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第49話:これは一体…
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どうしてディアンが我が家へ?もしかして、正式にセレナ様との婚約が決まったという話かしら?幼馴染でもある私に、報告に来たのかもしれないわね。
もしそうだとしたら、私はどう反応すればいいのかしら?
一気に気が重くなる。
でも、このままディアンに会わない訳にはいかないし。たとえディアンがセレナ様との婚約報告だったとしても、私がやらなければいけない事は、ただ1つ。
よし!
気合を入れ、ディアンの待つ客間へと向かった。扉の前まで来ると、大きく深呼吸をする。私の言葉1つで、今までのディアンとの関係が崩れてしまうかもしれない。でも、このまま諦める事なんて出来ない。
きちんと気持ちを伝え、その上できっぱり断られたのなら、きっと私の心の整理も付きやすいだろう。心の整理が付いたら、その時はディアンとセレナ様を祝福しよう。
そんな事を考えながら、ゆっくりと扉を開けた。
「ディアン、遅くなってごめんなさい。急にあなたが訪ねてくるだなんて、何かあったの?」
極力いつも通りに話しかける。でも、心臓はバクバクだ。
「急に押しかけてごめんね。どうしてもユーリに渡したいものがあって…」
そう言うと、ディアンが小さな箱を取り出して、机の上に置いたのだ。
「この箱は一体…」
「開けてみてくれるかい?」
小さな箱を手に取り、そっとリボンをほどいた。中から出てきたのは、真っ赤なルビーと青いサファイアがそれぞれ交互に埋め込まれている指輪だ。宝石1つ1つがハートの形をしており、とても可愛らしい。指輪自体のデザインもとても凝っていて、細かい彫刻がとても素敵だ。
「なんて素敵な指輪なのかしら?でも、どうして私に指輪を?」
とても素敵な指輪なのだが、どうして私に指輪をくれたのだろう。我が国では男性が好きな女性に指輪を渡す習わしがある。本来なら指輪は、私ではなくセレナ様に送るべきものなのに。
動揺する私を他所に、ディアンが私の方にやって来た。そして、跪いたのだ。
「ユーリ、僕は子供の頃からずっと、ユーリが大好きだった。ただユーリは、アレックスが好きだったね。だから僕は2人の幸せを願い、一度は身を引いた。それでも僕は、ずっとユーリの事が忘れられずに過ごしてきたんだ。そんな中、ユーリが僕の領地にやって来た。あの頃と変わらないユーリを見て、僕の気持ちは一気にあふれ出した。ユーリ、僕は君が大好きだ。どうか僕に、君を幸せにする権利を下さい」
ディアンがスッと手を差し伸べて来たのだ。
待って、ディアンはセレナ様が好きだったのではないの?一体どうなっているの?
「ディアン、あなたはセレナ様が好きなのではないの?最近はずっと、セレナ様と一緒に過ごしていたから、私はてっきり…」
「待って、ユーリ。それは誤解だよ。確かに僕は最近、カレテイス伯爵令嬢と過ごすことも多かった。でもそれは、彼女にユーリの指輪のデザインをお願いしていたからだ。カレテイス伯爵領は数多くの宝石鉱山を持っているだろう。それで伯爵家の宝石を僕に売って欲しいという話をしたら、カレテイス伯爵令嬢が“ぜひ自分にデザインさせてほしい”と申し出てくれて。それで色々と相談に乗ってもらっていたのだよ。ただそれだけだ」
確かにカレテイス伯爵領は、宝石鉱山を沢山持っていると聞く。それもかなり良質な宝石が取れると有名だ。我が国の貴族の多くが、カレテイス伯爵領の宝石を好んで購入するくらい、質もいい。
それじゃあ、私の勘違い?
「とにかく僕が好きなのは、ユーリただ1人だよ。まさかそんな誤解を受けていただなんて…」
はぁ~っとため息をつきながら、ディアンが頭を抱えてしまった。
「ディアン、頭を上げて。あなたは私の為に、この指輪をセレナ様と一緒に準備してくださったのでしょう?そうとも知らずに、変な勘違いをしてしまってごめんなさい。その…私もディアンの事が大好きよ。私もずっとディアンの傍にいたい」
本当はもっともっと言いたい事が沢山ある。でも、まさかディアンも私の事を好きでいてくれていただなんて、頭が混乱していて、気持ちを伝えるだけで精一杯なのだ。
何だか恥ずかしくなって、俯いてしまう。アレックス様にはしょっちゅう気持ちを伝えていたのに、どうしてディアンに気持ちを伝えるときは、こんなに恥ずかしいのかしら?
何とも言えない沈黙が流れる。
あら?なぜかディアンもリアクションを起こさない。さすがに気になって顔を上げると、ポロポロと涙を流しているディアンの姿が。
「ディアン、どうしたの?どうして泣いているの?ごめんなさい、私、何かまずい事を言ったかしら?」
ビックリしてハンカチを差し出した。
「ごめんね、ユーリ。まさかユーリが僕の気持ちを受け入れてくれるだなんて、思っていなくて。きっと断られるだろうと思っていたのだよ。今回は僕の気持ちを知ってもらって、少しでも僕の事を異性として見てくれたらって思っていたんだ。だから嬉しくて…」
泣きじゃくるディアンの背中を、そっと撫でた。そういえばディアンは、子供の頃からずっと私の事が好きだと言っていた。それなのに私は、無神経にもアレックス様が好きだなんて、ディアンに伝えてしまったのだ。
よく考えたら、私が気持ちを伝えた翌日、ディアンは領地に旅立った。自分の気持ちを封印し、私とアレックス様の幸せを願い、身を引いたディアン。私は、なんて事をしてしまったのだろう。
ディアンはいつもそうだ。自分の事は二の次で、いつも私の幸せを考えてくれる。それがディアンなのだ。
もしそうだとしたら、私はどう反応すればいいのかしら?
一気に気が重くなる。
でも、このままディアンに会わない訳にはいかないし。たとえディアンがセレナ様との婚約報告だったとしても、私がやらなければいけない事は、ただ1つ。
よし!
気合を入れ、ディアンの待つ客間へと向かった。扉の前まで来ると、大きく深呼吸をする。私の言葉1つで、今までのディアンとの関係が崩れてしまうかもしれない。でも、このまま諦める事なんて出来ない。
きちんと気持ちを伝え、その上できっぱり断られたのなら、きっと私の心の整理も付きやすいだろう。心の整理が付いたら、その時はディアンとセレナ様を祝福しよう。
そんな事を考えながら、ゆっくりと扉を開けた。
「ディアン、遅くなってごめんなさい。急にあなたが訪ねてくるだなんて、何かあったの?」
極力いつも通りに話しかける。でも、心臓はバクバクだ。
「急に押しかけてごめんね。どうしてもユーリに渡したいものがあって…」
そう言うと、ディアンが小さな箱を取り出して、机の上に置いたのだ。
「この箱は一体…」
「開けてみてくれるかい?」
小さな箱を手に取り、そっとリボンをほどいた。中から出てきたのは、真っ赤なルビーと青いサファイアがそれぞれ交互に埋め込まれている指輪だ。宝石1つ1つがハートの形をしており、とても可愛らしい。指輪自体のデザインもとても凝っていて、細かい彫刻がとても素敵だ。
「なんて素敵な指輪なのかしら?でも、どうして私に指輪を?」
とても素敵な指輪なのだが、どうして私に指輪をくれたのだろう。我が国では男性が好きな女性に指輪を渡す習わしがある。本来なら指輪は、私ではなくセレナ様に送るべきものなのに。
動揺する私を他所に、ディアンが私の方にやって来た。そして、跪いたのだ。
「ユーリ、僕は子供の頃からずっと、ユーリが大好きだった。ただユーリは、アレックスが好きだったね。だから僕は2人の幸せを願い、一度は身を引いた。それでも僕は、ずっとユーリの事が忘れられずに過ごしてきたんだ。そんな中、ユーリが僕の領地にやって来た。あの頃と変わらないユーリを見て、僕の気持ちは一気にあふれ出した。ユーリ、僕は君が大好きだ。どうか僕に、君を幸せにする権利を下さい」
ディアンがスッと手を差し伸べて来たのだ。
待って、ディアンはセレナ様が好きだったのではないの?一体どうなっているの?
「ディアン、あなたはセレナ様が好きなのではないの?最近はずっと、セレナ様と一緒に過ごしていたから、私はてっきり…」
「待って、ユーリ。それは誤解だよ。確かに僕は最近、カレテイス伯爵令嬢と過ごすことも多かった。でもそれは、彼女にユーリの指輪のデザインをお願いしていたからだ。カレテイス伯爵領は数多くの宝石鉱山を持っているだろう。それで伯爵家の宝石を僕に売って欲しいという話をしたら、カレテイス伯爵令嬢が“ぜひ自分にデザインさせてほしい”と申し出てくれて。それで色々と相談に乗ってもらっていたのだよ。ただそれだけだ」
確かにカレテイス伯爵領は、宝石鉱山を沢山持っていると聞く。それもかなり良質な宝石が取れると有名だ。我が国の貴族の多くが、カレテイス伯爵領の宝石を好んで購入するくらい、質もいい。
それじゃあ、私の勘違い?
「とにかく僕が好きなのは、ユーリただ1人だよ。まさかそんな誤解を受けていただなんて…」
はぁ~っとため息をつきながら、ディアンが頭を抱えてしまった。
「ディアン、頭を上げて。あなたは私の為に、この指輪をセレナ様と一緒に準備してくださったのでしょう?そうとも知らずに、変な勘違いをしてしまってごめんなさい。その…私もディアンの事が大好きよ。私もずっとディアンの傍にいたい」
本当はもっともっと言いたい事が沢山ある。でも、まさかディアンも私の事を好きでいてくれていただなんて、頭が混乱していて、気持ちを伝えるだけで精一杯なのだ。
何だか恥ずかしくなって、俯いてしまう。アレックス様にはしょっちゅう気持ちを伝えていたのに、どうしてディアンに気持ちを伝えるときは、こんなに恥ずかしいのかしら?
何とも言えない沈黙が流れる。
あら?なぜかディアンもリアクションを起こさない。さすがに気になって顔を上げると、ポロポロと涙を流しているディアンの姿が。
「ディアン、どうしたの?どうして泣いているの?ごめんなさい、私、何かまずい事を言ったかしら?」
ビックリしてハンカチを差し出した。
「ごめんね、ユーリ。まさかユーリが僕の気持ちを受け入れてくれるだなんて、思っていなくて。きっと断られるだろうと思っていたのだよ。今回は僕の気持ちを知ってもらって、少しでも僕の事を異性として見てくれたらって思っていたんだ。だから嬉しくて…」
泣きじゃくるディアンの背中を、そっと撫でた。そういえばディアンは、子供の頃からずっと私の事が好きだと言っていた。それなのに私は、無神経にもアレックス様が好きだなんて、ディアンに伝えてしまったのだ。
よく考えたら、私が気持ちを伝えた翌日、ディアンは領地に旅立った。自分の気持ちを封印し、私とアレックス様の幸せを願い、身を引いたディアン。私は、なんて事をしてしまったのだろう。
ディアンはいつもそうだ。自分の事は二の次で、いつも私の幸せを考えてくれる。それがディアンなのだ。
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