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第50話:私はどうしたらいいのでしょうか【後編】
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「ダルク様、一体どうしたのですか?あなた様は怪我をしているのです。軽傷だといっても、早くお休みになられた方がよろしいかと」
とにかくダルク様には早く休んで欲しいのだ。
「そうだね、分かっているよ。でも…その…さっき処置してもらっている時に、君とデイビッド殿の会話が聞こえてきて」
何と!あの会話を聞かれていただなんて、恥ずかしすぎるわ。
「あの、ダルク様、あの会話は…」
「デイビッド殿の言う通り、私はアンジュ嬢が好きで、君の事を諦めきれなくてこの国にやって来た。と言っても、私は弱く、結局は王太子殿下に背中を押される形でこの国にやって来たのだが…」
「ダルク様…」
「私は子供の頃から、何に関しても無関心だった。そんな中、唯一興味を持てたのがイカロス殿下だった。だからこそ、彼に私の人生のすべてを捧げよう、そう決めていた。そんな中、君が現れた。どんなに皆に無視されても、健気に挨拶をし続ける君が気になって仕方がなかった。でも…私は君を助ける事が出来なかった。今でもその事を後悔している。こんな私が、君を好きになる権利なんてあるのだろうか?そう考えたこともあった。それでもやっぱり私は、アンジュ嬢とずっと一緒にいたい。出来れば君の隣で生きて行けたらと思っている」
そう言うと、ダルク様が私を真っすぐ見つめた。
「アンジュ嬢、君が私に“笑った顔の方が素敵です”と言ってくれたから、私は今、笑う事が出来ている。君は私にとって、太陽の様な存在だ。私はアンジュ嬢を愛している。出来れば私が帰国するタイミングで、一緒にミラージュ王国に来てくれたらと考えているのだよ。ただ…デイビッド殿の事もあるし、今すぐ返事をして欲しいとは考えていない。でも…どうか私と歩む未来も、考えてくれると嬉しい」
「あの…私は…」
「馬車に乗り込んでしまって済まなかったね。私が帰国するまでまだ時間はある。どうかゆっくり考えて欲しい。私も君にもっと私の事を好きになってもらえる様に、残された時間精一杯努力するつもりだ。それじゃあアンジュ嬢、また明日」
そう言うと、ダルク様が馬車から降りて行った。そんなダルク様を、見つめる。
ダルク様が私を…
薄々は感じていた、ダルク様の気持ち。でも、こんな風に面と向かって言われるだなんて。それもダルク様が帰国する時には、一緒にミラージュ王国に来て欲しいと言っていた。
まさかダルク様から、プロポーズされるだなんて。
それにデイビッド様の事もあるし…
正直言うと、まだまだ先の未来の事の様に思っていた。でも…よく考えてみれば、卒業まで後4ヶ月たらずだ。あっという間に、ダルク様も帰国してしまう。そう、私に与えられた時間は、後4ヶ月しかないのだ。
ダルク様はとても素敵な令息だ。一緒にいて楽しいし、私もダルク様の事が好きだ。でも、デイビッド様の事もある。
今まで何となく現実から逃げていた部分もあった、このまま何となくうやむやに…とまでは考えてはいなかったが、それでも実感がわかない部分もあった。
ただ、あれだけはっきりと2人から言われたのだ。もう私も、逃げる訳にはいかない。2人が真剣に私の事を思ってくれている以上、私も2人の気持ちに真剣に答えないといけない。
でも…
私にとっては、2人とも大切な人だ。確かにデイビッド様には色々と傷つけられた事もあったが、それでも私を思っていてくれた事を、最近少しずつ実感し始めている。なんだか大好きだった時のデイビッド様に戻った様な気がして、心がざわつくのだ。
それにダルク様だって、慣れないミラージュ王国の生活の中、スカーレット様たちと一緒に支えてくれた大切な人。私が怪我をしたときに病院に連れて行ってくれたり、街に買い物に行って靴擦れを起こした時も、すぐに気が付いて運んでくれた。
ダルク様と一緒にいると、私も楽しいしなんだか心が穏やかになれる。
ミラージュ王国には、スカーレット様もいる。もし私がミラージュ王国で暮らすことを選べば、スカーレット様も喜んでくれるだろう。でも、カリオス王国にも大切な友人がいるし、家族だっている。
ワァァァァ!!!
考えれば考えるほど、頭が混乱してきた。私はどうすればいいのだろうか…
「お嬢様、お屋敷に着きましたよ。なんだか顔色があまり宜しくない様ですが、大丈夫ですか?」
心配そうに御者が声を掛けてきてくれた。いつの間にか屋敷に着いていた様だ。
「ありがとう、大丈夫よ。もう着いたのね」
急いで馬車から降り、そのまま自室へと向かった。
「お嬢様、随分早かったですね。どうかされたのですか?」
心配そうな顔のカリアが話しかけて来た。
「実は今日、色々とあって…」
カリアに今日の出来事を話した。
「という訳で、少し疲れたから湯あみをして休むわ。手伝ってくれるかしら?」
「分かりましたわ。ただ、この件、私は至急旦那様に報告をして参りますので、他の者に湯あみを手伝わせます。それにしても、とんだ不届き者がいた様ですわね。お嬢様に向かって矢を放つだなんて」
「カリア、さっきも話した通り、たまたま矢が飛んできたのよ。ただ、そのせいでダルク様が…」
「ダルク様は本当にお優しい方ですわね。身をもってお嬢様をお守りするだなんて。お嬢様、ミラージュ王国に嫁ぐことになったら、私も付いて行きますので」
嬉しそうにそんな話をしているカリア。ミラージュ王国に嫁ぐ、その言葉に反応してしまい、つい俯いてしまう。
もう、カリアったら。とにかく今日は、色々ありすぎて頭がパンクしそうだ。少し休もう。
とにかくダルク様には早く休んで欲しいのだ。
「そうだね、分かっているよ。でも…その…さっき処置してもらっている時に、君とデイビッド殿の会話が聞こえてきて」
何と!あの会話を聞かれていただなんて、恥ずかしすぎるわ。
「あの、ダルク様、あの会話は…」
「デイビッド殿の言う通り、私はアンジュ嬢が好きで、君の事を諦めきれなくてこの国にやって来た。と言っても、私は弱く、結局は王太子殿下に背中を押される形でこの国にやって来たのだが…」
「ダルク様…」
「私は子供の頃から、何に関しても無関心だった。そんな中、唯一興味を持てたのがイカロス殿下だった。だからこそ、彼に私の人生のすべてを捧げよう、そう決めていた。そんな中、君が現れた。どんなに皆に無視されても、健気に挨拶をし続ける君が気になって仕方がなかった。でも…私は君を助ける事が出来なかった。今でもその事を後悔している。こんな私が、君を好きになる権利なんてあるのだろうか?そう考えたこともあった。それでもやっぱり私は、アンジュ嬢とずっと一緒にいたい。出来れば君の隣で生きて行けたらと思っている」
そう言うと、ダルク様が私を真っすぐ見つめた。
「アンジュ嬢、君が私に“笑った顔の方が素敵です”と言ってくれたから、私は今、笑う事が出来ている。君は私にとって、太陽の様な存在だ。私はアンジュ嬢を愛している。出来れば私が帰国するタイミングで、一緒にミラージュ王国に来てくれたらと考えているのだよ。ただ…デイビッド殿の事もあるし、今すぐ返事をして欲しいとは考えていない。でも…どうか私と歩む未来も、考えてくれると嬉しい」
「あの…私は…」
「馬車に乗り込んでしまって済まなかったね。私が帰国するまでまだ時間はある。どうかゆっくり考えて欲しい。私も君にもっと私の事を好きになってもらえる様に、残された時間精一杯努力するつもりだ。それじゃあアンジュ嬢、また明日」
そう言うと、ダルク様が馬車から降りて行った。そんなダルク様を、見つめる。
ダルク様が私を…
薄々は感じていた、ダルク様の気持ち。でも、こんな風に面と向かって言われるだなんて。それもダルク様が帰国する時には、一緒にミラージュ王国に来て欲しいと言っていた。
まさかダルク様から、プロポーズされるだなんて。
それにデイビッド様の事もあるし…
正直言うと、まだまだ先の未来の事の様に思っていた。でも…よく考えてみれば、卒業まで後4ヶ月たらずだ。あっという間に、ダルク様も帰国してしまう。そう、私に与えられた時間は、後4ヶ月しかないのだ。
ダルク様はとても素敵な令息だ。一緒にいて楽しいし、私もダルク様の事が好きだ。でも、デイビッド様の事もある。
今まで何となく現実から逃げていた部分もあった、このまま何となくうやむやに…とまでは考えてはいなかったが、それでも実感がわかない部分もあった。
ただ、あれだけはっきりと2人から言われたのだ。もう私も、逃げる訳にはいかない。2人が真剣に私の事を思ってくれている以上、私も2人の気持ちに真剣に答えないといけない。
でも…
私にとっては、2人とも大切な人だ。確かにデイビッド様には色々と傷つけられた事もあったが、それでも私を思っていてくれた事を、最近少しずつ実感し始めている。なんだか大好きだった時のデイビッド様に戻った様な気がして、心がざわつくのだ。
それにダルク様だって、慣れないミラージュ王国の生活の中、スカーレット様たちと一緒に支えてくれた大切な人。私が怪我をしたときに病院に連れて行ってくれたり、街に買い物に行って靴擦れを起こした時も、すぐに気が付いて運んでくれた。
ダルク様と一緒にいると、私も楽しいしなんだか心が穏やかになれる。
ミラージュ王国には、スカーレット様もいる。もし私がミラージュ王国で暮らすことを選べば、スカーレット様も喜んでくれるだろう。でも、カリオス王国にも大切な友人がいるし、家族だっている。
ワァァァァ!!!
考えれば考えるほど、頭が混乱してきた。私はどうすればいいのだろうか…
「お嬢様、お屋敷に着きましたよ。なんだか顔色があまり宜しくない様ですが、大丈夫ですか?」
心配そうに御者が声を掛けてきてくれた。いつの間にか屋敷に着いていた様だ。
「ありがとう、大丈夫よ。もう着いたのね」
急いで馬車から降り、そのまま自室へと向かった。
「お嬢様、随分早かったですね。どうかされたのですか?」
心配そうな顔のカリアが話しかけて来た。
「実は今日、色々とあって…」
カリアに今日の出来事を話した。
「という訳で、少し疲れたから湯あみをして休むわ。手伝ってくれるかしら?」
「分かりましたわ。ただ、この件、私は至急旦那様に報告をして参りますので、他の者に湯あみを手伝わせます。それにしても、とんだ不届き者がいた様ですわね。お嬢様に向かって矢を放つだなんて」
「カリア、さっきも話した通り、たまたま矢が飛んできたのよ。ただ、そのせいでダルク様が…」
「ダルク様は本当にお優しい方ですわね。身をもってお嬢様をお守りするだなんて。お嬢様、ミラージュ王国に嫁ぐことになったら、私も付いて行きますので」
嬉しそうにそんな話をしているカリア。ミラージュ王国に嫁ぐ、その言葉に反応してしまい、つい俯いてしまう。
もう、カリアったら。とにかく今日は、色々ありすぎて頭がパンクしそうだ。少し休もう。
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