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第27話:ジャクソン殿と仲良くなりました~ジルド視点~

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「ジャクソン殿、今日は本当にありがとうございました。よかったら一緒に食事をしませんか?ただ、こんな地下での食事ですので、無理にとは言いませんが」

すかさずジャクソン殿を食事に誘った。

「ちょっと、ジルド。あなたは何を言っているの?こんな薄暗い地下で、ジャクソン様が食事をするだなんて。ジャクソン様には、ちゃんと帰る家があるのだから…」

「いいのですか!それじゃあ、俺も一緒に食事をします。さあ、シルビア殿下、一緒に食事をしましょう。そうそう、朝も言いましたが、ラッセル王国で人気のお菓子を持ってきたのです。後で一緒に食べましょう。皆さんの分もありますからね」

せっかくなので、ジャクソン殿も一緒に皆で食事をした。気さくで話しやすいジャクソン殿下は、すっかり皆に溶け込んでいた。

「ジャクソン殿は本当にジャンティーヌ殿に似ていらっしゃいますね。あなた様がいると、ジャンティーヌ殿が戻って来てくれたみたいです。彼女は本当に明るくて、今のあなた様みたいに、こうやって場の空気を和ませてくれていたのですよ」

「ジャンティーヌと私は、性格がよく似ておりますので。頑固なところとか、こうと決めたら絶対に譲らないところとかもそっくりなんですよ。あれ?シルビア殿下、全然食べていないじゃないですか?このお肉、美味しいですよ。ぜひ食べて下さい。こっちの野菜も、今日取れたばかりです」

ジャクソン殿がすかさず姉上の世話を焼く。

「そう言えばジャンティーヌ殿も、よくそうやってジルド殿下の世話を焼いていましたな。そんなところまで、兄妹そっくりだ」

そう言って家臣たちが笑っている。ジャンティーヌ殿は、いつも私の事を気にかけてくれていたな。それが嬉しくて…ジャンティーヌ殿の事を思い出したが、なんだか無性に彼女に会いたくなった。

その後も楽しい食事の時間が続いた。

食後はジャクソン殿を見送り、自室に戻ってきた。すると

「ジルド殿下、少し話をしたいのですが、いいですか?」

私の元にやって来たのは、ジャクソン殿だ。

「ジャクソン殿、国に戻ったのではないのですか?」

「そのつもりだったのですが、どうしてもあなたとお話をしたくて、戻ってきました」

「そうだったのですね。どうぞ」

ジャクソン殿を部屋に招き入れた。

「ジルド殿下、ジャンティーヌから色々とあなたのお話しは聞いております。非常に優秀で、とてもお優しい方だと。実は俺、どうしてジャンティーヌがこの国の為に、ここまで尽くすのか全く理解できなかったのです。確かに愚かなアーロン殿下に国を追い出され、死にかけていたところを助けられたと言っても、命をかけてまで戦うだなんて!と。でも、昨日あなた達に会って、何となくジャンティーヌの気持ちが分かりました。あなた達を見ていると、なんだかじっとなんてしていられないと言う気持ちになるんですよね」

アーロン殿下とは、ジャンティーヌ殿の元婚約者の名前だろう。

「ジャンティーヌ殿は、きっと情が深いのでしょう。それにしてもジャクソン殿とジャンティーヌ殿は、よく似ていますね。あなたといると、ジャンティーヌ殿が傍にいる様な気持ちになります。ジャンティーヌ殿は元気にしておりますか?」

「ええ、元気ですよ。ただ、毎日騎士団長にしごかれて、クタクタですが。その上、夜は魔術師たちと勉強をしている様で。まあ、死にはしないでしょうから、気にしないで下さい」

「死にはしないとは、一体どういう事ですか?それほどまでに過酷な事を、ジャンティーヌ殿はしているのですか?万が一体を壊したらどうするのです。すぐに止めさせてください」

私たちの為に、そんな辛い思いをしているだなんて!彼女には辛い思いなんて、して欲しくない。

「ジルド殿下は、ジャンティーヌの事を大切に思ってくれているのですね。でも、ジャンティーヌは好きでやっているのです。毎日生き生きとしたジャンティーヌの顔を見ていたら、とても俺には止められません。あんなにも生き生きとしたジャンティーヌの顔を見たのは、初めてです。きっとジャンティーヌを変えたのは、あなたなのでしょう」

「私は何もしていません。むしろ、私の方が彼女に変えてもらったくらいですから…」

ジャンティーヌ殿のお陰で、私は随分と前向きになれた。それに彼女がいてくれたら、どんな事でも頑張れる、そんな気がする。

「そうですか、それじゃあ、お互いがいい方向で変わっているという事ですね。ジャンティーヌは素敵な男性を見つけたものだ。俺もあなたたちみたいな関係になれる様に、頑張らないと」

そう言ってジャクソン殿が笑っている。

「あの…ジャクソン殿は、その…姉上の事が…」

「ええ、好きです。彼女を初めて見た瞬間、ビビッと来たのです。一目ぼれという奴ですね。実を言うと俺、20年間ずっと女性に興味がなかったのです。それでも俺は、公爵家の嫡男。いずれ誰かと結婚しないと、そう思っていました。でも…」

ジャクソン殿が天井を見上げた。

「どんなに美しい女性を見ても、全く心が動かないのです。それがどうしようもなく苦しくて…そんな俺を見た両親が“無理に結婚する必要は無い。もしジャクソンが結婚しないなら、養子を迎えればいいから”と言ってくれて。そんな中、彼女に出会った。俺はこのチャンスを逃したくはないと思っています。もちろん、無理やり手に入れたりはしませんから、安心してください。いつかシルビア殿下に受け入れてもらえる様、頑張るつもりですよ」

そう言って笑ったジャクソン殿。彼ならきっと、姉上を幸せにしてくれる。なんだかそんな気がした。
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