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第49話:私はどうしたらいいのでしょうか【前編】
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「わ…私は…」
「ごめん、俺、余裕なくて。分かっているよ、俺にはアンジュにこんな事を言う権利なんてない事くらい。でも、俺にとってアンジュは全てなんだ。アンジュがこの国からいなくなったら、俺は…」
切なそうにデイビッド様が俯いた。
「デイビッド様、私は…」
「アンジュ、俺はアンジュが大好きだ。どうか俺の傍にいて欲しい。アンジュが傍に来てくれるだけで、俺はどんな辛い事でも乗り越えられるし、どんな事でも耐えられる。でも、アンジュがいない事だけは、どうしても堪えられないんだ」
デイビッド様が必死に訴えかけてくる。
「私は…」
「デイビッド様を受け入れる事は出来ません!だろ?分かっているよ。俺は君にそれだけの事をして来たからね。拒否されるってこんなに辛いものなんだね。俺は君にこんなに辛い思いを、5度もさせて来ただなんて…本当に自分が嫌になる…」
今にも泣きそうな顔のデイビッド様。
「すまない…アンジュを困らせるつもりはなかったんだ。ただ…ダルク殿がこの国に来てから、いつかアンジュはダルク殿と一緒にミラージュ王国に行ってしまうのではないかと思うと、不安でたまらなくて…どうしても気持ちを伝えていないと、心が押しつぶされそうなんだ」
今までに見た事がないほど、デイビッド様が辛そうな顔をしている。正直なんと声を掛けていいのか分からない。
その時だった。
処置が終わったダルク様が、出てきたのだ。
「アンジュ嬢、それからデイビッド殿も待たせてごめんね。怪我自体はやはり大したことはなかったよ。一応毒に関する検査も行ってもらったが、既にちゃんと解毒されている為問題ないそうだ」
そう言ってほほ笑んでいるダルク様。よかったわ、大した怪我でなくて。ホッと胸をなでおろした。
「ダルク様のお怪我が大したことなくて、本当によかったですわ。それで、今日はもう帰ってもよろしいのですか?」
「ああ、入院等の必要は無いそうだよ。アンジュ嬢、随分と心配をかけてすまなかったね」
「そんな…私の方こそ、助けて頂いてありがとうございました。でも、誰が毒が付いた矢を放ったのでしょうか?」
「分からないが、もしかしたら大物を確実に仕留めるために、毒の付いた矢を誰かが放ったのが、運悪くこちらに飛んできたのかもしれないね」
ダルク様がそう言って苦笑いをしている。
「まあ、それだったら矢を放った人間はしっかり謝罪をするべきだわ。そもそも、あんな場所で矢を放つだなんて。そのせいでダルク様は、命の危険に晒されたというのに!」
もしそうなら、本当にとんでもない話だ。
「とにかく、今回の件は騎士団長が今調査しているだろうから、そのうち詳細が分かるよ。それよりもダルク殿、その…アンジュを守って下さりありがとうございました。俺がアンジュを守れなかった事は非常に悔しいが、とりあえずお礼をと思いまして」
なぜかデイビッド様がダルク様に深々と頭を下げたのだ。一瞬怪訝そうな顔をしたダルク様だったが、すぐに真顔に戻った。
「別に君からのお礼はいらないよ。それよりデイビッド殿、君、いつまでも病室にいていいのかい?次期騎士団長なら、現地に早く戻った方がいいのではないのかい?」
確かにダルク様の言う通りだ。でも、なぜかその場からデイビッド様が動こうとしない。
「デイビッド殿、私は王宮に帰るよ。先生からも安静にしているようにと言われているし。アンジュ嬢も、今日はありがとう。君も疲れただろう。家に帰るといい」
「分かりましたわ。それでは参りましょう」
きっとデイビッド様も、私たちを2人きりにしたくなくて、現場に戻りたくても戻れないのだろう。ダルク様もその事を分かっていて、あえてもう王宮に帰ると言ってくれているのだと理解した。
ダルク様のそう言うさりげない気遣いが出来るところ、素敵よね。
3人で病院の出口まで来ると、既に待機していたそれぞれの馬車に乗り込む。
「それではまた明日。ダルク様、お大事に」
「ありがとう、アンジュ嬢。デイビッド殿も、今日はありがとう」
「ダルク殿、どうか安静に。それじゃあ、俺はもう行くから」
よほど急いでいたのか、馬車に乗り込むとすぐに出発してしまったデイビッド様。きっと無理して付いて来たのだろう。
さあ、私も帰ろう。そう思ったのだが。
「アンジュ嬢、ちょっとだけ話がしたいのだけれど、いいかな?」
急に私の馬車に乗り込んできたのは、ダルク様だ。一体どうしたのかしら?
「ごめん、俺、余裕なくて。分かっているよ、俺にはアンジュにこんな事を言う権利なんてない事くらい。でも、俺にとってアンジュは全てなんだ。アンジュがこの国からいなくなったら、俺は…」
切なそうにデイビッド様が俯いた。
「デイビッド様、私は…」
「アンジュ、俺はアンジュが大好きだ。どうか俺の傍にいて欲しい。アンジュが傍に来てくれるだけで、俺はどんな辛い事でも乗り越えられるし、どんな事でも耐えられる。でも、アンジュがいない事だけは、どうしても堪えられないんだ」
デイビッド様が必死に訴えかけてくる。
「私は…」
「デイビッド様を受け入れる事は出来ません!だろ?分かっているよ。俺は君にそれだけの事をして来たからね。拒否されるってこんなに辛いものなんだね。俺は君にこんなに辛い思いを、5度もさせて来ただなんて…本当に自分が嫌になる…」
今にも泣きそうな顔のデイビッド様。
「すまない…アンジュを困らせるつもりはなかったんだ。ただ…ダルク殿がこの国に来てから、いつかアンジュはダルク殿と一緒にミラージュ王国に行ってしまうのではないかと思うと、不安でたまらなくて…どうしても気持ちを伝えていないと、心が押しつぶされそうなんだ」
今までに見た事がないほど、デイビッド様が辛そうな顔をしている。正直なんと声を掛けていいのか分からない。
その時だった。
処置が終わったダルク様が、出てきたのだ。
「アンジュ嬢、それからデイビッド殿も待たせてごめんね。怪我自体はやはり大したことはなかったよ。一応毒に関する検査も行ってもらったが、既にちゃんと解毒されている為問題ないそうだ」
そう言ってほほ笑んでいるダルク様。よかったわ、大した怪我でなくて。ホッと胸をなでおろした。
「ダルク様のお怪我が大したことなくて、本当によかったですわ。それで、今日はもう帰ってもよろしいのですか?」
「ああ、入院等の必要は無いそうだよ。アンジュ嬢、随分と心配をかけてすまなかったね」
「そんな…私の方こそ、助けて頂いてありがとうございました。でも、誰が毒が付いた矢を放ったのでしょうか?」
「分からないが、もしかしたら大物を確実に仕留めるために、毒の付いた矢を誰かが放ったのが、運悪くこちらに飛んできたのかもしれないね」
ダルク様がそう言って苦笑いをしている。
「まあ、それだったら矢を放った人間はしっかり謝罪をするべきだわ。そもそも、あんな場所で矢を放つだなんて。そのせいでダルク様は、命の危険に晒されたというのに!」
もしそうなら、本当にとんでもない話だ。
「とにかく、今回の件は騎士団長が今調査しているだろうから、そのうち詳細が分かるよ。それよりもダルク殿、その…アンジュを守って下さりありがとうございました。俺がアンジュを守れなかった事は非常に悔しいが、とりあえずお礼をと思いまして」
なぜかデイビッド様がダルク様に深々と頭を下げたのだ。一瞬怪訝そうな顔をしたダルク様だったが、すぐに真顔に戻った。
「別に君からのお礼はいらないよ。それよりデイビッド殿、君、いつまでも病室にいていいのかい?次期騎士団長なら、現地に早く戻った方がいいのではないのかい?」
確かにダルク様の言う通りだ。でも、なぜかその場からデイビッド様が動こうとしない。
「デイビッド殿、私は王宮に帰るよ。先生からも安静にしているようにと言われているし。アンジュ嬢も、今日はありがとう。君も疲れただろう。家に帰るといい」
「分かりましたわ。それでは参りましょう」
きっとデイビッド様も、私たちを2人きりにしたくなくて、現場に戻りたくても戻れないのだろう。ダルク様もその事を分かっていて、あえてもう王宮に帰ると言ってくれているのだと理解した。
ダルク様のそう言うさりげない気遣いが出来るところ、素敵よね。
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「ダルク殿、どうか安静に。それじゃあ、俺はもう行くから」
よほど急いでいたのか、馬車に乗り込むとすぐに出発してしまったデイビッド様。きっと無理して付いて来たのだろう。
さあ、私も帰ろう。そう思ったのだが。
「アンジュ嬢、ちょっとだけ話がしたいのだけれど、いいかな?」
急に私の馬車に乗り込んできたのは、ダルク様だ。一体どうしたのかしら?
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