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プロローグ
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暗い暗い洞窟、僕はいや俺はそこにいた。
何でそんなとこにいるのかって? 簡単だ、この洞窟にとある薬草を採取する目的で来たんだ。
洞窟は薄暗くジメジメしており、時折肌寒いようなあるいは生暖かいような何とも表現し辛い風が肌を撫でまわす。
地面は岩盤のように固く凹凸があり何とも歩くのが難しく、一度バランスを崩せば転倒してしまうほど足場が悪かった。
僕……俺は松明の明かりを頼りに洞窟の奥に自生している薬草目指し、慎重に歩き続けた。
(こういう時に限って、モンスターとか出てくるんだよね、ははっ)
そんなことを考えていたせいかそれが現実となってしまう。
今自分が進んでいる進行方向から見て死角になっている岩陰からそいつは現れた。
身体の色は薄青色で鈍い光沢を放ち、移動速度はのそのそとゆったりしたものではあるが
それがどことなく太々しさを感じさせる。
姿形は一定の形を維持せず、移動する度に楕円になったり細長くなったりと様々な形を見せる。
こちらに気付いたのだろうか、その目も耳も鼻も口もないのっぺらとした顔では判断がつかないが
明らかな敵意とまるで威嚇するかのように飛び跳ねる様相は臨戦態勢に入ったとみて間違いなかった。
「くっ、やるしかないのか……」
僕……俺は持っていた松明を投げ捨て、腰に下げている購入して間もない短剣を抜き放つ。
短剣と言っても俺の体格からすれば短剣ではなく長剣と言っても差し支えないほどの長さのそれを
両手でしっかりと構えると「ふぅ」と一つ息を吐き出し、向かってくる敵と対峙する。
「来るなら来てみろっ、スライム!!」
そう、今俺はこの世界【マグナ】において“最弱”と言われているモンスター、スライムと対峙していた。
こちらの挑発に乗ったかのように奴の移動速度が速くなり自らの身体を使って体当たりを仕掛けてきた。
「ぐはっ」
スライムの突然の攻撃に回避する余裕もなくまともに食らってしまう。
身体に衝撃が伝わり、鈍い痛みが全身を駆け巡るが戦いに支障が出るほど致命傷には至ってはいない。
スライムの攻撃で崩れた体勢を立て直すと今度はこちらの番とばかりにスライムに向かって剣を振り下ろす。
「えいっ!」
振り上げた剣をそのまま叩き込むように放った攻撃はいとも容易く回避される。
そこにまた隙が生まれ、奴の反撃を食らってしまう。
「ぬう……」
勇猛果敢に仕掛けた攻撃をこうも簡単に回避されてしまったため迂闊に手を出せずにお互い睨み合う。
だがお見合いをしてるわけではないのでいつまでもそうしているわけにもいかない。
そう思い、相手の隙を作り出すため動こうとしたが奴も同じことを考えていたのだろう、僕……俺よりも先に勝負に出てきた。
スライムはトリッキーに上下左右に飛びながら俺を翻弄してくる。
あまりの不規則な動きに動きについていけず、死角からの攻撃をまともに食らい残りの体力を限界まで持っていかれてしまう。
(このままじゃ……やられる……)
剣を杖のようにして倒れそうな身体を何とか支えなんとか体勢を立て直そうと立ち上がろうとするが
それを待ってくれるほど相手はお人好しではなく気が付けば目の前に突進してくるスライムの身体があった。
「んっんん~」
目を覚ますとそこはいつも僕……俺がかなりお世話になっている【神殿】その祭壇に俺はいた。
この神殿は呪いや毒にかかった者を浄化する目的で利用される他にもう一つの役割があった。
それはモンスター等によって殺されてしまった場合に復活して戻ってくる場所でもあるのだ。
この【マグナ】という世界は死者が復活つまり蘇るのだ。
蘇ると言ってもゾンビやアンデッドのように知性を持たない状態での復活ではなく。
死ぬ前の状態として蘇ることができる。
詳しいことは僕……俺にもわからないが、どうやら神殿で祈りを捧げるとその捧げた時の肉体の情報が
神殿に記録されその情報を元にして肉体が再構築されるらしい。
そして、再構築された肉体に魂が再び宿り復活するのだ。
記憶自体は死ぬ直前の記憶が残っているため自分が死んだ原因がなんなのか覚えているというのもこの世界の復活の特徴だ。
だが再生された肉体は再構築の時の代償として少しではあるが劣化した状態で再構築される。
即ち死ねば死ぬほど弱くなっていくのだ。
そんな奇跡のような話にも当然抗えない死というものがある。
それは寿命と病気による死だ。
それ以外の死は大概復活できるが流石に寿命と病気による死までは復活できないらしい。
「おお、冒険者よ死んでしまうとは情けない……」
そんな俺をいつもの決まりきった台詞で迎えてくれたのはこの神殿の司祭を務める女性神官のマーレだった。
「すみません。 また、死んでしまいました」
「またあなたですか……ここ数日の間に一体何回復活すれば気が済むのですか?
このままだとこの神殿の連続復活記録を塗り替えてしまいますよ?」
「うぅ」
マーレの少し呆れた物言いにどこかやるせなさと申し訳ないという気持ちになってしまう。
それを見かねたマーレがため息を一つ付くと説明をし出した。
「いいですか、いくら何度でも復活できるとはいえあまり復活しすぎると
肉体の劣化によりどんどん弱い身体になりこのままだと冒険者としてはおろか一般の平民よりも弱くなってしまいますよ?
死ぬことがないとはいえもう少し自分の命を大事になさってください……」
「はい……肝に銘じます」
僕……俺はマーレの説教染みた言葉を受け入れると軽く挨拶を交わしてそのまま外に向かって歩き出した。
俺には夢がある。
それはこの世界で一番強い男になることだ。
寿命や病気などによるもの以外で死ぬことのないこの世界【マグナ】―――。
この世界で最弱の存在であるスライムにすら勝てない最弱中の最弱である僕……俺が
一番強い男つまり【最強】を目指すなんて馬鹿馬鹿しいと思うかもしれない。
でもそうなりたいって思ったんだから僕……俺は自分を信じて前に進むだけだ。
なぜ俺が最強を目指そうと思ったか、その経緯を話すには今より数か月前に遡らねばならないが
今はそれよりも腹が減った、その話は次の機会にするとしよう。
こうして、スライムに勝てない最弱の少年の物語が幕を開けたのであった。
何でそんなとこにいるのかって? 簡単だ、この洞窟にとある薬草を採取する目的で来たんだ。
洞窟は薄暗くジメジメしており、時折肌寒いようなあるいは生暖かいような何とも表現し辛い風が肌を撫でまわす。
地面は岩盤のように固く凹凸があり何とも歩くのが難しく、一度バランスを崩せば転倒してしまうほど足場が悪かった。
僕……俺は松明の明かりを頼りに洞窟の奥に自生している薬草目指し、慎重に歩き続けた。
(こういう時に限って、モンスターとか出てくるんだよね、ははっ)
そんなことを考えていたせいかそれが現実となってしまう。
今自分が進んでいる進行方向から見て死角になっている岩陰からそいつは現れた。
身体の色は薄青色で鈍い光沢を放ち、移動速度はのそのそとゆったりしたものではあるが
それがどことなく太々しさを感じさせる。
姿形は一定の形を維持せず、移動する度に楕円になったり細長くなったりと様々な形を見せる。
こちらに気付いたのだろうか、その目も耳も鼻も口もないのっぺらとした顔では判断がつかないが
明らかな敵意とまるで威嚇するかのように飛び跳ねる様相は臨戦態勢に入ったとみて間違いなかった。
「くっ、やるしかないのか……」
僕……俺は持っていた松明を投げ捨て、腰に下げている購入して間もない短剣を抜き放つ。
短剣と言っても俺の体格からすれば短剣ではなく長剣と言っても差し支えないほどの長さのそれを
両手でしっかりと構えると「ふぅ」と一つ息を吐き出し、向かってくる敵と対峙する。
「来るなら来てみろっ、スライム!!」
そう、今俺はこの世界【マグナ】において“最弱”と言われているモンスター、スライムと対峙していた。
こちらの挑発に乗ったかのように奴の移動速度が速くなり自らの身体を使って体当たりを仕掛けてきた。
「ぐはっ」
スライムの突然の攻撃に回避する余裕もなくまともに食らってしまう。
身体に衝撃が伝わり、鈍い痛みが全身を駆け巡るが戦いに支障が出るほど致命傷には至ってはいない。
スライムの攻撃で崩れた体勢を立て直すと今度はこちらの番とばかりにスライムに向かって剣を振り下ろす。
「えいっ!」
振り上げた剣をそのまま叩き込むように放った攻撃はいとも容易く回避される。
そこにまた隙が生まれ、奴の反撃を食らってしまう。
「ぬう……」
勇猛果敢に仕掛けた攻撃をこうも簡単に回避されてしまったため迂闊に手を出せずにお互い睨み合う。
だがお見合いをしてるわけではないのでいつまでもそうしているわけにもいかない。
そう思い、相手の隙を作り出すため動こうとしたが奴も同じことを考えていたのだろう、僕……俺よりも先に勝負に出てきた。
スライムはトリッキーに上下左右に飛びながら俺を翻弄してくる。
あまりの不規則な動きに動きについていけず、死角からの攻撃をまともに食らい残りの体力を限界まで持っていかれてしまう。
(このままじゃ……やられる……)
剣を杖のようにして倒れそうな身体を何とか支えなんとか体勢を立て直そうと立ち上がろうとするが
それを待ってくれるほど相手はお人好しではなく気が付けば目の前に突進してくるスライムの身体があった。
「んっんん~」
目を覚ますとそこはいつも僕……俺がかなりお世話になっている【神殿】その祭壇に俺はいた。
この神殿は呪いや毒にかかった者を浄化する目的で利用される他にもう一つの役割があった。
それはモンスター等によって殺されてしまった場合に復活して戻ってくる場所でもあるのだ。
この【マグナ】という世界は死者が復活つまり蘇るのだ。
蘇ると言ってもゾンビやアンデッドのように知性を持たない状態での復活ではなく。
死ぬ前の状態として蘇ることができる。
詳しいことは僕……俺にもわからないが、どうやら神殿で祈りを捧げるとその捧げた時の肉体の情報が
神殿に記録されその情報を元にして肉体が再構築されるらしい。
そして、再構築された肉体に魂が再び宿り復活するのだ。
記憶自体は死ぬ直前の記憶が残っているため自分が死んだ原因がなんなのか覚えているというのもこの世界の復活の特徴だ。
だが再生された肉体は再構築の時の代償として少しではあるが劣化した状態で再構築される。
即ち死ねば死ぬほど弱くなっていくのだ。
そんな奇跡のような話にも当然抗えない死というものがある。
それは寿命と病気による死だ。
それ以外の死は大概復活できるが流石に寿命と病気による死までは復活できないらしい。
「おお、冒険者よ死んでしまうとは情けない……」
そんな俺をいつもの決まりきった台詞で迎えてくれたのはこの神殿の司祭を務める女性神官のマーレだった。
「すみません。 また、死んでしまいました」
「またあなたですか……ここ数日の間に一体何回復活すれば気が済むのですか?
このままだとこの神殿の連続復活記録を塗り替えてしまいますよ?」
「うぅ」
マーレの少し呆れた物言いにどこかやるせなさと申し訳ないという気持ちになってしまう。
それを見かねたマーレがため息を一つ付くと説明をし出した。
「いいですか、いくら何度でも復活できるとはいえあまり復活しすぎると
肉体の劣化によりどんどん弱い身体になりこのままだと冒険者としてはおろか一般の平民よりも弱くなってしまいますよ?
死ぬことがないとはいえもう少し自分の命を大事になさってください……」
「はい……肝に銘じます」
僕……俺はマーレの説教染みた言葉を受け入れると軽く挨拶を交わしてそのまま外に向かって歩き出した。
俺には夢がある。
それはこの世界で一番強い男になることだ。
寿命や病気などによるもの以外で死ぬことのないこの世界【マグナ】―――。
この世界で最弱の存在であるスライムにすら勝てない最弱中の最弱である僕……俺が
一番強い男つまり【最強】を目指すなんて馬鹿馬鹿しいと思うかもしれない。
でもそうなりたいって思ったんだから僕……俺は自分を信じて前に進むだけだ。
なぜ俺が最強を目指そうと思ったか、その経緯を話すには今より数か月前に遡らねばならないが
今はそれよりも腹が減った、その話は次の機会にするとしよう。
こうして、スライムに勝てない最弱の少年の物語が幕を開けたのであった。
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