殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi

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第29話:彼女の気持ち~カイ視点~

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アナスタシアが行きそうな場所は…やっぱり海だな。アナスタシアの名前を叫びながら、浜辺を歩く。ここにはいないか…それなら中庭か?そう思い、中庭も隅々まで見て回るが、やはりいない。

他にも図書館などを探すが、アナスタシアの姿はどこにもない。他の家臣たちも必死に探しているが、どこを探してもアナスタシアは見つからないのだ。気が付くと、もう日は随分高く昇っている。

「クソ…アナスタシアは一体どこに行ったのだ…」

もしかして王宮の外に出てしまったのか?いいや、我が国の、特に王宮の警備はかなり厳重だ。百歩譲ってアナスタシアが優秀なスパイであったとしても、王宮に出入りするのは至難の業だ。やはりアナスタシアは、まだ王宮内にいるはずだ!

もう一度王宮内を探そうとした時だった。

「陛下、王宮内を隅々まで探しましたが、アナスタシア様の姿はどこにもありませんでした。一体どこにいらっしゃるのでしょうか…もしかして、私たちが知らない隠し通路に隠れていらっしゃるとか…」

隠し通路…
そういえば王族のみ知る隠し部屋を、アナスタシアに教えたことがあった。もしかして…

急いで自室に戻り、そこから隠し通路を通って奥に進む。頼む、あそこにいてくれ!そう願いながら、隠し部屋へと向かう。たくさんある隠し部屋を、1つ1つ扉を開けて確認していく。クソ、どうしてこんなに部屋があるんだ。

とにかく隠し通路にある部屋を片っ端から確認していくが、アナスタシアの姿はどこにもない。

一番奥の隠し部屋からは、そのまま王宮の外に出る事が出来る。もしもあの通路からアナスタシアが外に出てしまっていたら…

もしあの通路を使って裏山に、そして街に出れば、船が沢山出ている。我が国の場合、入国に関しては非常に厳しいが、出国に関しては比較的緩い。もしアナスタシアが、船に乗ってこの国から出て行ってしまったら、もう私にはどうする事も出来ない。

こんな形でアナスタシアを失う事になる何て!こんな事なら、最初からアナスタシアの気持ちを確認しておけばよかった。私は思い込みで突っ走ってしまう癖がある。その悪い癖が、最悪の形で出てしまうだなんて…

もしアナスタシアにまた会えたら、今度こそ彼女の望む様に動こう。それでルイス殿下を怒らせ、カルビア王国との関係が悪くなってしまったとしても…

だから、どうかアナスタシア、部屋にいてくれ。そう願いつつ、隠し部屋をくまなく探す。そして外に繋がる通路がある部屋の扉の前までやって来た。

ゆっくりと扉を開けると…

「アナスタシア!!」

イスに座っているアナスタシアと目が合った。

「カイ様…」

私の姿を見つけたアナスタシアが、その場で立ち上がった。急いでアナスタシアの元に向かい、思いっきり抱きしめる。よかった、アナスタシアがこの部屋にいてくれて。

それにしてもアナスタシアは柔らかくて温かくて、それにいい匂いがする…

「カイ様、あの、ごめんなさい…」

アナスタシアの声で我に返り、急いでアナスタシアから離れた。

「私の方こそすまなかった。急に抱きしめたりして。でも、君がまだ王宮内にいてくれて、本当によかった」

「勝手な事をしてごめんなさい。でも私…」

エメラルドグリーンの瞳からポロポロと涙を流すアナスタシア。そんなアナスタシアに、ハンカチを渡した。もちろん、アナスタシアが入れてくれた刺しゅう入りのハンカチだ。

「アナスタシア、謝るのは私の方だ。君の気持ちも聞かずに、一方的に国に帰る様に勧めてしまい、本当に申し訳なかった。アナスタシアが望むなら、ずっとこの国にいてくれて構わない。イヤ…むしろいてくれると嬉しい。だから、君の気持ちを聞かせてくれるかい?」

アナスタシアに向かって問いかける。

「カイ様、まずはずっと身分を隠していた事を、お許しください。私はカルビア王国の公爵令嬢で、ルイス様の婚約者でした。両親は私を政治の道具としてしか見ておらず、ずっと寂しい思いをしておりました。そんな私にいつも寄り添い、支えたくれたのが私の専属メイド、リーナです。彼女のお陰で、私は生きてこれたといっても過言ではありません。でもそんなリーナは、私を毒殺しようとした犯人に仕立て上げられ、処刑されて遺体を広場に晒されたのです…」

そう言うと、再び涙を流すアナスタシア。

「私がその事実を知ったのは、意識が戻った時でした。唯一私の家族だったリーナを殺され、さらに親友にも裏切られ、愛していた婚約者は私を裏切った親友と結婚し、幸せそうにしていたのです。その姿を見た時、全てが嫌になり、リーナの元に向かうつもりで屋敷を出ました。でも…ひょんなことから、あなた様に助けられ、この国で生活する様になったのです。そして、いつしかあなた様の傍にいたいと願う様になりました」

そう言うと、アナスタシアが私の方を真っすぐ見た。
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