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第62話:私が病室に泊ります
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「それじゃあ、私たちは一旦屋敷に戻るよ。ユーリ嬢、後は頼んでもいいかな?何かあったら、すぐに連絡をくれ」
「ええ、もちろんですわ。ディアンの事は任せて下さい」
「ユーリ、必要な物は使用人に運ぶよう手配するけれど、何かいるものはある?」
いるものか…
「それでしたら、私の机の一番上の引き出しに入っている、青色の宝石箱を持ってきてくださいますか?」
「青色の宝石箱ね。わかったわ。それじゃあユーリ、後はお願いね」
おじ様とおば様、お母様が病室から出ていくのを見送ると、再びディアンの傍に向かう。
「ディアン、皆帰ってしまったけれど、私はずっと傍にいるからね。ごめんなさい、当初の予定通り、私も一緒にディアンと出掛けていればよかったわ…まさかこんな事故に遭うだなんて…」
1人で事故に遭ったディアン、きっと怖かっただろう。相手がぶつかって来た事を考えると、事故は防げなかった事。でも…せめて私も、ディアンの傍にいたかった。たとえディアンと同じ運命をたどったとしても…
分かっている、きっとディアンはそんな事を望まない。“ユーリが事故に巻き込まれなくてよかった”きっと彼ならそう言うだろう。でも私は…
「ディアン、あなたが目覚めるまで、ずっと傍にいるからね。だからどうかお願い、私を1人残して逝ったりしないで…」
再び涙が溢れだす。やっと幸せになれたと思っていたのに…この幸せがずっと続くと思っていたのに…一体どうしてこんな事になってしまったのだろう。
傷だらけのディアンを見ていると、胸が苦しくて悲しくてたまらないのだ。
「お嬢様、お荷物をお持ちいたしました。既にお荷物は隣のお部屋に運んであります。それから奥様が、明日は貴族学院をお休みしてよいとの事です。今のお嬢様に、貴族学院に行けとはさすがに奥様もおっしゃれなかったのでしょう」
「お母様が?そう、ありがとう」
お母様ったら、なんだかんだ言って私の事を考えてくれているのね。さすがにディアンがこんな状況で、明日貴族学院に行く事なんて出来そうにない。
「既に夜更けですが、お昼から何も召し上がられていませんよね。すぐに食事を準備します」
ふと時計を見ると、夜中の12時を過ぎていた。言われてみれば12時間以上何も食べていない。
でも…
「申し訳ないのだけれど、今はとても食事が出来る状況じゃないの」
「承知いたしました。ですが少しだけでも食べておかれた方が…サラダと果物をお持ちいたします」
そう言うと、使用人は手際よくサラダと果物を準備してくれた。せっかく準備してくれたのだ、全く食べない訳にはいかない。サラダに入っているレタスをフォークで刺し、口に運ぶが、中々飲み込むことが出来ない。
やっぱり今は、食べられそうにない。
再びディアンの傍に向かう。完全看護の為、付き添いと言っても特にする事はない。ただディアンの傍にいるだけだ。それでもこうやってディアンの傍にいられる事は、私にとって幸せでしかない。
そっと手を握る。
温かい…ディアン、生きていてくれている。生きていてくれているだけで有難い、でも…
頑なに閉ざされた瞳を見ると、いたたまれない気持ちになるのだ。つい数時間前まで、笑いかけてくれていたのに…
ディアンの顔を見ていると、涙が込みあげてきた。
「お嬢様、もう夜も遅いですし、そろそろ湯あみをしてお休みになられた方がよろしいかと」
悲しそうな私を心配したメイドが、話しかけてきたのだ。確かにもう夜遅いが、とても寝られる状況ではない。
「さすがに今日は寝られそうにないわ。でも、湯あみは済ませたいの。準備をしてくれるかしら?」
「もちろんです。既に準備は出来ております。カスタマーディス伯爵令息様は、私共が見ておりますので。さあ、こちらです」
メイドに案内された隣の部屋もとても立派で、私の部屋と遜色ない。本当はゆっくり部屋を見たいところだが、早くディアンの傍に戻りたい。
そんな思いで急いで湯あみを済ませた。
そして
「ただいま、ディアン。様子は…て、変わっていないか」
万が一目覚めてくれていたらいいな、なんて思ったのだけれど、そううまくは行かない。それにしても、立派なベッドだこと。5人は眠れそうだ。
そうだわ。
すっとディアンの布団に入り込んだ。
「お嬢様、何をなさっているのですか?すぐにお布団から出て下さい」
「これだけベッドが広いのですもの。少しくらいいいでしょう?それにディアンと一緒なら、少し寝られそうな気がするの。お願い」
「仕方ありませんね…今日だけですからね。そもそも、カスタマーディス伯爵令息様は重傷なのです。それなのに、お嬢様がベッドに入り込むだなんて…」
はぁ~っとため息をつくメイドをしり目に、そっとディアンに寄り添った。
温かい…よかった、生きている。
何だか眠くなってきたわ…
「ええ、もちろんですわ。ディアンの事は任せて下さい」
「ユーリ、必要な物は使用人に運ぶよう手配するけれど、何かいるものはある?」
いるものか…
「それでしたら、私の机の一番上の引き出しに入っている、青色の宝石箱を持ってきてくださいますか?」
「青色の宝石箱ね。わかったわ。それじゃあユーリ、後はお願いね」
おじ様とおば様、お母様が病室から出ていくのを見送ると、再びディアンの傍に向かう。
「ディアン、皆帰ってしまったけれど、私はずっと傍にいるからね。ごめんなさい、当初の予定通り、私も一緒にディアンと出掛けていればよかったわ…まさかこんな事故に遭うだなんて…」
1人で事故に遭ったディアン、きっと怖かっただろう。相手がぶつかって来た事を考えると、事故は防げなかった事。でも…せめて私も、ディアンの傍にいたかった。たとえディアンと同じ運命をたどったとしても…
分かっている、きっとディアンはそんな事を望まない。“ユーリが事故に巻き込まれなくてよかった”きっと彼ならそう言うだろう。でも私は…
「ディアン、あなたが目覚めるまで、ずっと傍にいるからね。だからどうかお願い、私を1人残して逝ったりしないで…」
再び涙が溢れだす。やっと幸せになれたと思っていたのに…この幸せがずっと続くと思っていたのに…一体どうしてこんな事になってしまったのだろう。
傷だらけのディアンを見ていると、胸が苦しくて悲しくてたまらないのだ。
「お嬢様、お荷物をお持ちいたしました。既にお荷物は隣のお部屋に運んであります。それから奥様が、明日は貴族学院をお休みしてよいとの事です。今のお嬢様に、貴族学院に行けとはさすがに奥様もおっしゃれなかったのでしょう」
「お母様が?そう、ありがとう」
お母様ったら、なんだかんだ言って私の事を考えてくれているのね。さすがにディアンがこんな状況で、明日貴族学院に行く事なんて出来そうにない。
「既に夜更けですが、お昼から何も召し上がられていませんよね。すぐに食事を準備します」
ふと時計を見ると、夜中の12時を過ぎていた。言われてみれば12時間以上何も食べていない。
でも…
「申し訳ないのだけれど、今はとても食事が出来る状況じゃないの」
「承知いたしました。ですが少しだけでも食べておかれた方が…サラダと果物をお持ちいたします」
そう言うと、使用人は手際よくサラダと果物を準備してくれた。せっかく準備してくれたのだ、全く食べない訳にはいかない。サラダに入っているレタスをフォークで刺し、口に運ぶが、中々飲み込むことが出来ない。
やっぱり今は、食べられそうにない。
再びディアンの傍に向かう。完全看護の為、付き添いと言っても特にする事はない。ただディアンの傍にいるだけだ。それでもこうやってディアンの傍にいられる事は、私にとって幸せでしかない。
そっと手を握る。
温かい…ディアン、生きていてくれている。生きていてくれているだけで有難い、でも…
頑なに閉ざされた瞳を見ると、いたたまれない気持ちになるのだ。つい数時間前まで、笑いかけてくれていたのに…
ディアンの顔を見ていると、涙が込みあげてきた。
「お嬢様、もう夜も遅いですし、そろそろ湯あみをしてお休みになられた方がよろしいかと」
悲しそうな私を心配したメイドが、話しかけてきたのだ。確かにもう夜遅いが、とても寝られる状況ではない。
「さすがに今日は寝られそうにないわ。でも、湯あみは済ませたいの。準備をしてくれるかしら?」
「もちろんです。既に準備は出来ております。カスタマーディス伯爵令息様は、私共が見ておりますので。さあ、こちらです」
メイドに案内された隣の部屋もとても立派で、私の部屋と遜色ない。本当はゆっくり部屋を見たいところだが、早くディアンの傍に戻りたい。
そんな思いで急いで湯あみを済ませた。
そして
「ただいま、ディアン。様子は…て、変わっていないか」
万が一目覚めてくれていたらいいな、なんて思ったのだけれど、そううまくは行かない。それにしても、立派なベッドだこと。5人は眠れそうだ。
そうだわ。
すっとディアンの布団に入り込んだ。
「お嬢様、何をなさっているのですか?すぐにお布団から出て下さい」
「これだけベッドが広いのですもの。少しくらいいいでしょう?それにディアンと一緒なら、少し寝られそうな気がするの。お願い」
「仕方ありませんね…今日だけですからね。そもそも、カスタマーディス伯爵令息様は重傷なのです。それなのに、お嬢様がベッドに入り込むだなんて…」
はぁ~っとため息をつくメイドをしり目に、そっとディアンに寄り添った。
温かい…よかった、生きている。
何だか眠くなってきたわ…
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