16 / 35
第16話:気持ちが次第に大きくなっていく~カイ視点~
しおりを挟む
翌日も、アナスタシア嬢と楽しい朝食の時間を過ごした。本当に彼女は良く笑う。その笑顔を見ると、どうしても鼓動が早くなってしまうのだ。
動揺する心を必死に落ち着かせ、食後はいつもの様に稽古に励む。今は平和だが、いつ何時戦争が勃発するか分からない。その為、いつでも戦いに出られる様、日々危機感を持って稽古に励んでいるのだ。
そんな中、なんとクロハがアナスタシア嬢を連れて来たのだ。こんなむさ苦しい場所に、アナスタシア嬢を連れてくるだなんて。それも、ここにはたくさんのむさ苦しい男がいるのだぞ!
そんな思いから、急いで部屋に送ったのだが…
私が差し出した手をスッと握ってくれたアナスタシア嬢。柔らくて温かい感触が手から伝わり、一気に鼓動が早くなる。
冷静を装うのに必死で、正直何を話したのか覚えていない。無事アナスタシア嬢を送り届けた後、すぐに稽古場に戻ると…
「陛下、あの美しい令嬢は一体誰なのですか?陛下の顔を見ても怯えていませんでしたね。それどころか、自ら手を握っておられました」
「陛下、良かったですね。でも、あんな令嬢、この国いましたか?」
一気に騎士たちに囲まれた。騎士と言っても、ほとんどが貴族の令息たち。さて、なんと説明しようか?
「あの水色の髪色は、確か少し前に海岸に倒れていた女性ではないでしょうか?」
「そういえばそんな令嬢がいたと聞いた事がある。スパイではないのですよね?」
「ああ…スパイではない様だ。それにどうやら高貴な身分の様だし。ただ、理由があって国には帰れないらしい」
「令嬢が国に帰れないとなると、家が没落したか犯罪者かのどちらかでしょう。陛下、とにかくあの女性の身元が分からない限り、結婚は厳しそうですね」
「け…結婚だなんて…彼女だって選ぶ権利があるのだから」
どいつもこいつも、結婚結婚とうるさい奴らだ。
「とにかく、至急令嬢の調査を開始しましょう」
「それなら、もう調査を始めているよ。水色の髪色は珍しいからね。近いうちに見つかるだろう」
「さすが陛下、もう調査を進めていらっしゃるのですね。まあ、家が没落して本人に非がないのでしたら、陛下との結婚は問題ないですが、もし本人に非があるのだとしたら、結婚は厳しそうですね。でも、せっかく陛下を見ても怖がらない猛者が現れたのに、このチャンスを逃すわけにはいきませんね。どこかの貴族の養子に入れてから、婚儀を結べば問題ないかと」
「それがいいですな。あの令嬢を逃したら、きっと陛下は一生結婚できないでしょう。陛下、分かっていますね。あの令嬢の心を絶対に掴むのですよ!」
そう皆に言われてしまった。どいつもこいつもアナスタシア嬢の気持ちを無視して!
稽古が終わると、急いで湯あみをして昼食をとるため、食堂へと向かう。すると、既に彼女が来ていた。
「陛下、稽古お疲れ様でした。急に押しかけて、申し訳ございませんでした。それにしても、やはり国を守る騎士様はとても勇ましく、素敵ですわね。もちろん陛下も」
そう言ってほほ笑んでくれたのだ。この子は、本当に私を喜ばせる天才だな。そんな事を言われて、喜ばない男などいないだろう。
その後も嬉しそうに話をするアナスタシア嬢。食後はアナスタシア嬢を部屋まで送った。翌日も、その翌日も、一緒に食事をする。気が付くと、アナスタシア嬢と一緒に食事をするのが、当たり前になっていた。
それに彼女は話し上手で、一緒にいても話題が尽きる事がない。
さらに私の為に、刺しゅう入りのハンカチを10枚もくれた。私の前で、溢れんばかりの笑顔を向けてくれるアナスタシア嬢。彼女の笑顔を見るだけで、なぜか心が満たされるのだ。
日に日に私の中で、彼女の存在が大きくなっていくとともに、彼女と未来を歩めたら…そんな淡い期待を抱くようにもなった。
でも…私は弟と母親を殺した冷酷な男だ。そんな私に、アナスタシア嬢の様な令嬢は勿体なすぎる。だから、彼女が幸せになれる様、全力でサポートしよう。それが私に出来る唯一の事だから。
彼女が幸せなら、私も幸せだ。たとえずっと一緒にいられなくても。
そして私は、ある決断をする。そう、王族のみに代々伝わる、隠し部屋の存在を彼女に明かすことにしたのだ。
今は平和でも、万が一この国が再び戦わなければいけなくなった時、アナスタシア嬢の命を守るために。正直彼女の身分がまだ確定していない今、隠し通路を教える事はリスクも伴う。でも…それでもやはり、彼女にはこの通路の存在を知っておいて欲しいと思ったのだ。
もしもの時の為に、彼女を守れる様に…
※次回、アナスタシア視点に戻ります。
よろしくお願いいたします。
動揺する心を必死に落ち着かせ、食後はいつもの様に稽古に励む。今は平和だが、いつ何時戦争が勃発するか分からない。その為、いつでも戦いに出られる様、日々危機感を持って稽古に励んでいるのだ。
そんな中、なんとクロハがアナスタシア嬢を連れて来たのだ。こんなむさ苦しい場所に、アナスタシア嬢を連れてくるだなんて。それも、ここにはたくさんのむさ苦しい男がいるのだぞ!
そんな思いから、急いで部屋に送ったのだが…
私が差し出した手をスッと握ってくれたアナスタシア嬢。柔らくて温かい感触が手から伝わり、一気に鼓動が早くなる。
冷静を装うのに必死で、正直何を話したのか覚えていない。無事アナスタシア嬢を送り届けた後、すぐに稽古場に戻ると…
「陛下、あの美しい令嬢は一体誰なのですか?陛下の顔を見ても怯えていませんでしたね。それどころか、自ら手を握っておられました」
「陛下、良かったですね。でも、あんな令嬢、この国いましたか?」
一気に騎士たちに囲まれた。騎士と言っても、ほとんどが貴族の令息たち。さて、なんと説明しようか?
「あの水色の髪色は、確か少し前に海岸に倒れていた女性ではないでしょうか?」
「そういえばそんな令嬢がいたと聞いた事がある。スパイではないのですよね?」
「ああ…スパイではない様だ。それにどうやら高貴な身分の様だし。ただ、理由があって国には帰れないらしい」
「令嬢が国に帰れないとなると、家が没落したか犯罪者かのどちらかでしょう。陛下、とにかくあの女性の身元が分からない限り、結婚は厳しそうですね」
「け…結婚だなんて…彼女だって選ぶ権利があるのだから」
どいつもこいつも、結婚結婚とうるさい奴らだ。
「とにかく、至急令嬢の調査を開始しましょう」
「それなら、もう調査を始めているよ。水色の髪色は珍しいからね。近いうちに見つかるだろう」
「さすが陛下、もう調査を進めていらっしゃるのですね。まあ、家が没落して本人に非がないのでしたら、陛下との結婚は問題ないですが、もし本人に非があるのだとしたら、結婚は厳しそうですね。でも、せっかく陛下を見ても怖がらない猛者が現れたのに、このチャンスを逃すわけにはいきませんね。どこかの貴族の養子に入れてから、婚儀を結べば問題ないかと」
「それがいいですな。あの令嬢を逃したら、きっと陛下は一生結婚できないでしょう。陛下、分かっていますね。あの令嬢の心を絶対に掴むのですよ!」
そう皆に言われてしまった。どいつもこいつもアナスタシア嬢の気持ちを無視して!
稽古が終わると、急いで湯あみをして昼食をとるため、食堂へと向かう。すると、既に彼女が来ていた。
「陛下、稽古お疲れ様でした。急に押しかけて、申し訳ございませんでした。それにしても、やはり国を守る騎士様はとても勇ましく、素敵ですわね。もちろん陛下も」
そう言ってほほ笑んでくれたのだ。この子は、本当に私を喜ばせる天才だな。そんな事を言われて、喜ばない男などいないだろう。
その後も嬉しそうに話をするアナスタシア嬢。食後はアナスタシア嬢を部屋まで送った。翌日も、その翌日も、一緒に食事をする。気が付くと、アナスタシア嬢と一緒に食事をするのが、当たり前になっていた。
それに彼女は話し上手で、一緒にいても話題が尽きる事がない。
さらに私の為に、刺しゅう入りのハンカチを10枚もくれた。私の前で、溢れんばかりの笑顔を向けてくれるアナスタシア嬢。彼女の笑顔を見るだけで、なぜか心が満たされるのだ。
日に日に私の中で、彼女の存在が大きくなっていくとともに、彼女と未来を歩めたら…そんな淡い期待を抱くようにもなった。
でも…私は弟と母親を殺した冷酷な男だ。そんな私に、アナスタシア嬢の様な令嬢は勿体なすぎる。だから、彼女が幸せになれる様、全力でサポートしよう。それが私に出来る唯一の事だから。
彼女が幸せなら、私も幸せだ。たとえずっと一緒にいられなくても。
そして私は、ある決断をする。そう、王族のみに代々伝わる、隠し部屋の存在を彼女に明かすことにしたのだ。
今は平和でも、万が一この国が再び戦わなければいけなくなった時、アナスタシア嬢の命を守るために。正直彼女の身分がまだ確定していない今、隠し通路を教える事はリスクも伴う。でも…それでもやはり、彼女にはこの通路の存在を知っておいて欲しいと思ったのだ。
もしもの時の為に、彼女を守れる様に…
※次回、アナスタシア視点に戻ります。
よろしくお願いいたします。
204
あなたにおすすめの小説
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる
ラム猫
恋愛
王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています
※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。
愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」
「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」
「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」
貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・?
何故、私を愛するふりをするのですか?
[登場人物]
セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。
×
ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。
リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。
アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?
醜女の私と政略結婚した旦那様の様子がおかしい
サトウミ
恋愛
この国一番の醜女である私と結婚したイバン様。眉目秀麗で数多の女性と浮き名を流した彼は、不祥事を起こしたせいで私なんかと結婚することになってしまった。それでも真面目な彼は、必死に私を愛そうと努力してくださる。
──無駄な努力だ。
こんな色白で目と胸の大きい女を、愛せるはずがない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる