70 / 162
2部【アース大陸横断編】 第1章 「目指せドグロブニク 漫遊編」
68話:「ベルゼの力」
しおりを挟む「ここに奴がいるのか・・・・」
そう呟いたのは上位の魔族の中でもトップクラスの階級と実力を持った人物
メフィスト軍直轄第2部隊隊長ヴェルゼビュート・ベルゼバブその人だ。
艶のある革製でできた表面積の少ない漆黒のボンテージに身を包んだ姿は
官能的な色気と女性的魅力が人の姿をしているかの如くのように美しい。
彼女はくびれた腰に手を当てながら様子を窺っている。
地上から数十メートルの高さの位置で浮遊しながら眼下を見下ろしていた。
彼女が見定める先にある物は何の変哲もないただの洞窟だった。
「本当にこんな辺鄙なところに勇者がいるのかしらね?
ねえリリス? ホントにここでいいの?」
そう問いかけるとベルゼの後ろに控えていたリリスがその問いに答える。
「間違いなくこの洞窟の内部にいます。 私の敵感知能力は
魔族の中でも上位に位置しているので相手が虚偽の魔法やスキルを使わない限り
私の目を欺くことは難しいとおもいますよベルゼ姉さん」
そう自信をもって答える妹にあらそうとだけ答えると
右腕を天高くに掲げると魔力を集中させ力を集約させていく。
赤紫色の球体が彼女の掌の上で大きく膨れ上がっていき
それは最終的に直径5メートルほどの大きさにまでになった。
その球体に込められた力は凄まじく禍々しいオーラを纏いながら
役目が果たされるのを今か今かと待っていた。
「じゃあ・・・・とりあえず死んでいただきますわ!!
超絶級魔法 (テラント・マジック) ディムズ・ボム!!」
ベルゼの意に従い圧倒的なまでの力が大和たちの洞窟に向かって放たれた。
あまりの力のため地響きと共に目標物に直進していく。
一方ベルゼが放った魔法による地響きを感じた大和たちは
それが異常事態だということを肌で感じていた。
さらにこの時大和以外の三人は突然の事態に混乱するだけだったが
彼だけは今の状況を正確に把握していた。
(さっき二つの禍々しい気配が現れたと思ったらこれ揺れか・・・・
その片割れがかなり強力な魔法を放ったようだな。
だとしたらここにいるのはヤバいな・・・・よし!!)
意を決して大和は叫んだ。
「お前ら俺に捕まれ! ここを脱出する!!」
その言葉に何の疑いも持たずにリナたちは大和にしがみ付いた。
だがその顔は何となく嬉しそうな顔をしていたが
そんなことを問い詰めている暇はないため即座に魔法を展開しようとしたその時。
「待つだっぴゃ! ボキはどうすれば?」
「一緒に来い!!」
そう言うや否やノームを頭からひょいっと掴み上げると魔法を唱えた。
「ダンジョン・エヴァジオン!!」
大和が魔法を唱えると白い球体が大和たちを包み込み
その輝きが強くなったと思ったらその場にいた全員の姿が掻き消えてしまった。
大和が唱えた呪文は洞窟やダンジョンなどで脱出する専用の呪文である。
【テレポート】との違いとしてはテレポートは主に
拠点から拠点への移動を主とする転移魔法なのに対し
先の魔法は建物内部からその建物の入り口まで転移することを目的とする魔法なのだ。
大和たちが脱出したとほぼ同時にベルゼの放った魔法が直撃する。
その衝撃は凄まじく大和たちのいた洞窟を中心とする直径200メートル周辺が
完全な焼け野原と化していた。
その光景を見て満足したベルゼはふんと鼻で笑うと
既に死んでしまったであろう人物に皮肉を漏らす。
「全くなにが神託の勇者よ、そんなものわたくしたち魔族の前では
普通の人間と変わらないわ。 そう思わないリリス?」
そう問いかけるベルゼの言葉など聞こえちないとばかりに思考が停止していた。
無理もないことだがまさか自分の姉であるベルゼがこのような力技に出ることなど
リリスには予想が付かなかったからだ。
普段のベルゼは自分たち三姉妹の中で最も冷静沈着で慎重な性格をしている。
少しのほほんとしたところはあるが実は最も用心深く強かさを兼ね備えている人物なのだ。
そんな彼女がまだ実力を見いだせていない相手に対し
このような力技に出るわけがないとリリスは高を括っていた。
だがそれは自分の思い違いであったとこのとき痛感した。
彼女ベルゼの本来の性格は好戦的で戦場では最前線で戦うことを好む
俗に言う【戦闘狂 (バトルジャンキー)】なのだ。
なぜリリスが冷静な性格だと勘違いしたのかというと
彼女はベルゼが戦うところを実際目にしたことはなく
メフィストの居城での彼女しか見ていないため、そういう性格なのだと思い込んでしまった。
さらに熱情的な性格の長女であるグレモリーを
いつも冷静な立場から諫めている姿を度々目撃していたため
ベルゼは冷静な性格という固定観念が生まれてしまったのだ。
「・・・・りす、・・・・・・リリス?」
その声にはっとなり顔を上げると、心配する姉の姿がそこにあった。
「どうかしたのかしら? 顔色が悪いようだけど、どこか具合でも悪くて?」
言えるはずがなかった、たった今自分の恋する相手である勇者を
姉であるあなたが殺してしまったなどと・・・・
リリスはそんな感情を悟られまいと自分を奮い立たせ
ごまかすように口を開いた。
「いえ、大丈夫ですベルゼ姉さま。 ただちょっと急に姉さまが
周りの様子も見ず攻撃したので少々びっくりしてしまっただけです」
これが他人の言動であったならばベルゼはすぐに嘘と見抜けただろう。
だが肉親の言葉はどうしても贔屓めで見てしまうものだ。
だからこそベルゼもまた何の疑いもなくその言葉を信じたのである。
「そう、確かリリスはわたくしが戦うところを見るのは
初めてだったわね。 これがわたくしの本来のスタイルなのよ?」
そんなことはリリスにとってはどうでもよかった。
大事なのは自分の恋する相手を失ってしまったということ
彼女にとってはそれがこの世の終わりに等しい事であり
それ以外はもはや興味のない事になっていたのだ。
リリスがこの先どう生きていけばいいのかそう考えを巡らせていたその時。
洞窟があった場所で光り輝くものがあった。
それに気づいた二人は視線を光に向ける。
そしてその光がまばゆく輝いたかと思った瞬間に
その光は掻き消えその場から数人の人が現れたのだ。
「ふう~、なんとかギリギリ間に合ったようだな・・・・」
というちょっと疲れましたという口調で大和が答える。
「なっなにが起こったですのん!?」
「ここって洞窟があった場所ですよね?」
「ヤマトさま何をしたのですか?」
「ボキの家がっ・・・・・・」
それぞれがそれぞれにリアクションを取るなか
とりあえず大和はやらなければならない仕事を一つ片付けることにした。
「いつまでくっついてるんだ!!!!」
掴んでいたノームから手を離すと大和は
いつまでも自分にしがみ付いている馬鹿三人娘に対して
鉄拳制裁とばかりにチョップをお見舞いする。
悶絶する三人を無視して周辺の様子を窺うと上空に二つの人影がいた。
大和は最初から気配で察知していたがその人影を睨みつける。
一方大和の制裁の痛みから復活した三人が大和に抗議しようとした時
三人も上空に佇むただならぬ気配を感じ取り戦闘態勢を取った。
こういうところは今まで旅してきた経験が活かされていた。
「ヤマトさん気を付けるんですのん
只者じゃない気配を感じるですのん・・・・・・」
「ああ、わかってる」
そう短く答える大和が意を決して上空にいる人物に声を掛けた。
「そんなところに浮いてないで降りてきたらどうだ?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる