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第24話:オスカー様とギルバート様の対面です

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オスカー様が我が家に出入り禁止になってから、ほぼ毎日の様にオスカー様の屋敷に行くようになった。侯爵様を始め、オスカー様の家族は皆とても歓迎してくれる。

オスカー様が中々家に返してくれないので、結局晩ご飯を食べていく事も多い。もちろん、学院でも私にべったりだ!ギルバート様と街に出て以来、一緒にいられる時はひと時も私から離れようとしないのだ。

そんなオスカー様の姿を見てファビアナが
「まるで母鳥に付き歩くひな鳥の様ね」
そう言って笑っていた。ひな鳥にしてはずいぶん大きいけれどね。

そんな日々を送っているうちに、ギルバート様を案内する事になっている週末を迎えた。今日もきっと街に出るだろうという事で、最初から動きやすいワンピースを着て行く事にした。ちなみに出入り禁止のオスカー様は、我が家の門の前で待っている。

お父様に
「門の前で待たせるだなんて、さすがにオスカー様が可哀そうよ!」

そう抗議したのだが
「あいつは門の前で十分だ!それだけの事をしたんだ。とにかく、お前との婚約を正式に結び直すまでは、出入り禁止だ!」
そう言いきられてしまった。

本当にお父様は、変なところで頑固なんだから!準備を済ませると、急いでオスカー様が待つ門まで向かった。私の姿を見つけたオスカー様が、嬉しそうにこちらにやって来る。そして、なぜか服をチェックしている様だ。

「おはよう、アメリア!服装は問題なさそうだね!それじゃあ行こうか」

差し出された手を取り、馬車に乗ろうとすると

「オスカー、くれぐれもパッショナル王国の第三王子に無礼な事をするなよ!それから、あまり王子の前でアメリアとくっつかない事!分かったな!第三王子は陛下の友人だ。くれぐれも行動には気を付けるんだぞ!」

何処からともなく現れた侯爵様が、オスカー様に向かって話しかけた。側にはこれまたいつの間に現れたのか、お父様もいた。

「分かっているよ、父上。僕もさすがに他国の王子に無礼を働くほど、バカじゃないから安心して。それじゃあ行ってくるね」

そう言うと、2人で馬車へと乗り込んだ。明らかに不安そうな顔をしている侯爵様とお父様。あなた達の気持ち、物凄くよくわかるわ。私も不安でたまらないもの。どうかオスカー様が暴走しませんように!

そんな思いから

「オスカー様、先ほど侯爵様もおっしゃっておりましたが、くれぐれも行動には十分注意してくださいね。間違っても、ギルバート様の前で抱き着いたり、口付けをする事は絶対にしないで下さい!」

そうオスカー様に伝えたのだが…

「へ~、アメリアは第三王子の事を、名前で呼んでいるんだね!随分と親しそうだな。それに、どうして第三王子の前で、僕とイチャ付きたくないだなんて言うんだい?もしかして第三王子に興味があるのか?」

物凄く怖い顔で詰め寄って来るオスカー様。どうしてそんな話になるのよ!毎回毎回訳の分からない事ばかり言って!いい加減腹が立ってきた!

「そんな訳ないでしょう!ギルバート様は他国の第三王子で、陛下の友人でもあるのです。そんな方の前でイチャイチャなんてしたら、下手をすると不敬罪で捕まってしまう恐れがあるのですよ!そもそも、あなただってミア様の事を、ずっと呼び捨てで読んでいたではありませんか?自分の事は棚に上げて、私だけ攻め立てるなんておかしいですわ!」

昔の事をほじくり返したくはないが、いい加減腹が立ってきたのだ!よく考えたら、陛下に頼まれてギルバート様を案内しただけなのに、物凄く怒られたのよ!自分は半年近く私をほったらかしにして、令嬢と楽しく過ごしていたのに!

そうよ、私だって怒ってもいいのよね!そう思ったら、何だか強気で出られるような気がした。そう思い、オスカー様に背を向けて抗議の意を示した。

「ごめん、アメリア。君の事が好きすぎて、つい冷静ではいられなくなってしまうんだ!そうだよね、僕は半年近くも君を苦しめ続けたのに、その事を棚に上げて君を攻めてしまった。本当に悪いと思っているよ。今日はとにかく出来るだけセーブするから、こっちを向いてくれ」

普段オスカー様にあまり意見しない私からの反抗に、さすがに動揺したのか、珍しく感情をセーブすると言って来たオスカー様。

「それは本当ですか?」

「ああ、本当だ!とにかく、僕はアメリアを心から愛しているんだ。だから、僕を捨てないで欲しい!君を傷つけた事は、一生かけて償っていくから。そうだ、第三王子の案内役が終わって、改めて婚約を結び直した暁には、君のいう事を1つだけ何でも聞いてあげよう」

「何でもですか?それなら、学年末休みにもう一度ファビアナの商船に乗って旅に出たいです!」

やっぱり世界を回る夢は諦められない!まだまだ見た事のない世界がきっと広がっているのだ。

「それはダメだ!2ヶ月も君から離れるなんて、僕には出来ない。そもそも、君が今回旅にさえ行かなければ、第三王子とも出会う事は無かったんだ!」

速攻で却下されてしまった。やっぱりね…分かっていたけれど、ダメだと言われると尚更行きたくなるものだ!

そんな話をしているうちに、王宮についてしまった。

「いいですか?くれぐれも私への過度な接触はお止めくださいませ!いいですね、オスカー様!」

「分かっているよ。アメリアの真剣な顔も可愛いね」

そう言うと、私に口付けをして来るオスカー様。本当に大丈夫なのかしら?物凄く不安な気持ちを抱えたまま、ギルバート様が待つお部屋へと案内された。

「やあ、アメリア、よく来てくれたね!」

部屋に入ると、ギルバート様が早速挨拶をしてくれた。隣にはなんだか疲れた顔をしている陛下もいらっしゃる。もしかして、公務で忙しいのかもしれないわね。それなのに、わざわざ私たちを出迎えてくださるなんて、なんだか申し訳ないわ!

「ギルバート様、陛下、今日もよろしくお願いいたします。こっちは私の婚約者のオスカーです」

「お初にお目にかかります。アメリアの婚約者のオスカー・サマーグレンドでございます。どうぞお見知りおきを」

さすが侯爵家の人間、完璧な挨拶をしたオスカー様。こうやって見ていると、昔のクールなオスカー様を思い出すわ!

「君がオスカー殿だね。俺はギルバート・ディアム・パッショナルだ。よろしく頼む」

そう言ってオスカー様に手を差し出したギルバート様。オスカー様もその手を取った。あら?思ったよりも大丈夫かもしれないわ。そう思ったのも束の間

「オスカー殿は、まだ正式にはアメリアとの婚約は結んでいないらしいね。アメリアはとても美しいから、色々と心配だろう?」

「そうですね。確かに私とアメリアはまだ婚約を正式に結び直しておりませんが、社交界では有名なおしどりカップルとして認識されておりますので。事実上、婚約者と言っても差し支えはありませんよ!ねぇ、アメリア」

そう言うと、すかさず私の腰に手を回し、自分の方へと引き寄せるオスカー様。そのまま、おでこに口付けを落とした。

だから口付けはダメだと言ったのに!不敬罪で捕まらないかしら?アタフタしている私をよそに、涼しそうな顔をしているオスカー様。

「だから言っただろう、ギルバート。この2人は本当に仲睦まじいのだよ!」

どうやら陛下は、オスカー様の口付けを特に気にしていないどころか、仲睦まじいと思ってくれている様だ。とりあえず、不敬罪はなさそうね。良かったわ!そんな陛下を睨みつけているギルバート様。どうしたのかしら?

「ほら、そろそろ行かないと、あまり見られなくなるぞ。今日は港の方を見たいと言っていただろう!オスカー、アメリア嬢、こいつの事を頼んだよ!雑に扱ってもらっても大丈夫だから!それじゃあ、僕はこの辺で失礼するよ」

そう言って去って行った陛下。ちょっと、こんな微妙な空気の中、置いて行かないで!心の中で叫ぶが、もちろん聞こえる訳がない。

「それじゃあ、俺たちも行こうか?」

ギルバート様の言葉で、私たちも出発する事になったのであった。




~あとがき~
アメリア達が到着する前のギルバートと陛下の会話です。

「今日はアメリア嬢の婚約者のオスカーも来るんだ。あまり喧嘩を売る様な事をするなよ!」

「アルト、アメリアはまだ正式には婚約を結んでいないんだ!ゴチャゴチャ言うな。とりあえず、今日はオスカーとか言う男がどんな男なのか見定めるよ!だからあまり心配するな!」

「本当だな!頼んだぞ!それにしても、お前はいつまでこの国にいるつもりなんだ!いい加減帰れ!昨日も僕の言いつけを無視して、勝手に街に出ただろう!使用人たちからも苦情が出ているんだ!いい加減大人しくしていてくれ!」

「俺の事は放っておいてくれればいいと言っただろう!それにしても、使用人に文句を言われるだなんて、お前は国王としての威厳は無いのかよ!情けない!」

「何だと!お前が…」

「はいはい!そろそろアメリアが来る頃だな」

口笛を吹きながら、陛下をあしらうギルバート。

「(こいつ、いい加減早く帰ってくれないかな…もういっその事、アメリア嬢を差し出すか?ダメだ、僕1人の意見でそんな勝手な事をすれば、貴族たちから不満が出るだろう。色々と考えていたら、なんだかどっと疲れが出て来た。本当に早く帰ってくれ…)」

アメリア達が来た時、陛下が疲れていたのは、このやり取りがあったからです(;^_^A
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