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第2話:真実を知りました

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目覚めてから1週間が過ぎた。この1週間、体を動かす練習をした。何分3年も眠っていたのだ。体がなまってしまっていたので、動くトレーニングを行った。

そのお陰で、すっかり動けるようになった。そして今は、中庭を散歩している。

ふと空を見ると、鳥が自由に飛び回っていた。

いいな…
私も鳥の様に、自由に飛び回りたい…
この1週間、何の為に生きているのだろうとずっと考えている。あのまま意識が戻らない方が、幸せだったのかもしれない。

だって意識が戻らなければ、辛い現実を知る事もなかったのに…

「お嬢様、旦那様がお呼びです」

「ええ…分かったわ」

お父様から呼び出しが掛った。きっとろくな話ではないのだろう。そう思いつつも、お父様の元へと向かう。

「アナスタシア、喜べ。殿下がお前を側室として迎えて下さると言って下さってな。明日には、お前を王宮で住めるよう、手配を整えて下さったらしい。それにしても、殿下は本当にお前の事を考えてくれていたんだな。まさかこんなにも早く、お前を王宮に招き入れてくれるだなんて。いいか、何が何でもお前が先に子供を産め!そうすればきっと、あの女にプレッシャーを掛けられるからな」

お父様が嬉しそうに報告をして来た。そうか…私はやっぱり、側室として迎えられるのね。でも、私は側室になんてなりたくない。この期に及んでこんな事を言える立場ではないが、私は私だけを愛してくれる人と結婚したい。

それは常々ルイス様に伝えて来たことだ。だからこそ、ルイス様も“側室は持たない、僕はアナスタシアだけを愛するよ”と言ってくれていたのに…

「とにかく、明日にはこの家を出るんだ。ある程度準備をしておけよ。お前はもう利用価値がないと思っていたが、側室とはいえ殿下に嫁げるんだ。よかったよかった」

そう言ってお父様が笑っている。
私はこの人にとって、道具でしかない。その事は昔から分かっていた。それでも大好きなルイス様の元に嫁ぐことを夢見て、頑張って来た。でも…

自室に戻ると、涙が溢れ出る。私が辛いとき、慰めてくれるリーナもいない。私は本当に独りぼっちなのだ。

「私…王宮になんて行きたくないわ…だってもう、あそこには私の居場所はないのだから…リーナ、どうして私に毒を盛ったの…私、あなたの事を本当の姉の様に慕っていたのに…」

いっその事、何もかも捨てて逃げ出したい。たとえどこかで野垂れ死にしても、それならそれで本望だ。そんな思いが私の中で生まれた。

その時だった。

「お嬢様、王太子妃様がお見えです」

「マルモットが?わかったわ、すぐに通して」

マルモットが一体何の用かしら?そんな思いから、私の部屋に通してもらう様にお願いした。

すると、ゆっくり入ってくるマルモット。

「マルモット、急にどうしたの?」

私がマルモットに話しかけるや否や、ギロリと睨まれた。マルモットのこんな顔、初めて見たわ。あまりの衝撃に、固まる事しかできない。

「どうもこうもないわ。あなた、ルイス様に何を言ったの?どうしてあなたがルイス様の側室になるの?」

凄い形相で詰め寄ってくる。

「あの…ごめんなさい…私もさっきお父様に聞いて…」

「お優しいルイス様の事だから、あなたの事を不憫に思い、側室に迎え入れる事を決めたのでしょうね。でも、もうルイス様と私は、心から愛し合っているのよ。現に私のお腹には、ルイス様の子供がいるの。本当に、どうしてあの時あのまま命を落とさなかったのかしら?本当にしぶとい女ね」

「マルモット?どうしてそんな酷い事を言うの?私達、親友でしょう?」

「親友?そんな訳ないでしょう。私はずっとルイス様が好きだったの。だから、あなたを消し去る為に近づいたのよ。あの日、あなたに毒を盛ったのは私よ。これでルイス様は私だけのものになるはずだった。でも、あんたは生き延びた。本当にしぶといわね」

「ちょっと待って。毒はリーナが盛ったと…」

「ええ、世間的にはね。あなたが慕っていたあのメイドに、全て罪を擦り付けたのよ。あの女の最後を姿、教えてあげましょうか?あの女…」

「止めて!それじゃあ、私の毒を盛ったのはあなただったの?それをリーナに擦り付けたなんて!あなた、どこまで腐っているの?絶対に許さない」

「許さないって、どうするつもり?もしかして、今の話をルイス様にするつもり?証拠もないのに、そんな話を信じる訳ないじゃない。本当におめでたい頭だこと。いい、たとえあなたが王宮に来たとしても、ルイス様には愛されず、1人寂しく暮らすのよ。それも離宮でね。でも、目障りだからまた毒でも盛ってあげるわ。今度はうまく死になさいよ」

この女、どこまで腐っているの?

「いい?ルイス様は私を愛していらっしゃるの。あなたが出来る事は、私たちの前から消える事だけ。私のお腹には、ルイス様の赤ちゃんがいるのだから。分かったらとっととあのメイドの元に行きなさい。これはね、3年前、あなたに使った毒よ。あなたの為に持ってきてあげたの。私、優しいでしょう。それじゃあ、もう二度と私の前に現れないでね。さようなら、アナスタシア」

そう言うと、笑顔で手を振って去っていくマルモット。そんな彼女を、ただ見つめる事しかできなかった。
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