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第47話:魔物たちが動き出した~カルロス視点~
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覗き窓から俺たちが覗いている事に気がつたアナリス殿下が、こちらにやって来たのだ。そして何を思ったのか、覗き窓をガンガン叩いている。狭い部屋にずっと閉じ込められているせいなのか?目はうつろで正直見ていて恐怖を感じる。
あまりにも強く叩くため、手から血が出ている。こいつ、狂っているのか?
「止めろ、アナリス!とにかく、僕と護衛が中に入ってアナリスを止めてくる。カルロス殿は、外に出ていてくれないかい?君を見ると、さらに暴れるかもしれない」
「分かりました」
一旦父上と一緒に塔の外に出る。
「アナリス殿下のあの目…早く裁判にかけて裁かないと、何をやらかすか分からないな…」
父上の言う通り、あの常軌を逸したあの目、きっとあの女を野放しして置いたら、何かをしでかるだろう。
「父上、これ以上悠長な事をしている場合ではありません。急いで事を進めましょう」
「そうだな…」
王宮を後にし、俺はそのままルミタンの元へと向かう。
「カルロス様、浮かない顔をしてどうしたのですか?まさか魔物が…」
不安そうな顔をして問いかけてくるルミタン。そんな彼女をギュッと抱きしめた。
「魔物はまだ暴れ出してはいないよ。ちょっと今日、王宮に行って来てなんだか疲れてしまって」
「王宮にですか?」
「ああ、相変わらず全く話にならない陛下に変わって、王太子殿下が対応してくれたよ。近々王位も王太子殿下に移る。そうなれば、アナリス殿下の裁判も早まるだろう」
「アナリス殿下…」
彼女の名前を出した途端、カタカタとルミタンが震えだしたのだ。あんなにも怖い思いをしたのだ。無理もない。ルミタンをギュッと抱きしめる。
「すまない、怖い名前を出してしまったね。でもあの女は今、狭い北の塔で厳重に閉じ込められているから大丈夫だ。窓もないから、窓から強引に外に出る事も出来ない。だからもう、君があの女に会う事はないから安心して欲しい」
「そうなのですね…よかった」
ポツリとルミタンが呟く。彼女の為にも、早くあの女を始末しないと!
王太子殿下と話をしてから2週間後、やっと貴族会議が開かれた。その場で父上とドリトルは、今までの陛下の対応に対する不満と、王位を王太子殿下に移す様迫った。さらに他の貴族たちからも、次々と陛下に対する不満が飛ぶ。
結局満場一致で王太子殿下が国王になる事が決まった。
それからさらに2週間後、異例の速さで王太子殿下の王位継承の儀式が行われた。それと同時に、元陛下と王妃殿下は、隠居という名目で、新国王によってこの国の一番南にある王族の別荘地へ移り住むことになった。
これ以上王家に口を出させないために、新国王なりに考えて出した結論だった様だ。最後まで
「アナリスが心配だ!王都に残る!」
と訴えていた元陛下だったが、新国王から
「今王族がどのような状況に置かれているか、まだ分からないのですか?これ以上我が儘を言うなら、私の手で…」
真剣な表情の陛下を見た元陛下も、さすがにこれ以上は何も言えないと言わんばかりに、元王妃殿下を連れて旅立って行ったとの事。
元国王たちが旅立ったと同じ頃、ついに恐れていた事が起こってしまった。そう、魔物たちが街を襲ったのだ。
すぐに騎士団長を中心とした部隊が、魔物討伐へと向かった。
「カルロス、お前は副騎士団長として、残った騎士団員たちをまとめてくれ。王都の騎士団の事は、お前に全て託したからな」
騎士団長にそう言われたのだ。既に来年には引退が決まっている騎士団長。まだお子さんも小さいと聞く。万が一騎士団長の身に何かあれば…第二のルミタンの様な子が生まれてしまう…
「騎士団長、やっぱり俺が行きます。あなた様はまだお子さんが小さいのですよ。もしもの事があったら…」
「それは未来ある、カルロスも同じ事だろう。それに…ルミナス嬢にまた同じ悲しみを味わわせたいのか?あの子は8歳で父親を…元騎士団長を失っているのだぞ。とにかく、今回は俺たちで何とか食い止めるから」
そう言って団長は、騎士団員たちを連れて旅立ってしまった。
クソ!俺は元騎士団長の様に、困っている市民たちを助けたいと思って騎士団に入ったのに…それなのに、一番民たちが困っている時に、何も出来ないのか…
そう思ったら悔しくて涙が込みあげてきた。
いいや…今は泣いている暇はない!今残っている騎士団員たちを束ねあげ、いつでも魔物討伐の応援に行けるように準備をしないと。
それに魔物が動き出し、既に甚大な被害が出ているとの報告がある今、あの女の極刑は免れないだろう。それに今回の原因を作ったアナリス殿下を、貴族はもちろん、平民たちも絶対に許さない。
案の定
「アナリス殿下の裁判はまだですか?魔物が街を襲う事態にまで発展したのですよ。騎士団員たちも今、魔物と必死に戦い、既に死者が出ているのです。一刻も早く、アナリス殿下の処罰を!」
貴族たちが大きく声を上げ始めたのだ。その声は次第に大きくなっていた。そしてついに裁判が開かれ、アナリス殿下は極刑に処せられることが決まったのだった。
※次回、アナリス視点です。
よろしくお願いします。
あまりにも強く叩くため、手から血が出ている。こいつ、狂っているのか?
「止めろ、アナリス!とにかく、僕と護衛が中に入ってアナリスを止めてくる。カルロス殿は、外に出ていてくれないかい?君を見ると、さらに暴れるかもしれない」
「分かりました」
一旦父上と一緒に塔の外に出る。
「アナリス殿下のあの目…早く裁判にかけて裁かないと、何をやらかすか分からないな…」
父上の言う通り、あの常軌を逸したあの目、きっとあの女を野放しして置いたら、何かをしでかるだろう。
「父上、これ以上悠長な事をしている場合ではありません。急いで事を進めましょう」
「そうだな…」
王宮を後にし、俺はそのままルミタンの元へと向かう。
「カルロス様、浮かない顔をしてどうしたのですか?まさか魔物が…」
不安そうな顔をして問いかけてくるルミタン。そんな彼女をギュッと抱きしめた。
「魔物はまだ暴れ出してはいないよ。ちょっと今日、王宮に行って来てなんだか疲れてしまって」
「王宮にですか?」
「ああ、相変わらず全く話にならない陛下に変わって、王太子殿下が対応してくれたよ。近々王位も王太子殿下に移る。そうなれば、アナリス殿下の裁判も早まるだろう」
「アナリス殿下…」
彼女の名前を出した途端、カタカタとルミタンが震えだしたのだ。あんなにも怖い思いをしたのだ。無理もない。ルミタンをギュッと抱きしめる。
「すまない、怖い名前を出してしまったね。でもあの女は今、狭い北の塔で厳重に閉じ込められているから大丈夫だ。窓もないから、窓から強引に外に出る事も出来ない。だからもう、君があの女に会う事はないから安心して欲しい」
「そうなのですね…よかった」
ポツリとルミタンが呟く。彼女の為にも、早くあの女を始末しないと!
王太子殿下と話をしてから2週間後、やっと貴族会議が開かれた。その場で父上とドリトルは、今までの陛下の対応に対する不満と、王位を王太子殿下に移す様迫った。さらに他の貴族たちからも、次々と陛下に対する不満が飛ぶ。
結局満場一致で王太子殿下が国王になる事が決まった。
それからさらに2週間後、異例の速さで王太子殿下の王位継承の儀式が行われた。それと同時に、元陛下と王妃殿下は、隠居という名目で、新国王によってこの国の一番南にある王族の別荘地へ移り住むことになった。
これ以上王家に口を出させないために、新国王なりに考えて出した結論だった様だ。最後まで
「アナリスが心配だ!王都に残る!」
と訴えていた元陛下だったが、新国王から
「今王族がどのような状況に置かれているか、まだ分からないのですか?これ以上我が儘を言うなら、私の手で…」
真剣な表情の陛下を見た元陛下も、さすがにこれ以上は何も言えないと言わんばかりに、元王妃殿下を連れて旅立って行ったとの事。
元国王たちが旅立ったと同じ頃、ついに恐れていた事が起こってしまった。そう、魔物たちが街を襲ったのだ。
すぐに騎士団長を中心とした部隊が、魔物討伐へと向かった。
「カルロス、お前は副騎士団長として、残った騎士団員たちをまとめてくれ。王都の騎士団の事は、お前に全て託したからな」
騎士団長にそう言われたのだ。既に来年には引退が決まっている騎士団長。まだお子さんも小さいと聞く。万が一騎士団長の身に何かあれば…第二のルミタンの様な子が生まれてしまう…
「騎士団長、やっぱり俺が行きます。あなた様はまだお子さんが小さいのですよ。もしもの事があったら…」
「それは未来ある、カルロスも同じ事だろう。それに…ルミナス嬢にまた同じ悲しみを味わわせたいのか?あの子は8歳で父親を…元騎士団長を失っているのだぞ。とにかく、今回は俺たちで何とか食い止めるから」
そう言って団長は、騎士団員たちを連れて旅立ってしまった。
クソ!俺は元騎士団長の様に、困っている市民たちを助けたいと思って騎士団に入ったのに…それなのに、一番民たちが困っている時に、何も出来ないのか…
そう思ったら悔しくて涙が込みあげてきた。
いいや…今は泣いている暇はない!今残っている騎士団員たちを束ねあげ、いつでも魔物討伐の応援に行けるように準備をしないと。
それに魔物が動き出し、既に甚大な被害が出ているとの報告がある今、あの女の極刑は免れないだろう。それに今回の原因を作ったアナリス殿下を、貴族はもちろん、平民たちも絶対に許さない。
案の定
「アナリス殿下の裁判はまだですか?魔物が街を襲う事態にまで発展したのですよ。騎士団員たちも今、魔物と必死に戦い、既に死者が出ているのです。一刻も早く、アナリス殿下の処罰を!」
貴族たちが大きく声を上げ始めたのだ。その声は次第に大きくなっていた。そしてついに裁判が開かれ、アナリス殿下は極刑に処せられることが決まったのだった。
※次回、アナリス視点です。
よろしくお願いします。
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