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第45話:昔に戻ったみたい
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「ユーリ、今日は中庭でお弁当を食べよう。ユーリが好きな料理を、たくさん持ってきたんだ」
「ディアン、抜け駆けはよしてくれ。ユーリ、君の好きな料理を、僕も持ってきたよ。一緒に食べよう」
ディアンが王都に戻って来て早1ヶ月。元々人当たりのよかったディアンは、すぐに貴族学院にもなじみ、沢山の友人が出来た。もちろん、幼馴染でもあるアレックス様との関係も、それなりに良好な様だ。
ただ…
「ディアン、アレックス様、私は友人たちと昼食を…」
「あら、私たちは別に構わないわよ。せっかくだから、皆で食べましょう」
事あるごとに、私を誘ってくれるディアンとアレックス様。有難いのだが、友人との時間も大切にしたいと考えている。
ただ友人たちは、彼らの気持ちを大切にしている様で、結局皆で過ごすことも多い。今日も2人の誘いに応じ、友人たちの婚約者も含め、皆で食事をする事になったのだ。
「ユーリ、はい、沢山食べてね」
「僕のも食べて。美味しいよ」
笑顔でディアンとアレックス様が、食事を勧めてくれる。ただ、さすがにこんなには食べられない。
「さすがにこんなにたくさんは、食べられませんわ」
「確かに量が多いね。それじゃあ、アレックスのお弁当、僕が食べてあげるよ」
「おい、ディアン。勝手に人のお弁当を食べないでくれ。これはユーリの為に、作って来たのだよ。君の為に作って来た訳ではないよ」
「そんなに怒らなくてもいいだろう?ほら、僕のお弁当もあげるから。はい」
怒るアレックス様の口に、ディアンが食べ物を放り込む。なぜだろう、ディアンがいるだけで、その場の空気が和むのだ。
なんだかんだ言いつつ、楽しそうにしているディアンとアレックス様を見ていると、なんだか懐かしい気持ちになるのだ。まだディアンが王都にいた頃、こうやって2人は良くじゃれ合っていた…
「ユーリ、そんなに嬉しそうに見つめて、一体どうしたのだい?」
不思議そうに私をみつめてくる2人。その姿を見た時、つい笑いが込みあげてきた。
「ごめんなさい、2人を見ていると、昔3人で過ごしていた時の事を思い出して。あの頃から2人は、こんな感じだったなって思って」
「確かに昔からこんな感じだったね」
「ディアンが王都に戻って来てから、なんだか懐かしくてつい。ディアンがいると、なんだかあの頃に戻ったみたいな気持ちになるよ」
「僕もアレックスとユーリと一緒に過ごしていると、なんだか昔に戻ったような気持ちになって、心が温かくなるんだ。不思議だね」
確かにこうやってディアンとアレックス様と過ごしていると、心が温かくなる。あの頃はよかったな…何のしがらみもなく、ただただ楽しい時間を過ごしていた…
「ちょっと、3人とも私たちの存在を忘れているでしょう。本当に、すぐに3人の世界に入ってしまうのだから」
「本当ね。でも、ユーリも昔の様によく笑う様になったし、ディアン様が王都に戻って来てくださって、本当によかったわ」
「確かにそうだな。ディアンが来るまでは、アレックスとユーリ嬢、本当にギクシャクしていて。見ているこっちが気を使っていたんだよ」
「僕とユーリは、別にギクシャクしていないよ。でも…ディアンが王都に戻ってきてくれたから、その…ユーリとも普通に話せるようになったのは、よかったよ」
少し恥ずかしそうに微笑むアレックス様。確かにディアンが戻って来てから、ディアンを通じてアレックス様とも普通に話せるようになった。
「僕は何もしていないよ。アレックスはともかく、ユーリが嬉しそうにしていると、僕も嬉しいしね」
「僕はともかくとは、一体どういう意味だい?」
「別に深い意味はないよ。ほら、アレックスも機嫌を直して」
そう言ってディアンがアレックス様のお口に、お肉を放り込んだ。
「まあ…この肉に免じて許してあげるよ」
そんな2人のやり取りを見ていたら、再び笑いが込みあげて声を上げて笑った。私の笑い声に釣られ、皆も笑う。
正直私は、もう二度とアレックス様と関わりたくはないと思っていた。でも…
ディアンのお陰で、アレックス様とも昔の様に接する事が出来る様になった。
ついディアンを見つめてしまう。
その時だった、ディアンと目がバッチリあったのだ。そして、にっこりとほほ笑むディアンを見た瞬間、なぜか鼓動が早くなるのを感じた。
私、一体どうしてしまったのだろう。ディアンの顔は、何度も何度も見ているはずなのに。どうして急に、鼓動が早くなるの?
この気持ちは一体なに?
「ディアン、抜け駆けはよしてくれ。ユーリ、君の好きな料理を、僕も持ってきたよ。一緒に食べよう」
ディアンが王都に戻って来て早1ヶ月。元々人当たりのよかったディアンは、すぐに貴族学院にもなじみ、沢山の友人が出来た。もちろん、幼馴染でもあるアレックス様との関係も、それなりに良好な様だ。
ただ…
「ディアン、アレックス様、私は友人たちと昼食を…」
「あら、私たちは別に構わないわよ。せっかくだから、皆で食べましょう」
事あるごとに、私を誘ってくれるディアンとアレックス様。有難いのだが、友人との時間も大切にしたいと考えている。
ただ友人たちは、彼らの気持ちを大切にしている様で、結局皆で過ごすことも多い。今日も2人の誘いに応じ、友人たちの婚約者も含め、皆で食事をする事になったのだ。
「ユーリ、はい、沢山食べてね」
「僕のも食べて。美味しいよ」
笑顔でディアンとアレックス様が、食事を勧めてくれる。ただ、さすがにこんなには食べられない。
「さすがにこんなにたくさんは、食べられませんわ」
「確かに量が多いね。それじゃあ、アレックスのお弁当、僕が食べてあげるよ」
「おい、ディアン。勝手に人のお弁当を食べないでくれ。これはユーリの為に、作って来たのだよ。君の為に作って来た訳ではないよ」
「そんなに怒らなくてもいいだろう?ほら、僕のお弁当もあげるから。はい」
怒るアレックス様の口に、ディアンが食べ物を放り込む。なぜだろう、ディアンがいるだけで、その場の空気が和むのだ。
なんだかんだ言いつつ、楽しそうにしているディアンとアレックス様を見ていると、なんだか懐かしい気持ちになるのだ。まだディアンが王都にいた頃、こうやって2人は良くじゃれ合っていた…
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「確かに昔からこんな感じだったね」
「ディアンが王都に戻って来てから、なんだか懐かしくてつい。ディアンがいると、なんだかあの頃に戻ったみたいな気持ちになるよ」
「僕もアレックスとユーリと一緒に過ごしていると、なんだか昔に戻ったような気持ちになって、心が温かくなるんだ。不思議だね」
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少し恥ずかしそうに微笑むアレックス様。確かにディアンが戻って来てから、ディアンを通じてアレックス様とも普通に話せるようになった。
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私、一体どうしてしまったのだろう。ディアンの顔は、何度も何度も見ているはずなのに。どうして急に、鼓動が早くなるの?
この気持ちは一体なに?
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