あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi

文字の大きさ
34 / 34

第34話:もう二度と離れる事はありません

しおりを挟む
「ただでさえ束縛が激しいアルト殿下ですのに、あんな風にアルト殿下を拒むだなんて。カナリア様はこれから大変ですわね。せっかく同じ転生者だとわかったのに。もうカナリア様とも、こんな風に話しが出来ないかもしれませんね…」

 悲しそうにシャーラ様が呟いている。

「何をおっしゃっているのですか?せっかく仲良くなれたのです。これからは、どうか私とも仲良くしてください」

 そう伝えたのだが…

「カナリア様、甘いですわ。きっとアルト殿下が会わせてはくれません!あの男、カナリア様に助けてもらった翌日、わざわざ私を呼び出すと、鬼の形相で文句を言って来たのですよ。私、男の人に怒鳴られたのは初めてだったので、さすがに怖くて泣いてしまいましたわ。すぐにシモン様が来て、助けて下さったからよかったけれど」

「そうだったのですね…私はあの日、2人で会っている姿を見て、2人は既に恋仲になっていると思ったのですが…」

「あのやり取りを見て、どこをどう恋仲になっていると思うのですか?どう見ても、私が殿下に虐められているようにしか見えなかったでしょうに!カナリア様の思考回路が、全く分かりませんわ!」

「申し訳ございません。声があまり聞こえなかったもので…」

 まさかシャーラ様に、文句を言っていただなんて…私ったらとんだ勘違いをしていたのね。本当に恥ずかしい限りだわ。

「さて、私はそろそろ帰りますね。早く帰らないと、あの男が乗り込んで来そうですので」

「あら、まだ10分たらずしか、滞在していらっしゃらないではありませんか。せっかくですから、前世の頃の記憶など、色々と教えてください。やっぱり日本食とか、恋しくないですか?」

 せっかく私と同じ日本人だった前世を持つ人に会えたのだ。もっと色々な話がしたい。そう思ったのだが…

「何を呑気な事を、おっしゃっているのですか。早く帰らないと、そろそろあの男が…」

 シャーラ様がそう言いかけた時だった。

「お嬢様、殿下がお見えに…」

「カナリア、また通信を無視して…て、どうしてシャーラ嬢が、カナリアの家にいるのだい?」

 私をギュッと抱きしめると、シャーラ様を睨んでいる。これはマズイわ。

「シャーラ様は、今回の事件で謝罪に来てくださったのです。彼女も被害者なのに、わざわざ謝罪に来てくださるだなんて。それに今いらしたばかりですわ」

 そう必死に訴えたのだが…

「シャーラ嬢、君のせいで、カナリアまで怖い思いをしたのだよ!謝って済む問題じゃない。もう二度と、カナリアには会わないで欲しい!君にはシモンがいるだろう。すぐにシモンを呼んで、シャーラ嬢を回収に来てもらおう」

「アルト様、さすがにシャーラ様に失礼ですわ。どうか落ち着いて…」

「いいのですわ、カナリア様。それでは私はこれで」

 “だから申し上げたでしょう。これからは手紙のやり取りをしましょう。もちろん、日本語で”

 そう耳元で呟くと、シャーラ様は部屋から出て行った。

「カナリア、どうしてあんな女を勝手に屋敷にあげたのだい?油断も隙も無い女だ!いいかい、二度とあの女には近づいてはダメだからね。本当にカナリアは!」

 ギューギュー私を抱きしめるアルト様。通信機を確認すると、恐ろしいほどの着信が…確かにシャーラ様がおっしゃった通り、アルト様はかなり私に執着しているのかもしれない。

 でも私は…

「アルト様、ご心配をおかけしてごめんなさい。私が愛しているのは、アルト様ただ1人ですわ」

 そう伝えると、自分の唇をアルト様の唇に重ねた。自分からこんな事をするだなんて。でもそれだけ、私はアルト様の事を、愛おしいと感じているという事だ。私の勘違いのせいで、アルト様には随分と迷惑をかけてしまった。だからこそ、これからはアルト様の傍に寄り添っていきたい。


 ~3ヶ月後~
「カナリア、また勝手にシャーラ嬢のところに来て。シャーラ嬢、カナリアに関わるのはやめてくれと、いつも言っているだろう」

「あら、シャーラ様は私の大切なお友達ですわ。少しくらい、いいではありませんか。ねえ、シモン様」

「どうしてそこで、シモンに問いかけるのだい?もしかして、シモンの事を!」

「アルト、いくら何でも大人げないぞ。俺が愛しているのはシャーラただ1人だし、カナリア嬢が愛しているのも、アルトただ1人だろう」

「シモン様の言う通りですわ。私が愛しているのは、アルト様ただ1人ですから、安心してください」

 そう笑顔で伝えたが、まだ不安そうなアルト様。

 あの後、ルミン様の裁判が行われ、ルミン様はこの国で一番過酷と言われている一番北にある、収容所に送られた。フォレンタ公爵家も取り潰されたのだ。

 そしてシャーラ様とシモン様は、無事婚約した。先日、2人の婚約披露パーティーも盛大に行われたのだ。知らない小説とはいえ、ヒロインとヒーローが無事結ばれ、ハッピーエンドを迎えた事は、私も嬉しい。

 私とシャーラ様はあの後、密かに手紙のやり取りをしていたのだが、その手紙もアルト様に見つかってしまったため、もう開き直ってアルト様が生徒会の仕事をしている間に、2人で会っている。シャーラ様と日本の話をして盛り上がる事もしばしば。

 シャーラ様もお酒とサラミが好きだったとの事で、お酒が飲めるようになったら、2人で飲むのを楽しみにしている。さらに2人で、日本食の開発も密かに進めているのだ。

 そんな私たちを見てアルト様はものすごく怒っているが、何分カルアお兄様とアクアお兄様が協力的で、私とシャーラ様が会える様に、事あるごとにアルト様に生徒会の仕事を押し付けているのだ。

 シャーラ様からは

 “相変わらず束縛の激しい男ですわね。カナリア様、本当にあの男と結婚して、よろしいのですか?私なら御免だわ”

 そう言っているが、私は束縛の激しいアルト様の事が嫌ではない。むしろ、好意的に思っているくらいだ。

 前世の記憶が戻った時は、アルト様を諦めなければいけないと泣いたこともあった。厳しい現実に、心が折れそうなときもあった。

 もう二度とアルト様と笑い合う事は出来ないと、何度泣いた事か。

 それも全て私の勘違いだったのだが…

 それでもその勘違いのお陰で、私はアルト様の大切さを再認識できたのだ。もう二度と、アルト様から離れたりしない。どんなアルト様でも、全力で受け入れるつもりだ。

 それが私の幸せだから。

「アルト様、そんなに怒っていないで、一緒に帰りましょう。あと少しで、学期末休みですわね。学期末休みには、本当に海外に行ってもいいのですか?」

「ああ、もちろんだよ。僕も付いていくし。2人でゆっくり色々な国を見て回ろう。学期末休みが終われば、カルアやアクアもいなくなるし。これから楽しみな事が沢山あるね」

 嬉しそうに笑うアルト様。私が海外に興味がある事を知ったアルト様が、学期休みを利用して、海外に行けるように手配してくれたのだ。

 何だかんだ言って、アルト様は私の事を一番に考えてくれている。それが嬉しくてたまらない。

 私の勘違いのせいで、アルト様には随分と迷惑をかけた。でもその分、2人の絆も深まった気がするし、何よりもアルト様がいかに私にとって大切な存在か、再認識できたのだ。

「カナリア、早く王宮に戻ろう。学期末休みの相談もしないといけないしね」

「ええ、分かりましたわ。それではシャーラ様、シモン様。ごきげんよう」

 アルト様と手を繋ぎ、馬車を目指す。

 しっかり握られた2人の手は、もう二度と離れる事はないだろう。

 これから先も、ずっと…

 おしまい


 ~あとがき~
 これにて完結です。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました!
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……? ※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜

よどら文鳥
恋愛
 伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。  二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。  だがある日。  王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。  ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。  レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。  ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。  もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。  そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。  だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。  それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……? ※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。 ※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)

俺の婚約者は悪役令嬢を辞めたかもしれない

ちくわ食べます
恋愛
王子である俺の婚約者は、打算的で、冷徹で、計算高い女だった。彼女は俗に言う悪役令嬢だ。言っておくけど、べつに好きで婚約したわけじゃない。伯爵令嬢だった彼女は、いつの間にか俺の婚約者になっていたのだ。 正直言って、俺は彼女が怖い。彼女と婚約破棄できないか策を巡らせているくらいだ。なのに、突然彼女は豹変した。一体、彼女に何があったのか? 俺はこっそり彼女を観察することにした

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

成功条件は、まさかの婚約破棄!?

たぬきち25番
恋愛
「アリエッタ、あなたとの婚約を破棄する……」 王太子のアルベルト殿下は、そう告げた。 王妃教育に懸命に取り組んでいたアリエッタだったが、 それを聞いた彼女は……? ※他サイト様にも公開始めました!

処理中です...