殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi

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第3話:何もかもが嫌です

私はその場を動く事が出来ずに、ただ泣く事しかできなかった。親友だと思っていたマルモットは、実は私を裏切った張本人だったのだ。その上、無実のリーナに罪を擦り付けるだなんて。

リーナはきっと、無念だっただろう。そう思ったら、怒りがこみ上げてきた。あの女だけは、許せない。でも…

私にはどうする事も出来ない。それに何より、あの女のお腹には、ルイス様の子供がいるのだ。今更ルイス様に“私に毒を飲ませたのは、マルモットです!”なんて訴えかけても、きっと聞き入れてもらえないだろう。

下手をすると、王太子妃を陥れようとした罪で、私が投獄されるかもしれない。それに万が一マルモットの罪を証明できたとして、王太子妃の座から引きずりおろしたとしても、お腹の子供はどうなるの?

母親のいない子にしてしまうの?それにルイス様だって…
2人の仲睦まじい姿を見たら、どんなにマルモットが憎くても、2人を引き離すような事をしてはいけない気がした。

ふと近くにあった小瓶を手に取った。この薬を飲めば、私は楽になれるのかしら?大好きなリーナの元に、行けるのかしら?そんな思いから、無意識に瓶のふたを取った。でも…

どうしても飲むことが出来なかった。そして、そのまま声をあげて泣いた。泣いて泣いて泣き続けた。どうして私はこんな事になってしまったのだろう。何を間違えてしまったのだろう。

リーナはどうして死ななければいけなかったのだろう。彼女は私の専属メイドにさえなっていなければ、今頃幸せに暮らしていたかもしれないのに…

「リーナ、ごめんなさい…私の専属メイドになったばかりに…本当にごめんなさい…」

何度も何度も謝った。

そんな私の元に、メイドがやって来た。

「お嬢様、お食事のお時間です」

「ありがとう…でも、ちょっと体調が優れなくて…今日はもう休むわ。あなた達も下がっていいわよ」

今は食事をとる元気すらないのだ。

「分かりました。明日は輿入れする日でございます。どうか体調を万全に整えて下さい。それでは失礼いたします」

そう言うと、部屋から出て行ったメイドたち。
明日は王宮に輿入れか…

ルイス様はマルモットを愛していて、マルモットのお腹にはルイス様の子供までいる。どう考えても、私は邪魔者だ。それに何より、私はまだルイス様を愛している。愛する人が別の女性、それも憎くてたまらない女性と仲睦まじい姿を見せられるだなんて、耐えられない…

逃げるなら、今しかない…
どうせもう私には何も残っていない。たとえ野垂れ死にしようが、それはそれで本望だ。離宮で、ただ涙を流しながら過ごすよりはずっといい。

そうと決まれば、この家から逃げ出さないと。


公爵家には、万が一外部から誰かが襲ってきた時の為に、安全に外に逃げられる隠し通路が各部屋に準備されている。もちろん、私の部屋にもだ。確か私の部屋の隠し通路は、ここだったわよね。

カーペットをめくると、そこには地下へと繋がる隠し通路がある。ずっと使われてなかったから、かなり古びているが、それでもなんとか扉をこじ開け、通路を通っていく。真っ暗なので、ろうそくの火を頼りに、歩みを進める。

しばらく進むと、外に出る事が出来た。とにかく、早くこの場から去らないと!

もちろん、行く宛なんてない。それでも一刻も早くこの場所から離れたくて、必死に歩みを進めた。元々馬車移動がほとんどだったうえ、まだ目覚めて1週間しか経っていない。そんな私は、その場で息切れを起こしてしまう。

「はぁ、はぁ、私って本当に体力がないのね…」

少し休憩をしよう。そう思い、近くの広場へとやって来た。もう外は真っ暗だ。人通りもほとんどない。そういえばこの広場、リーナの遺体が晒された場所なのよね。

リーナ…
私のせいでごめんなさい。私もこの場所で、あなたの元に行けたら…

ここであの毒を飲めば、明日には私はもうこの世にいないかもしれない。今は人通りがないから、きっとそのまま…

あっ、でも、毒を屋敷に忘れてきてしまったわ。それに私、何も持ってこなかったし…今から毒を取りに行こうかしら?

そんな思いから、一度屋敷に戻る事にした。でも…

なぜか急に街に騎士たちが沢山現れたのだ。まるで何かを探している様だ。もしかして、私が公爵家からいなくなったのがバレたのかしら?

マズイわ…
見つかったら、連れ戻される…

そんな思いから、無我夢中で走った。途中靴が脱げてしまったが、そんな事は言っていられない。見つかったら私はずっと、寂しい思いをして生きないといけない。とにかく逃げないと!

そんな思いで、必死に走った。その時だった。

ドンと誰かにぶつかってしまい、その場で尻もちをつく。もしかして、騎士?どうしよう、早く逃げないと。

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