転生してもノージョブでした!!

山本桐生

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予兆編

発表と弟

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「うちの大事な子達に……クソ屑どもが……戦争じゃ、こりゃ戦争じゃぁぁぁっっ!!」
「激怒だし」
 軽い感じでシャーリーは言うが。
「ゆ……ゆるさん……ぜったいにゆるさんぞ虫ケラども!!!!! じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!!!」
 私の怒りが収まらんぜ!!
「あ、それとヌーノだけど、今回の話を聞いてめっちゃビビってる」
 ヌーノ……スヴァル海商の元代表オウラー・スヴァルの一人娘。跡取り問題に巻き込まれ、うちで保護中。
 ヌーノは今回の襲撃にも自分が関係しているのではないか、そう疑心暗鬼になっているらしい。
「その可能性は低いと思うから、大丈夫だって伝えといて。それにうちの子と一緒なら安心だから、って」
 商会の跡取り問題なら、ハンナが巻き込まれる意味は無い。
「って、事でベルベッティア」
「ええ、徹底的に調べ上げるわ。任せてちょうだい」
「ヒメもお願い」
「承知致しました!! ベルベッティア殿と一緒に全てを暴いて見せましょうぞ!!」
 見た目は普通の猫のベルベッティア。ただの水のような形態にもなれるコノハナサクヤヒメ。この二人が本気で調査したら分からない事って無いんじゃない?

★★★

 交易都市。
 大陸の様々な場所と大きな街道で繋がる経済の中心。王都と同等に重要な都市だった。
 そこを治めるのはアランという男。
 そしてその妻が王家の血筋である。王様の弟の娘、つまり姪っ子だ。
 確か二人には息子が一人いたはず。
 そのアランが大きな発表をしたのである。

『およそ20年前に連れ去られた娘がいる』事と『その娘が最近になって見付かった』事。

 そんな発表をした直後だった。
 いやぁ……まぁ……薄々というか気付いてはいたんだけどね。

「貴方様の本当の名は『ルーシア』。交易都市を治めるアラン様のご息女なのです」
 身なりをきちんと整えた初老の男性。その後ろに控える数人の男女もよく教育の施された人間だと分かる。
 アランの使いの者達。
 商会の応接室。
 この場にいるのは私とフレアとホーリー、そして彼らだけ。
 その言葉にフレアとホーリーは全く表情を変えない。
「確かに私は捨て子でしたが、急にそんな事を言われてもにわかには信じられません。それも今になって何故でしょうか?」
「まずは順を追ってお話します」
 男性は言う。

 20年前、アランとその妻、エレノワの間に一人娘が産まれた。白い髪と赤い瞳、まるで邪神アリアの生まれ変わりのような娘。
 子の名はルーシア。
 アランとエレノワはルーシアを大事に育てていたが、ある日、ルーシアは雇っていたメイドに連れ去られてしまう。
 その姿が忌み嫌われる邪神アリアのようだったから。この子がここにいれば必ず交易都市は不幸に見舞われる。アランとエレノワの身を案じたメイドの暴走。
 そしてそのままルーシアもメイドも見付かる事は無かった。

 そしてそれから時が経ち、エルフの町に白い髪と赤い瞳を持つシノブという人物を知る。

「もちろんすぐにでも保護するべきだという意見もありました。ただアラン様はそうはしませんでした。もうルーシア様……シノブ様には家族がいましたから」

 もう私には新しい家族がいた。立ち上げた商会も順調。そこでアランが名乗り出れば必ず混乱が生じる。アラン本人は自らの子供を守れなかった親。名乗る資格など無いのだった。

「でしたら……」
 どうして今になって?
「国王が間もなく亡くなります。そして貴方様には王位継承権があるのです」
「……それこそ今になって騒ぐような問題ではないはずです」
「もちろんこうしてお話をする事は無いと思っていましたが、想定外がありました。トラコス・アンア・コストラ、彼を知っていますね?」
「……何度か一緒になりましたから」
「トラコスは『アンア』として、自分が次期国王になると名乗り上げたのです」
「名乗るだけなら誰でも国王になれますね。つまりトラコスを次期国王として推す勢力がある。それがアラン様に影響を与える……」
「一度、アラン様に会っていただけないでしょうか?」
「はい、自身の事ですから。もちろんです」
 私は頷くのだった。

★★★

「……って、事で交易都市のアラン様に会ってくる」
「……」
「……」
 お父さんもお母さんも無言。
「お姉ちゃん、ちょっと言ってくるからねぇ~、すぐ帰ってくるから待っててねぇ~」
 私は腕の中の小さな弟に微笑みかけた。
「あーうー」
 か、かわいい……産まれたばかりの私の弟。クリクリとした愛らしい目には青い瞳。まだまだ少ないがそれでもフワッとした金色の髪。そしてエルフ特有の少し尖った耳。
 これ、絶対に美男子になる!! もうこの時点で私には分かる!!
「ほら、お姉ちゃんとちゅーしようか、ちゅー」
 ちゅっ ちゅっ ちゅっ
 ああ、これが目に入れても痛くないってやつかぁぁぁ!!
 ちゅぅぅぅぅぅ~
「……それでシノブはどうするつもりなんだ?」
「どうするもこうするも、話を聞いてみないとね」
「お母さんも一緒に行こうか?」
「大丈夫、フレアもホーリーもいるから。それにまだ体力も回復してないでしょ。産後なんだからゆっくり休まないと」
「じゃあ、お父さんが」
「いや、お父さんだと感情が顔に出そうだし遠慮しとく。相手が相手だから」
「そ、そうか……もし……シノブが本当の両親の所に戻りたかったら、お父さんもお母さんも止めはしない。そう昔からお母さんとは話していたんだ」
「いや、こんなかわいい弟の傍から離れられないでしょ。何、それともお父さんは私に出て行ってほしいわけ?」
「そんな事あるか」
 飽きれたようにお父さんは言う。
「ただちょっとね……アラン様に会ってみたくて……」
「……シノブ……何か不穏な事を考えているんじゃないでしょうね?」
「ちょっ、お、お母さん、不穏な事って、何?」
「その顔、悪い事を考えている時の顔なんだけど」
「ち、違うよー、もう、私だっていつもそんな事を考えているわけじゃないんだから、あははっ」
 笑って誤魔化すが……さすがお母さん、鋭い。

 アランの野郎……何が『大事に育てていた』だ?
 赤子だった私にその時の記憶なんて無いと思ってんだろ。ところがどっこい、記憶はあるんだな。
 私が捨てられるまで、アランは一度しか私の元に来ていない。
 そして私を捨てる時に『ごめんなさい』と言葉を残したメイド。そのメイドの姿がアランの使いの者達の中にいた。少し老けてはいたがしっかりと顔を覚えている。
 つまり私を連れ去ったメイドなどはいない。アランの使いとして私を捨てたのだ。
 私を今まで無視していたが、何かしらの利用価値を見付けてコンタクトしてきたのだ。
 ふふっ、ブッ殺す。アランの野郎、場合によってはケツの穴から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたる!! 待っとけよカス!!

 その前に。

★★★

 商会をお手伝いをするレオ・トライドン。
 その後ろにいるのはニーナだ。今までいっぱい力を貸してくれた彼女。
 今この場にいるのは私とレオだけ。
「……もう話は聞いているんですね?」
「申し訳ありません。私からは何も申し上げる事ができません」
「ニーナさんの本当の名前はエレノワ様」
「……」
 肯定も否定もしない。
「じゃあ、一つだけ。エレノワ様は私をどう思っていたんですか?」
「……」
「……」
「……愛しています。今でも」
 それが聞ければ充分だ。
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