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第四章 第二の街【ツヴァイトオルト】
23話「クエストを達成したので、料理を始めます」
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明けましておめでとうございます。
2020年、最初の投稿となります。
今年もマイペースに頑張っていきますので、宜しくお願い致します。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ねえ、ちょっといい?」
食堂に向かう途中、不意にローザが声を掛けてきた。彼女に視線を向けると不満げな表情を顔に浮かべていたので、なんとなく彼女が何を言いたいのか察しがついた。
「あの時は緊急事態だったから仕方がないことだと俺は思ってる。だから、謝らないぞ?」
「だからって、あんな仕打ちはないじゃないのよ!」
ローザの改まった態度から、やはり俺が彼女に対して取った行為に納得がいっていないらしく、抗議の声を上げる。だが、こちらとて何の考えもなしにあのような選択をした訳ではないということだけは理解してもらうため、彼女の抗議に対し反論した。
「あの時はお前を落とさないようにするための最善策があれだっただけだ。別にお前の胸の感触を楽しむためにやったわけじゃないことだけはここで言っておく」
「……? なんの話をしているのかな?」
「……俺がお前の胸を鷲掴みにしたことを怒ってるんじゃないのか?」
どうも話が噛み合っていないので詳しく聞いてみると、別に俺が彼女の胸を鷲掴みにしたことはどうでもいいとの返答が返ってきた。俺が「いや、どうでもよくはないだろ?」とさらに突っ込むものの「男の子がそういうのに興味あるのは全部じゃないけどある程度理解できるし、何だったらもう一回触ってみる?」と胸を突き出してきた。……もう少し貞操観念を持った方がいいと思うのは俺だけだろうか?
触りたいという欲望を押し殺し、俺は彼女の魅惑の提案を断ることに成功する。理由は皆目見当が付かなかったが、今触ったらなんか負けた気がすると思ったからだ。
「じゃあ聞くが、一体何に納得がいってないんだ?」
「あたしたちを助けるために、君だけが危険な目に遭うなんて間違ってる。もうそんなことしないで!」
「……で、本音は?」
「君だけあんな楽しいことするなんてずるい! あたしも戦いたかったのにぃー!!」
「……」
まあ、概ね俺の思った通りの回答が得られたので、この話はこれで終わりという意味を込めローザの頭にチョップを落とした。当然ながら抗議の声をローザは上げたが、これ以上下らない話に付き合っている暇はないという思いから少し急ぎ足で食堂へと向かった。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
食堂へと舞い戻った俺たちは、すぐさま目的のロジェビ草をローピンさんの息子のディッシュに渡した。これで病に苦しむ父親が元気になるということもあり、土下座する勢いで彼が感謝の言葉を連呼する。なんとか彼を宥めすかすと、すぐに父親に煎じたロジェビ草を飲ませた。
「ありがとうございました。これでまた食堂を再開することができます」
顔色の優れなかったローピンさんだったが、薬を飲んだ途端顔色が良くなり元気な姿へと回復した。現実世界では病気が治るのにしばらく時間が掛かるのだが、こういう所はゲームなのだなと改めて思い知らされる。
『【NPCクエスト:病に伏せる父にロジェビ草を……】をクリアしました。報酬として、5ポイントのAPと食堂の厨房が使用可能になりました』
どうやらNPCクエストも無事完了したようで、ウインドウに報酬が表示された。厨房の使用はこちらから言い出しことなので本来の報酬なのかはわからないが、APが手に入るのは普通に有難い。厨房が使用できるようになったとのことだったので、俺はさっそくローピンさんに厨房を使わせてもらうことができないかと問い掛けてみた。
「それで、ローピンさん。早速で申し訳ないのですが、食堂の厨房をお借りしてもいいで――」
「はい、もちろんです!! 好きなだけ使ってください」
「……では、遠慮なく」
こちらの問い掛けに、ローピンさんは食い気味に答えてきた。それだけ感謝しているということだろうが、病み上がりなのだからもう少し落ち着いて欲しいものだ。とにかく許可は貰ったので、さっそく食堂に向かい本来の目的である料理を始めることにした。
「それで、何を作るの?」
厨房に向かう途中でそう問われたため、そう言えば何を作るか考えていなかったなと思い、顎に手を当てながらその場で考えてみる。現在調理済みの料理はスフェリカルラビットのステーキだけで、他に調理済みの料理はない。そして、今回第二の街であるツヴァイトオルトにやってきたことで、様々な食材と調味料を手に入れたのだが、そのラインナップと相談した結果、何故か【お子様ランチ】が思い浮かんだため作ってみることにした。ローザからは白い目で睨まれたが、別に彼女の容姿で料理の内容を決めたわけではないということは断言できないまでも、そうでないと思いたい。たぶん、違う……はずだ。
「じゃあ、いっちょ作りますかね【お子様ランチ】」
厨房に入ると、最初にやって来た時とは違いある程度小奇麗な状態になっていた。おそらく、食堂の主人が元気になった事が引き金となり埃まみれだったのが綺麗になったと考えられるのだが、さっきまで調理ができない状態だったはずの厨房を見ている俺としては、なんとも不思議な気分だった。
「よし、まずは材料のチェックだな」
今回作る【お子様ランチ】で作る品数は四品だ。ケチャップライス、ホットケーキ、ハンバーグ、デザートだ。ケチャップライスはお米とケチャップがあれば作れるし、ホットケーキは小麦粉と砂糖があるのでそれも問題ない。ハンバーグもスフェリカルラビットの肉をミンチにすれば可能だし、デザートにいたっては果物をそのままだしてもいいため、さっそく調理をするだけだ。
まず手始めに、研ぎ終わった米を鍋に入れ炊いていく。現実世界では電子ジャーがあるのでスイッチ一つでできてしまうが、こっちの場合は鍋で炊かなければならない。初めての試みではあったが、米を鍋で炊くときはこうするという知識を持っていたので問題なく炊きあがった。
「おお、美味そうだな。試しにおにぎりでも作ってみるか」
「あたしも食べたい」
炊き立てのご飯を見て思わずそう呟いてしまった俺の独り言に、今まで黙って作業を見ていたローザが反応する。……この食いしん坊め。
だが、彼女の意見に否やはないので、とりあえず炊きあがった米を使っておにぎりを作ってみた。
【塩おにぎり】:炊き立てのお米を使って、握った塩おにぎり。素朴な味だが、程よい塩加減で握られているため日本人にはたまらない一品。
【ランク】:4
【料理等級】:七等級
出来上がったおにぎりは初めてにしては七等級とまずますの出来だ。さっそくローザと二人で試食してみる。
「はむ、もぐもぐ……んんー、うまあああああい!!」
「うるさいな、静かに食えないのかお前は?」
「だって、これ半端じゃない美味さだよ!? 君も食べてみなよ」
「まるで自分が作ったような言い草だな……どれ」
ローザに促されるがままに、できたおにぎりを頬張る。口に入れた瞬間米の香りが口の中一杯に広がる。米自体も一粒一粒が立っており、米の甘みも感じられる。そして詳細に記載されていた通り程よい塩加減でとても美味しい。
「うん、これは美味いな」
「でしょ? てことで、お代わりを要求します」
「……」
なにが“てことで”なのかは甚だ疑問だが、俺ももう少しだけ食べたかったので追加のおにぎりを握ってやった。最終的に最初に炊いた米を全て使ってしまったが、これはこれで料理のラインナップの一つになるという結論が得られたため良しとした。
これでケチャップライスを作るためのご飯はできたので、邪魔にならないよう収納領域に入れて保管しておく。次にケチャップライスに欠かせないケチャップの作製に取り掛かった。
まず、包丁で切ったトマトを大きめのボウルに十個ほど入れ潰していく。ピューレ状に近い状態になったところで鍋に移し、刻んだ玉ねぎとにんにくを入れて砂糖・塩・胡椒を加え煮詰めていく。水気が無くなり、全体の三分の一ほどになったら酢を入れて火を止める。しばらく時間を置いてできたものが、これだ。
【自家製ケチャップ】:トマトから作った手作りのケチャップ。調理成功条件が厳しいため、ランクは少しお高め。
【ランク】:6
【料理等級】:七等級
説明の記述からどうやらこのAFOでは、作ることのできる条件が厳しいらしい。これも料理のスキルを取っていたお陰だろう。もう一つ、料理スキルの恩恵として通常ケチャップを煮詰めるのにかかる時間は二、三時間なのだが、料理スキルの恩恵でその時間も三十分で済んでいた。
「よし、これとさっきのご飯を合わせ――」
「あのー、それも味見した方がいいのではないかね?」
「……」
一瞬「こいつ、邪魔だな」という考えが頭を過ったものの、ローザの言うことにも一理あるため一応味を見てみることにした。感想としては、酢を入れ過ぎてしまったのか少し酸っぱいということと、砂糖が足りなかったのか市販品とは異なり甘さが足りないように思えた。
「もう少し、酢の量を減らして砂糖を増やしてみるか」
「そうだね、では良きに計らえ~」
「……」
とりあえず、修正すべき点を修正し再びケチャップを作製する。ちなみに、作業に戻る前にローザの頭にチョップを落としたことを付け加えておく。再び作ったケチャップは、想像していた味通りになってくれ料理等級も一つ上がって六等級になった。
「あとは、これを一つにするだけだ」
ここまでかなりの時間を費やしているように見えるが、実際掛かった時間は四十五分ほどだ。とりあえず、先ほど炊いたご飯と煮込んだケチャップを熱したフライパンで混ぜ合わせていく。そして、ようやくお子様ランチ最初の一品が完成した。
【ケチャップライス】:ケチャップとご飯をフライパンで熱しながら混ぜ合わせたもの。長い間子供に親しまれており、美味である。
【ランク】:5
【料理等級】:七等級
「よし、味を見てみ――」
「あーん」
「……」
いよいよ味見という所で、ローザが口を大きく開けていた。まるで鳥の雛が親鳥から餌を貰うのを待っているかのようで思わず吹き出しそうになった。とりあえず、味見は必要なのでスプーンで掬ったケチャップライスを口に入れてやると、リスのように咀嚼し「美味しい」と感想を述べる。
「では、俺も味見を――」
「あーん」
「……」
とりあえず、お子様ランチの最初の一品であるケチャップライスが完成した。ちなみに二回目はさすがに許容できなかったため、ケチャップを作る時に使ったトマトを口に突っ込んでやったことを付け加えておく。次はホットケーキに挑戦だ。
2020年、最初の投稿となります。
今年もマイペースに頑張っていきますので、宜しくお願い致します。
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「ねえ、ちょっといい?」
食堂に向かう途中、不意にローザが声を掛けてきた。彼女に視線を向けると不満げな表情を顔に浮かべていたので、なんとなく彼女が何を言いたいのか察しがついた。
「あの時は緊急事態だったから仕方がないことだと俺は思ってる。だから、謝らないぞ?」
「だからって、あんな仕打ちはないじゃないのよ!」
ローザの改まった態度から、やはり俺が彼女に対して取った行為に納得がいっていないらしく、抗議の声を上げる。だが、こちらとて何の考えもなしにあのような選択をした訳ではないということだけは理解してもらうため、彼女の抗議に対し反論した。
「あの時はお前を落とさないようにするための最善策があれだっただけだ。別にお前の胸の感触を楽しむためにやったわけじゃないことだけはここで言っておく」
「……? なんの話をしているのかな?」
「……俺がお前の胸を鷲掴みにしたことを怒ってるんじゃないのか?」
どうも話が噛み合っていないので詳しく聞いてみると、別に俺が彼女の胸を鷲掴みにしたことはどうでもいいとの返答が返ってきた。俺が「いや、どうでもよくはないだろ?」とさらに突っ込むものの「男の子がそういうのに興味あるのは全部じゃないけどある程度理解できるし、何だったらもう一回触ってみる?」と胸を突き出してきた。……もう少し貞操観念を持った方がいいと思うのは俺だけだろうか?
触りたいという欲望を押し殺し、俺は彼女の魅惑の提案を断ることに成功する。理由は皆目見当が付かなかったが、今触ったらなんか負けた気がすると思ったからだ。
「じゃあ聞くが、一体何に納得がいってないんだ?」
「あたしたちを助けるために、君だけが危険な目に遭うなんて間違ってる。もうそんなことしないで!」
「……で、本音は?」
「君だけあんな楽しいことするなんてずるい! あたしも戦いたかったのにぃー!!」
「……」
まあ、概ね俺の思った通りの回答が得られたので、この話はこれで終わりという意味を込めローザの頭にチョップを落とした。当然ながら抗議の声をローザは上げたが、これ以上下らない話に付き合っている暇はないという思いから少し急ぎ足で食堂へと向かった。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
食堂へと舞い戻った俺たちは、すぐさま目的のロジェビ草をローピンさんの息子のディッシュに渡した。これで病に苦しむ父親が元気になるということもあり、土下座する勢いで彼が感謝の言葉を連呼する。なんとか彼を宥めすかすと、すぐに父親に煎じたロジェビ草を飲ませた。
「ありがとうございました。これでまた食堂を再開することができます」
顔色の優れなかったローピンさんだったが、薬を飲んだ途端顔色が良くなり元気な姿へと回復した。現実世界では病気が治るのにしばらく時間が掛かるのだが、こういう所はゲームなのだなと改めて思い知らされる。
『【NPCクエスト:病に伏せる父にロジェビ草を……】をクリアしました。報酬として、5ポイントのAPと食堂の厨房が使用可能になりました』
どうやらNPCクエストも無事完了したようで、ウインドウに報酬が表示された。厨房の使用はこちらから言い出しことなので本来の報酬なのかはわからないが、APが手に入るのは普通に有難い。厨房が使用できるようになったとのことだったので、俺はさっそくローピンさんに厨房を使わせてもらうことができないかと問い掛けてみた。
「それで、ローピンさん。早速で申し訳ないのですが、食堂の厨房をお借りしてもいいで――」
「はい、もちろんです!! 好きなだけ使ってください」
「……では、遠慮なく」
こちらの問い掛けに、ローピンさんは食い気味に答えてきた。それだけ感謝しているということだろうが、病み上がりなのだからもう少し落ち着いて欲しいものだ。とにかく許可は貰ったので、さっそく食堂に向かい本来の目的である料理を始めることにした。
「それで、何を作るの?」
厨房に向かう途中でそう問われたため、そう言えば何を作るか考えていなかったなと思い、顎に手を当てながらその場で考えてみる。現在調理済みの料理はスフェリカルラビットのステーキだけで、他に調理済みの料理はない。そして、今回第二の街であるツヴァイトオルトにやってきたことで、様々な食材と調味料を手に入れたのだが、そのラインナップと相談した結果、何故か【お子様ランチ】が思い浮かんだため作ってみることにした。ローザからは白い目で睨まれたが、別に彼女の容姿で料理の内容を決めたわけではないということは断言できないまでも、そうでないと思いたい。たぶん、違う……はずだ。
「じゃあ、いっちょ作りますかね【お子様ランチ】」
厨房に入ると、最初にやって来た時とは違いある程度小奇麗な状態になっていた。おそらく、食堂の主人が元気になった事が引き金となり埃まみれだったのが綺麗になったと考えられるのだが、さっきまで調理ができない状態だったはずの厨房を見ている俺としては、なんとも不思議な気分だった。
「よし、まずは材料のチェックだな」
今回作る【お子様ランチ】で作る品数は四品だ。ケチャップライス、ホットケーキ、ハンバーグ、デザートだ。ケチャップライスはお米とケチャップがあれば作れるし、ホットケーキは小麦粉と砂糖があるのでそれも問題ない。ハンバーグもスフェリカルラビットの肉をミンチにすれば可能だし、デザートにいたっては果物をそのままだしてもいいため、さっそく調理をするだけだ。
まず手始めに、研ぎ終わった米を鍋に入れ炊いていく。現実世界では電子ジャーがあるのでスイッチ一つでできてしまうが、こっちの場合は鍋で炊かなければならない。初めての試みではあったが、米を鍋で炊くときはこうするという知識を持っていたので問題なく炊きあがった。
「おお、美味そうだな。試しにおにぎりでも作ってみるか」
「あたしも食べたい」
炊き立てのご飯を見て思わずそう呟いてしまった俺の独り言に、今まで黙って作業を見ていたローザが反応する。……この食いしん坊め。
だが、彼女の意見に否やはないので、とりあえず炊きあがった米を使っておにぎりを作ってみた。
【塩おにぎり】:炊き立てのお米を使って、握った塩おにぎり。素朴な味だが、程よい塩加減で握られているため日本人にはたまらない一品。
【ランク】:4
【料理等級】:七等級
出来上がったおにぎりは初めてにしては七等級とまずますの出来だ。さっそくローザと二人で試食してみる。
「はむ、もぐもぐ……んんー、うまあああああい!!」
「うるさいな、静かに食えないのかお前は?」
「だって、これ半端じゃない美味さだよ!? 君も食べてみなよ」
「まるで自分が作ったような言い草だな……どれ」
ローザに促されるがままに、できたおにぎりを頬張る。口に入れた瞬間米の香りが口の中一杯に広がる。米自体も一粒一粒が立っており、米の甘みも感じられる。そして詳細に記載されていた通り程よい塩加減でとても美味しい。
「うん、これは美味いな」
「でしょ? てことで、お代わりを要求します」
「……」
なにが“てことで”なのかは甚だ疑問だが、俺ももう少しだけ食べたかったので追加のおにぎりを握ってやった。最終的に最初に炊いた米を全て使ってしまったが、これはこれで料理のラインナップの一つになるという結論が得られたため良しとした。
これでケチャップライスを作るためのご飯はできたので、邪魔にならないよう収納領域に入れて保管しておく。次にケチャップライスに欠かせないケチャップの作製に取り掛かった。
まず、包丁で切ったトマトを大きめのボウルに十個ほど入れ潰していく。ピューレ状に近い状態になったところで鍋に移し、刻んだ玉ねぎとにんにくを入れて砂糖・塩・胡椒を加え煮詰めていく。水気が無くなり、全体の三分の一ほどになったら酢を入れて火を止める。しばらく時間を置いてできたものが、これだ。
【自家製ケチャップ】:トマトから作った手作りのケチャップ。調理成功条件が厳しいため、ランクは少しお高め。
【ランク】:6
【料理等級】:七等級
説明の記述からどうやらこのAFOでは、作ることのできる条件が厳しいらしい。これも料理のスキルを取っていたお陰だろう。もう一つ、料理スキルの恩恵として通常ケチャップを煮詰めるのにかかる時間は二、三時間なのだが、料理スキルの恩恵でその時間も三十分で済んでいた。
「よし、これとさっきのご飯を合わせ――」
「あのー、それも味見した方がいいのではないかね?」
「……」
一瞬「こいつ、邪魔だな」という考えが頭を過ったものの、ローザの言うことにも一理あるため一応味を見てみることにした。感想としては、酢を入れ過ぎてしまったのか少し酸っぱいということと、砂糖が足りなかったのか市販品とは異なり甘さが足りないように思えた。
「もう少し、酢の量を減らして砂糖を増やしてみるか」
「そうだね、では良きに計らえ~」
「……」
とりあえず、修正すべき点を修正し再びケチャップを作製する。ちなみに、作業に戻る前にローザの頭にチョップを落としたことを付け加えておく。再び作ったケチャップは、想像していた味通りになってくれ料理等級も一つ上がって六等級になった。
「あとは、これを一つにするだけだ」
ここまでかなりの時間を費やしているように見えるが、実際掛かった時間は四十五分ほどだ。とりあえず、先ほど炊いたご飯と煮込んだケチャップを熱したフライパンで混ぜ合わせていく。そして、ようやくお子様ランチ最初の一品が完成した。
【ケチャップライス】:ケチャップとご飯をフライパンで熱しながら混ぜ合わせたもの。長い間子供に親しまれており、美味である。
【ランク】:5
【料理等級】:七等級
「よし、味を見てみ――」
「あーん」
「……」
いよいよ味見という所で、ローザが口を大きく開けていた。まるで鳥の雛が親鳥から餌を貰うのを待っているかのようで思わず吹き出しそうになった。とりあえず、味見は必要なのでスプーンで掬ったケチャップライスを口に入れてやると、リスのように咀嚼し「美味しい」と感想を述べる。
「では、俺も味見を――」
「あーん」
「……」
とりあえず、お子様ランチの最初の一品であるケチャップライスが完成した。ちなみに二回目はさすがに許容できなかったため、ケチャップを作る時に使ったトマトを口に突っ込んでやったことを付け加えておく。次はホットケーキに挑戦だ。
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