次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi

文字の大きさ
41 / 66

第41話:事件の真相と今後について

しおりを挟む
「その話なのだが、少し待ってくれるかい?もうすぐ公爵たちもいらっしゃるだろうから、皆がそろってから話をしよう。ほら、いらしたみたいだよ」

入り口を見ると、カルロス様のご両親が立っていた。後ろには男性使用人の姿も。

「カリオスティーノ侯爵、それに元夫人も。待たせてしまってすまなかったね。カルロス、ガードにお前の世話を頼もうと思って連れて来たよ」

後ろで男性使用人が控えている。確かあの人、カルロス様の専属執事だったわね。

「父上、そんな事はいいから、あの女…アナリス殿下はどうなったのですか?もちろん、牢にぶち込んだのでしょうね。いくら何でも、侯爵令嬢を崖から突き落とすだなんて、とんでもない話しだ。今回は貴族学院主催の野外学習で起こった事件です。さすがにもみ消すことは無理でしょう」

「ああ…確かにもみ消すのは無理だろうな…実際アナリス殿下が連行されて行くところ、怪我をしたルミナス嬢やカルロスが運ばれている現場を皆見ている。それに騒ぎを聞きつけ、現場にやって来ていた生徒たちも大勢いた。今回の件は、既に貴族中に広まっているよ…」

はぁ~っとため息を付くクラッセル公爵。

「昨日俺とクラッセル公爵とで、王宮に改めて抗議に行ったよ。家の護衛が撮影していた映像も実際に見せた。その際、何人かの貴族や騎士団長もいたから、一緒に見てもらったよ。さすがに皆、絶句していた。とにかく今回の件は、我がカリオスティーノ侯爵家は絶対に許すつもりはない、徹底的に抗議する旨を伝えたよ」

「ドリトル殿の堂々たる姿は、お父上でもある元騎士団長殿を思い起こすほどの気迫だったよ。やはりあなたは、元騎士団長の息子なのだね。いやぁ、本当にかっこよかった」

「私なんてまだまだですよ。クラッセル公爵こそ冷静かつ鋭い指摘、素晴らしかったです。ただ今回の件で、アナリス殿下の輿入れが中止になるかもしれない」

そう言って苦笑いをしているお兄様。輿入れが中止になるとは、一体どういう事なのかしら?

「それはそうでしょう。さすがに犯罪者を隣国の王太子殿下に嫁がせる事なんて出来ないでしょう。アナリス殿下には、この国の法律にのっとり、厳正に処罰をしてもらわないと!本当なら俺の手で八つ裂きにしてやりたいところだが、あんな女でも一応は王女だからな…クソ、思い出しただけで腹が立つ…」

ちょっとカルロス様、最後の方、かなり恐ろしい事を口走っておりましたわよ!そう言いたいが、殺気立っているカルロス様にそんな事は言えない。

「そうだな…今回の件は黙っていても隣国に伝わるだろうし…百歩譲って隣国の王太子がそれでも嫁いできて欲しいと言ったとしても、きっと隣国の陛下や王妃殿下が許さないだろうし。それにしても、厄介な問題を起こしてくれたものだよ…まさか魔物まで捕まえてくるだなんて…」

再び公爵がため息を付いている。

「本当にとんでもない姫君だ。騎士団長の話では、今団員たちがサンダードラゴンの子供を返しに行っているが、既に子供を奪われた親が暴れているかもしれないと不安がっていたよ。よりによって魔物をこっち側から刺激するだなんて…近々魔物との戦いも視野に入れないといけない」

魔物との戦い…
その言葉に胸が突き刺さる。私の大切なお父様を奪った魔物たち。そんな危険な戦いは、もう二度としてほしくはない…

「ルミタン、顔色が悪いよ。大丈夫かい?それよりも父上、アナリス殿下はどうやって魔物を生け捕りにしたのですか?さすがにあの女が魔物を生け捕りにできるなんて思えないのですが…」

「その件なのだが、どうやら王太子殿下の目を盗んでこっそりと闇の組織と取引をしていた様なんだ。その闇の組織が今回魔物の子供を生け捕りにして来たらしい…そして当日、まずは組織の人間が生け捕りにしておいたサンダードラゴンの子供を逃がして騒ぎを起こしたらしい。そしてカルロスがルミナス嬢から離れたタイミングで、アナリス殿下がルミナス嬢に近づき、崖から突き落としたという訳だ」

「闇の組織だって?あの女、そんな組織と関係を持っていたのか…」

「ただ今回の件で、アナリス殿下が全て吐いたよ。そのお陰で、闇の組織は全て捕まえられたとの事だ。どうやらアナリス殿下は髪の色を変える特殊な液と、声を変える装置を使って、ルミナス嬢に近づいたらしい。それらも闇の組織が準備した様だ。本当に変なところで悪知恵が働くのだから…」

だから声が違ったのね。髪の色も水色だったし。全てが一致したわ。

「ただ、殿下の誤算は、ルミナス嬢に護衛が付いていた事だな。現行犯で捕まった事で、アナリス殿下も言い逃れが出来ないだろう。さすがに今回の件を重く見た王太子殿下によって今、アナリス殿下は王宮の北にある塔に幽閉されている」

「父上、北の塔とはどういう事ですか?あの女はあれほどまでに重罪を犯したのに、地下牢に入れないだなんて!いくら何でも甘すぎる」

そう言って怒っているカルロス様。確か北の塔は、王族がちょっとした悪さをしたときに反省を促すために入れられる塔と聞いたことがある。ちょっとした悪さ…ではないわよね…

「落ち着け、カルロス。とにかくこれから色々と調べないといけないし、魔物の件もあるし、やらなければいけない事が山積みなんだよ。さすがに今回は、アナリス殿下を正式に裁判にかける事になるだろうし。裁かれるまでには、少し時間が掛かりそうだ」

「そんな悠長な事を!」

「とにかく王族を裁くのは大変なんだよ。幸い王太子殿下は今回の件で完全にご立腹だから、アナリス殿下もただでは済まされないだろう。君たちはとにかく、怪我を治すことに専念してくれ」

そう言ってカルロス様の肩を叩く公爵様に対し、悔しそうにカルロス様は唇を噛んでいる。

私には難しい事は分からない。ただ…どうか魔物たちが暴れ出さない事だけを願うまでだ。

※次回カルロス視点です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の妾腹の子ですが、義母となった公爵夫人が優しすぎます!

ましゅぺちーの
恋愛
リデルはヴォルシュタイン王国の名門貴族ベルクォーツ公爵の血を引いている。 しかし彼女は正妻の子ではなく愛人の子だった。 父は自分に無関心で母は父の寵愛を失ったことで荒れていた。 そんな中、母が亡くなりリデルは父公爵に引き取られ本邸へと行くことになる そこで出会ったのが父公爵の正妻であり、義母となった公爵夫人シルフィーラだった。 彼女は愛人の子だというのにリデルを冷遇することなく、母の愛というものを教えてくれた。 リデルは虐げられているシルフィーラを守り抜き、幸せにすることを決意する。 しかし本邸にはリデルの他にも父公爵の愛人の子がいて――? 「愛するお義母様を幸せにします!」 愛する義母を守るために奮闘するリデル。そうしているうちに腹違いの兄弟たちの、公爵の愛人だった実母の、そして父公爵の知られざる秘密が次々と明らかになって――!? ヒロインが愛する義母のために強く逞しい女となり、結果的には皆に愛されるようになる物語です! 完結まで執筆済みです! 小説家になろう様にも投稿しています。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!

六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。 家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能! 「ここなら、自由に生きられるかもしれない」 活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。 「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」

愛人の子を寵愛する旦那様へ、多分その子貴方の子どもじゃありません。

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵家の令嬢だったシアには結婚して七年目になる夫がいる。 夫との間には娘が一人おり、傍から見れば幸せな家庭のように思えた。 が、しかし。 実際には彼女の夫である公爵は元メイドである愛人宅から帰らずシアを蔑ろにしていた。 彼女が頼れるのは実家と公爵邸にいる優しい使用人たちだけ。 ずっと耐えてきたシアだったが、ある日夫に娘の悪口を言われたことでとうとう堪忍袋の緒が切れて……! ついに虐げられたお飾りの妻による復讐が始まる―― 夫に報復をするために動く最中、愛人のまさかの事実が次々と判明して…!?

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

ただの新米騎士なのに、竜王陛下から妃として所望されています

柳葉うら
恋愛
北の砦で新米騎士をしているウェンディの相棒は美しい雄の黒竜のオブシディアン。 領主のアデルバートから譲り受けたその竜はウェンディを主人として認めておらず、背中に乗せてくれない。 しかしある日、砦に現れた刺客からオブシディアンを守ったウェンディは、武器に使われていた毒で生死を彷徨う。 幸にも目覚めたウェンディの前に現れたのは――竜王を名乗る美丈夫だった。 「命をかけ、勇気を振り絞って助けてくれたあなたを妃として迎える」 「お、畏れ多いので結構です!」 「それではあなたの忠実なしもべとして仕えよう」 「もっと重い提案がきた?!」 果たしてウェンディは竜王の求婚を断れるだろうか(※断れません。溺愛されて押されます)。 さくっとお読みいただけますと嬉しいです。

処理中です...