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第1話
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第一章「初めてのVRMMO」
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「ということで、アッくんもやろう!」
「……何がどうなってそうなった? 主語以前に詳しい説明が全部抜け落ちてることにまず気付け」
森杉保奈美(もりすぎほなみ)の言葉に呆れた視線を向けるのは、彼女の幼馴染の山田彰(やまだあきら)だ。二人とも高校一年生という青春真っ只中ではあるものの、これといった浮ついた話が全くない。その理由は、いたって単純な話だ。
幼少の頃から共に日々を過ごしてきた二人だったが、いつの頃からか保奈美は彰のことを異性として意識し始めた。そこまではよくある話だが、問題は彰だ。
よくある恋愛ものの物語であれば、この二人が恋仲となり、甘い学園生活を送るというリア充爆発しろ展開になるのだが、保奈美と共に過ごしてきた彰にとって彼女は実の妹のようにしか見えていなかったのだ。
それでも、健気に何とか異性として見てもらおうと保奈美もいろいろと頑張ってみたのだが、結局のところ彰をその気にさせることはできていない。
そんな事情を知っている周りの人間も、下手なことはせずに彼女を温かく見守っているのだが、彼女……保奈美は中学の頃から学園のマドンナとして人気が高く、どうしてもその嫉妬は彼……彰に向けられていたのだ。
彰がいらぬ嫉妬に晒されないよう、周囲の友人たちの協力によって直接的な被害は避けられてきたものの、当の本人がケロッとしているあたり、友人たちの影の努力もなんのそのといったところである。
さて、そんなすれ違いラブコメに登場するような二人だが、ここで保奈美の趣味について説明しよう。長い黒髪に黒い瞳という日本人特有の見た目に反し、目鼻が整った端正な顔立ちと十五歳にしては些か成長著しい二つの双丘という学園のマドンナに相応しい姿をしている保奈美だが、そんな彼女は意外な趣味を持っている。何かと問われれば、それはゲームである。
子供の頃から彰と行動を共にすることが多かった保奈美にとって、男の子が興味を持つであろうゲームで遊ぶことは必然であり、彰もまた一般的な少年の例に漏れずゲームで遊んでいることが多かった。
そんな彼に付き合っているうちに保奈美はTVゲームにのめり込んでいき、それが高じて格闘ゲームの公式大会で上位入選してしまうほどの実力者へと変貌を遂げていた。
ひと昔前のゲームは、テレビのモニターにケーブルを繋ぎ、ハードと呼ばれるゲーム機にソフトをセットすることでゲームをプレイすることができたが、現代におけるゲームは少し毛色が異なる。
【VRギアコンソール】と呼ばれる頭部に装着するサンバイザー型のゲーム機が主流となっており、その媒体も第三者であるキャラクターを操作するものからVRを用いた自身がキャラクターとなってプレイする方式へと変化した。
VR……通称ヴァーチャルリアリティと呼ばれる仮想現実を用いた技術であり、西暦2020年代から目覚まし進歩を遂げ、2030年代以降は人々の周囲でVRというものが身近になるほどにVRは多くの技術を発展させてきた。
その技術を用いて多くのゲームが発売され、その中でも特に人気を博したゲームは多人数参加型オンラインゲーム、通称VRMMOである。
【ファンタジーライブオンライン(FLO)】と呼ばれるゲームが、日本で最初に発売されたVRMMOとして認定されて早七年が経過し、前作のノウハウを活用して開発され、新たに満を持して【ファンタジーライブオンライン2nd(FLOS)】が発売されてから現在一か月が経過している。
当然ながら、ゲームに目がない保奈美が何も行動を起こさないはずもなく、予約が開始されたと同時に購入希望の抽選に応募している。
七年という長期に渡ってその不動の地位を確立してきたFLOシリーズの続編とあって、SNSやテレビなどありとあらゆる媒体で告知がされ、もはや国民の中でFLOSの存在を知らない者など皆無だ。
しかしながら、いくら告知をしようとも初期生産分の総数は決まっており、購入希望者全員が初回版を手に入れることはできない。そこで昔ながらの抽選方式が取られることとなったのだ。
その結果、初期生産本数が一万本という数に対し、国内外問わずその応募総数……実に五千万以上というとてつもない数の応募があり、その倍率や圧巻の五千倍となってしまった件については、ゲーマーの間でかなりの話題となった。
さて、それほどまでに競争率の高い抽選に保奈美も応募したのだが、どういった星の下に生まれればそうなってしまうのかと問い詰めたくなるほどの豪運によって、見事その抽選に当選したのである。
そんな保奈美の出来事を尻目に彰といえば、マイペースに一人用のVRゲームばかりをプレイしていた。特に彼が好んでプレイしていたのは、素材を集めてその素材を使って新たなものを作る生産系のゲームであり、ただただひたすらに物作りに励んでいたのだが、それをお気に召さない人物がいた。言わずもがな保奈美である。
一人でコツコツと楽しむ彰に対し、彼と一緒に何かをやってみたいと思っている保奈美は、あの手この手を使ってマルチプレイができるゲームに誘った。だが、彰は頑なにそれを拒み続けた。
その理由は、彼があまり人付き合いが得意な方ではないインドア派な人間であるということもそうだが、それを決定付けたのは他でもないFLOだった。
以前保奈美がFLOに彰を誘ったことがあったのだが、その当時彰はそれを断ることはなかった。しかし、彼女が彰をFLOに誘った時点で、すでに彼女はFLOの中でもゲーム内掲示板に名前が上がるほどの有名プレイヤーとして名を馳せており、突然ぽっと出てきた彰に嫉妬の目を向けてくるのは必定であった。
その結果、ゲーム内で他のプレイヤーとトラブルとなり、最終的にFLOを引退するという事態にまでになってしまった。ちなみに、トラブルを起こした原因は保奈美と仲良くしている彰を見て嫉妬をしたプレイヤーによる悪質な迷惑行為で、当然加害者側に全面的な非があるため、そのプレイヤーは永久的なアカウント停止処分……所謂永久BANを食らっている。
「あたしは、アッくんと一緒に、このゲームを遊びたい。以上!」
「何で今度は短文なんだよ。だが、残念ながら答えは“ノー”だ」
「どして? 美人で巨乳な幼馴染のお願いなんだよー」
「自分で言ってりゃ世話ねぇな。……理由は、説明しなくてもわかってんだろ?」
「……」
保奈美の極端な説明に呆れ顔を浮かべる彰だったが、保奈美と一緒にゲームをやりたがらない理由を突っ込んでやると、途端に俯き黙り込む。彼女自身が理解しているからだ。彰が一人用のオフラインゲームばかりを好んでプレイする原因を作ったのが自分にあると。
それでも、好きな人と一緒に何かをやりたいという純粋な保奈美の気持ちは理解できなくもないが、だからといって無理強いをするのも彰にあまり良い印象を与えない。だからこそ、こうして幼馴染としてなあなあ程度の軽い勧誘をしているのだ。内心では土下座する勢いで頼み込んでいるのだが、それは保奈美だけが知り得る極秘情報だ。
「ぶぅー、もういいもん! アッくんなんて、一生陰キャのぼっちプレイやってればいいんだ!!」
「はぁー、やれやれだぜ」
保奈美のあまりの言いように反論の一つでもしてやろうかと思う隙すらなく、彼女がリビングから去って行く。バタンという玄関の音がしたので、彼女が自分の家に帰ったことを彰は確認する。
こういったやり取りも、いつもの二人のコミュニケーションの一つだったりするため、彰が保奈美を追いかけることはない。一日経てば、何事もなかったかのようにケロッと話し掛けてくることを彰は知っているからだ。
「さて、結局のところ保奈美が俺と一緒にやりたかったゲームってなんだったんだ? ……ああ、これか」
保奈美の勧誘にあまり興味のなかった彰は、彼女が自分とどんなゲームをやりたかったのか見ていなかった。そこで改めて彼女が持って来たゲームのパッケージを手に取って見ると、そこに書かれていたのは忘れもしないゲームの名前だった。
そこには【ファンタジーライブオンライン】という表記が記載されており、それを見ただけでも彰の心の内に眠るトラウマを呼び覚ますのには十分な効果を発揮する。
「やれやれ、俺がこのゲームで痛い目を見たってことあいつは知ってるはずなんだがな……」
そうは言っても、やはり新作ゲームというものはゲームを嗜む者であれば誰しも胸躍るものがあり、興味はなくともどういった内容のものなのかを確認したくなるのが人情というものだ。
「なになに……“創作(クラフト)せよ! 次のFLOは生産がカギだ”か……」
パッケージに記載されていた内容は、奇しくも彰がずっと一人で遊んできたジャンルであるクラフト系ゲームの文言だった。
元々凝り性の彼は、ただひたすらに一つの作業をこなすことを目的としたゲームを好んでプレイしていた。保奈美に連れられてFLOをプレイする際も、元々は生産職をメインにゲームをプレイするつもりでいたくらいだ。
しかしながら、キャラメイクが終わって保奈美と合流してすぐに悪質なプレイヤーに捕まってしまい、FLOをまともにプレイする間もなくそのまま引退したため、実質的に未プレイではないが未経験者ではあるという特殊な肩書を持つことになってしまったという経緯がある。
そして、FLOの続編FLOSにおいては、生産をメインに置いているという謳い文句が書かれており、ただでさえ生産職プレイが存在していたゲームがさらにパワーアップして攻略のカギとなるなどと言われてしまっては、彰としても気にならないわけがなかった。
「む、むぅ……く、だがしかし。焦るな俺、前作のことを忘れたのか俺。あのトラブルがまたあるかもしれないんだぞ俺」
右の手のひらで目を覆いながら空を仰ぎつつ、己の内にある欲望と自制心との狭間で彰は右往左往する。彰がここまで悩むのは、前作のトラウマがあるというのもそうだが、彼にとって幸か不幸か現在置かれている彼自身の境遇が絶妙なタイミングだったからだ。
現在、彰が攻略中のゲームはなく、以前からやっていたクラフト系ゲームを完全攻略したのが昨日のことであり、次にどんなゲームをプレイするか悩んでいる時期に入ったばかりなのだ。
その時期も今日限りの短い時間であり、次にプレイするゲームを決めてしまえば、しばらくの間そのゲームをやり込み続ける予定だった。だが、そのタイミングを知ってか知らずか保奈美が一緒にゲームをやりたいと誘ってきたのである。
目の前にある興味をそそられるゲームに、彰の心の中で葛藤が垣間見える。心なしか、目を覆う右手がぷるぷると震えているのは、気のせいではないのだろう。
「あっ、そうだ(ぽんっ)! 保奈美と一緒にやらなきゃいいんだ!!」
迷いに迷った挙句、彰は右手をぽんと左手に打ち付け、一つの答えに辿り着く。それは、保奈美と共にゲームをプレイすることを拒否するというものだ。
そもそもの話、彰が面倒事に巻き込まれるに至った経緯は、保奈美という存在が原因といっても過言ではなく、今思えばほぼ十割彼女のせいだと断言できるほどだ。
その元凶である彼女と行動を共にしなければ、ただ一人のプレイヤーとして他のプレイヤーに紛れ込むことができるのではという結論に至ったのだ。
「というわけだ。保奈美よすまぬ。この【ファンタジーライブオンライン2nd】……FLOSだったか。これは有難く使わせてもらう」
先ほどまでいた幼馴染にそんな言葉をぽつりと投げ掛けるも、残念ながらその言葉が彼女に届くことはない。もはや彰の頭の中にはFLOSのことしかなく、初めてプレイするゲームに心を躍らせていた。
「よし、そうと決まればさっそく寝室へGOだ!」
そう言うが早いか、いつもよりも早足で自分の部屋へと赴き、ベッドへと腰掛ける。
ちなみに、今の季節は夏で、彰の高校は夏休みに入っており、すでに数日が経過している。普通の高校生であれば、夏休みをどのように過ごすのかという計画と、いつ頃までに宿題を終わらせていた方がいいのかということを考えているところだろうが、彰は違った。
なんと彰はこの数日間ですでに宿題をすべて終わらせており、あとは好きに夏休みを過ごせる体制が整っていた。尤も、夏休みの宿題とは言うものの、小学校の夏休みの宿題で出るような自由研究などもないため、集中して取り組めば数日あれば終わらせることは不可能ではない。
一応、家には両親が常に在宅しているが、二人とも共働きで、VR技術によって仮想現実世界にある会社に出社しており、戻ってくるのは夜遅くになってからであるため、家事や炊事はほとんど彰がやっていたりする。
その点については両親も手が掛からないということで重宝されており、今では自分たちの給料を預けて「家のことは任せた!」と言ってくる始末である。
彰自身も高校卒業後は一人暮らしを考えているため、その練習と考えれば苦にはならないものの、「それでいいのか両親よ? 俺がいなくなったらどうすんだ?」と高校一年生ではあり得ないような疑問を浮かべていたりする。
そんなことを頭の片隅に追いやり、さっそくVRギアコンソールにパッケージからFLOSのソフトを読み込ませる。ものの十秒と掛からず、ソフトのダウンロードが終わり、プレイが可能な状態となった。
時刻はまだ午前十時と日が浅く、昼食を取るには早い時間であるため、お試しに一、二時間程度遊ぶにはちょうどいい時間だ。
「まあ、物は試しということで……へへ」
にやけ顔を浮かべながら、誰かに言い訳をするかのように彰が呟く。そして、VRギアコンソール……通称ギアコンを頭にセットすると、すぐに電源をオンにする。
すぐに“ゲームを開始できる状態になっていません。ベッドなどの横になれる場所で横になってからプレイを始めてください”という警告文がピーという音と共に表示される。
警告に従ってベッドに横になると、すぐさま意識が遠のいていく感覚と共にコンシューマーゲームの待機画面のようなビジョンが浮かんでくる。その中から先ほどダウンロードしたFLOSを選択すると、すぐにローディングが開始される。
「ようこそ、ファンタジーライブオンラインの世界へ。まずは、あなたの名前を教えてください」
聞こえてきたのは、透き通るような女性の声と目の前に名前を入力するためのウインドウだった。女性の姿は見えず、話し方も人間味のない機械染みた話し方だったため、おそらくはAIが話しているのだと彰は結論付け、名前を入力することに意識を傾ける。
「そうだな。他のゲームではアッキーを使っていたが、今回は保奈美にバレちゃいかんから他の名前にするか」
彰が一人でプレイする際、自身の名前から取って名付けた【アッキー】という名前を使っている。だが、今回は保奈美にバレないためにも自分とはまったく関係のない名前を考える。
しばらくあーでもないこーでもないと考えていた彰だったが、ついにこれという名前を考え付いたようで、名前入力欄にある名前が打ち込まれる。
「よし、このゲームでの俺の名前は【クラフ】だ」
特に奇をてらった名前ではなく、シンプルに“クラフト”という言葉から取っただけの名前だったが、案外いい名前だったのではと彰は内心で自画自賛する。
名前入力が完了すると“この名前でよろしいですか?”という選択肢にあるYESを押し、次に容姿を決める工程に移る。容姿に関しては、性別は元のまま男であれば男、女であれば女といった具合に、現実世界での齟齬が起こらないようになっており、その関連から身長を著しく大きくしたり小さくしたりもできなくなっており、精々プラスマイナス五センチ程度が限度だ。
そのかわり、髪の色や長さと目の色や大きさなどの細かい部分については問題なく行え、中にはその部分に何時間も時間を費やして容姿を決定する猛者もいるほどだ。
「そうだな。身長は割と高いから現実との差をつけるためにマイナス五センチにしておこう。髪は短髪だから少し長めにしておいて、色は水色かな。目は、これも現実との違いを出すために垂れ目気味の二重にして、瞳の色は紫がかった青ってとこにしとこうか」
ウインドウを操作してぽつりぽつりと独り言を呟きながら、指定した容姿を設定していく。現実では黒髪短髪の鋭く黒い一重の瞳という日本人丸出しな見た目をしているため、それとなく現実世界と大きく異なった見た目にすることで、突発的にゲーム内で保奈美と遭遇した時にごまかせるようにする算段である。
「まあ、あの保奈美がそれで勘づかないとは限らない。こと俺のことに関しては、エスパーかよと思うところがあるからな」
以前、彰は保奈美には内緒で何か新しいことを始めようしたことがあったのだが、その度に彼女に勘づかれ、結局二人でやることになってしまったという出来事があった。それも何度もである。
一時期、それが連発したため、部屋の中に盗聴機や隠しカメラがあるのではと思い、わざわざそれ専門の業者にまで依頼を出して盗聴器の有無を調査してもらったが、結局そういった類の機器類が彰の部屋から見つかることはなく、最終的に保奈美がエスパーであるという結果だけが残ったのだ。
だからこそ、今回に関しても彰は慎重に慎重を重ね。彼女に決してバレてはいけないと心に誓っている。特に、今回彰がFLOSをプレイしていることがバレれば、再び引退することになるやもしれないという実情があるのだ。彰としては、是が非でもバレるわけにはいかないのである。
「オッケー。とりあえず、これで容姿から俺であることはまずバレまい」
その姿は、身長百七十前半のうなじまで伸びた水色のショートヘアーに紫がかった青色の瞳を持った少年の容姿をしたアバターだった。まさに、先ほど彰が口にした姿そのままのアバターがそこにおり、元の彰の容姿とはとても似ても似つかないほどかけ離れている。
満足のいくアバターに彰は一つ頷くと、容姿決定の完了ボタンを押す。すると“この容姿で本当によろしいですか?”という選択肢が出てきたので、こちらも迷わずYESボタンをタップする。
「続いて、職業と初期スキルの選択を行ってください」
「職業? 初期スキル?」
「ご説明が必要でしょうか?」
「ああ、頼む」
アナウンスの女性の言っている意味が理解できなかった彰は、彼女に説明してもらうことにした。
「職業とは、そのままの通りファンタジーライブオンラインで生きていくために必要な肩書きで、選択した職業によってレベルアップした際の能力の上昇値に違いがあります。また、戦士や魔法使いなど戦いに特化した職業もあれば、薬師や錬金術師といった生産に特化した職業もあり、選ぶ職によってメインとなるプレイスタイルも変化します。さらに、選択した職業によって覚えられるスキルに差が生じ、中には特定の職業でなければ習得できないスキルも存在します」
「なるほど」
「次に初期スキルについてですが、初期スキルは職業の種類や有無に限らず誰でも習得が可能となっているスキルです。特定の行動を取ったり、スキルポイントを消費することで即座に習得可能となりますが、初期スキルであるため効果はさほどございません」
「なんとなくわかった」
彼女の丁寧な説明を聞いて、職業と初期スキルを理解した彰の目の前に職業名が記載されたウインドウが表示される。その中から一つ選べということを彰は察すると、さっそくどんな職業があるのか確認していく。
【戦士見習い】:レベルアップ時におけるHP・STR・VIT上昇率に補正
【武術家見習い】:レベルアップ時におけるHP・STR・AGI上昇率に補正
【魔法使い見習い】:レベルアップ時におけるMP・AGI・INT上昇率に補正
【僧侶見習い】:レベルアップ時におけるMP・VIT・MND上昇率に補正
【シーフ見習い】:レベルアップ時におけるHP・AGI・LUK上昇率に補正
【弓術師見習い】:レベルアップ時におけるMP・AGI・DEX上昇率に補正
【生産職人見習い】:レベルアップ時におけるHP・MP・DEX・LUK上昇率に補正
最初に選択できる職業は七つで、選んだ職業によってレベルアップの際に上昇するステータスに補正が掛かる項目が異なっている。
FLOSのパラメータはHP・MP・STR・VIT・AGI・DEX・INT・MND・LUKの九項目で、日本語で表すのであればHPが体力、MPが魔力、STRが物理攻撃力、VITが物理防御力、AGIが素早さ、DEXが器用さ、INTが魔法攻撃力、MNDが魔法防御力、そして最後のLUKが運である。
どの職業を選ぶかはプレイヤーのスタイルに合わせることになり、それぞれに合った職を選択してプレイすることになる。また、最初に選択できる職業は基本職業と呼ばれており、途中で職業を変えたいと思った時、今まで得た経験値を引き継いだ状態で職を変えることができる仕様となっている。
ただし戦士見習いから戦士にクラスチェンジしてから別の職業に転職したいと思った場合、見習いからのやり直しに加えて、今まで得た経験値はすべてリセットされた状態になる。
しかも、その状態で再び戦士に再就職した場合、当然今まで手に入れてきた経験値は消失し、また初めからとなるため、転職には慎重に行う必要がある。
「ここは、【生産職人見習い】一択だな」
もともとRPGにおいての王道プレイなどに興味のない彰は、迷うことなく生産職専門の職業である生産職人見習いを選択する。この職業は、生産活動に必要なスキルを使用する際に関係するHPとMPに加え、成功確率や高品質なものを作ることに関わってくるDEXとLUKに補正が掛かるようになっている。
職業選択が終わり次に彰が注目したのは、初期スキルだ。初期スキルは戦闘・生産に関係なく、ありとあらゆるスキルを最大で五個まで選択が可能なものとなっている。しかし、戦闘をメインとしているプレイヤーが生産スキルを覚えても有効活用ができず、それとは逆に生産メインのプレイヤーが剣術などの戦闘に関するスキルを覚えたところで宝の持ち腐れとなってしまうため、自分のプレイスタイルに合わせたスキル選択が重要となってくる。
「うーん、これはこれは……困ったな。欲しいスキルが五個以上あるんだが……」
初期スキルの一覧を一通り流し見した結果、いくつか欲しいスキルが目についた彰だったが、とてもではないが五個に絞り切れないほどに多かった。
しばらく悩みに悩んだ結果、何とか無理矢理な消去法を駆使することで五個に絞ることに成功する。その一覧は以下の通りだ。
【初級鑑定・下】:アイテムなどの詳細な情報を表示する
【初級木工・下】:木造製品の加工ができるようになる
【初級調合・下】:調合ができるようになる
【初級採取・下】:採集に関するスキル
【初級採掘・下】:採掘に関するスキル
FLOSのスキルランクとして初級・中級・上級・超級・名人級・神級の六段階と、さらに下・中・上の三段階の位に加え、さらにレベル1からレベル10の十段階のレベルで構成されている。
鑑定を例に取るならば、最初は【初級鑑定・下】のレベル1からスタートし、レベル10にまで上がりきった次は【初級鑑定・中】のレベル1となり、その後【初級鑑定・上】のレベル10になると、次の【中級鑑定・下】のレベル1という具合に上がっていく。それを繰り返し、最終的には【神級鑑定・上】が最大とされているが、それはあくまでも前作のFLOまでの仕様となっている。
現在、FLOの続編となるFLOSが発売されて一か月が経過しているが、現プレイヤーたちの解析によってわかっていることは、前作のシステムを継承しているものの、今作で新たに加わったシステムがどのようなものなのかについては、未だ謎のベールに包まれているのが現状だ。
当然、前作をまったくプレイすることなく引退してしまった彰がそれを知るはずもなく、スキルについてはこれでいいかという軽い気持ちで決めてしまった。尤も、深く考えたところで現トッププレイヤーたちですら解明できていないことを、前作すらまともいプレイしていない彰が理解しろというのが酷なことではある。
「最後に初プレイの特典としてボーナスポイントを10ポイント差し上げます。このポイントを好きなステータスに振り分けることで、パラメータを強化することができます。どのパラメータに振り分けるか選んでください」
「うおっ、ステータス画面か。どれどれ……」
最初の特典ということで特別にボーナスポイントがもらえたようで、それを使ってステータスを底上げできるようだ。突然現れた画面に驚きつつ、彰は表示されている自分のステータスを確認する。
【名前】:クラフ
【性別】:♂
【職業】:生産職人見習いLv1
【ステータス】
HP 20
MP 15
STR 5
VIT 5
AGI 5
DEX 10
INT 5
MDN 5
LUK 7
【スキル】
初級鑑定・下Lv1、初級木工・下Lv1、初級調合・下Lv1、初級採取・下Lv1、初級採掘・下Lv1
生産職人見習いはレベルアップ時の上昇率に補正が掛かっているのと同じく、初期パラメータも全体的にHPとMPとDEXとLUKが高く、他は軒並み5である。
ちなみに、これが戦士だった場合、HP30、MP0、STR15、VIT10、AGI以降はすべてオール5となる。他の職業については割愛するが、基本的にレベルアップ時の補正が掛かるパラメータが高く、それ以外は初期値である5に設定されている。
「うーん。どうするか……」
ここで彰は再び思案を巡らせる。内容は言わずもがな、どのパラメータにポイントに振り分ければいいというかだ。決定を押す前に1ポイント当たりの数値を確認してみるとHPとMPが3で他のパラメータは1ということがわかった。
つまり、HPまたはMPにポイントを全振りするとプラス30ポイント数値が上昇し、STR以降のパラメータでは10ポイントが加算されるということだ。
ここで彰が悩んだのが、どのパラメータに振り分けるかということもそうだが、すべてのポイントを一つのパラメータにすべて注ぎ込むか、バランスよく振り分けるかという内容だ。要するに極振りかバランス振りかである。
よくこういったVRMMOものの小説などでは極振りが採用されることが多いのだが、実際のところはかなり尖った性能となってしまうため、基本的にソロでの立ち回りが困難となってしまう。
常にオフラインの一人プレイを行ってきた彰にとって、極振りをすると他者の協力が必要となってしまい、その分彼が最も恐れている保奈美への身バレに繋がりかねないリスクを伴う。
だからこそ、ソロでもある程度の立ち回りができるようにするために、彰が導き出した答えは一つだった。
「バランス振りだな。とりあえず、HPに2、MPに1、DEXに3、LUKに4にしておこう」
そうと決まれば、すぐに口にした振り分け内容で彰がポイント割り振った結果、最終的に以下のようになった。
【名前】:クラフ
【性別】:♂
【職業】:生産職人見習いLv1
【ステータス】
HP 26
MP 18
STR 5
VIT 5
AGI 5
DEX 13
INT 5
MDN 5
LUK 11
【スキル】
初級鑑定・下Lv1、初級木工・下Lv1、初級調合・下Lv1、初級採取・下Lv1、初級採掘・下Lv1
「うん、これでいい」
満足のいく結果に大きく頷いていると、アナウンサーの女性が最終確認のために問い掛けてくる。
「以上の内容でお間違えないでしょうか? どこか修正したい個所はございますか?」
「大丈夫だ。問題ない」
「本当によろしいですね?」
「決定だ」
しつこく聞いてくる辺り、後で「やっぱこうしたい」という人間が多いのだろうと彰は開発者サイドの気持ちになって考える。事実、そういった類の人間は少なくなく、後になって「聞いてない」だの「もっとしつこく聞かれていれば」といういちゃもんのようなクレームが日に何度も寄せられていたりする。
「わかりました。もし、決めた内容が気に入らないときは、お手数ですが作成データを消去した上で初めからやり直してくださいますようお願いいたします。また、本件についての意見や苦情等は受け付けておりませんので、それをご理解ご了承いただいた上でプレイしていただきますようよろしくお願い申し上げます。重ねて、プレイの際疑問に思ったことやわからないことがありましたら、メニュー画面の歯車のマークを押していただければ、FLOSの基本的な概要が記載されているヘルプ画面が表示されますので、そちらをご利用ください。それでもわからないときは、お手数ですがGMコールまたは運営へのお問合せをお願いいたします。最後に何かわからない点はございませんか?」
「今のところは大丈夫だ。何かわからないことがあったら問い合わせる」
「かしこまりました。では、異世界生活をお楽しみください」
女性がそう言い終わると、周囲の視界がホワイトアウトしていき、彰はその眩しさに目を瞑る。しばらくして、彼の耳に喧騒が聞こえてきたため、目を開けてみた。するとそこにはファンタジーな世界が広がっていた。
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「ということで、アッくんもやろう!」
「……何がどうなってそうなった? 主語以前に詳しい説明が全部抜け落ちてることにまず気付け」
森杉保奈美(もりすぎほなみ)の言葉に呆れた視線を向けるのは、彼女の幼馴染の山田彰(やまだあきら)だ。二人とも高校一年生という青春真っ只中ではあるものの、これといった浮ついた話が全くない。その理由は、いたって単純な話だ。
幼少の頃から共に日々を過ごしてきた二人だったが、いつの頃からか保奈美は彰のことを異性として意識し始めた。そこまではよくある話だが、問題は彰だ。
よくある恋愛ものの物語であれば、この二人が恋仲となり、甘い学園生活を送るというリア充爆発しろ展開になるのだが、保奈美と共に過ごしてきた彰にとって彼女は実の妹のようにしか見えていなかったのだ。
それでも、健気に何とか異性として見てもらおうと保奈美もいろいろと頑張ってみたのだが、結局のところ彰をその気にさせることはできていない。
そんな事情を知っている周りの人間も、下手なことはせずに彼女を温かく見守っているのだが、彼女……保奈美は中学の頃から学園のマドンナとして人気が高く、どうしてもその嫉妬は彼……彰に向けられていたのだ。
彰がいらぬ嫉妬に晒されないよう、周囲の友人たちの協力によって直接的な被害は避けられてきたものの、当の本人がケロッとしているあたり、友人たちの影の努力もなんのそのといったところである。
さて、そんなすれ違いラブコメに登場するような二人だが、ここで保奈美の趣味について説明しよう。長い黒髪に黒い瞳という日本人特有の見た目に反し、目鼻が整った端正な顔立ちと十五歳にしては些か成長著しい二つの双丘という学園のマドンナに相応しい姿をしている保奈美だが、そんな彼女は意外な趣味を持っている。何かと問われれば、それはゲームである。
子供の頃から彰と行動を共にすることが多かった保奈美にとって、男の子が興味を持つであろうゲームで遊ぶことは必然であり、彰もまた一般的な少年の例に漏れずゲームで遊んでいることが多かった。
そんな彼に付き合っているうちに保奈美はTVゲームにのめり込んでいき、それが高じて格闘ゲームの公式大会で上位入選してしまうほどの実力者へと変貌を遂げていた。
ひと昔前のゲームは、テレビのモニターにケーブルを繋ぎ、ハードと呼ばれるゲーム機にソフトをセットすることでゲームをプレイすることができたが、現代におけるゲームは少し毛色が異なる。
【VRギアコンソール】と呼ばれる頭部に装着するサンバイザー型のゲーム機が主流となっており、その媒体も第三者であるキャラクターを操作するものからVRを用いた自身がキャラクターとなってプレイする方式へと変化した。
VR……通称ヴァーチャルリアリティと呼ばれる仮想現実を用いた技術であり、西暦2020年代から目覚まし進歩を遂げ、2030年代以降は人々の周囲でVRというものが身近になるほどにVRは多くの技術を発展させてきた。
その技術を用いて多くのゲームが発売され、その中でも特に人気を博したゲームは多人数参加型オンラインゲーム、通称VRMMOである。
【ファンタジーライブオンライン(FLO)】と呼ばれるゲームが、日本で最初に発売されたVRMMOとして認定されて早七年が経過し、前作のノウハウを活用して開発され、新たに満を持して【ファンタジーライブオンライン2nd(FLOS)】が発売されてから現在一か月が経過している。
当然ながら、ゲームに目がない保奈美が何も行動を起こさないはずもなく、予約が開始されたと同時に購入希望の抽選に応募している。
七年という長期に渡ってその不動の地位を確立してきたFLOシリーズの続編とあって、SNSやテレビなどありとあらゆる媒体で告知がされ、もはや国民の中でFLOSの存在を知らない者など皆無だ。
しかしながら、いくら告知をしようとも初期生産分の総数は決まっており、購入希望者全員が初回版を手に入れることはできない。そこで昔ながらの抽選方式が取られることとなったのだ。
その結果、初期生産本数が一万本という数に対し、国内外問わずその応募総数……実に五千万以上というとてつもない数の応募があり、その倍率や圧巻の五千倍となってしまった件については、ゲーマーの間でかなりの話題となった。
さて、それほどまでに競争率の高い抽選に保奈美も応募したのだが、どういった星の下に生まれればそうなってしまうのかと問い詰めたくなるほどの豪運によって、見事その抽選に当選したのである。
そんな保奈美の出来事を尻目に彰といえば、マイペースに一人用のVRゲームばかりをプレイしていた。特に彼が好んでプレイしていたのは、素材を集めてその素材を使って新たなものを作る生産系のゲームであり、ただただひたすらに物作りに励んでいたのだが、それをお気に召さない人物がいた。言わずもがな保奈美である。
一人でコツコツと楽しむ彰に対し、彼と一緒に何かをやってみたいと思っている保奈美は、あの手この手を使ってマルチプレイができるゲームに誘った。だが、彰は頑なにそれを拒み続けた。
その理由は、彼があまり人付き合いが得意な方ではないインドア派な人間であるということもそうだが、それを決定付けたのは他でもないFLOだった。
以前保奈美がFLOに彰を誘ったことがあったのだが、その当時彰はそれを断ることはなかった。しかし、彼女が彰をFLOに誘った時点で、すでに彼女はFLOの中でもゲーム内掲示板に名前が上がるほどの有名プレイヤーとして名を馳せており、突然ぽっと出てきた彰に嫉妬の目を向けてくるのは必定であった。
その結果、ゲーム内で他のプレイヤーとトラブルとなり、最終的にFLOを引退するという事態にまでになってしまった。ちなみに、トラブルを起こした原因は保奈美と仲良くしている彰を見て嫉妬をしたプレイヤーによる悪質な迷惑行為で、当然加害者側に全面的な非があるため、そのプレイヤーは永久的なアカウント停止処分……所謂永久BANを食らっている。
「あたしは、アッくんと一緒に、このゲームを遊びたい。以上!」
「何で今度は短文なんだよ。だが、残念ながら答えは“ノー”だ」
「どして? 美人で巨乳な幼馴染のお願いなんだよー」
「自分で言ってりゃ世話ねぇな。……理由は、説明しなくてもわかってんだろ?」
「……」
保奈美の極端な説明に呆れ顔を浮かべる彰だったが、保奈美と一緒にゲームをやりたがらない理由を突っ込んでやると、途端に俯き黙り込む。彼女自身が理解しているからだ。彰が一人用のオフラインゲームばかりを好んでプレイする原因を作ったのが自分にあると。
それでも、好きな人と一緒に何かをやりたいという純粋な保奈美の気持ちは理解できなくもないが、だからといって無理強いをするのも彰にあまり良い印象を与えない。だからこそ、こうして幼馴染としてなあなあ程度の軽い勧誘をしているのだ。内心では土下座する勢いで頼み込んでいるのだが、それは保奈美だけが知り得る極秘情報だ。
「ぶぅー、もういいもん! アッくんなんて、一生陰キャのぼっちプレイやってればいいんだ!!」
「はぁー、やれやれだぜ」
保奈美のあまりの言いように反論の一つでもしてやろうかと思う隙すらなく、彼女がリビングから去って行く。バタンという玄関の音がしたので、彼女が自分の家に帰ったことを彰は確認する。
こういったやり取りも、いつもの二人のコミュニケーションの一つだったりするため、彰が保奈美を追いかけることはない。一日経てば、何事もなかったかのようにケロッと話し掛けてくることを彰は知っているからだ。
「さて、結局のところ保奈美が俺と一緒にやりたかったゲームってなんだったんだ? ……ああ、これか」
保奈美の勧誘にあまり興味のなかった彰は、彼女が自分とどんなゲームをやりたかったのか見ていなかった。そこで改めて彼女が持って来たゲームのパッケージを手に取って見ると、そこに書かれていたのは忘れもしないゲームの名前だった。
そこには【ファンタジーライブオンライン】という表記が記載されており、それを見ただけでも彰の心の内に眠るトラウマを呼び覚ますのには十分な効果を発揮する。
「やれやれ、俺がこのゲームで痛い目を見たってことあいつは知ってるはずなんだがな……」
そうは言っても、やはり新作ゲームというものはゲームを嗜む者であれば誰しも胸躍るものがあり、興味はなくともどういった内容のものなのかを確認したくなるのが人情というものだ。
「なになに……“創作(クラフト)せよ! 次のFLOは生産がカギだ”か……」
パッケージに記載されていた内容は、奇しくも彰がずっと一人で遊んできたジャンルであるクラフト系ゲームの文言だった。
元々凝り性の彼は、ただひたすらに一つの作業をこなすことを目的としたゲームを好んでプレイしていた。保奈美に連れられてFLOをプレイする際も、元々は生産職をメインにゲームをプレイするつもりでいたくらいだ。
しかしながら、キャラメイクが終わって保奈美と合流してすぐに悪質なプレイヤーに捕まってしまい、FLOをまともにプレイする間もなくそのまま引退したため、実質的に未プレイではないが未経験者ではあるという特殊な肩書を持つことになってしまったという経緯がある。
そして、FLOの続編FLOSにおいては、生産をメインに置いているという謳い文句が書かれており、ただでさえ生産職プレイが存在していたゲームがさらにパワーアップして攻略のカギとなるなどと言われてしまっては、彰としても気にならないわけがなかった。
「む、むぅ……く、だがしかし。焦るな俺、前作のことを忘れたのか俺。あのトラブルがまたあるかもしれないんだぞ俺」
右の手のひらで目を覆いながら空を仰ぎつつ、己の内にある欲望と自制心との狭間で彰は右往左往する。彰がここまで悩むのは、前作のトラウマがあるというのもそうだが、彼にとって幸か不幸か現在置かれている彼自身の境遇が絶妙なタイミングだったからだ。
現在、彰が攻略中のゲームはなく、以前からやっていたクラフト系ゲームを完全攻略したのが昨日のことであり、次にどんなゲームをプレイするか悩んでいる時期に入ったばかりなのだ。
その時期も今日限りの短い時間であり、次にプレイするゲームを決めてしまえば、しばらくの間そのゲームをやり込み続ける予定だった。だが、そのタイミングを知ってか知らずか保奈美が一緒にゲームをやりたいと誘ってきたのである。
目の前にある興味をそそられるゲームに、彰の心の中で葛藤が垣間見える。心なしか、目を覆う右手がぷるぷると震えているのは、気のせいではないのだろう。
「あっ、そうだ(ぽんっ)! 保奈美と一緒にやらなきゃいいんだ!!」
迷いに迷った挙句、彰は右手をぽんと左手に打ち付け、一つの答えに辿り着く。それは、保奈美と共にゲームをプレイすることを拒否するというものだ。
そもそもの話、彰が面倒事に巻き込まれるに至った経緯は、保奈美という存在が原因といっても過言ではなく、今思えばほぼ十割彼女のせいだと断言できるほどだ。
その元凶である彼女と行動を共にしなければ、ただ一人のプレイヤーとして他のプレイヤーに紛れ込むことができるのではという結論に至ったのだ。
「というわけだ。保奈美よすまぬ。この【ファンタジーライブオンライン2nd】……FLOSだったか。これは有難く使わせてもらう」
先ほどまでいた幼馴染にそんな言葉をぽつりと投げ掛けるも、残念ながらその言葉が彼女に届くことはない。もはや彰の頭の中にはFLOSのことしかなく、初めてプレイするゲームに心を躍らせていた。
「よし、そうと決まればさっそく寝室へGOだ!」
そう言うが早いか、いつもよりも早足で自分の部屋へと赴き、ベッドへと腰掛ける。
ちなみに、今の季節は夏で、彰の高校は夏休みに入っており、すでに数日が経過している。普通の高校生であれば、夏休みをどのように過ごすのかという計画と、いつ頃までに宿題を終わらせていた方がいいのかということを考えているところだろうが、彰は違った。
なんと彰はこの数日間ですでに宿題をすべて終わらせており、あとは好きに夏休みを過ごせる体制が整っていた。尤も、夏休みの宿題とは言うものの、小学校の夏休みの宿題で出るような自由研究などもないため、集中して取り組めば数日あれば終わらせることは不可能ではない。
一応、家には両親が常に在宅しているが、二人とも共働きで、VR技術によって仮想現実世界にある会社に出社しており、戻ってくるのは夜遅くになってからであるため、家事や炊事はほとんど彰がやっていたりする。
その点については両親も手が掛からないということで重宝されており、今では自分たちの給料を預けて「家のことは任せた!」と言ってくる始末である。
彰自身も高校卒業後は一人暮らしを考えているため、その練習と考えれば苦にはならないものの、「それでいいのか両親よ? 俺がいなくなったらどうすんだ?」と高校一年生ではあり得ないような疑問を浮かべていたりする。
そんなことを頭の片隅に追いやり、さっそくVRギアコンソールにパッケージからFLOSのソフトを読み込ませる。ものの十秒と掛からず、ソフトのダウンロードが終わり、プレイが可能な状態となった。
時刻はまだ午前十時と日が浅く、昼食を取るには早い時間であるため、お試しに一、二時間程度遊ぶにはちょうどいい時間だ。
「まあ、物は試しということで……へへ」
にやけ顔を浮かべながら、誰かに言い訳をするかのように彰が呟く。そして、VRギアコンソール……通称ギアコンを頭にセットすると、すぐに電源をオンにする。
すぐに“ゲームを開始できる状態になっていません。ベッドなどの横になれる場所で横になってからプレイを始めてください”という警告文がピーという音と共に表示される。
警告に従ってベッドに横になると、すぐさま意識が遠のいていく感覚と共にコンシューマーゲームの待機画面のようなビジョンが浮かんでくる。その中から先ほどダウンロードしたFLOSを選択すると、すぐにローディングが開始される。
「ようこそ、ファンタジーライブオンラインの世界へ。まずは、あなたの名前を教えてください」
聞こえてきたのは、透き通るような女性の声と目の前に名前を入力するためのウインドウだった。女性の姿は見えず、話し方も人間味のない機械染みた話し方だったため、おそらくはAIが話しているのだと彰は結論付け、名前を入力することに意識を傾ける。
「そうだな。他のゲームではアッキーを使っていたが、今回は保奈美にバレちゃいかんから他の名前にするか」
彰が一人でプレイする際、自身の名前から取って名付けた【アッキー】という名前を使っている。だが、今回は保奈美にバレないためにも自分とはまったく関係のない名前を考える。
しばらくあーでもないこーでもないと考えていた彰だったが、ついにこれという名前を考え付いたようで、名前入力欄にある名前が打ち込まれる。
「よし、このゲームでの俺の名前は【クラフ】だ」
特に奇をてらった名前ではなく、シンプルに“クラフト”という言葉から取っただけの名前だったが、案外いい名前だったのではと彰は内心で自画自賛する。
名前入力が完了すると“この名前でよろしいですか?”という選択肢にあるYESを押し、次に容姿を決める工程に移る。容姿に関しては、性別は元のまま男であれば男、女であれば女といった具合に、現実世界での齟齬が起こらないようになっており、その関連から身長を著しく大きくしたり小さくしたりもできなくなっており、精々プラスマイナス五センチ程度が限度だ。
そのかわり、髪の色や長さと目の色や大きさなどの細かい部分については問題なく行え、中にはその部分に何時間も時間を費やして容姿を決定する猛者もいるほどだ。
「そうだな。身長は割と高いから現実との差をつけるためにマイナス五センチにしておこう。髪は短髪だから少し長めにしておいて、色は水色かな。目は、これも現実との違いを出すために垂れ目気味の二重にして、瞳の色は紫がかった青ってとこにしとこうか」
ウインドウを操作してぽつりぽつりと独り言を呟きながら、指定した容姿を設定していく。現実では黒髪短髪の鋭く黒い一重の瞳という日本人丸出しな見た目をしているため、それとなく現実世界と大きく異なった見た目にすることで、突発的にゲーム内で保奈美と遭遇した時にごまかせるようにする算段である。
「まあ、あの保奈美がそれで勘づかないとは限らない。こと俺のことに関しては、エスパーかよと思うところがあるからな」
以前、彰は保奈美には内緒で何か新しいことを始めようしたことがあったのだが、その度に彼女に勘づかれ、結局二人でやることになってしまったという出来事があった。それも何度もである。
一時期、それが連発したため、部屋の中に盗聴機や隠しカメラがあるのではと思い、わざわざそれ専門の業者にまで依頼を出して盗聴器の有無を調査してもらったが、結局そういった類の機器類が彰の部屋から見つかることはなく、最終的に保奈美がエスパーであるという結果だけが残ったのだ。
だからこそ、今回に関しても彰は慎重に慎重を重ね。彼女に決してバレてはいけないと心に誓っている。特に、今回彰がFLOSをプレイしていることがバレれば、再び引退することになるやもしれないという実情があるのだ。彰としては、是が非でもバレるわけにはいかないのである。
「オッケー。とりあえず、これで容姿から俺であることはまずバレまい」
その姿は、身長百七十前半のうなじまで伸びた水色のショートヘアーに紫がかった青色の瞳を持った少年の容姿をしたアバターだった。まさに、先ほど彰が口にした姿そのままのアバターがそこにおり、元の彰の容姿とはとても似ても似つかないほどかけ離れている。
満足のいくアバターに彰は一つ頷くと、容姿決定の完了ボタンを押す。すると“この容姿で本当によろしいですか?”という選択肢が出てきたので、こちらも迷わずYESボタンをタップする。
「続いて、職業と初期スキルの選択を行ってください」
「職業? 初期スキル?」
「ご説明が必要でしょうか?」
「ああ、頼む」
アナウンスの女性の言っている意味が理解できなかった彰は、彼女に説明してもらうことにした。
「職業とは、そのままの通りファンタジーライブオンラインで生きていくために必要な肩書きで、選択した職業によってレベルアップした際の能力の上昇値に違いがあります。また、戦士や魔法使いなど戦いに特化した職業もあれば、薬師や錬金術師といった生産に特化した職業もあり、選ぶ職によってメインとなるプレイスタイルも変化します。さらに、選択した職業によって覚えられるスキルに差が生じ、中には特定の職業でなければ習得できないスキルも存在します」
「なるほど」
「次に初期スキルについてですが、初期スキルは職業の種類や有無に限らず誰でも習得が可能となっているスキルです。特定の行動を取ったり、スキルポイントを消費することで即座に習得可能となりますが、初期スキルであるため効果はさほどございません」
「なんとなくわかった」
彼女の丁寧な説明を聞いて、職業と初期スキルを理解した彰の目の前に職業名が記載されたウインドウが表示される。その中から一つ選べということを彰は察すると、さっそくどんな職業があるのか確認していく。
【戦士見習い】:レベルアップ時におけるHP・STR・VIT上昇率に補正
【武術家見習い】:レベルアップ時におけるHP・STR・AGI上昇率に補正
【魔法使い見習い】:レベルアップ時におけるMP・AGI・INT上昇率に補正
【僧侶見習い】:レベルアップ時におけるMP・VIT・MND上昇率に補正
【シーフ見習い】:レベルアップ時におけるHP・AGI・LUK上昇率に補正
【弓術師見習い】:レベルアップ時におけるMP・AGI・DEX上昇率に補正
【生産職人見習い】:レベルアップ時におけるHP・MP・DEX・LUK上昇率に補正
最初に選択できる職業は七つで、選んだ職業によってレベルアップの際に上昇するステータスに補正が掛かる項目が異なっている。
FLOSのパラメータはHP・MP・STR・VIT・AGI・DEX・INT・MND・LUKの九項目で、日本語で表すのであればHPが体力、MPが魔力、STRが物理攻撃力、VITが物理防御力、AGIが素早さ、DEXが器用さ、INTが魔法攻撃力、MNDが魔法防御力、そして最後のLUKが運である。
どの職業を選ぶかはプレイヤーのスタイルに合わせることになり、それぞれに合った職を選択してプレイすることになる。また、最初に選択できる職業は基本職業と呼ばれており、途中で職業を変えたいと思った時、今まで得た経験値を引き継いだ状態で職を変えることができる仕様となっている。
ただし戦士見習いから戦士にクラスチェンジしてから別の職業に転職したいと思った場合、見習いからのやり直しに加えて、今まで得た経験値はすべてリセットされた状態になる。
しかも、その状態で再び戦士に再就職した場合、当然今まで手に入れてきた経験値は消失し、また初めからとなるため、転職には慎重に行う必要がある。
「ここは、【生産職人見習い】一択だな」
もともとRPGにおいての王道プレイなどに興味のない彰は、迷うことなく生産職専門の職業である生産職人見習いを選択する。この職業は、生産活動に必要なスキルを使用する際に関係するHPとMPに加え、成功確率や高品質なものを作ることに関わってくるDEXとLUKに補正が掛かるようになっている。
職業選択が終わり次に彰が注目したのは、初期スキルだ。初期スキルは戦闘・生産に関係なく、ありとあらゆるスキルを最大で五個まで選択が可能なものとなっている。しかし、戦闘をメインとしているプレイヤーが生産スキルを覚えても有効活用ができず、それとは逆に生産メインのプレイヤーが剣術などの戦闘に関するスキルを覚えたところで宝の持ち腐れとなってしまうため、自分のプレイスタイルに合わせたスキル選択が重要となってくる。
「うーん、これはこれは……困ったな。欲しいスキルが五個以上あるんだが……」
初期スキルの一覧を一通り流し見した結果、いくつか欲しいスキルが目についた彰だったが、とてもではないが五個に絞り切れないほどに多かった。
しばらく悩みに悩んだ結果、何とか無理矢理な消去法を駆使することで五個に絞ることに成功する。その一覧は以下の通りだ。
【初級鑑定・下】:アイテムなどの詳細な情報を表示する
【初級木工・下】:木造製品の加工ができるようになる
【初級調合・下】:調合ができるようになる
【初級採取・下】:採集に関するスキル
【初級採掘・下】:採掘に関するスキル
FLOSのスキルランクとして初級・中級・上級・超級・名人級・神級の六段階と、さらに下・中・上の三段階の位に加え、さらにレベル1からレベル10の十段階のレベルで構成されている。
鑑定を例に取るならば、最初は【初級鑑定・下】のレベル1からスタートし、レベル10にまで上がりきった次は【初級鑑定・中】のレベル1となり、その後【初級鑑定・上】のレベル10になると、次の【中級鑑定・下】のレベル1という具合に上がっていく。それを繰り返し、最終的には【神級鑑定・上】が最大とされているが、それはあくまでも前作のFLOまでの仕様となっている。
現在、FLOの続編となるFLOSが発売されて一か月が経過しているが、現プレイヤーたちの解析によってわかっていることは、前作のシステムを継承しているものの、今作で新たに加わったシステムがどのようなものなのかについては、未だ謎のベールに包まれているのが現状だ。
当然、前作をまったくプレイすることなく引退してしまった彰がそれを知るはずもなく、スキルについてはこれでいいかという軽い気持ちで決めてしまった。尤も、深く考えたところで現トッププレイヤーたちですら解明できていないことを、前作すらまともいプレイしていない彰が理解しろというのが酷なことではある。
「最後に初プレイの特典としてボーナスポイントを10ポイント差し上げます。このポイントを好きなステータスに振り分けることで、パラメータを強化することができます。どのパラメータに振り分けるか選んでください」
「うおっ、ステータス画面か。どれどれ……」
最初の特典ということで特別にボーナスポイントがもらえたようで、それを使ってステータスを底上げできるようだ。突然現れた画面に驚きつつ、彰は表示されている自分のステータスを確認する。
【名前】:クラフ
【性別】:♂
【職業】:生産職人見習いLv1
【ステータス】
HP 20
MP 15
STR 5
VIT 5
AGI 5
DEX 10
INT 5
MDN 5
LUK 7
【スキル】
初級鑑定・下Lv1、初級木工・下Lv1、初級調合・下Lv1、初級採取・下Lv1、初級採掘・下Lv1
生産職人見習いはレベルアップ時の上昇率に補正が掛かっているのと同じく、初期パラメータも全体的にHPとMPとDEXとLUKが高く、他は軒並み5である。
ちなみに、これが戦士だった場合、HP30、MP0、STR15、VIT10、AGI以降はすべてオール5となる。他の職業については割愛するが、基本的にレベルアップ時の補正が掛かるパラメータが高く、それ以外は初期値である5に設定されている。
「うーん。どうするか……」
ここで彰は再び思案を巡らせる。内容は言わずもがな、どのパラメータにポイントに振り分ければいいというかだ。決定を押す前に1ポイント当たりの数値を確認してみるとHPとMPが3で他のパラメータは1ということがわかった。
つまり、HPまたはMPにポイントを全振りするとプラス30ポイント数値が上昇し、STR以降のパラメータでは10ポイントが加算されるということだ。
ここで彰が悩んだのが、どのパラメータに振り分けるかということもそうだが、すべてのポイントを一つのパラメータにすべて注ぎ込むか、バランスよく振り分けるかという内容だ。要するに極振りかバランス振りかである。
よくこういったVRMMOものの小説などでは極振りが採用されることが多いのだが、実際のところはかなり尖った性能となってしまうため、基本的にソロでの立ち回りが困難となってしまう。
常にオフラインの一人プレイを行ってきた彰にとって、極振りをすると他者の協力が必要となってしまい、その分彼が最も恐れている保奈美への身バレに繋がりかねないリスクを伴う。
だからこそ、ソロでもある程度の立ち回りができるようにするために、彰が導き出した答えは一つだった。
「バランス振りだな。とりあえず、HPに2、MPに1、DEXに3、LUKに4にしておこう」
そうと決まれば、すぐに口にした振り分け内容で彰がポイント割り振った結果、最終的に以下のようになった。
【名前】:クラフ
【性別】:♂
【職業】:生産職人見習いLv1
【ステータス】
HP 26
MP 18
STR 5
VIT 5
AGI 5
DEX 13
INT 5
MDN 5
LUK 11
【スキル】
初級鑑定・下Lv1、初級木工・下Lv1、初級調合・下Lv1、初級採取・下Lv1、初級採掘・下Lv1
「うん、これでいい」
満足のいく結果に大きく頷いていると、アナウンサーの女性が最終確認のために問い掛けてくる。
「以上の内容でお間違えないでしょうか? どこか修正したい個所はございますか?」
「大丈夫だ。問題ない」
「本当によろしいですね?」
「決定だ」
しつこく聞いてくる辺り、後で「やっぱこうしたい」という人間が多いのだろうと彰は開発者サイドの気持ちになって考える。事実、そういった類の人間は少なくなく、後になって「聞いてない」だの「もっとしつこく聞かれていれば」といういちゃもんのようなクレームが日に何度も寄せられていたりする。
「わかりました。もし、決めた内容が気に入らないときは、お手数ですが作成データを消去した上で初めからやり直してくださいますようお願いいたします。また、本件についての意見や苦情等は受け付けておりませんので、それをご理解ご了承いただいた上でプレイしていただきますようよろしくお願い申し上げます。重ねて、プレイの際疑問に思ったことやわからないことがありましたら、メニュー画面の歯車のマークを押していただければ、FLOSの基本的な概要が記載されているヘルプ画面が表示されますので、そちらをご利用ください。それでもわからないときは、お手数ですがGMコールまたは運営へのお問合せをお願いいたします。最後に何かわからない点はございませんか?」
「今のところは大丈夫だ。何かわからないことがあったら問い合わせる」
「かしこまりました。では、異世界生活をお楽しみください」
女性がそう言い終わると、周囲の視界がホワイトアウトしていき、彰はその眩しさに目を瞑る。しばらくして、彼の耳に喧騒が聞こえてきたため、目を開けてみた。するとそこにはファンタジーな世界が広がっていた。
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