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第19話:家族の元に戻ります
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翌朝、いつもの様に食糧を持って部屋から出る。すると、心配そうに私の部屋の扉の前で立っているジルド殿下と目があった。
「ジャンティーヌ殿、おはよう。大丈夫かい?その…昨日は…」
何て行っていいのか分からないのだろう。言葉に詰まっている。ただ、私の事を心配してどうやら部屋の外で待っていてくれた様だ。
「おはよう、ジャンティーヌちゃん。ジルドったらよほどあなたの事が心配だったようで、昨日の夜からずっとあなたの部屋の近くで待っていたのよ」
「姉上、変な事を言わないでくれ。ジャンティーヌ殿、私は別に…」
「ジルド殿下、心配をおかけして申し訳ございません。まさか昨日の夜から待っていて下さっただなんて。もう大丈夫ですわ。さあ、朝食にしましょう。今日も沢山の食糧が、両親から届いておりますの。それから、食後少しだけお話ししたい事があるのですが、いいでしょうか?」
「大事な話とは、やはり両親の元に帰りたいと言う事かい?やっぱりこんな所には、いたくはないよな…」
ジルド殿下がものすごく悲しそうな顔で呟いた。
「あの、ジルド殿下、私は…」
「ジルド、そんな露骨に悲しそうな顔をするのは止めなさい。それにまだ、ジャンティーヌちゃんがご両親の元に帰ると決まった訳ではないでしょう?」
「別に私は、悲しそうな顔をしていません。姉上、変な事を言わないで下さい!とにかく、食事にしよう」
気を取り直して朝食を頂いたのだが、なぜかいつも以上に急いで食べるジルド殿下。もしかして、お腹が空いていたのかしら?
「ジルド殿下、そんなに急いで食べたら喉に詰まりますよ。お料理ならまだ沢山ありますから、どうかゆっくり食べて下さい」
もし足りなかったら両親に料理を追加で送ってもらう事も出来る。それにそんなに急いで食べなくても、誰も取らないと思うが…
「別に急いで食べていないよ。それよりも食事も終わったし。それで、ジャンティーヌ殿の話とは一体ないんだい?」
「ちょっとジルド、まだ私もジャンティーヌちゃんも食べ終わっていないわ」
すかさずシルビア殿下が、ジルド殿下に抗議の声を上げている。どうやらジルド殿下は、私の話が気になる様だ。
「シルビア殿下、いいのですよ。ジルド殿下、シルビア殿下、私は両親のいるラッセル王国に行こうと思っております」
「やっぱりジャンティーヌ殿は…いいや、これでいいんだ。ジャンティーヌ殿の事を考えたら、その方が幸せなんだ」
なにやら頭を抱えながら、ブツブツとジルド殿下が呟いている。
「ジャンティーヌちゃんは、ラッセル王国に行く事を決めたのね…分かったわ、あなたが決めた事ですもの。私もジルドも受け入れるわ。ジャンティーヌちゃん、今まで本当にありがとう。あなたがいてくれたお陰で、皆明るくなったわ。どうかこれからは、両親と平和に生きてね」
悲しそうにシルビア殿下が呟いた。
「ごめんなさい、言い方が悪かったですわね。私は一時的にラッセル王国に行くだけです。またこの地に戻ってきますわ。もちろん、私が留守にしている間も、食糧は毎日届けます」
「一時的とはどういうことだい?」
「私は今回の件で、自分の無力さを痛感したのです。口先ばかりで、ゴブリンの群れから、リマ達を救えなかった。その事がショックで…だから一度ラッセル王国に向かい、そこで魔力の勉強をしようと考えています。既に両親や伯母さまには話を通してあります。とりあえず3ヶ月を目標に勉強をして参りますわ」
そう、今の私では、魔女どころか魔物ですら危ういときがある。私はまだ、自分の魔力の力を、十分に出し切れていないのだ。だからこそ、魔力大国とも言われているラッセル王国で徹底的に魔力を磨き上げようと思っているのだ。
「ジャンティーヌ殿、わざわざラッセル王国に行かなくても、この地でも十分君は戦っていけるよ。現にこの3ヶ月、凄まじい速さで攻撃魔法を習得してきたではないか。だから…」
「いいえ、今のままでは、私は誰も救えません!私はやっぱり、この国の人を、ジルド殿下やシルビア殿下を救いたい。そして、お日様の光をいっぱいに浴びて欲しいのです。もう口先ばかりの私は、嫌なのです!」
必死にジルド殿下に向かって訴えた。私は真剣に、この国に平和を取り戻したいのだ。その為には、今のままでは絶対にいけない。
「ジャンティーヌちゃんの気持ちは分かったわ。私達にあなたのやる事を止める権利はない。ただ、あなたはこの国に縛られることはないのよ。ジャンティーヌちゃんの思うがまま、動いてくれたらいいから」
要するに、もしこの国に帰ってくるのが嫌になったら、無理をして帰って来る必要は無い。自分たちはたとえ私が帰ってこなくても、責めたりしないから。そう言いたいのだろう。相変わらず優しいわね。
「ありがとうございます、シルビア殿下。それでは、早速ラッセル王国に向かいますわ」
「えっ、もう向ってしまうのかい?」
「ええ、なるべく早い方がいいですから。そうそう、物資は私の部屋に描いてある魔法陣から届けるようにいたしますわ。もし私に何か用があるときは、魔法陣に手紙を入れて下さい。そうしましたら、時間を見てこちらから連絡を入れますから」
「分かったわ。それじゃあジャンティーヌちゃん、気を付けてね」
「シルビア殿下とジルド殿下も、どうかお元気で。必ず3ヶ月で戻ってきますから。どうか…どうかお命だけは大切にしてください!」
いつも死と隣合わせの生活をしている彼ら。どうか3ヶ月、持ちこたえて欲しい。
「ありがとう、ジャンティーヌ殿、どうか無理だけはしないで欲しい」
「ええ、大丈夫ですわ。それでは、行って参ります」
魔法陣に入り、呪文を唱えた。その瞬間、一気に景色が変わったのだった。
「ジャンティーヌ殿、おはよう。大丈夫かい?その…昨日は…」
何て行っていいのか分からないのだろう。言葉に詰まっている。ただ、私の事を心配してどうやら部屋の外で待っていてくれた様だ。
「おはよう、ジャンティーヌちゃん。ジルドったらよほどあなたの事が心配だったようで、昨日の夜からずっとあなたの部屋の近くで待っていたのよ」
「姉上、変な事を言わないでくれ。ジャンティーヌ殿、私は別に…」
「ジルド殿下、心配をおかけして申し訳ございません。まさか昨日の夜から待っていて下さっただなんて。もう大丈夫ですわ。さあ、朝食にしましょう。今日も沢山の食糧が、両親から届いておりますの。それから、食後少しだけお話ししたい事があるのですが、いいでしょうか?」
「大事な話とは、やはり両親の元に帰りたいと言う事かい?やっぱりこんな所には、いたくはないよな…」
ジルド殿下がものすごく悲しそうな顔で呟いた。
「あの、ジルド殿下、私は…」
「ジルド、そんな露骨に悲しそうな顔をするのは止めなさい。それにまだ、ジャンティーヌちゃんがご両親の元に帰ると決まった訳ではないでしょう?」
「別に私は、悲しそうな顔をしていません。姉上、変な事を言わないで下さい!とにかく、食事にしよう」
気を取り直して朝食を頂いたのだが、なぜかいつも以上に急いで食べるジルド殿下。もしかして、お腹が空いていたのかしら?
「ジルド殿下、そんなに急いで食べたら喉に詰まりますよ。お料理ならまだ沢山ありますから、どうかゆっくり食べて下さい」
もし足りなかったら両親に料理を追加で送ってもらう事も出来る。それにそんなに急いで食べなくても、誰も取らないと思うが…
「別に急いで食べていないよ。それよりも食事も終わったし。それで、ジャンティーヌ殿の話とは一体ないんだい?」
「ちょっとジルド、まだ私もジャンティーヌちゃんも食べ終わっていないわ」
すかさずシルビア殿下が、ジルド殿下に抗議の声を上げている。どうやらジルド殿下は、私の話が気になる様だ。
「シルビア殿下、いいのですよ。ジルド殿下、シルビア殿下、私は両親のいるラッセル王国に行こうと思っております」
「やっぱりジャンティーヌ殿は…いいや、これでいいんだ。ジャンティーヌ殿の事を考えたら、その方が幸せなんだ」
なにやら頭を抱えながら、ブツブツとジルド殿下が呟いている。
「ジャンティーヌちゃんは、ラッセル王国に行く事を決めたのね…分かったわ、あなたが決めた事ですもの。私もジルドも受け入れるわ。ジャンティーヌちゃん、今まで本当にありがとう。あなたがいてくれたお陰で、皆明るくなったわ。どうかこれからは、両親と平和に生きてね」
悲しそうにシルビア殿下が呟いた。
「ごめんなさい、言い方が悪かったですわね。私は一時的にラッセル王国に行くだけです。またこの地に戻ってきますわ。もちろん、私が留守にしている間も、食糧は毎日届けます」
「一時的とはどういうことだい?」
「私は今回の件で、自分の無力さを痛感したのです。口先ばかりで、ゴブリンの群れから、リマ達を救えなかった。その事がショックで…だから一度ラッセル王国に向かい、そこで魔力の勉強をしようと考えています。既に両親や伯母さまには話を通してあります。とりあえず3ヶ月を目標に勉強をして参りますわ」
そう、今の私では、魔女どころか魔物ですら危ういときがある。私はまだ、自分の魔力の力を、十分に出し切れていないのだ。だからこそ、魔力大国とも言われているラッセル王国で徹底的に魔力を磨き上げようと思っているのだ。
「ジャンティーヌ殿、わざわざラッセル王国に行かなくても、この地でも十分君は戦っていけるよ。現にこの3ヶ月、凄まじい速さで攻撃魔法を習得してきたではないか。だから…」
「いいえ、今のままでは、私は誰も救えません!私はやっぱり、この国の人を、ジルド殿下やシルビア殿下を救いたい。そして、お日様の光をいっぱいに浴びて欲しいのです。もう口先ばかりの私は、嫌なのです!」
必死にジルド殿下に向かって訴えた。私は真剣に、この国に平和を取り戻したいのだ。その為には、今のままでは絶対にいけない。
「ジャンティーヌちゃんの気持ちは分かったわ。私達にあなたのやる事を止める権利はない。ただ、あなたはこの国に縛られることはないのよ。ジャンティーヌちゃんの思うがまま、動いてくれたらいいから」
要するに、もしこの国に帰ってくるのが嫌になったら、無理をして帰って来る必要は無い。自分たちはたとえ私が帰ってこなくても、責めたりしないから。そう言いたいのだろう。相変わらず優しいわね。
「ありがとうございます、シルビア殿下。それでは、早速ラッセル王国に向かいますわ」
「えっ、もう向ってしまうのかい?」
「ええ、なるべく早い方がいいですから。そうそう、物資は私の部屋に描いてある魔法陣から届けるようにいたしますわ。もし私に何か用があるときは、魔法陣に手紙を入れて下さい。そうしましたら、時間を見てこちらから連絡を入れますから」
「分かったわ。それじゃあジャンティーヌちゃん、気を付けてね」
「シルビア殿下とジルド殿下も、どうかお元気で。必ず3ヶ月で戻ってきますから。どうか…どうかお命だけは大切にしてください!」
いつも死と隣合わせの生活をしている彼ら。どうか3ヶ月、持ちこたえて欲しい。
「ありがとう、ジャンティーヌ殿、どうか無理だけはしないで欲しい」
「ええ、大丈夫ですわ。それでは、行って参ります」
魔法陣に入り、呪文を唱えた。その瞬間、一気に景色が変わったのだった。
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