殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi

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第32話:もう逃げません

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どれくらいここで過ごしただろう。薄暗い部屋にずっといると、やはり心細くなるもの。早くこの部屋から出たい、でも、今出て行ったら協力してくれたクロハ達に申し訳ない。

その時だった。バタバタと足音が聞こえたと思ったら、ドアがゆっくりと開いたのだ。

そこには心配そうな顔のカイ様が立っていた。私の姿を見ると、物凄い勢いで駆け寄ってきて、そのまま抱きしめられた。カイ様の温もりを感じた私は、その場で泣いてしまった。

きっとものすごく心配させてしまったのだろう。なんだか申し訳なくなって、何度も謝る。そんな私に対し、逆に謝ってくれたカイ様は、私の話を聞いてくれるとも言ってくれた。さらに私が望むなら、国に残ってもいいと…

私は今まで溜め込んでいた気持ちを伝えようとしたのだが、なぜか話を遮られ、そしてカイ様から愛の告白を受けたのだ。

その上、王家に伝わる指輪までいただけるだなんて…

正直カイ様が私を好きでいてくれていたなんて夢にも思っていなくて、嬉しくて再び涙が溢れ出た。心が通じ合った今、もう私に怖いものなどない。これからはカイ様と一緒に、この国を支えて行きたい。そう強く思った。

そして2人で隠し通路を通って、カイ様の部屋まで戻ってきた。カイ様の部屋を出ると、そこにはクロハとカイ様の家臣、護衛騎士たちの姿が。

「アナスタシア様、それに陛下も。どうやら心が通じ合ったのですね。よかったですわ」

「クロハ、全てあなたのお陰よ。本当にありがとう。私、これからはカイ様の傍で彼を支えられる様に頑張るわ。まだまだ未熟な私だけれど、私の事をこれからも支えてくれる?」

「もちろんです。私はこれからもずっと、あなた様を支えますわ」

涙を流しながらそう言ってくれたクロハ。私の為に、主でもある陛下を欺いてまで協力してくれたクロハだ。きっとこれからも、私を全力で支えてくれるだろう。

「クロハ、それからお前たち、いくらアナスタシアの為だといっても、これからはきちんと報告してくれ!まあ、今回だけは見逃すが。いいな、分かったな」

「分かっておりますわ。でも、もし陛下がアナスタシア様を裏切るようなことがあったら、その時はアナスタシア様に付かせていただきますから!」

力強く宣言するクロハ、彼女はかなりのツワモノの様だ。

「…クロハ、私はアナスタシアを裏切ったりはしない!ただ、クロハの心意気は理解した」

そう言ってほほ笑んでいるカイ様。

この国に来て、沢山の味方が出来た。私の為に動いてくれるクロハや家臣たち。それに、私の最愛の人、カイ様。そう思ったら、心が温かくなった。

その時だった。

「アナスタシア、よかった。見つかったのだね!さあ、すぐにカルビア王国に帰ろう」

私の姿を見つけ、こちらにやって来たのはルイス様だ。

「ルイス殿下、その話なのだが…」

「カイ様、私が話をしますわ」

カイ様がルイス様に話しをしようとするのを遮る。もう私は逃げたりはしない。ここは私の気持ちを、しっかり伝えるべきだと思ったのだ。

「ルイス様、私は国には戻りません。この国でカイ様と共に暮らしていきます。ですので、どうか私の事は綺麗さっぱり忘れて下さい。お願いします」

ルイス様に向かって、頭を下げた。ただ…

「アナスタシア、君は何を言っているのだ。君はカルビア王国の公爵令嬢で、僕の婚約者なんだ。そんな我が儘が通用するとでも思っているのかい?それにもう君を苦しめたマルモットはいないんだ。もしかして僕がマルモットと結婚したことを、根に持っているのかい?あれは君が3年もの間目覚めなかったのだから、仕方がないだろう。僕だって寂しかったんだよ!」

「確かに私は、カルビア王国では公爵令嬢でした。でも私は家を出たあの日、公爵令嬢としての身分もあなた様との結婚も全て捨て去りました。そんな中、この国でカイ様と出会い、彼を愛してしまったのです。我が儘を申している事は理解しております。でも…私はこれからの人生、カイ様と共に生きていきたいのです。ですからお願いします」

ルイス様に頭を下げた。

「ふざけるな!何がカイ様を愛しているだ!僕はずっと君の傍にいたじゃないか。君が望むから側室も持たないと決めたし、マルモットも断罪した。それもこれも、君の為を思っての事だ。それなのに君が国に帰ってこないのなら、僕は誰と結婚すればいいんだ?君が生きていると知った以上、僕は君意外と結婚するつもり何てないんだ!それにきっと、公爵だって許さないはずだ。僕が諦めて国に帰っても、きっと公爵が君を取り戻しに来る!」

「たとえ父が迎えに来たとしても、私は帰るつもりはありません。それで父の逆鱗に触れ、殺されたとしてもそれも運命だとして受け入れます。とにかく私は、もうカルビア王国に戻るつもりもありません。私は国を出たあの日、本来なら大好きなリーナの元に行っていたはず!ですからどうか、私の事はもういないと思ってください」

「リーナ…ああ、君のお気に入りのメイドか。もしかしてあのメイドを殺した事を、まだ恨んでいるのかい?所詮メイドじゃないか!それなのに…」

「所詮メイドだと?」
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