これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi

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第43話:アレックスには渡さない~ディアン視点~

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「それじゃあユーリ、また明日ね」

「ええ、また明日。ディアン、1人で屋敷まで帰れる?私が送っていきましょうか?それにしても、いくらディアンが帰ってきたお祝いだからって、お父様たちは羽目を外しすぎなのよ」

頬を膨らませてユーリが怒っている。その姿を見て、つい笑みがこぼれてしまう。やっぱりユーリは可愛いな…

「僕は1人で帰れるから大丈夫だよ。ユーリこそ、家の両親がごめんね。もしかしたら、朝まで飲み明かして君に迷惑をかけるかもしれないね…」

家の両親もユーリのご両親も、羽目を外してお酒を楽しんでいる。まだまだ大人たちの宴は終わりそうにないため、僕は先に屋敷に戻る事にしたのだ。

「そんな事は気にしなくてもいいわ。きっと皆、よほどディアンが王都に戻って来た事が嬉しいのね。私もディアンが王都に戻って来てくれて、嬉しいわ。明日こそ、絶対にお茶をしましょうね」

「ああ、もちろんだ。ユーリの好きなお菓子を、沢山準備して待っているからね」

笑顔で僕を見送ってくれるユーリを見つめながら、馬車に乗り込んだ。そしてユーリに向かって、手を振る。王都でまた、こんな風にユーリと笑い合える日が来るだなんて…

ユーリがアレックスを忘れるため、領地にやって来たあの日から、僕は密かに王都に帰る準備を進めて来た。本当はユーリが王都に戻るタイミングで僕も王都に戻る予定だったが、貴族学院への入学の手続きなどに手間取り、ユーリが戻ってから1ヶ月後にやっと王都に帰ってこられた。

7年ぶりに王都の街を見た瞬間、涙が込みあげていた。あの日僕は、ユーリを諦めるため、泣きながら王都を出た。あの時の気持ちは、今でも忘れない。

今度こそ僕の手で、ユーリを幸せにしたい。そんな思いで王都に戻って来たのだ。

ただ…

僕は正直不安だった。ユーリの母親の話では、アレックスはユーリに執着していると聞いたのだ。今まで散々ユーリの気持ちを無視していたのに、自分の心から離れていったとわかると、掌を返してすり寄っていくだなんて!

でも、ユーリはずっとアレックスが好きだったのだ。もしアレックスに優しくされたら、心が揺れ動くのではないかと、心配でたまらなかった。

そんな不安の中、僕は今日という日を迎えた。僕を見た瞬間、それはそれは嬉しそうな顔をしたユーリ。先生も気を使ってくれて、ユーリの隣の席を準備してくれたのだ。

嬉しそうに僕に話しかけてくるユーリの顔を見たら、つい僕も笑みがこぼれてしまう。久しぶりに王都に戻ってきた僕を気にかけてくれるユーリの優しさが、嬉しくてたまらない。


ただ、そんな僕たちを快く思っていない人物が…

そう、アレックスだ。ユーリが貴族学院を案内してくれると言い出すと、僕とユーリを2人きりにしない様に、間に入って来たアレックス。きっとアレックスは、僕の事を警戒しているのだろう。

その証拠に、ユーリが放課後お茶に誘ってくれたのだが、あえて剣の稽古をしようと話を被せて来たのだ。結局ユーリが譲る形で、僕は剣の稽古に付き合う事になった。その時のユーリの悲しそうな顔が、僕の心をざわつかせた。

確かに僕は、これから伯爵家を継ぐために令息たちとの仲を深める必要がある。でも、それ以上に僕は、ユーリとの仲を深めたいのだが…

それでもせっかくアレックスが誘ってくれたため、令息たちと一緒に剣の稽古を楽しんだ。皆いい人達ばかりで、すぐに打ち解ける事が出来たのだ。

ちなみに彼らは、どうやら僕とユーリの仲が気になる様だったから

“ユーリは僕の大切な幼馴染で、子供の頃からずっと好きだった。ユーリさえ受け入れてくれたら、僕はユーリと結婚したい”


と、はっきり伝えておいた。きっと彼らは、なんだかんだ言ってユーリはアレックスと婚約すると思っていたのだろう。現に一部の令息たちがアレックスに

“ディアン殿は、ユーリ嬢が好きな様だ。アレックス、どうするのだい?最強のライバル登場だな”

そう言って茶化していた。

アレックスは唇を噛み、俯いていたが、僕はもうアレックスにユーリを譲るつもりはない。必ずユーリを幸せにする、その言葉を信じて僕は身を引いた。

それなのにアレックスは、僕との約束を破ってユーリを泣かせたのだ。でも…僕もアレックスの言う事を鵜呑みにして、領地に逃げたのだから、アレックスを責める事は出来ないな。

もし僕が、もっと心が強かったら…領地に逃げずにアレックスとユーリの傍で、2人の幸せを見守れることが出来ていたら。ユーリがあそこまでボロボロになる事はなかったかもしれない。

ユーリがどれほど傷つき、涙を流したか…考えただけで、胸が張り裂けそうになる。だからこそ、ユーリを裏切り傷つけたアレックスを、僕は許すことが出来ない。もう絶対に、アレックスにユーリを渡さない。

その為に僕は、王都に戻って来たのだから!
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