変わり者転生令嬢は国一番の美少年王子に溺愛される

Karamimi

文字の大きさ
26 / 51

第26話:リュカ様は可愛い人でした

しおりを挟む
リュカ様と一緒に、教室へと向かう。途中令嬢たちから鋭い視線を送られるのが気になるが、特に何かをしてくるわけではないため、そっとしておくことにした。

教室に入ると、いつも通り挨拶をする。

「おはようございます」

すると、一斉にこちらを向いたクラスメートたち。そして一斉に令嬢たちが駆け寄ってきた。

「リュカ殿下、聞きましたわ。スリーティス嬢と婚約したそうですね。スリーティス嬢、一体あなた、どんな手を使ったの?お優しいリュカ殿下の事だから、きっとこの女の申し出を断れなかったのでしょう」

なぜか私が無理やりリュカ様を婚約者にしたと思っている様だ。常識的に考えて、侯爵令嬢が無理やり第二王子と婚約なんて結べるはずがないのに…

「本当に図々しい女ね。そもそもリュカ殿下は、私と婚約する予定になっていたのよ。それなのに、横から奪い取るなんて」

えっ?そうだったの?

「何を言っているの。私と婚約する予定だったのよ。とにかく、今すぐ婚約を無効にして頂戴」

真っ赤な顔をして私に詰め寄る令嬢たち。何この子達…怖いんだけれど…

その時だった。

「いい加減にしてくれ!」

そう怒鳴ったのは、リュカ様だ。

「ぼ…僕はずっと、ジュリアが好きだったんだ…それなのに君たちは、いつもいつも僕に…まとわりついて…それでもやっと昨日、王家の権力を使ってジュリアと婚約できたのに…とにかく、ジュリアを傷つけないでくれ…そもそも僕は、君たちの様な…その…ぐいぐい来る令嬢は苦手なんだ!」

言葉に詰まりながらも、そう言ったリュカ様。

「リュカ殿下が、怒ったぞ…」

優しくて穏やかで、怒った顔なんて一度も見た事がないと言われていたリュカ様が怒ったのだ。皆かなりびっくりしている。

「とにかく、これ以上ジュリアに何かしたら、僕が許さないからな」

そう言うと、私の手を引き、そのまま教室を出たリュカ様。そして、人気のない校舎裏へとやって来た。

「ジュリア、君に嫌な思いをさせてしまって本当にすまない。僕が情けないばかりに…」

何度も頭を下げるリュカ様。

「何をおっしゃっているのですか?先ほど私を助けて下さったではありませんか。ありがとうございます」

あの時、声が震えていた。きっとかなり勇気がいったのだろう。それでも私の為に、令嬢たちにはっきりと言ってくれた事は、素直に嬉しい。

「ジュリアは優しいね。僕はね、子供の頃からずっと自分の意見を言うのが苦手だったんだ。イヤだなっと思っても、つい相手の顔色を見て笑顔を作ってしまう。僕は第二王子と言う身分と、無駄に整った顔のせいで、令嬢たちは僕が見つめただけで頬を赤らめ、すり寄って来た。僕を見た目でしか判断しない令嬢たちが、嫌でたまらなかったのに、何も言えなかった。さらに僕は、何かに熱中したり執着する事もなかった。何をしても、全く興味がわかないんだ。毎日退屈で、まるで人形の様だった…」

今まで下を向いていたリュカ様が、まっすぐ私の方を向き直した。

「そんな中、君に出会った。僕の顔を見ても頬を赤める事もなく、僕を1人の人間として接してくれる。怒ったり笑ったり泣いたり、コロコロと表情を変える君に、どんどん惹かれて行った。君と出会ってから、毎日が楽しくてたまらなかった。もっとジュリアの事が知りたい、一緒にいたい、そんな思いが僕の心を支配した。どうしても君が欲しくて、父上と母上に頼んだんだ。でも…」

「でも?」

「僕は君の気持ちを無視して婚約をした。それに僕は、まだまだ弱い。令嬢に酷い事を言われている君を、すぐに助けられなかった。それでも、僕は君が好きなんだ。太陽の様にキラキラ輝く君の隣にこれからも立てるよう、もっともっと努力する。だから、僕の側にいてくれるかい?」

不安そうな顔で私を見つめるリュカ様。まさかここまで大切に思ってくれているなんて、思わなかった。正直、リュカ様が好きかどうかと聞かれると、まだ分からない。それでも、私はリュカ様の婚約者だ。それに、自分の気持ちを一生懸命話してくれたリュカ様が、なんだか愛おしくてかわいく思えてしまう。

「リュカ様、私たちはもう婚約をしたのですよ。正直、まだ自分の気持ちがよくわかりません。でも、これから私たちのペースで、ともに歩んでいけたらと思っております。あなた様もご存じの通り、私は変り者です。こんな私ですが、どうぞよろしくお願いいたします」

ぺこりとリュカ様に向かって頭を下げた。すると

「ありがとう、ジュリア。僕も兄上みたいに婚約者を守れる様、頑張るよ」

そう言ってギューギュー抱きしめてくれた。ん?兄上みたいに?

「あの、リュカ様。王太子殿下みたいにならなくても大丈夫ですわ。むしろ、リュカ様はリュカ様のままで大丈夫です」

あんなに嫉妬深くて自己中な男を目指す必要は無い!そもそも女友達にすら嫉妬し、権力を使って私とマリアナの仲を引き裂こうとしたのですもの。思い出しても腹が立つ!

「僕は僕のままであいいか…そう言ってくれると、嬉しいよ。ジュリア、大好きだよ」

そのまま頭を押さえられ、一気に唇を塞がれた。ちょっと、キャパオーバーよ!だから私は、男性とお付き合いしたことがないんだってば!

でも…なぜだろう、嫌悪感は一切感じない。それどころか…

結局拒むことが出来ず、その後も長い口づけは続いたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

氷の騎士と陽だまりの薬師令嬢 ~呪われた最強騎士様を、没落貴族の私がこっそり全力で癒します!~

放浪人
恋愛
薬師として細々と暮らす没落貴族の令嬢リリア。ある夜、彼女は森で深手を負い倒れていた騎士団副団長アレクシスを偶然助ける。彼は「氷の騎士」と噂されるほど冷徹で近寄りがたい男だったが、リリアの作る薬とささやかな治癒魔法だけが、彼を蝕む古傷の痛みを和らげることができた。 「……お前の薬だけが、頼りだ」 秘密の治療を続けるうち、リリアはアレクシスの不器用な優しさや孤独に触れ、次第に惹かれていく。しかし、彼の立場を狙う政敵や、リリアの才能を妬む者の妨害が二人を襲う。身分違いの恋、迫りくる危機。リリアは愛する人を守るため、薬師としての知識と勇気を武器に立ち向かうことを決意する。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

処理中です...