が避けられることを想定していた秋雨が、布石として避けた瞬間にできる隙を狙い、その石ころを指で弾いて攻撃したのだ。
指で弾いた石ころ自体に大した攻撃力はない。しかしながら、今のスチールスライムにとっては十分脅威的な攻撃であった。
スチールスライムの持つメタリングボディは、いかなる攻撃もダメージを1としてしまうものではある。だが、逆を言えば1のダメージを受けてしまうということでもあった。体力がたった4しかないスチールスライムにとってそのたった1のダメージは自分の持つ体力の四分の一に相当するダメージであり、それを聞けばたった1でも楽観視はできない。
――残り体力1。
「ぷるぅー、ぷるぷるぷるぅー!!」
「こいつ逃げる気だな。そうはさせん! いでよ土壁の陣!!」
逃げようとするスチールスライムに対し、秋雨は魔法を使ってスチールスライムが逃げようとする方向に高さ数メートルの土壁を出現させる。地面からにょきにょきと生えてくる土壁は、スチールスライムの退路を断つ。それでも諦めなず他の方向へ逃げようとするスチールスライムだったが、すでにすべての方向に土壁が出現しており、逃げる場所などなかった。
その土壁は、上から見ると八角形になっており周囲を取り囲んでいる。まるで何かの造形物のような土壁が出現したことで、スチールスライムは驚愕と困惑を露わにする。
「ぷるぷるっ!?」
「HAHAHAHAHAHA、どこへ行こうというのかね? もう逃げ場はどこにもない。大人しく俺の経験値となれ」
「ぷぅー! ぷるぷるぷるぷるぷる!!」
秋雨の言葉に焦ったように激しく動くスチールスライムは、まるで命乞いをするかのように自身の体を前後に揺らしている。だが、そんなことで容赦するほど彼は甘い人間ではない。
その後、ダンジョンにスチールスライムの「ぷるぅーー!!」という断末魔の叫びが木霊したことは言うまでもなく、秋雨の言葉通りスチールスライムは彼の糧となった。
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