殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi

文字の大きさ
22 / 35

第22話:僕の大切な人~ルイス視点~

「殿下、アナスタシア様が見つかったそうです」

「それは本当かい?それで、アナスタシアはどこにいるのだい?」

「はい、バーイン王国にいらっしゃるとの事です。わざわざバーイン王国の使者がいらして、教えてくださいました」

「バーイン王国…あそこは少し前まで隣国と争いをしていた国だ。どうしてそんなところに…」

「はい、使者の話では、どうやらアナスタシア様はこの国で誘拐され、船で移動中、嵐に合い難破したそうです。そしてたまたまバーイン王国の王宮所有の海岸で意識を失っているところを、助けられたそうです」

「そうだったのか…可哀そうに、すぐにアナスタシアを迎えに行こう」

「お待ちください、殿下。使者の話では、アナスタシア様は国に帰る事を拒んでいるとの事です。殿下がアナスタシア様を探しているという事を知ったあちらの国王陛下の指示で、生存の報告をと思って、わざわざ我が国に来てくださったそうで。それにあちらの国王陛下は、アナスタシア様を妻として迎え入れたいそうでして…」

「国に帰りたくないとは、どういうことだ?それにアナスタシアを妻にするだって?ふざけないでくれ!確かにあの時、アナスタシアは親友でもあるマルモットに裏切られ、絶望の淵にいた。それに、僕とマルモットが結婚した事にも、ショックを受けていたのも知っている。でも今は、あの女はもうこの世にはいない。アナスタシアには改めて、正室として僕に嫁いできてくれたらと考えているのだ。きっとアナスタシアも、今の状況を知れば、帰って来てくれるはず。とにかく、バーイン王国に向かおう」

「…分かりました。それでは準備が整い次第、出発いたしましょう」

アナスタシア…よかった、生きていたのだね。彼女がいなくなって半年、彼女が生きている事をずっと願ってきた。

そんなアナスタシアが、生きている。そう思ったら、涙が込みあげてきた。思い返してみればこの3年半、僕はずっと彼女を求め続けてきた。

アナスタシアと出会ったのは、僕たちが7歳の時。王宮で行われたお茶会だった。僕のお妃になりたい令嬢たちが僕を囲む中、なぜか王宮で飼っている犬のマルに夢中だったのが、アナスタシアだ。

無邪気にマルと遊ぶ姿が可愛くて、後日彼女を王宮に呼び出した。そこでも僕に媚を売ることなく、楽しそうにマルと遊ぶ無邪気な姿を見た瞬間、僕は彼女に恋をしたのだ。それからと言うもの、僕はずっと彼女に寄り添って生きて来た。

両親から冷遇されていたアナスタシアだったが、そんな事をみじんも感じさせず、いつも元気いっぱいだった彼女に、僕はどんどん惹かれて行った。そしてアナスタシアは、自分の意見をはっきりと言う令嬢だった。

彼女が“側室を持たないで欲しい”と、事あるごとに言っていたので、僕は側室を絶対持たないとも約束した。僕が約束すると、それはそれは嬉しそうに笑ったアナスタシア。孤児院にも積極的に出向き、どんな子にも分け隔てなく優しさと愛情を与えるアナスタシア。

王妃教育も、泣き言一つ言わずにこなしていた。誰にでも優しく、それでいて芯が通っている彼女を、父上や母上もとても気に入っていた。このまま僕たちは結婚して、幸せに暮らす、そう思っていた。でも…

事件は起きた。そう、アナスタシア毒殺未遂事件だ。アナスタシアは学院内で毒を盛られたのだ。犯人は捕まり、即刻処刑された。そして当のアナスタシアはなんとか一命を取り留めたが、毒のせいでずっと眠ったまま。

それでも僕は、アナスタシアが目覚めてくれるのを待ち続けた。でも、1年が過ぎた頃、あの女が僕に近づいて来たのだ。そう、アナスタシアの親友、マルモットだ。

「殿下、申し訳ございません。私がそばにいながら、大切な親友、アナスタシアを守れませんでした。あの日からもう1年も経つと言うのに、私の心はずっとあの日から止まったまま…殿下、私はあなた様の気持ちが痛いほどわかるのです。だって私たちは、共に大切な人を思い、心から目覚めるのを待ち続けているのですから…」

そう言って僕の手を握ったマルモット。そうか、彼女も親友を思って、ずっと苦しんでいるのだな。誰も僕の辛さを分かってくれない…そう思っていた。でも、マルモットだけは、僕の気持ちを分かってくれる。

その日から、僕たちは仲を深めて行った。そしてアナスタシアが意識を失ってから2年半後、僕たちは結婚した。アナスタシアの父親は怒っていたが、アナスタシアが目覚めない以上、どうする事も出来ないのだ。

それにマルモットは、僕の気持ちを誰よりも理解してくれていた。僕がアナスタシアの事を思っている事も知っているため

「私はルイス様が、どれほどアナスタシアを愛しているか知っておりますわ。だから、万が一アナスタシアが目覚めたら、その時は身を引いてもいいと考えておりますの。私にとって、2人の幸せが一番の幸せなので」

そう常々言ってくれていた。本当にマルモットは優しくていい子だ。それでもやっぱり僕は、アナスタシアが一番好きだけれど…

アナスタシア、君の為に2人で色々と準備を整えているよ。だからどうか目覚めて欲しい、そう僕は願っていた。

あなたにおすすめの小説

戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました

Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。 「彼から恋文をもらっていますの」。 二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに? 真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。 そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

王太子殿下との思い出は、泡雪のように消えていく

木風
恋愛
王太子殿下の生誕を祝う夜会。 侯爵令嬢にとって、それは一生に一度の夢。 震える手で差し出された御手を取り、ほんの数分だけ踊った奇跡。 二度目に誘われたとき、心は淡い期待に揺れる。 けれど、その瞳は一度も自分を映さなかった。 殿下の視線の先にいるのは誰よりも美しい、公爵令嬢。 「ご一緒いただき感謝します。この後も楽しんで」 優しくも残酷なその言葉に、胸の奥で夢が泡雪のように消えていくのを感じた。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」「エブリスタ」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎泡雪 / 木風 雪乃

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

【完結】どうか私を思い出さないで

miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。 一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。 ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。 コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。 「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」 それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。 「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」