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第1章 最弱の冒険者
2話
しおりを挟む村から徒歩で3分ほどの距離にあるそれほど広くはない規模の森の中で僕……俺たちは食材を探す。
鬱蒼と木々が覆い茂る森には食料となる小動物や食べられる野草などが自生している。
体が小さく力も弱い俺は野兎ですらまともに狩ることはできないが、5歳の頃から爺ちゃんと一緒に森に食材探しをしてきたため、今ではどこに食べられる野草があるか手に取るようにわかっていた。
全て採集してしまうと次の分が無くなってしまうため、必要な分だけ婆ちゃんが蔦で編んで作った籠に入れていく。
一方爺ちゃんは僕……俺との距離が離れすぎないように注意しながら森に潜む小動物を探して回る。
「爺ちゃん、今日は獲物が少ないみたいだね」
「そうじゃな、これじゃあ昼飯抜きになるかもしれんのぉ~」
「その時は僕……俺が取った野草で我慢するっきゃないね!」
「よーし、そうならんよう気張って探すかの」
籠の中に入れた採集済みの野草を見せると、爺ちゃんは顔を綻ばせながら大きな手で俺の頭をくしゃくしゃと撫でまわす。
一しきり撫で終わると、緩んでいた目の端に力を入れ眼光を鋭く研ぎ澄ませるように表情を変える。
何度も聞いた話だけど若かりし頃の爺ちゃんは冒険者をやっていたそうで、有名ではなかったけどある程度食うには困らないほどの実力は持っていたらしい。
その頃に同じ冒険者をやっていた婆ちゃんと出会い、恋仲になって結婚しそのタイミングで冒険者を引退して今の村に移り住んだそうだ。
本人曰く「わしはまだまだ現役バリバリじゃぞい!!」ということらしい。
その言葉に偽りはなく、爺ちゃんは村で一番狩りが上手で自分の体の数倍はあるかっていう大きなイノシシを狩ってきたことがあったくらいだ。
「ところでサヴァンや、お前ももう十歳になるんじゃな」
「うん、だから今から楽しみなんだ【マグナ巡り】」
マグナ巡りというのはこの世界【マグナ】に古くから伝わる風習の一つで十歳になった子供が自分の周りの環境だけでなく他の環境のことも知るべきだという思いから自分の故郷から一歩踏み出し、旅に出るというものだ。
十歳になると強制的に旅に出されるわけでもなく十五歳の成人になるまでに終わらせればよいとされ
旅の距離も故郷の村から隣の村まで行って一日で帰ってくるというものでも許容されている。
僕……俺はこのマグナ巡りに行けるようになる年齢、十歳をずっと待っていた。
俺にはやりたいことがあったからだ。
それは“冒険者”だ―――。
クエストと呼ばれる依頼をこなし、難易度に応じた報酬を冒険者ギルドから得ることで生計を立てる職業。
その仕事の幅も広く、薬草の採取から凶悪な魔物の討伐、果ては要人警護と多種多様にあり
総じて言えることは腕っぷしが強くなければ成り立たない仕事でもあった。
「爺ちゃんや婆ちゃんがやってた冒険者ってのに僕……俺もなってみたい。
この世界を見て回っていつか“最強の冒険者”になるのが俺の夢だ」
「ふん、あんなアコギな商売命がいくつあっても足りやせん。
まだそんなことを考えておったのか? わしは反対じゃぞ、かわいい孫をそんな危険な職に就かせてたまるものか!!」
その危険な職をやっていた自分を棚に上げないで欲しいな……。
そんな感情を込めながらジト目で睨んでいると俺の考えていることを察知したのか
握った拳を腰に当てながら爺ちゃんはこう答えた。
「わしは体格にも恵まれておったから死なずにやってこれたが
お前は体も小さいし力も弱いじゃろ? 見てみぃこの力こぶを!」
「うっ……」
そう言って老体とは思えないほどの筋肉を自慢するように見せびらかしてくる爺ちゃんにため息をつきながら呆れる。
爺ちゃんが僕……俺が冒険者になるのを反対するのは俺がまだ子供だという事の他に実際に自分が冒険者を経験してきているため冒険者の辛さや汚い部分を知っているからだろう。
そんな職業に就いて欲しくないという孫を心配する祖父としての感情も混じっていることもわかっているつもりだし何より自分の身を案じてくれている祖父は一人の男として尊敬している。
だからこそ僕……俺はなってみたい、やってみたい。
俺が尊敬する爺ちゃんが若かりし頃にやっていた冒険者の世界に俺は飛び込んでみたいんだ。
「いっ今はまだ小さいけどいずれ強くなるもん!
それにもう僕……俺は決めたんだ! 冒険者になるって!!」
「いっちょまえの口を聞くようになったのぉ~。 ちょっと前までおねしょばかりしておったのに」
「いっ今はしてないやい!!」
その後爺ちゃんと他愛のない話をしながら獲物を捜し歩いた。
幸いにも獲物が見つかり爺ちゃんが剛腕を振るってこれを仕留めた。
野兎が二羽に少し小ぶりのイノシシを一頭狩ることができた。
爺ちゃんは獲物を見つけるや否や音速で駆け出し、獲物が動く前に仕留めていた。
そのスピードはあまりに早く気付いた時には獲物を片手で持ちながら歯を剥き出しにして笑っている爺ちゃんがそこにいた。
孫ながら敢えて言いたい、「あんたホントに人間かよ?」と―――。
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