9 / 35
第9話:陛下の力になれたら嬉しいです
しおりを挟む
「随分と話し込んでしまったな。そろそろ冷えてきた。部屋に戻るといい」
「そうですね、そろそろ戻りますわ。陛下、今日は色々とお話に付き合って下さり、ありがとうございます。あの…陛下、もしよろしければ、またこうやって話し相手になって頂けますか?私、クロハくらいしか話し相手がいなくて…」
「それなら、私より女性の方がいいだろう。早速誰か夫人か令嬢を…」
「まあ、それは素晴らしいです。そうですわ、せっかく同じ王宮に住んでいらっしゃるのですもの。お2人で食事をしたらいかがでしょうか?」
陛下の言葉を遮る様に、クロハがそんな提案をしてくれた。
「それは素敵ですわ。陛下がお嫌でなければ、是非ご一緒させていただきたいです」
「わ…私は決して嫌だなんて思っていない!君がそれでよければ…」
「よかったですわ。それでは早速今日の夕食から、ご一緒させていただいてよろしいでしょうか?」
「あ…ああ」
「それでは私はこれで失礼いたしますわ」
陛下に頭を下げ、そのまま去ろうとしたのだが…
「ア…アナスタシア嬢…その…もしよければ、部屋まで送らせてもらってもいいだろうか?もちろん、嫌ならいいのだが」
下を向いて呟く陛下。
「まあ、送って頂けるのですか?それは嬉しいですわ。それでは参りましょう」
スッと彼の手を取り、そのまま歩き出そうとしたのだが、なぜか固まって動かない。一体どうしたのかしら?
「どうかされましたか?」
「…イヤ…その…手が…」
「手?」
コテンと首をかしげる。通常男性にエスコートされる場合、腕を組んだり手を繋ぐのが普通のはずだが…もしかしてこの国では普通ではないのかしら?
「あの…」
「アナスタシア様、申し訳ございません。陛下は令嬢に全く免疫がありませんでして、貴族の常識をあまり理解できていないのです。陛下、貴族界では令嬢をエスコートする場合、腕を組んだり手を繋ぐことは、ごく一般的でございます。陛下も少しは男女に関するマナーを身に付けられた方がよろしいですわね」
クロハがため息を付きながら、陛下に話している。よかった、私の常識が間違っていた訳ではないのね。
「そうか…すまない。私はあまり令嬢と関わった事がなくて…その…」
「気にしないで下さい、陛下。でも、あまり令嬢に免疫がないとなると、今後奥様を迎え入れた時にお困りになりますね。そうですわ、どうか私で免疫を付けて下さい。私は本当に何の役にも立たない人間ですが、一応令嬢ですので、そういった事なら協力出来ますわ」
「君は何の役も経たない令嬢ではない!それに、私の為にそこまでしてもらうのは…」
「陛下、またその様な事を。せっかくアナスタシア様がそうおっしゃって下さっているのですよ。ここは素直に受けるべきです。それに21年間生きてこられて、やっとあなた様と普通に接してくれる令嬢が現れたのです!このチャンス、逃がしてどうするのですか?」
陛下って21歳だったのね。あまりにも勇ましいから、もっと年上かと思ったわ…て、そんな失礼な事を考えてはいけないわよね。
「陛下、あなた様は私の命の恩人です。どうか私に恩返しをするチャンスを与えて下さいませんでしょうか?それに私、誰かの役に立てると思うと嬉しいのです。私はもう、誰からも必要とされていない人間なので…」
生まれてからずっと、政治の道具として今まで生きて来た。それでも私を大切にしてくれたルイス様のため、必死に頑張って来たのだ。そんな彼も私から離れて行った。それに親友だと思っていたマルモットにも裏切られ、何より姉の様に慕っていたメイドのリーナも殺されてしまった。
本当にもう私は、誰からも必要とされていないのだ。
「アナスタシア嬢、どうかそんな悲しそうな顔をしないでくれ。君が私の為に協力してくれると言うのなら、ぜひ協力して欲しい。ただ…無理はして欲しくはない。君はとても、美しい女性だ…私の様な野獣と一緒にいて辛いと感じたら、止めてもらっても構わないから…」
野獣?
「怪物の次は野獣ですか。陛下、そんなに謙遜されなくても大丈夫ですわ。あっ、でも野獣の様にお強いという事なら納得いきますわね。それに私は、あまりひょろっこい人よりも、勇ましい人の方が男らしくて素敵だと思いますよ」
随分と陛下は自己評価が低い様だ。
「それでは、参りましょう」
陛下に負担がかからない様に、今度はそっと腕に手を添えた。
「ああ、行こうか」
どうやら緊張している様で、歩き方が若干変だ。それでも私の歩調に合わせてくれている。ちょっとした気遣いが嬉しい。
「お部屋まで送って下さり、ありがとうございます。それでは、また後程」
「…ああ…また夕食の時に」
部屋まで送ってくれた陛下に手を振って見送る。すると
ゴンっと、なぜか扉で頭を強打した陛下。
「陛下、大丈夫ですか?物凄い音がしましたが…」
「ああ…大したことはない。それでは失礼する」
陛下が頭を押さえつつ、すごい勢いで去って行った。本当に大丈夫かしら?
何はともあれ、陛下にきちんとお礼が言えてよかったわ。それに、しばらくはここに置いてもらえそうだし。ホッと胸をなでおろすのであった。
「そうですね、そろそろ戻りますわ。陛下、今日は色々とお話に付き合って下さり、ありがとうございます。あの…陛下、もしよろしければ、またこうやって話し相手になって頂けますか?私、クロハくらいしか話し相手がいなくて…」
「それなら、私より女性の方がいいだろう。早速誰か夫人か令嬢を…」
「まあ、それは素晴らしいです。そうですわ、せっかく同じ王宮に住んでいらっしゃるのですもの。お2人で食事をしたらいかがでしょうか?」
陛下の言葉を遮る様に、クロハがそんな提案をしてくれた。
「それは素敵ですわ。陛下がお嫌でなければ、是非ご一緒させていただきたいです」
「わ…私は決して嫌だなんて思っていない!君がそれでよければ…」
「よかったですわ。それでは早速今日の夕食から、ご一緒させていただいてよろしいでしょうか?」
「あ…ああ」
「それでは私はこれで失礼いたしますわ」
陛下に頭を下げ、そのまま去ろうとしたのだが…
「ア…アナスタシア嬢…その…もしよければ、部屋まで送らせてもらってもいいだろうか?もちろん、嫌ならいいのだが」
下を向いて呟く陛下。
「まあ、送って頂けるのですか?それは嬉しいですわ。それでは参りましょう」
スッと彼の手を取り、そのまま歩き出そうとしたのだが、なぜか固まって動かない。一体どうしたのかしら?
「どうかされましたか?」
「…イヤ…その…手が…」
「手?」
コテンと首をかしげる。通常男性にエスコートされる場合、腕を組んだり手を繋ぐのが普通のはずだが…もしかしてこの国では普通ではないのかしら?
「あの…」
「アナスタシア様、申し訳ございません。陛下は令嬢に全く免疫がありませんでして、貴族の常識をあまり理解できていないのです。陛下、貴族界では令嬢をエスコートする場合、腕を組んだり手を繋ぐことは、ごく一般的でございます。陛下も少しは男女に関するマナーを身に付けられた方がよろしいですわね」
クロハがため息を付きながら、陛下に話している。よかった、私の常識が間違っていた訳ではないのね。
「そうか…すまない。私はあまり令嬢と関わった事がなくて…その…」
「気にしないで下さい、陛下。でも、あまり令嬢に免疫がないとなると、今後奥様を迎え入れた時にお困りになりますね。そうですわ、どうか私で免疫を付けて下さい。私は本当に何の役にも立たない人間ですが、一応令嬢ですので、そういった事なら協力出来ますわ」
「君は何の役も経たない令嬢ではない!それに、私の為にそこまでしてもらうのは…」
「陛下、またその様な事を。せっかくアナスタシア様がそうおっしゃって下さっているのですよ。ここは素直に受けるべきです。それに21年間生きてこられて、やっとあなた様と普通に接してくれる令嬢が現れたのです!このチャンス、逃がしてどうするのですか?」
陛下って21歳だったのね。あまりにも勇ましいから、もっと年上かと思ったわ…て、そんな失礼な事を考えてはいけないわよね。
「陛下、あなた様は私の命の恩人です。どうか私に恩返しをするチャンスを与えて下さいませんでしょうか?それに私、誰かの役に立てると思うと嬉しいのです。私はもう、誰からも必要とされていない人間なので…」
生まれてからずっと、政治の道具として今まで生きて来た。それでも私を大切にしてくれたルイス様のため、必死に頑張って来たのだ。そんな彼も私から離れて行った。それに親友だと思っていたマルモットにも裏切られ、何より姉の様に慕っていたメイドのリーナも殺されてしまった。
本当にもう私は、誰からも必要とされていないのだ。
「アナスタシア嬢、どうかそんな悲しそうな顔をしないでくれ。君が私の為に協力してくれると言うのなら、ぜひ協力して欲しい。ただ…無理はして欲しくはない。君はとても、美しい女性だ…私の様な野獣と一緒にいて辛いと感じたら、止めてもらっても構わないから…」
野獣?
「怪物の次は野獣ですか。陛下、そんなに謙遜されなくても大丈夫ですわ。あっ、でも野獣の様にお強いという事なら納得いきますわね。それに私は、あまりひょろっこい人よりも、勇ましい人の方が男らしくて素敵だと思いますよ」
随分と陛下は自己評価が低い様だ。
「それでは、参りましょう」
陛下に負担がかからない様に、今度はそっと腕に手を添えた。
「ああ、行こうか」
どうやら緊張している様で、歩き方が若干変だ。それでも私の歩調に合わせてくれている。ちょっとした気遣いが嬉しい。
「お部屋まで送って下さり、ありがとうございます。それでは、また後程」
「…ああ…また夕食の時に」
部屋まで送ってくれた陛下に手を振って見送る。すると
ゴンっと、なぜか扉で頭を強打した陛下。
「陛下、大丈夫ですか?物凄い音がしましたが…」
「ああ…大したことはない。それでは失礼する」
陛下が頭を押さえつつ、すごい勢いで去って行った。本当に大丈夫かしら?
何はともあれ、陛下にきちんとお礼が言えてよかったわ。それに、しばらくはここに置いてもらえそうだし。ホッと胸をなでおろすのであった。
249
あなたにおすすめの小説
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる
ラム猫
恋愛
王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています
※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。
愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」
「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」
「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」
貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・?
何故、私を愛するふりをするのですか?
[登場人物]
セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。
×
ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。
リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。
アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?
醜女の私と政略結婚した旦那様の様子がおかしい
サトウミ
恋愛
この国一番の醜女である私と結婚したイバン様。眉目秀麗で数多の女性と浮き名を流した彼は、不祥事を起こしたせいで私なんかと結婚することになってしまった。それでも真面目な彼は、必死に私を愛そうと努力してくださる。
──無駄な努力だ。
こんな色白で目と胸の大きい女を、愛せるはずがない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる