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第71話:そんな…~ジェイデン視点~
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ゆっくりキャリーヌの元に近づこうとした時だった。サミュエルがキャリーヌを庇う様に、立ちはだかったのだ。そして僕の事をギロリと睨んだ。
「何がそれほどキャリーヌを愛しているだ!兄上はキャリーヌを、大切にしていないじゃないか。現に僕が死んだあと、ティーヌン侯爵家の令嬢を正室に、キャリーヌを側妃に向かえるつもりだったのだろう?兄上はいつも、キャリーヌの気持ちなんてこれっぽっちも考えていないじゃないか!そんなの、本当にキャリーヌを愛していると言えるのかい?」
「うるさい!僕から全てを奪ったサミュエルに、何が分かるんだ!サミュエルさえいなければ…」
そうだ、サミュエルさえいなければ、キャリーヌは今頃僕のものだったのだ。それなのに!
「たとえサミュエル様がいらっしゃらなくても、私はジェイデン殿下と婚約する事はありませんわ。ジェイデン殿下、あなた様が私に婚約解消を申し出たあの日に、私の愛情は綺麗さっぱり無くなりました。たとえこの命を奪われようと、私があなた様を再び愛し結婚する事はありません!私は、ジェイデン殿下を愛していません!いい加減現実を見て下さい」
キャリーヌが真っすぐ僕を見つめている。その瞳からは、明らかに怒りを感じる。どうしてだい?どうしてそんな目で僕を見るのだい?僕たちは愛し合っていたはずなのに…
“ジェイデン殿下、キャリーヌはもう、あなた様の事は好きではないのです。キャリーヌは今、サミュエル殿下と未来に向かって進もうとしているのです。キャリーヌにとって、ジェイデン殿下はもう、過去の人物なのですよ。過去の人物がどうあがこうが、ともに未来に進むことは出来ないのです。いい加減、お気づきになってはいかがですか?”
モニター越しにため息をつきながら、訳の分からない事を言っている王女。
「僕は…」
「いい加減にしなさい。ジェイデンがティーヌン侯爵と共謀し、サミュエルに毒を飲ませ、亡き者にしようとした証拠は既にそろっているのだ。今すぐジェイデンとティーヌン侯爵を、地下牢へ。さらにジェイデンに協力した医師と使用人たちも、地下牢に連れて行け!」
「父上、待って下さい。地下牢だなんて僕は…」
必死に父上に訴えるが、僕の方すら向いてくれない。
「母上…」
「ジェイデン、私はあなたの育て方を間違えた様です。王族として、しっかり罪を償いなさい」
目に涙を浮かべた母上がそう叫ぶと、クルリと反対側を向いてしまったのだ。嫌だ、僕は悪くない。
「キャリーヌ、助けて…」
「ジェイデン殿下、どうかご自分の罪と、しっかり向き合ってください。あなた様は実の弟を亡き者にしようとしたのです。決して許される事ではありません。もちろん、私も許すつもりはありませんから」
「そんな…」
どうしてみんな、僕にそんな酷い言葉を投げかけるのだい?どうしてみんな、僕の気持ちを分かってくれないのだい?僕はただ、キャリーヌを愛していただけなのに…
それなのに、どうして…
気が付くと両脇を抱えた騎士たちに、あっと言う間に部屋から連れ出されると、そのまま薄暗い地下牢へと入れられた。
「おい、僕は王族だぞ。こんな薄暗い地下牢から早く出せ」
必死に訴える。すると、1人の使用人がクルリとこちらを向いた。あの使用人は、確かキャリーヌの専属メイドだ。どうしてあの女が、ここにいるのだ?
「ジェイデン殿下、お嬢様は何の罪もないのに、あなた様にこの地下牢に入れられたのです。薄暗くて気持ち悪いでしょう?あなた様もこの地下牢で、お嬢様がどんな思いで過ごされたのか、少しは考えてみてください!それでは、失礼いたします」
「メイドの分際で、僕に意見するとはどういう了見だ。ふざけるな!」
クルリと反対方向を向いたメイドが、そのまま去っていく。あのメイド、絶対に許さない。
何が“お嬢様がどんな思いで過ごされたか、考えてみてください!”だ。キャリーヌが僕の側妃になると言ったら、すぐに出してあげるつもりだったんだ。それを拒んだのは、キャリーヌ自身。
ただ…
ここは本当に薄暗くて気味が悪い。キャリーヌは暗いところが苦手だったな…きっと怖い思いをしていたのだろう。
キャリーヌ…
僕は一体、どこで何を間違えたのだろう。つい1年前は、間違いなく幸せだったのに…いつの間にか王太子の座から引きずりおろされ、その上最愛の人、キャリーヌをも失ってしまった。
僕がラミア王女なんかにうつつを抜かさなければ、こんな事にはならなかったのかな…
薄暗い地下牢にいると、ついそんな事を考えてしまう。
僕はただ、キャリーヌさえいてくれたら幸せだったはずなのに…
愛するキャリーヌを失い、こんな地下牢に入れられるだなんて…
悲しくて辛くて、どうしてこんな事になってしまったのかわらなくて、ただただ僕は、絶望の涙を流し続けたのだった。
※次回、キャリーヌ視点に戻ります。
よろしくお願いしますm(__)m
「何がそれほどキャリーヌを愛しているだ!兄上はキャリーヌを、大切にしていないじゃないか。現に僕が死んだあと、ティーヌン侯爵家の令嬢を正室に、キャリーヌを側妃に向かえるつもりだったのだろう?兄上はいつも、キャリーヌの気持ちなんてこれっぽっちも考えていないじゃないか!そんなの、本当にキャリーヌを愛していると言えるのかい?」
「うるさい!僕から全てを奪ったサミュエルに、何が分かるんだ!サミュエルさえいなければ…」
そうだ、サミュエルさえいなければ、キャリーヌは今頃僕のものだったのだ。それなのに!
「たとえサミュエル様がいらっしゃらなくても、私はジェイデン殿下と婚約する事はありませんわ。ジェイデン殿下、あなた様が私に婚約解消を申し出たあの日に、私の愛情は綺麗さっぱり無くなりました。たとえこの命を奪われようと、私があなた様を再び愛し結婚する事はありません!私は、ジェイデン殿下を愛していません!いい加減現実を見て下さい」
キャリーヌが真っすぐ僕を見つめている。その瞳からは、明らかに怒りを感じる。どうしてだい?どうしてそんな目で僕を見るのだい?僕たちは愛し合っていたはずなのに…
“ジェイデン殿下、キャリーヌはもう、あなた様の事は好きではないのです。キャリーヌは今、サミュエル殿下と未来に向かって進もうとしているのです。キャリーヌにとって、ジェイデン殿下はもう、過去の人物なのですよ。過去の人物がどうあがこうが、ともに未来に進むことは出来ないのです。いい加減、お気づきになってはいかがですか?”
モニター越しにため息をつきながら、訳の分からない事を言っている王女。
「僕は…」
「いい加減にしなさい。ジェイデンがティーヌン侯爵と共謀し、サミュエルに毒を飲ませ、亡き者にしようとした証拠は既にそろっているのだ。今すぐジェイデンとティーヌン侯爵を、地下牢へ。さらにジェイデンに協力した医師と使用人たちも、地下牢に連れて行け!」
「父上、待って下さい。地下牢だなんて僕は…」
必死に父上に訴えるが、僕の方すら向いてくれない。
「母上…」
「ジェイデン、私はあなたの育て方を間違えた様です。王族として、しっかり罪を償いなさい」
目に涙を浮かべた母上がそう叫ぶと、クルリと反対側を向いてしまったのだ。嫌だ、僕は悪くない。
「キャリーヌ、助けて…」
「ジェイデン殿下、どうかご自分の罪と、しっかり向き合ってください。あなた様は実の弟を亡き者にしようとしたのです。決して許される事ではありません。もちろん、私も許すつもりはありませんから」
「そんな…」
どうしてみんな、僕にそんな酷い言葉を投げかけるのだい?どうしてみんな、僕の気持ちを分かってくれないのだい?僕はただ、キャリーヌを愛していただけなのに…
それなのに、どうして…
気が付くと両脇を抱えた騎士たちに、あっと言う間に部屋から連れ出されると、そのまま薄暗い地下牢へと入れられた。
「おい、僕は王族だぞ。こんな薄暗い地下牢から早く出せ」
必死に訴える。すると、1人の使用人がクルリとこちらを向いた。あの使用人は、確かキャリーヌの専属メイドだ。どうしてあの女が、ここにいるのだ?
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「メイドの分際で、僕に意見するとはどういう了見だ。ふざけるな!」
クルリと反対方向を向いたメイドが、そのまま去っていく。あのメイド、絶対に許さない。
何が“お嬢様がどんな思いで過ごされたか、考えてみてください!”だ。キャリーヌが僕の側妃になると言ったら、すぐに出してあげるつもりだったんだ。それを拒んだのは、キャリーヌ自身。
ただ…
ここは本当に薄暗くて気味が悪い。キャリーヌは暗いところが苦手だったな…きっと怖い思いをしていたのだろう。
キャリーヌ…
僕は一体、どこで何を間違えたのだろう。つい1年前は、間違いなく幸せだったのに…いつの間にか王太子の座から引きずりおろされ、その上最愛の人、キャリーヌをも失ってしまった。
僕がラミア王女なんかにうつつを抜かさなければ、こんな事にはならなかったのかな…
薄暗い地下牢にいると、ついそんな事を考えてしまう。
僕はただ、キャリーヌさえいてくれたら幸せだったはずなのに…
愛するキャリーヌを失い、こんな地下牢に入れられるだなんて…
悲しくて辛くて、どうしてこんな事になってしまったのかわらなくて、ただただ僕は、絶望の涙を流し続けたのだった。
※次回、キャリーヌ視点に戻ります。
よろしくお願いしますm(__)m
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