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第17話:ミリアム様の婚約者に会いました
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お姉様たちと一緒にホールの中に入っていく。私はこれでも公爵令嬢で婚約解消したとはいえ、次期王妃になる予定だった人間。夜会はお手の物だ。
背筋をしっかり伸ばし、笑顔で入場する。
私の事は、この国の貴族はみんな知っているだろう。そのせいか私の入場と共に、皆がこちらを見ているのだ。王太子に婚約解消され、逃げて来た愚かな令嬢と思っている人もいるだろう。
でも、そんな事を気にしていては、貴族令嬢なんて務まらない。自国での夜会と同じように、堂々としていよう。
“キャリーヌ、見てごらん。令息たちが頬を赤らめているよ。今日君が夜会に参加する事を、貴族たちは楽しみにしていたのだよ。この国で一番美しいアリーナの実の妹が夜会に来るってね。私も鼻高々だ”
耳元で訳の分からない事を呟くのは、お義兄様だ。確かにお姉様は美しいが、私は大したことはない。
ただ…
「クレスティル公爵、夫人。ごきげんよう。こちらにいらっしゃるお方が、夫人の妹君でいらっしゃいますか?なんてお美しい方なのでしょう。宜しければ、息子とダンスでも」
「アラッセル侯爵殿、抜け駆けはよろしくないかと。クレスティル公爵殿、夫人、ごきげんよう。本当にお美しい妹君ですね。家の息子と」
「いいえ、家の息子と」
次から次へと貴族たちが令息を連れてやってきては、なぜか私とのダンスを求めてくるのだ。一体これはどういうことなの?混乱する私に
「皆様、落ち着いて下さい。キャリーヌはこの国での夜会は初めてでして。今日は色々な方に、キャリーヌを紹介したいと考えているのです。キャリーヌ、ご挨拶を」
ものすごい勢いで私に迫って来る貴族たちの間に入ってくれたのは、お義兄様だ。せっかくお義兄様がお膳立てしてくれたのだ、ここはしっかりと挨拶をしないと。
そう思い、一歩前に出た。
「皆様、お初に目にかかります。アラステ王国から参りました、キャリーヌ・マディスンと申します。どうかお見知りおきを」
カーテシーを決め、笑顔を向ける。その瞬間、なぜか“おぉぉぉ”と貴族たちから声が漏れたのだ。そんなに感激される様な事は言っていないのだけれど…
「それでは他の貴族の方たちにもキャリーヌを紹介したいので、私たちはこれで失礼します」
なぜか固まっている貴族たちにお義兄様が笑顔でそう伝えると、私とお姉様を連れ、そのまま歩き出した。
「さすが私の妹だわ。令息たちの心を鷲掴みね」
「お姉様、私をからかうのはお止めください」
お姉様め、私をからかって!
その後も貴族たちに挨拶をしていくのだが、なぜか皆私が挨拶をすると固まってしまう。まあ、いいけれどね…
一通り挨拶を終えた時だった。ミリアム様の姿が目に入って来たのだ。なぜか切なそうな顔をしている。視線の先は…
令嬢に囲まれている男性が目に飛び込んできた。あの人は誰だったかしら?
「お姉様、あの令嬢に囲まれている人は誰でしたか?」
「ああ、あの方はファスレン公爵家のカイロ様よ。さっきご挨拶をしたでしょう?あの方はミリアム殿下の婚約者なのだけれど、あまり仲は良くないみたいね…」
何と!ミリアム様に婚約者がいただなんて!それにしても婚約者がいるくせに令嬢と仲良くしているだなんて、尻軽な男ね。まるでジェイデン殿下みたいだわ。
「お姉様、ちょっとミリアム様のところに行って参りますね」
急いでミリアム様の元へと向かう。
「ミリアム様、ごきげんよう。今日はお招きいただき、ありがとうございました」
「キャリーヌ、あなたこんなところにいていいの?今日は色々な貴族に顔を覚えてもらう日でしょう。それに私も忙しい…いえ、ごめんなさい。またきつい言葉を言いかけてしまったわ。私ったらダメね…」
シュンとするミリアム様の隣に、そっと寄り添った。
「ミリアム様は、全くダメな事はありませんわ。最近は随分と自分の気持ちを言える様になって来たではありませんか?もう一通り貴族との挨拶は終わりましたので、今からはずっと、ミリアム様と一緒にいますわ」
だからどうか、そんな悲しそうな顔をしないで。
「ありがとう、キャリー…」
「ミリアム殿下、ここにいらしたのですね。よかった、私と一緒に踊って頂けませんか?」
1人の男性が話しかけてきたのだ。
この男性は、ミリアム様の婚約者のカイロ様だわ。どうやらさっきの令嬢たちを巻いて、こちらにやって来た様だ。真っすぐミリアム様を見つめている。
「わ…私は今、友人のキャリーヌと一緒にいますの。それにあなた様には、沢山の令嬢がいるでしょう?私の事は、構って頂かなくて結構ですわ」
ミリアム様が、プイっとあちらの方向を向いてしまったのだ。ちょっとミリアム様、一体何を言っているの?あなた、さっき切なそうにカイロ様の事を見ていたじゃない!
ビックリしてミリアム様の方を向いた。
背筋をしっかり伸ばし、笑顔で入場する。
私の事は、この国の貴族はみんな知っているだろう。そのせいか私の入場と共に、皆がこちらを見ているのだ。王太子に婚約解消され、逃げて来た愚かな令嬢と思っている人もいるだろう。
でも、そんな事を気にしていては、貴族令嬢なんて務まらない。自国での夜会と同じように、堂々としていよう。
“キャリーヌ、見てごらん。令息たちが頬を赤らめているよ。今日君が夜会に参加する事を、貴族たちは楽しみにしていたのだよ。この国で一番美しいアリーナの実の妹が夜会に来るってね。私も鼻高々だ”
耳元で訳の分からない事を呟くのは、お義兄様だ。確かにお姉様は美しいが、私は大したことはない。
ただ…
「クレスティル公爵、夫人。ごきげんよう。こちらにいらっしゃるお方が、夫人の妹君でいらっしゃいますか?なんてお美しい方なのでしょう。宜しければ、息子とダンスでも」
「アラッセル侯爵殿、抜け駆けはよろしくないかと。クレスティル公爵殿、夫人、ごきげんよう。本当にお美しい妹君ですね。家の息子と」
「いいえ、家の息子と」
次から次へと貴族たちが令息を連れてやってきては、なぜか私とのダンスを求めてくるのだ。一体これはどういうことなの?混乱する私に
「皆様、落ち着いて下さい。キャリーヌはこの国での夜会は初めてでして。今日は色々な方に、キャリーヌを紹介したいと考えているのです。キャリーヌ、ご挨拶を」
ものすごい勢いで私に迫って来る貴族たちの間に入ってくれたのは、お義兄様だ。せっかくお義兄様がお膳立てしてくれたのだ、ここはしっかりと挨拶をしないと。
そう思い、一歩前に出た。
「皆様、お初に目にかかります。アラステ王国から参りました、キャリーヌ・マディスンと申します。どうかお見知りおきを」
カーテシーを決め、笑顔を向ける。その瞬間、なぜか“おぉぉぉ”と貴族たちから声が漏れたのだ。そんなに感激される様な事は言っていないのだけれど…
「それでは他の貴族の方たちにもキャリーヌを紹介したいので、私たちはこれで失礼します」
なぜか固まっている貴族たちにお義兄様が笑顔でそう伝えると、私とお姉様を連れ、そのまま歩き出した。
「さすが私の妹だわ。令息たちの心を鷲掴みね」
「お姉様、私をからかうのはお止めください」
お姉様め、私をからかって!
その後も貴族たちに挨拶をしていくのだが、なぜか皆私が挨拶をすると固まってしまう。まあ、いいけれどね…
一通り挨拶を終えた時だった。ミリアム様の姿が目に入って来たのだ。なぜか切なそうな顔をしている。視線の先は…
令嬢に囲まれている男性が目に飛び込んできた。あの人は誰だったかしら?
「お姉様、あの令嬢に囲まれている人は誰でしたか?」
「ああ、あの方はファスレン公爵家のカイロ様よ。さっきご挨拶をしたでしょう?あの方はミリアム殿下の婚約者なのだけれど、あまり仲は良くないみたいね…」
何と!ミリアム様に婚約者がいただなんて!それにしても婚約者がいるくせに令嬢と仲良くしているだなんて、尻軽な男ね。まるでジェイデン殿下みたいだわ。
「お姉様、ちょっとミリアム様のところに行って参りますね」
急いでミリアム様の元へと向かう。
「ミリアム様、ごきげんよう。今日はお招きいただき、ありがとうございました」
「キャリーヌ、あなたこんなところにいていいの?今日は色々な貴族に顔を覚えてもらう日でしょう。それに私も忙しい…いえ、ごめんなさい。またきつい言葉を言いかけてしまったわ。私ったらダメね…」
シュンとするミリアム様の隣に、そっと寄り添った。
「ミリアム様は、全くダメな事はありませんわ。最近は随分と自分の気持ちを言える様になって来たではありませんか?もう一通り貴族との挨拶は終わりましたので、今からはずっと、ミリアム様と一緒にいますわ」
だからどうか、そんな悲しそうな顔をしないで。
「ありがとう、キャリー…」
「ミリアム殿下、ここにいらしたのですね。よかった、私と一緒に踊って頂けませんか?」
1人の男性が話しかけてきたのだ。
この男性は、ミリアム様の婚約者のカイロ様だわ。どうやらさっきの令嬢たちを巻いて、こちらにやって来た様だ。真っすぐミリアム様を見つめている。
「わ…私は今、友人のキャリーヌと一緒にいますの。それにあなた様には、沢山の令嬢がいるでしょう?私の事は、構って頂かなくて結構ですわ」
ミリアム様が、プイっとあちらの方向を向いてしまったのだ。ちょっとミリアム様、一体何を言っているの?あなた、さっき切なそうにカイロ様の事を見ていたじゃない!
ビックリしてミリアム様の方を向いた。
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