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第30話:奇跡が起きた様だ~カイ視点~
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「私は、あなた様を愛…」
「待ってくれ、アナスタシア。君の話を遮って申し訳ないが、まずは私の話を聞いてくれ!」
アナスタシアの前ぶりで、私はアナスタシアが何を言おうとしているのか気が付いた。少し卑怯かもしれないが、自分から気持ちを伝えたい、そう思ったのだ。
ゆっくり深呼吸をする。そして
「アナスタシア、私は君に出会って、初めて女性の温もりや温かさを知った。アナスタシアが嬉しそうにしていると、私の心も温かくなる。アナスタシアが悲しそうにしていると、私の心はぎゅっと締め付けられ、苦しくて仕方なくなる。そして今回、君の幸せを願って国に帰る様に勧めたものの、苦しくてたまらなかった。私はアナスタシアを愛している。ただ、この国はいつ戦争に巻き込まれるか分からない。それでも私は、アナスタシアとずっと一緒にいられたら、この国を支えてくれたらと考えているんだ」
そう伝えると、ポケットに入れてあった指輪を取り出した。そしてアナスタシアの前にひざまずく。
「アナスタシア、どうか私と結婚してくれませんか?」
真っすぐ彼女の瞳を見つめ、気持ちを伝えた。すると再びアナスタシアの瞳から、ポロポロと涙が溢れだす。そして…
「カイ様…私もあなた様が大好きです。全てを失い身も心も傷ついた私に、再び生きる希望を与えて下さったあなた様の傍に、ずっといたいです。どうかよろしくお願いします」
そう言って頭を下げたアナスタシア。そんなアナスタシアを、抱きしめた。そして指輪を取り出し、彼女の左手の薬指にはめる。
「アナスタシア、知っているかい?この国では、生涯を共にする伴侶にはこうやって指輪を渡すのだよ。そして、左手の薬指にはめるんだ。左手の薬指には愛や絆を深める、相手の心を受け入れるという意味があるんだよ。この指輪は、代々王家に受け継がれていたもので、王妃のみが付ける事が許される指輪なんだ」
「まあ、左手の薬指にはその様な意味があるのですね。素敵ですわ。でも、王家に伝わる大切な指輪を、私の様な者が付けても良いのでしょうか?」
不安そうな顔で訪ねてくるアナスタシア。彼女は相変わらず謙虚だな。そんなところも、アナスタシアの魅力ではあるが。
「さっき私の妻になる事を受け入れてくれたではないか。私はこの国の国王だ、国王の妻になるのだから、君はこの指輪を受け継ぐ権利がある。ただこの指輪は、結婚式など大切な時にはめるものだから、普段付ける指輪はまた今度贈らせてほしい。それにこの指輪、アナスタシアの指に合っていないしな…」
「確かに少し大きい様ですわね。落とすと大変なので、大切に箱にしまっておきますわ」
そう言ってほほ笑んだアナスタシア。
「さあ、皆も心配しているし、地上に戻ろう。それにしても、いつの間に私の部屋に入り込んだんだい?私の部屋には、護衛騎士たちがいるはずだが…」
「実はルイス様が帰るまでこっそりどこかに隠れていようと考えていた事をクロハに気づかれてしまい、それで色々と協力してくれたのです。クロハは本当に私とカイ様の事を考えてくれている、素敵なメイドですわ。それに一部の護衛騎士たちも協力してくれましたし。…カイ様、クロハや護衛騎士たちは、私の為に動いて下さったのですから、怒らないであげて下さいね」
アナスタシアが心配そうに私を見つめる。
「アナスタシアがそう言うなら、分かったよ。それよりアナスタシア、君の行動力はすさまじいね。でも、今後は私の妻として王妃として過ごしてもらう事になる。だから、あまり騒ぎを起こす様な事はしないでくれよ。何より、私の心臓が持たない」
アナスタシアがいなくなったと聞いて、どれほど心配したか。少なくとも10年は寿命が縮まった。
「ごめんなさい…これからは気を付けますわ。私はつい後先考えずに行動してしまう様で。これからは何でもカイ様に相談しますね」
「そうしてくれると有難い。私も思い込みが激しいところがあるからな…これからは、お互い気になる事はとことん話し合おう。言葉にしないと、やはり伝わらないからな」
「はい、承知いたしましたわ。それでは早速ですが、ルイス様はどういたしましょう?」
ルイス殿下か…
アナスタシアと心が通じ合った喜びが大きすぎて、すっかり忘れていた。
「そうだな、本当の事を話して、諦めてもらおう。大丈夫だ、アナスタシアが私の傍にいてくれると言ってくれた今、何が何でも君を手放すつもりはないから。だから安心して欲しい。もしアナスタシアがルイス殿下に会いたくないというなら、私が彼に話を付けるが、どうする?」
私の問いかけに、少し考えた後
「私も一緒に参りますわ。私もルイス殿下には言いたい事がありますし。やはり私の口からきちんと伝えるべきだと思います。よく考えてみたら、私は今までずっと自分の気持ちに蓋をして、逃げてきましたから。だから、今度は逃げずに自分の気持ちをしっかり伝えます」
そう言ってほほ笑んだアナスタシア。
「そうか、それじゃあ、行こうか」
「はい」
2人でしっかり手を繋ぐ。アナスタシアと心が通じ合った今、もう怖いものはない。彼には誠心誠意私たちの気持ちを伝え、お引き取り願おう。
とにかく、アナスタシアだけは絶対に守らないと。
※次回アナスタシア視点に戻ります。
よろしくお願いいたします。
「待ってくれ、アナスタシア。君の話を遮って申し訳ないが、まずは私の話を聞いてくれ!」
アナスタシアの前ぶりで、私はアナスタシアが何を言おうとしているのか気が付いた。少し卑怯かもしれないが、自分から気持ちを伝えたい、そう思ったのだ。
ゆっくり深呼吸をする。そして
「アナスタシア、私は君に出会って、初めて女性の温もりや温かさを知った。アナスタシアが嬉しそうにしていると、私の心も温かくなる。アナスタシアが悲しそうにしていると、私の心はぎゅっと締め付けられ、苦しくて仕方なくなる。そして今回、君の幸せを願って国に帰る様に勧めたものの、苦しくてたまらなかった。私はアナスタシアを愛している。ただ、この国はいつ戦争に巻き込まれるか分からない。それでも私は、アナスタシアとずっと一緒にいられたら、この国を支えてくれたらと考えているんだ」
そう伝えると、ポケットに入れてあった指輪を取り出した。そしてアナスタシアの前にひざまずく。
「アナスタシア、どうか私と結婚してくれませんか?」
真っすぐ彼女の瞳を見つめ、気持ちを伝えた。すると再びアナスタシアの瞳から、ポロポロと涙が溢れだす。そして…
「カイ様…私もあなた様が大好きです。全てを失い身も心も傷ついた私に、再び生きる希望を与えて下さったあなた様の傍に、ずっといたいです。どうかよろしくお願いします」
そう言って頭を下げたアナスタシア。そんなアナスタシアを、抱きしめた。そして指輪を取り出し、彼女の左手の薬指にはめる。
「アナスタシア、知っているかい?この国では、生涯を共にする伴侶にはこうやって指輪を渡すのだよ。そして、左手の薬指にはめるんだ。左手の薬指には愛や絆を深める、相手の心を受け入れるという意味があるんだよ。この指輪は、代々王家に受け継がれていたもので、王妃のみが付ける事が許される指輪なんだ」
「まあ、左手の薬指にはその様な意味があるのですね。素敵ですわ。でも、王家に伝わる大切な指輪を、私の様な者が付けても良いのでしょうか?」
不安そうな顔で訪ねてくるアナスタシア。彼女は相変わらず謙虚だな。そんなところも、アナスタシアの魅力ではあるが。
「さっき私の妻になる事を受け入れてくれたではないか。私はこの国の国王だ、国王の妻になるのだから、君はこの指輪を受け継ぐ権利がある。ただこの指輪は、結婚式など大切な時にはめるものだから、普段付ける指輪はまた今度贈らせてほしい。それにこの指輪、アナスタシアの指に合っていないしな…」
「確かに少し大きい様ですわね。落とすと大変なので、大切に箱にしまっておきますわ」
そう言ってほほ笑んだアナスタシア。
「さあ、皆も心配しているし、地上に戻ろう。それにしても、いつの間に私の部屋に入り込んだんだい?私の部屋には、護衛騎士たちがいるはずだが…」
「実はルイス様が帰るまでこっそりどこかに隠れていようと考えていた事をクロハに気づかれてしまい、それで色々と協力してくれたのです。クロハは本当に私とカイ様の事を考えてくれている、素敵なメイドですわ。それに一部の護衛騎士たちも協力してくれましたし。…カイ様、クロハや護衛騎士たちは、私の為に動いて下さったのですから、怒らないであげて下さいね」
アナスタシアが心配そうに私を見つめる。
「アナスタシアがそう言うなら、分かったよ。それよりアナスタシア、君の行動力はすさまじいね。でも、今後は私の妻として王妃として過ごしてもらう事になる。だから、あまり騒ぎを起こす様な事はしないでくれよ。何より、私の心臓が持たない」
アナスタシアがいなくなったと聞いて、どれほど心配したか。少なくとも10年は寿命が縮まった。
「ごめんなさい…これからは気を付けますわ。私はつい後先考えずに行動してしまう様で。これからは何でもカイ様に相談しますね」
「そうしてくれると有難い。私も思い込みが激しいところがあるからな…これからは、お互い気になる事はとことん話し合おう。言葉にしないと、やはり伝わらないからな」
「はい、承知いたしましたわ。それでは早速ですが、ルイス様はどういたしましょう?」
ルイス殿下か…
アナスタシアと心が通じ合った喜びが大きすぎて、すっかり忘れていた。
「そうだな、本当の事を話して、諦めてもらおう。大丈夫だ、アナスタシアが私の傍にいてくれると言ってくれた今、何が何でも君を手放すつもりはないから。だから安心して欲しい。もしアナスタシアがルイス殿下に会いたくないというなら、私が彼に話を付けるが、どうする?」
私の問いかけに、少し考えた後
「私も一緒に参りますわ。私もルイス殿下には言いたい事がありますし。やはり私の口からきちんと伝えるべきだと思います。よく考えてみたら、私は今までずっと自分の気持ちに蓋をして、逃げてきましたから。だから、今度は逃げずに自分の気持ちをしっかり伝えます」
そう言ってほほ笑んだアナスタシア。
「そうか、それじゃあ、行こうか」
「はい」
2人でしっかり手を繋ぐ。アナスタシアと心が通じ合った今、もう怖いものはない。彼には誠心誠意私たちの気持ちを伝え、お引き取り願おう。
とにかく、アナスタシアだけは絶対に守らないと。
※次回アナスタシア視点に戻ります。
よろしくお願いいたします。
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