これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi

文字の大きさ
62 / 75

第62話:私が病室に泊ります

しおりを挟む
「それじゃあ、私たちは一旦屋敷に戻るよ。ユーリ嬢、後は頼んでもいいかな?何かあったら、すぐに連絡をくれ」

「ええ、もちろんですわ。ディアンの事は任せて下さい」

「ユーリ、必要な物は使用人に運ぶよう手配するけれど、何かいるものはある?」

 いるものか…

「それでしたら、私の机の一番上の引き出しに入っている、青色の宝石箱を持ってきてくださいますか?」

「青色の宝石箱ね。わかったわ。それじゃあユーリ、後はお願いね」

 おじ様とおば様、お母様が病室から出ていくのを見送ると、再びディアンの傍に向かう。

「ディアン、皆帰ってしまったけれど、私はずっと傍にいるからね。ごめんなさい、当初の予定通り、私も一緒にディアンと出掛けていればよかったわ…まさかこんな事故に遭うだなんて…」

 1人で事故に遭ったディアン、きっと怖かっただろう。相手がぶつかって来た事を考えると、事故は防げなかった事。でも…せめて私も、ディアンの傍にいたかった。たとえディアンと同じ運命をたどったとしても…

 分かっている、きっとディアンはそんな事を望まない。“ユーリが事故に巻き込まれなくてよかった”きっと彼ならそう言うだろう。でも私は…

「ディアン、あなたが目覚めるまで、ずっと傍にいるからね。だからどうかお願い、私を1人残して逝ったりしないで…」

 再び涙が溢れだす。やっと幸せになれたと思っていたのに…この幸せがずっと続くと思っていたのに…一体どうしてこんな事になってしまったのだろう。

 傷だらけのディアンを見ていると、胸が苦しくて悲しくてたまらないのだ。

「お嬢様、お荷物をお持ちいたしました。既にお荷物は隣のお部屋に運んであります。それから奥様が、明日は貴族学院をお休みしてよいとの事です。今のお嬢様に、貴族学院に行けとはさすがに奥様もおっしゃれなかったのでしょう」

「お母様が?そう、ありがとう」

 お母様ったら、なんだかんだ言って私の事を考えてくれているのね。さすがにディアンがこんな状況で、明日貴族学院に行く事なんて出来そうにない。

「既に夜更けですが、お昼から何も召し上がられていませんよね。すぐに食事を準備します」

 ふと時計を見ると、夜中の12時を過ぎていた。言われてみれば12時間以上何も食べていない。

 でも…

「申し訳ないのだけれど、今はとても食事が出来る状況じゃないの」

「承知いたしました。ですが少しだけでも食べておかれた方が…サラダと果物をお持ちいたします」

 そう言うと、使用人は手際よくサラダと果物を準備してくれた。せっかく準備してくれたのだ、全く食べない訳にはいかない。サラダに入っているレタスをフォークで刺し、口に運ぶが、中々飲み込むことが出来ない。

 やっぱり今は、食べられそうにない。

 再びディアンの傍に向かう。完全看護の為、付き添いと言っても特にする事はない。ただディアンの傍にいるだけだ。それでもこうやってディアンの傍にいられる事は、私にとって幸せでしかない。

 そっと手を握る。

 温かい…ディアン、生きていてくれている。生きていてくれているだけで有難い、でも…

 頑なに閉ざされた瞳を見ると、いたたまれない気持ちになるのだ。つい数時間前まで、笑いかけてくれていたのに…

 ディアンの顔を見ていると、涙が込みあげてきた。

「お嬢様、もう夜も遅いですし、そろそろ湯あみをしてお休みになられた方がよろしいかと」

 悲しそうな私を心配したメイドが、話しかけてきたのだ。確かにもう夜遅いが、とても寝られる状況ではない。

「さすがに今日は寝られそうにないわ。でも、湯あみは済ませたいの。準備をしてくれるかしら?」

「もちろんです。既に準備は出来ております。カスタマーディス伯爵令息様は、私共が見ておりますので。さあ、こちらです」

 メイドに案内された隣の部屋もとても立派で、私の部屋と遜色ない。本当はゆっくり部屋を見たいところだが、早くディアンの傍に戻りたい。

 そんな思いで急いで湯あみを済ませた。

 そして

「ただいま、ディアン。様子は…て、変わっていないか」

 万が一目覚めてくれていたらいいな、なんて思ったのだけれど、そううまくは行かない。それにしても、立派なベッドだこと。5人は眠れそうだ。

 そうだわ。

 すっとディアンの布団に入り込んだ。

「お嬢様、何をなさっているのですか?すぐにお布団から出て下さい」

「これだけベッドが広いのですもの。少しくらいいいでしょう?それにディアンと一緒なら、少し寝られそうな気がするの。お願い」

「仕方ありませんね…今日だけですからね。そもそも、カスタマーディス伯爵令息様は重傷なのです。それなのに、お嬢様がベッドに入り込むだなんて…」

 はぁ~っとため息をつくメイドをしり目に、そっとディアンに寄り添った。

 温かい…よかった、生きている。

 何だか眠くなってきたわ…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。 私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。 彼の姉でなく、私の姉なのにだ。 両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。 そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。 寄り添うデイリ様とお姉様。 幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。 その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。 そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。 ※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。 ※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。 ※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~

桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜 ★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました! 10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。 現在コミカライズも進行中です。 「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」 コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。 しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。 愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。 だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。 どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。 もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。 ※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!) 独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。 ※誤字脱字報告もありがとうございます! こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。

婚約破棄していただき、誠にありがとうございます!

風見ゆうみ
恋愛
「ミレニア・エンブル侯爵令嬢、貴様は自分が劣っているからといって、自分の姉であるレニスに意地悪をして彼女の心を傷付けた! そのような女はオレの婚約者としてふさわしくない!」 「……っ、ジーギス様ぁ」  キュルルンという音が聞こえてきそうなくらい、体をくねらせながら甘ったるい声を出したお姉様は。ジーギス殿下にぴったりと体を寄せた。 「貴様は姉をいじめた罰として、我が愚息のロードの婚約者とする!」  お姉様にメロメロな国王陛下はジーギス様を叱ることなく加勢した。 「ご、ごめんなさい、ミレニアぁ」 22歳になる姉はポロポロと涙を流し、口元に拳をあてて言った。 甘ったれた姉を注意してもう10年以上になり、諦めていた私は逆らうことなく、元第2王子であり現在は公爵の元へと向かう。 そこで待ってくれていたのは、婚約者と大型犬と小型犬!? ※過去作品の改稿版です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるく、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観や話の流れとなっていますのでご了承ください。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

牢で死ぬはずだった公爵令嬢

鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。 表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。 小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...