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第33話:どうやら解決したようです
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今までに聞いたことがないほど低いカイ様の声が聞こえた。びっくりしてカイ様の方を見ると、怖い顔をしてルイス様を睨んでいた。さすがに迫力がある。あまりの気迫に、ルイス様が後ずさっている。
「ルイス殿下、所詮メイドとは聞きづてがなりませんね。アナスタシアにとって、リーナ殿というメイドは、家族も同然の様な大切な存在だったとの事。ずっと傍にいたあなたは、そんな事すら知らないのですか?アナスタシアはずっと、自分のせいでリーナ殿が殺されたと、心を痛めていたのですぞ。それなのに、その様な言い方は止めていただきたい!」
あまりのカイ様の迫力に、そのまま腰を抜かしてしまったルイス様。
「それからさっきからあなた様は、自分の事ばかりで、アナスタシアの事など微塵も考えていない。そんなあなたの元にアナスタシアを返したところで、彼女はきっと幸せになれない!そう確信しました。そもそも、私がアナスタシアの存在をあなたに知らせなければ、知る由もなかったのに。私は今、あなたにアナスタシアの存在を知らしてしまった事を、心底後悔している!」
「なっ…他国の公爵令嬢を保護したのなら、その国に知らせるのが普通だろう。そしてその国に帰すのも常識だ!」
「それは同盟国の場合だけだ!カルビア王国と我がバーイン王国は、全く接点もないはずだが?」
「それはそうだが…」
「アナスタシアは瀕死の状態で海岸に流れ着いていた。そして我が国のメイドと医師たちが必死に看病し、ここまで元気になったのです。本人が国に帰りたくないと言っている以上、我が国としては彼女をこのまま我がバーイン王国で保護する事に決めました。ですから、どうかお帰り下さい。そもそも事前に連絡もなく押しかけてくるだなんて、もしかして我が国と戦争でもしたいのか?」
ギロリとルイス様を睨むカイ様。
「戦争だと…我が国には戦争をする力なんてありません。ただ…アナスタシアは僕のものだ!だからアナスタシアだけは返してもらいます。もちろん、アナスタシアを返してくださるのでしたら、礼は致します。ですから…」
「アナスタシアを返すつもりはありません!ただ、ルイス殿下も諦められない気持ちも理解できます。それでしたら、男同士命を懸けた戦いを行いましょう。お互い真剣で戦い、勝った方がアナスタシアと結婚できるという事でどうでしょうか?」
「そんな…あなたは戦争慣れしている最強の国王です。そんなあなたに、勝てる訳がないでしょう。それに僕は王太子です。その様な危険な戦いは出来ません!」
「あれも嫌、これも嫌だなんて…とにかく、アナスタシアは渡すつもりはありません。どうしても渡せというなら、力づくで取りにこればいい。いつでも相手になりますよ!」
後ろに控えていた家臣たちが、一斉に腰に付けている剣に手を当てた。きっと脅しなのだろうが、かなり迫力がある。
「で…殿下、これ以上相手国を刺激るするのは止めましょう。とにかく、アナスタシア様は諦めて下さい」
近くに控えていたルイス様付きの執事が、ルイス様を説得している。
「どうして僕がアナスタシアを諦めないといけないんだ。嫌だよ、僕は誰よりもアナスタシアを愛しているんだ。それにあんな怪物みたいな男に、アナスタシアを取られるだなんて」
「殿下、なんて失礼な事を言うのですか?とにかく、国に帰りましょう」
そう言うと執事は私たちの方を向いた。
「バーイン王国の国王陛下、この度は急に押しかけてしまい、申し訳ございませんでした。アナスタシア様の事は諦めますので、そうか穏便に」
そう言って頭を下げたのだ。
「おい、勝手な事を言うな。僕は絶対にアナスタシアを連れて帰るんだ!アナスタシア、こっちに来るんだ」
私の方にやってこようとするルイス様を、執事が静止する。
「お前たち、すぐに殿下を連れて国に帰るぞ。それでは失礼いたします」
近くに控えていたカルビア王国の護衛騎士たちが、ルイス様を担いで連れて行く。
「離せ、僕は絶対にアナスタシアを諦めない。やっとアナスタシアと結婚できるはずだったのに。嫌だ、放せ!」
泣きながら必死に抵抗するルイス様を、家臣たちが連れて部屋から出て行った。結局ルイス様は納得してくれなかった。これでよかったのかしら…
「アナスタシア、大丈夫か?すまない、少し手荒な真似をしてしまった。もちろん、戦争などするつもりはなかったんだ…でも、どうしても我慢できなくて…つい」
「カイ様、どうか謝らないで下さい。元々この国に残りたいというのは、私の我が儘だったのです。それに、カイ様のお陰でルイス様も帰ってくれましたし…自分の気持ちもきちんと伝えられましたから…」
きっと私1人では、ルイス様を帰すことはできなかっただろう。だから、カイ様には感謝している。それに今回は逃げずに、ルイス様と向き合えたのだから。
※次回最終話です。
よろしくお願いします。
~あとがき~
※カイと家臣の会話(ルイスのその後)
「陛下、先ほど連絡が入ったのですが、どうやらカルビア王国のルイス殿下は、国に帰る途中嵐に合い、命を落とされたそうです」
「何だって…ルイス殿下がか…そうか…この事は、アナスタシアには内緒にしておいてくれ」
「もちろんです。この近くの海は、よく嵐が来ることで有名ですから。私たち地元の者は、嵐の特性を理解して、上手く回避できますが、きっとそれが出来なかったのでしょう」
「そうだな…ルイス殿下…もし私がアナスタシアの存在を知らせなければ、命を落とすこともなかったのに…本当に私は何をしているのだろう」
ため息を付くカイ。
「陛下、あなた様のせいではありません。そもそも、調査員がいい加減な調査報告をしたことが原因ですし。とにかくあなた様は、アナスタシア様と幸せになる事を考えて下さい」
「ああ…ありがとう」
ルイス殿下の冥福を祈りつつ、彼の分までアナスタシアを幸せにしようと強く思ったカイだった。
「ルイス殿下、所詮メイドとは聞きづてがなりませんね。アナスタシアにとって、リーナ殿というメイドは、家族も同然の様な大切な存在だったとの事。ずっと傍にいたあなたは、そんな事すら知らないのですか?アナスタシアはずっと、自分のせいでリーナ殿が殺されたと、心を痛めていたのですぞ。それなのに、その様な言い方は止めていただきたい!」
あまりのカイ様の迫力に、そのまま腰を抜かしてしまったルイス様。
「それからさっきからあなた様は、自分の事ばかりで、アナスタシアの事など微塵も考えていない。そんなあなたの元にアナスタシアを返したところで、彼女はきっと幸せになれない!そう確信しました。そもそも、私がアナスタシアの存在をあなたに知らせなければ、知る由もなかったのに。私は今、あなたにアナスタシアの存在を知らしてしまった事を、心底後悔している!」
「なっ…他国の公爵令嬢を保護したのなら、その国に知らせるのが普通だろう。そしてその国に帰すのも常識だ!」
「それは同盟国の場合だけだ!カルビア王国と我がバーイン王国は、全く接点もないはずだが?」
「それはそうだが…」
「アナスタシアは瀕死の状態で海岸に流れ着いていた。そして我が国のメイドと医師たちが必死に看病し、ここまで元気になったのです。本人が国に帰りたくないと言っている以上、我が国としては彼女をこのまま我がバーイン王国で保護する事に決めました。ですから、どうかお帰り下さい。そもそも事前に連絡もなく押しかけてくるだなんて、もしかして我が国と戦争でもしたいのか?」
ギロリとルイス様を睨むカイ様。
「戦争だと…我が国には戦争をする力なんてありません。ただ…アナスタシアは僕のものだ!だからアナスタシアだけは返してもらいます。もちろん、アナスタシアを返してくださるのでしたら、礼は致します。ですから…」
「アナスタシアを返すつもりはありません!ただ、ルイス殿下も諦められない気持ちも理解できます。それでしたら、男同士命を懸けた戦いを行いましょう。お互い真剣で戦い、勝った方がアナスタシアと結婚できるという事でどうでしょうか?」
「そんな…あなたは戦争慣れしている最強の国王です。そんなあなたに、勝てる訳がないでしょう。それに僕は王太子です。その様な危険な戦いは出来ません!」
「あれも嫌、これも嫌だなんて…とにかく、アナスタシアは渡すつもりはありません。どうしても渡せというなら、力づくで取りにこればいい。いつでも相手になりますよ!」
後ろに控えていた家臣たちが、一斉に腰に付けている剣に手を当てた。きっと脅しなのだろうが、かなり迫力がある。
「で…殿下、これ以上相手国を刺激るするのは止めましょう。とにかく、アナスタシア様は諦めて下さい」
近くに控えていたルイス様付きの執事が、ルイス様を説得している。
「どうして僕がアナスタシアを諦めないといけないんだ。嫌だよ、僕は誰よりもアナスタシアを愛しているんだ。それにあんな怪物みたいな男に、アナスタシアを取られるだなんて」
「殿下、なんて失礼な事を言うのですか?とにかく、国に帰りましょう」
そう言うと執事は私たちの方を向いた。
「バーイン王国の国王陛下、この度は急に押しかけてしまい、申し訳ございませんでした。アナスタシア様の事は諦めますので、そうか穏便に」
そう言って頭を下げたのだ。
「おい、勝手な事を言うな。僕は絶対にアナスタシアを連れて帰るんだ!アナスタシア、こっちに来るんだ」
私の方にやってこようとするルイス様を、執事が静止する。
「お前たち、すぐに殿下を連れて国に帰るぞ。それでは失礼いたします」
近くに控えていたカルビア王国の護衛騎士たちが、ルイス様を担いで連れて行く。
「離せ、僕は絶対にアナスタシアを諦めない。やっとアナスタシアと結婚できるはずだったのに。嫌だ、放せ!」
泣きながら必死に抵抗するルイス様を、家臣たちが連れて部屋から出て行った。結局ルイス様は納得してくれなかった。これでよかったのかしら…
「アナスタシア、大丈夫か?すまない、少し手荒な真似をしてしまった。もちろん、戦争などするつもりはなかったんだ…でも、どうしても我慢できなくて…つい」
「カイ様、どうか謝らないで下さい。元々この国に残りたいというのは、私の我が儘だったのです。それに、カイ様のお陰でルイス様も帰ってくれましたし…自分の気持ちもきちんと伝えられましたから…」
きっと私1人では、ルイス様を帰すことはできなかっただろう。だから、カイ様には感謝している。それに今回は逃げずに、ルイス様と向き合えたのだから。
※次回最終話です。
よろしくお願いします。
~あとがき~
※カイと家臣の会話(ルイスのその後)
「陛下、先ほど連絡が入ったのですが、どうやらカルビア王国のルイス殿下は、国に帰る途中嵐に合い、命を落とされたそうです」
「何だって…ルイス殿下がか…そうか…この事は、アナスタシアには内緒にしておいてくれ」
「もちろんです。この近くの海は、よく嵐が来ることで有名ですから。私たち地元の者は、嵐の特性を理解して、上手く回避できますが、きっとそれが出来なかったのでしょう」
「そうだな…ルイス殿下…もし私がアナスタシアの存在を知らせなければ、命を落とすこともなかったのに…本当に私は何をしているのだろう」
ため息を付くカイ。
「陛下、あなた様のせいではありません。そもそも、調査員がいい加減な調査報告をしたことが原因ですし。とにかくあなた様は、アナスタシア様と幸せになる事を考えて下さい」
「ああ…ありがとう」
ルイス殿下の冥福を祈りつつ、彼の分までアナスタシアを幸せにしようと強く思ったカイだった。
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