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第34話:楽しみにしていた野外学習です
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平和な日々が戻って早1ヶ月、今日は待ちに待った野外学習当日だ。貴族学院では年に1回、王都の外れにある森に全校生徒全員で向かう。
王都の都会で育った私たちが、自然に触れ合える大切な授業なのだ。ただ、自然豊かな森なので、奥の方にはクマもいるとの事。
そうは言っても、私たちが行く場所は安全が確保されている為、毎年楽しみにしているのだ。去年はウサギやリスを見る事が出来た。今年はどんな動物たちに出会えるかな?
「お嬢様、カルロス様がいらっしゃっております」
「分かったわ、すぐに行くわね」
今日もカルロス様が家まで迎えに来てくだっさったので、2人で馬車に乗り込む。
「ルミタン、おはよう。会いたかったよ」
馬車に乗り込んだ途端、私を抱きしめるカルロス様。相変わらずだ。
「今日は野外学習だね。あの森には大きなクマがいるから、十分気を付けるんだよ。万が一ルミタンが襲われたら大変だから、ほら。腰に短刀を準備してきたんだ」
確かにカルロス様の腰には短刀が。
「クマは森の奥にいるのでしょう?そんなに心配しなくても大丈夫ですわ。それにそんな短い短刀でクマが倒せるのですか?」
さすがのカルロス様でも、その短刀では無理だろう。
「真剣はさすがに持ってこられないからね。持っていないよりかはマシだろう。と言いたいところなのだが、実はドリトル殿に持たされたんだよ。“森は部外者も入れる、何があるか分からないから短刀だけでも持って行け”てね…」
「まあ、兄が申し訳ございません」
お兄様ったら、いくら野外と言っても貴族学院が安全な場所という事くらい分かっているだろうに…
「それだけ君の事を心配しているという事なのだろう。それに俺に短刀を託してくれたという事は、俺にルミタンを守れと言ってくれたという事だろう?それがなんだか嬉しいんだよ」
そう言ってほほ笑むカルロス様。もう、カルロス様ったら…
なんだか心が温かい気持ちになった。
「さあ、学院に着いたよ。行こうか?いいかい、森についたらすぐに迎えに行くから、待っていてくれよ。くれぐれも勝手に行動しないでくれ。分かったね。それから、通信機は持っているね?」
「ええ、分かっておりますわ。それに通信機もありますし」
「それならよかった。クソ、どうしてルミタンと同じ車両じゃないんだ!やっぱりルミタンが心配だ…」
何やらブツブツと呟きだしたカルロス様、とにかく早く行った方がよさそうね。
「カルロス様、早く参りましょう」
「待って、ルミタン」
立ち上がり馬車から降りようとすると、カルロス様も私の手を握り急いで降りて来た。生憎今日は曇り空だ。雨が降らないといいのだけれど…
学院に着くとまずはクラスごとに馬車に乗り込み、駅を目指す。そして駅からは汽車に乗って森へと向かうのだ。汽車なんて普段のらないから、これまた大興奮。友人たちと一緒におしゃべりしたりして過ごす。
ちなみにたくさんの貴族が乗った汽車という事で、当日は貸し切り。さらに騎士団が護衛するという徹底ぶりだ。
汽車を降りると、再び馬車に乗り込み森へと向かう。歩いて森を登ってもいいのだが、何分貴族(特に令嬢)はあまり体力がないため、馬車で近くまで行くのだ。
「皆さん、これから自由行動です。いいですか?あの奥に見える岩よりも奥にはいかない様にしてください」
先生から簡単な説明があり、自由行動となった。
「ルミタン、お待たせ。さあ、行こうか」
嬉しそうに私の元へとやって来たカルロス様と一緒に、森の周りを散策する。
「カルロス様、見て下さい。可愛らしい野ウサギがこちらを見ていますわ。あっ、でも逃げて行ってしまいましたね。あら?あっちには綺麗な鳥がいますわ。あら?あの可愛らしい動物は…」
「あれはイタチだね。それからあそこには狸もいるよ。この森は本当にたくさんの動物たちがいるね」
イタチという動物か。それに狸も。なんだか可愛らしい動物ばかりね。
「ルミタン、あっちに珍しい花が咲いているから見に行こう」
カルロス様に連れられ、少し奥の方に行くと、沢山の花々が咲いているお花畑に来た。何人かの生徒たちも来ている。
「こんな綺麗なお花畑があっただなんて、知りませんでしたわ。なんて綺麗なのかしら?それに、いい匂いもするし」
「ここは去年俺たちが見つけた場所だよ。ルミタンに見せたらきっと喜ぶと思ってね。今日君をこの場所に連れてこられて本当によかった」
そう言うと、カルロス様が嬉しそうに笑った。彼はいつも私の事を考えてくれている。そう、本当にいつも…
最初はそれがちょっと嫌だったのだが、今は素直に嬉しい。
「ありがとうございます、カルロス様。せっかくなので花冠を作りましょう」
その場にしゃがみ込み、花冠を作りカルロス様の頭に乗せた。よく似合っている。
「ルミタンが作ってくれた花冠…家の家宝として大切に飾っておくよ」
「また大げさな…すぐに枯れてしまいますわ」
「確かに枯れてしまうな。それなら特殊な液に付けて、枯れないようにしないと」
そう言うと、大切そうに花冠をしまうカルロス様。その姿がなんだか可笑しくて、つい笑みがこぼれる。
今日カルロス様と野外学習に来られて、本当によかったわ。
王都の都会で育った私たちが、自然に触れ合える大切な授業なのだ。ただ、自然豊かな森なので、奥の方にはクマもいるとの事。
そうは言っても、私たちが行く場所は安全が確保されている為、毎年楽しみにしているのだ。去年はウサギやリスを見る事が出来た。今年はどんな動物たちに出会えるかな?
「お嬢様、カルロス様がいらっしゃっております」
「分かったわ、すぐに行くわね」
今日もカルロス様が家まで迎えに来てくだっさったので、2人で馬車に乗り込む。
「ルミタン、おはよう。会いたかったよ」
馬車に乗り込んだ途端、私を抱きしめるカルロス様。相変わらずだ。
「今日は野外学習だね。あの森には大きなクマがいるから、十分気を付けるんだよ。万が一ルミタンが襲われたら大変だから、ほら。腰に短刀を準備してきたんだ」
確かにカルロス様の腰には短刀が。
「クマは森の奥にいるのでしょう?そんなに心配しなくても大丈夫ですわ。それにそんな短い短刀でクマが倒せるのですか?」
さすがのカルロス様でも、その短刀では無理だろう。
「真剣はさすがに持ってこられないからね。持っていないよりかはマシだろう。と言いたいところなのだが、実はドリトル殿に持たされたんだよ。“森は部外者も入れる、何があるか分からないから短刀だけでも持って行け”てね…」
「まあ、兄が申し訳ございません」
お兄様ったら、いくら野外と言っても貴族学院が安全な場所という事くらい分かっているだろうに…
「それだけ君の事を心配しているという事なのだろう。それに俺に短刀を託してくれたという事は、俺にルミタンを守れと言ってくれたという事だろう?それがなんだか嬉しいんだよ」
そう言ってほほ笑むカルロス様。もう、カルロス様ったら…
なんだか心が温かい気持ちになった。
「さあ、学院に着いたよ。行こうか?いいかい、森についたらすぐに迎えに行くから、待っていてくれよ。くれぐれも勝手に行動しないでくれ。分かったね。それから、通信機は持っているね?」
「ええ、分かっておりますわ。それに通信機もありますし」
「それならよかった。クソ、どうしてルミタンと同じ車両じゃないんだ!やっぱりルミタンが心配だ…」
何やらブツブツと呟きだしたカルロス様、とにかく早く行った方がよさそうね。
「カルロス様、早く参りましょう」
「待って、ルミタン」
立ち上がり馬車から降りようとすると、カルロス様も私の手を握り急いで降りて来た。生憎今日は曇り空だ。雨が降らないといいのだけれど…
学院に着くとまずはクラスごとに馬車に乗り込み、駅を目指す。そして駅からは汽車に乗って森へと向かうのだ。汽車なんて普段のらないから、これまた大興奮。友人たちと一緒におしゃべりしたりして過ごす。
ちなみにたくさんの貴族が乗った汽車という事で、当日は貸し切り。さらに騎士団が護衛するという徹底ぶりだ。
汽車を降りると、再び馬車に乗り込み森へと向かう。歩いて森を登ってもいいのだが、何分貴族(特に令嬢)はあまり体力がないため、馬車で近くまで行くのだ。
「皆さん、これから自由行動です。いいですか?あの奥に見える岩よりも奥にはいかない様にしてください」
先生から簡単な説明があり、自由行動となった。
「ルミタン、お待たせ。さあ、行こうか」
嬉しそうに私の元へとやって来たカルロス様と一緒に、森の周りを散策する。
「カルロス様、見て下さい。可愛らしい野ウサギがこちらを見ていますわ。あっ、でも逃げて行ってしまいましたね。あら?あっちには綺麗な鳥がいますわ。あら?あの可愛らしい動物は…」
「あれはイタチだね。それからあそこには狸もいるよ。この森は本当にたくさんの動物たちがいるね」
イタチという動物か。それに狸も。なんだか可愛らしい動物ばかりね。
「ルミタン、あっちに珍しい花が咲いているから見に行こう」
カルロス様に連れられ、少し奥の方に行くと、沢山の花々が咲いているお花畑に来た。何人かの生徒たちも来ている。
「こんな綺麗なお花畑があっただなんて、知りませんでしたわ。なんて綺麗なのかしら?それに、いい匂いもするし」
「ここは去年俺たちが見つけた場所だよ。ルミタンに見せたらきっと喜ぶと思ってね。今日君をこの場所に連れてこられて本当によかった」
そう言うと、カルロス様が嬉しそうに笑った。彼はいつも私の事を考えてくれている。そう、本当にいつも…
最初はそれがちょっと嫌だったのだが、今は素直に嬉しい。
「ありがとうございます、カルロス様。せっかくなので花冠を作りましょう」
その場にしゃがみ込み、花冠を作りカルロス様の頭に乗せた。よく似合っている。
「ルミタンが作ってくれた花冠…家の家宝として大切に飾っておくよ」
「また大げさな…すぐに枯れてしまいますわ」
「確かに枯れてしまうな。それなら特殊な液に付けて、枯れないようにしないと」
そう言うと、大切そうに花冠をしまうカルロス様。その姿がなんだか可笑しくて、つい笑みがこぼれる。
今日カルロス様と野外学習に来られて、本当によかったわ。
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