25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい

こばやん2号

文字の大きさ
26 / 37

24話「魔法の訓練をするみたい」

しおりを挟む


 姫がホットケーキを作った日から数日後、彼女はこんなことを口にする。


「もうそろそろ、新しい魔法を覚えたいな」


 姫がこのリムの街での生活にも慣れてきたので、ここで新しい魔法を覚えて自身の強化をしようと考えたのだ。


 さっそく魔法の訓練のため外に出ようとしたところで、ミルダに呼び止められる。


「主、出掛けるのならお供します」

「外には出るけど、出掛けはしないよ。庭で魔法の訓練をするだけだから」

「訓練、ですか?」

「なんなら、ミルダも一緒に訓練する?」

「ふぁ~、ご主人お腹が空いたニャ~」


 護衛として真面目に働こうとするミルダとは対照的に、大きな欠伸をしながら自由な振る舞いをするミャーム。そんな姿に呆れる姫に対し、奴隷としての自覚がないと叱責するミルダという構図が出来上がるのはもはや彼女たちの日常だ。


 とりあえず朝食を済ませ、三人とも魔法の訓練を行うこととなった。


 ミルダとミャームに関しては、オーガ族と猫人族であるため魔法の適正があまりないのだが、それでもやらないよりはいいということで姫の訓練に付き合うことにした。


「二人とも、魔力を感じ取ることはできる?」

「できません」

「ニャーもできないニャ」


 姫の問い掛けに二人とも首を横に振る。それを受け、これは最初から説明しなければならないことを理解した姫が二人に魔力についての講義を開始する。


 魔力とは、どんな人間も必ず持っているものであり、主に魔法を使用する際に消費されるものである。魔法を習得する際、まず初めにやらなければならないことといえば、魔力の存在を感じ取り体内に魔力というものが巡っていることを認識するところからスタートする。


「まずは魔力を感じるところからやってみようか。じゃあ、最初は体の力を抜いて大きく息を吸ったり吐いたりしてみよう」


 魔法を使うにせよ何にせよ、最初にやるべきことは体内にある魔力を感じ取れなければ始まらないため、今まで自分がやってきた方法でミルダとミャームを指導する。


 姫の指示に従い、力を抜き体内の魔力を感じ取ろうとするが、なかなか上手くいかないようで二人とも唸り声を上げる。次第にその声にも力が籠り、自ずと体の方にも力が入ってしまい、ますます上手くいかないという悪循環を起こしてしまう。


 この方法は、本人が魔力を感じ取れなければ先に進むことができないため、無理のない程度に個人練習をしろと姫は指示を出し、自身の魔法の修行を開始した。


 ミルダたちとは違い、毎日欠かさず魔力を感じ取る修行と魔力を使用した身体強化の修行を行っていたので、比較的簡単に新しい魔法を覚えることができた。


 尤も、姫の場合【英雄の素質】という称号を持っているため、さらにも増して魔法を覚えやすい恩恵を得られていた。


「さて、こんなもんかな」


 一通り各属性の魔法を新たに追加し、姫は自分自身を改めて鑑定する。





名前:重御寺姫(♀)

年齢:25歳

種族:人間

体力:4300 / 4300

魔力:8800 / 10480

スキル:【火魔法Lv3 NEW】、【水魔法Lv3 NEW】、【風魔法Lv3 NEW】、【土魔法Lv3 NEW】、

【光魔法Lv2 NEW】、【闇魔法Lv2 NEW】、【生活魔法Lv3 NEW】、【回復魔法Lv3 NEW】、

【魔力操作Lv6 NEW】、【魔力制御Lv5 NEW】、【身体強化Lv5 NEW】、【鑑定Lv3 NEW】、【異世界言語学LvMAX】


修得魔法:

【火魔法】:ファイア、ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアランス、バーストフレア(NEW)

【水魔法】:ウォータ、アクアバレット、プリズンウォータ、アクアストーム(NEW)

【風魔法】:ウインド、ウインドカッター、ウインドシールド、ロンドブレイク(NEW)

【土魔法】:アース、アースウォール、アースクエイク、ガンズロック(NEW)

【光魔法】:ライト、ライトアロー、シャイニングレーザー(NEW)

【闇魔法】:ダーク、ダークジャベリン、ダークボム(NEW)

【生活魔法】:クリーン、ヒート、アイシング、ギャザリング(NEW)

【回復魔法】:ヒール、キュア、ディスペル、ハイヒール、ラウンドヒール(NEW)

称号:異世界人、英雄の素質、九死に一生、八属性詠唱者

状態:異常なし




 以前鑑定した時よりも、体力と魔力が大幅に上昇しており、全体的に強化されている。各スキルが軒並みレベルアップし、魔法も新たに八種類増えた。


 ちなみにこの世界の魔法の概念としての一例を挙げると、魔法自体に決まった固定の魔法というものは存在しない。


 例えば、火の玉を敵に向かって打ち出す魔法を使った時、ある魔法使いはそれを“ファイアーボール”と唱える者もいれば“フレアボール”と唱える者もいる。


 そして、魔法使いとしての力量は、魔力操作及び魔力制御の練度によって決まってくるため、熟練の魔法使いは基本的に貴重な人材となる。


 次に魔法の詠唱についてだが、魔法に大切な要素は頭の中でどれだけ鮮明なイメージを浮かばせるかによるところが大きいので、これも魔法使いによっては呪文を唱えたり、無詠唱で放ったりとまちまちだ。


 当然だが、呪文の詠唱なしに魔法を唱える無詠唱の方が難易度が高く、制御もまた難しい。それに加え、呪文は術者の頭の中のイメージを言葉に変換したものであるため、呪文の内容も唱える者によって変わってくる。


 とどのつまり、この世界において魔法というのは魔力操作、魔力制御、イメージ力の三つを極めれば魔法使いとして上級者と言われている。


 そして、地球からやって来た姫にとって、この三つを理解することは容易く【英雄の素質】と相まって、何の苦労もなく魔法を習得できてしまっていた。


「ぐぬぬぬぬ……」

「ニャああああああ……」

「……」


 姫が魔法の習得を終え、再び二人の様子を見てみると、顔を引き攣らせながらこれでもかと言わんばかりに力んだ状態で佇んでいた。


 それはまるで、便秘気味の女性が今日こそは出るのではないかという期待を込めてトイレで踏ん張っている光景と重なってしまい、笑ってはいけないのだと思いつつも不覚にも姫は吹き出してしまった。


 姫に笑われていることにも気付かず、本人たちは至って真面目に取り組んでいるようだが、これではいつまで経っても魔力を感じ取ることはできないと姫は判断し、一度休憩することにした。


 三十分ほど休憩し、再び魔力を感じ取る修行を開始したのだが、姫はとあることを思いつきそれを実行してみることにした。


「んー」

「ニャニャニャー」

「二人とも、そのまま体の力を抜いたまま意識を集中しててね」


 姫は二人にそう言うと、二人の背中に手を押し当て自身の魔力を二人に向かって流し込んだ。一気に流し込むのではなく、ゆっくりと緩やかなイメージを浮かべながら体に負担が掛からないよう心掛ける。


 するとさっそくその成果が出たのか、ミルダたちの反応が今までと違っていた。そう、違っていたのだが……。


「あぁん、あ、あるじぃー。そ、そこは、ら、らめぇれぇす」

「にゃんっ、にゃんだか体がとっても熱くなってるニャ。は、発情期の時に似てるかもニャー」

「ちょ、ちょっと、二人とも大丈夫!?」


 姫が自分の魔力を流してしばらくすると、二人とも様子がおかしくなってしまった。ミルダは普段のクールな表情とは打って変わり、なんとも妖艶な雰囲気と艶めかしい声を上げている。


 一方のミャームはミルダほどではないが、やはりいつもの陽気な態度ではなく、顔を上気させ雌の発情したような顔つきをしていた。


 この時の姫は知らなかったが、場合によっては他人の魔力を体内に取り込んだ時、稀にだが体の性感帯が敏感になり、一種の媚薬を使ったような状態になることがあるのだ。


 二人の様子がおかしいことに驚いた姫は、すぐさま二人に込めていた魔力を止めた。それから夕方になるまで二人の発情は止まらず、危うく貞操を奪われそうになったが、あとになって回復魔法を使えばよかったことに気付き、そのことに思い至らなかった自分に地団駄を踏む羽目になってしまったのであった。


 翌日、そんな経験をしたお陰なのか二人とも魔力を感じ取ることができるようになり、数日後ミルダは土魔法のアースと闇属性のダークミストという魔法を、ミャームは風魔法のウインドとウインドカッターを習得することができた。


 余談だが、あれから二人が事あるごとに自分に魔力を送り込んで欲しいと懇願してきたが、あの惨事を繰り返してはいけないと判断した姫の手によって却下されることになったのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

処理中です...