殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi

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第27話:アナスタシアの幸せを祈って…~カイ視点~

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アナスタシアに自分の過去を話して、1ヶ月が過ぎようとしていた。先日カルビア王国から調査団が無事帰国した。一応アナスタシアの事は、カルビア王国の王宮には知らせてきたとの事だった。

「陛下、カルビア王国には我が国にアナスタシア様がいらっしゃることを報告しましたので、これで心置きなくアナスタシア様と結婚できますね」

そう言って嬉しそうに微笑む家臣たち。

「お前たち、先走りすぎだ。彼女にも選ぶ権利があるのだからな」

多分だが、私はアナスタシアに嫌われてはいないだろう。でも、やはり結婚となると、彼女の気持ちも大切にしたい。

「陛下、あなた様はもう21歳なのですよ。とにかくアナスタシア様との結婚を進めないと!陛下が話せないなら、私からアナスタシア様に話しをさせていただきます!」

家臣が鼻息荒く私に迫って来た。

「待て、落ち着いてくれ。分かった、近いうちに結婚を申し込む。だから、とにかくもう少し待ってくれ」

必死に家臣をなだめる。

「はぁ~、分かりました。陛下は戦や統治に関しては天才的な才能を発揮するのに、女性の事になると、途端に腰抜けになってしまわれるのですから…とにかく、数日中にアナスタシア様に結婚を申し込むのですよ。分かりましたね」

「分かっている!だから、あまりせかさないでくれ!」

本当に家臣どもときたら、せっかちな奴ばかりで嫌になる。でも…きっと私の事を普通の人間として見れてくれる令嬢なんて、この先一生現れないだろう。それに何より、私自身、アナスタシアを愛している。

私の手で彼女を幸せに出来たら…

そんな思いから、今日もアナスタシアと一緒に浜辺で貝を拾う。アナスタシアは本当に海が好きで、毎日海に来ている。

「カイ様、こっちにも綺麗な貝がありますわ。あっ、こっちにも」

嬉しそうに貝を拾うアナスタシアを見ていると、私まで幸せな気持ちになる。このままずっと、アナスタシアが傍にいてくれたら…

その時だった。家臣が、来客が来ていると私を呼びに来たのだ。来客?もしかして隣国の人間か?そう思ったが、どうやら違う様だ。

急いで来客の待つ客間に行くと、そこには金色の髪に緑色の瞳をした美しい男性が待っていた。見た感じ、どこかの王族の様だ。後ろには何人もの家臣が控えていた。

私の顔を見た瞬間、一瞬怯えた表情をしたが、一呼吸すると

「あなた様がバーイン王国の国王陛下ですね。急に訪ねてしまい、申し訳ございません。私はカルビア王国の王太子、ルイス・ディーズ・カルビアと申します。アナスタシアを迎えに来ました」

私の方を真っすぐ見つめ、そう伝えてきたのだ。アナスタシアを迎えに来た?一体どういう事だ?

「アナスタシアを迎えに来たとは、一体どういう事でしょうか?」

訳が分からず聞き返した。彼はアナスタシアの父親の手前、建前でアナスタシアを探していたのではないのか?そう思っていたのだが、実際の話は全く違った。ルイス殿下からその話を聞かされた時、あまりの衝撃で頭が真っ白になった。

「僕はアナスタシアを、誰よりも愛しています。もちろん、アナスタシアも僕を愛していました。アナスタシアにはあの女のせいで、辛い思いをさせてしまった分、これからは僕が彼女を幸せにするつもりです」

そう言ってほほ笑んだルイス殿下。こんなにも美しい男性に、私が敵う訳ない。彼の微笑を見て、そう確信した。

それにアナスタシアはルイス殿下と親友が結婚していた事、さらに親友に裏切られた事に絶望して国を出てきたのだ。親友は内内とはいえ断罪され、正室として国に戻れるのなら、これ以上幸せな事はないだろう。

カルビア王国は戦争のない平和な国だと聞くし、何よりもこんなにも美しい婚約者の元に戻れるのだから。笑顔でアナスタシアを送り出してやることが、私にできる唯一の事だろう。

それが私にとって、どんなに辛い事だったとしても…
でも、私は大丈夫だ。元々結婚は諦めていたし、当初の予定通り、優秀な人間を養子に迎え入れ、その子を次の国王にすればいいのだから…

その後アナスタシアとルイス殿下を会わせた結果、明日この国を出る事が決まった。明日にはアナスタシアはこの国を出て行ってしまう…

そう思ったら、胸が押しつぶされそうになった。それでも私は、アナスタシアの幸せの為に、身を引く事に決めたのだ。

「陛下、本当にアナスタシア様を国に返してもよろしいのですか?アナスタシア様、とても悲しそうな顔をしておりましたよ」

そんな私の元にやって来たのは、アナスタシアの専属メイド、クロハだ。

「アナスタシアは急にカルビア王国の王太子殿下がやって来たから、驚いているのだろう。クロハだって王太子殿下の話を聞いていただろう?アナスタシアを裏切った侯爵令嬢は断罪されてもうこの世にはいないんだ。アナスタシアはあの美しい王子の正妻として、国で幸せに暮らせる。彼女は辛い思いをして来たのだが、絶対に幸せになるべきなんだよ」

「私もアナスタシア様には幸せになって欲しいと思っております。でも…アナスタシア様を見ていると、国に帰りたいように思えないのです。もしかしたら…」

「クロハ、お前の気持ちもわかる。でも、アナスタシアは国に帰った方がいいんだ。もうこの話しは終わりだ。出て行ってくれ」

クロハの話を遮り、部屋から追い出した。

その瞬間、瞳から涙が溢れ出る。クソ、どうして涙が溢れるんだ。泣いたって仕方がないのに…

胸が押しつぶされそうなくらい苦しい。でも…アナスタシアの事を考えたら、これでよかったんだ…そう、これで…
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