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番外編1
旦那様の誕生日パーティーを開きます~その6~
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一旦自室に戻り、水色のドレスに着替えた。
「キーキ、あなたも着替えてくれる?」
キーキの瞳の色に合わせた、赤いワンピースを作ったのだ。
「これ、ローラが作ってくれたの?ありがとう。とっても可愛いわ」
早速私の作ったワンピースを着たキーキが、嬉しそうに鏡の前でクルクル回っている。頭には今朝取って来たキンモクセイの花も付いている。キーキも立派なレディーね。
「さあ、もうすぐアーサー様がお帰りになりますので、そろそろ玄関へ」
モカラに促され、玄関へと向かった。
「ローラ、ただいま」
「旦那様、おかえりなさい。少し出てくるのが遅かったみたいですね。ごめんなさい」
既に玄関には旦那様がいたのだ。
「気にしなくていい。それよりも今日のローラはまた一段と綺麗だ。急いで着替えてくるから、食堂で待っていてくれ」
そう言うと、足早に部屋に戻って行った旦那様。
「もう、アーサーったら。私の可愛らしいこの衣装が目に入らないのかしら?」
そう言って頬を膨らませているキーキ。
「今日のキーキもとっても可愛いわよ。ほら、もう怒らないで。今日はあなたの好きなお菓子も沢山準備したのだから」
「そうだったわ。沢山のお菓子が待っているのだった」
嬉しそうにキーキが飛んでいく。そんな姿を見たら、つい笑いがこみ上げてきた。
「もう、ローラ。そんなところで笑っていないで、早く行きましょうよ」
「ごめんなさい。先に行っていてくれる?私は旦那様を迎えに行ってくるから」
そう、今回は私が食堂まで旦那様をエスコートする予定なのだ。急いで旦那様の部屋へと向かう。しばらく待っていると、旦那様が出てきた。
「ローラ、どうしたんだ?こんなことろで」
「旦那様を迎えに来たのです。一緒に食堂に向かいましょう」
「ローラが迎えに来てくれるなんて嬉しいな。それじゃあ行こうか」
差し出された手を握り、2人で食堂へ向かう。食堂に入ると
「「「「アーサー様、22歳のお誕生日おめでとうございます」」」」
使用人たちが一斉に声を上げた。
「これは…」
旦那様は大きく目を見開き、固まっている。
「旦那様、22歳のお誕生日おめでとうございます。今日はささやかですが、旦那様のお誕生日パーティーを開きました。さあ、こちらへ」
固まっている旦那様をイスへと誘導した。
「ローラ、俺の誕生日を知っていたのか?」
「はい、先週キーキに教えてもらいましたの。それで、せっかくならサプライズでお誕生日パーティーを開きたいとキーキと話をしまして」
「そうよ、アーサー。あなたの為に私は色々と動いていたのに。まさか私に嫉妬するなんて…本当に呆れるわ…」
キーキ、さすがに今それを言わなくても…
「おい、キーキ。誰がお前に嫉妬なんかした!そもそもお前、俺が来る前に、お菓子をつまみ食いしていただろう。頬に生クリームが付いているぞ」
旦那様が言った通り、どうやら私が迎えに行っている間につまみ食いをしたらしく、ほっぺたに生クリームが付いていた。もう、キーキったら。
「仕方ないじゃない。こんなに美味しそうなお菓子があるのよ。我慢なんて出来ないわ」
プイっとあちらの方向を向いてしまったキーキ。そんなキーキの頬に付いている生クリームを、ハンカチでそっと取ってあげた。
「キーキも旦那様も、今日は仲良くしてください。せっかくのお誕生日パーティーなのですよ。さあ、今日はたくさん食べて飲みましょう」
近くにあったローストビーフをお皿に乗せ、旦那様の口に入れた。キーキにもお菓子を…そう思ったが、モカラが既に取ってあげていたので、私の出番はなさそうだ。
「ローラに食べさせてもらうと美味しいな。ローラ、それに皆も今日は俺の為に色々と準備をしてくれてありがとう。キーキ、お前にも感謝している…その、ローラに俺の誕生日を教えてくれた事…」
恥ずかしそうにお礼を言う旦那様。
「珍しいわね。アーサーがお礼を言うなんて。別に気にしないで。私もこういうパーティーは大好きだし。それにしてもこのケーキ、とても美味しいわ。私が食べやすい様に小さめにしてくれたのね」
そう言ってキーキが笑った。よかった、旦那様もキーキも、仲良くしてくれる様だ。
そうだわ。
「旦那様、これ。お誕生日プレゼントです」
綺麗に梱包されたプレゼントを渡した。
「俺の為にわざわざ準備をしてくれたのか?ありがとう。開けてもいいか?」
「もちろんです」
ゆっくりと包み紙を剥がしている旦那様。緊張の瞬間である。
「これは、万年筆だな。俺の誕生日が刻印されている。それにこのピンクの宝石は…」
「はい、私の髪をイメージして選びました」
なんだか恥ずかしくなって俯いてしまう。そんな私を、ギュッと旦那様が抱きしめた。
「ローラ、こんなにも素敵なプレゼントをありがとう。でも、よく万年筆なんて思いついたな」
「実は何を贈っていいのか分からなくて、アルフィーお義兄様に相談したのです。買う時は、お姉様に付き合ってもらいました」
「それで先週アルフィーの家に行っていたのか。まさか俺の為に…それなのに、あの時は怒ったりしてすまなかった」
「気にしないで下さい。私も旦那様に黙って出かけた事は、悪かったと思っておりますので。それで、万年筆は気に入って頂けましたか?」
「もちろんだ。ローラが俺の為に選んでくれたプレゼントだ。これは俺の宝物にするよ」
旦那様が嬉しそうに笑った。よかった、どうやら気に入ってくれた様だ。
その後は使用人たちも交え、皆で旦那様のお祝いをした。
「それじゃあローラ、またね。このワンピース、ありがとう」
「キーキも今日は来てくれてありがとう」
ご機嫌のキーキを見送る。
「さあ、ローラ。今日は疲れただろう。俺たちももう休もう」
一旦自室に戻り、湯あみを済ませると夫婦の寝室へと向かった。
旦那様も湯あみを済ませ、寝室へとやって来た。
「なんだかこの部屋、とてもいい香りがするな」
「この香りは、キンモクセイという花のものです。最近マテオが異国から取り寄せたとの事で。とてもいい香りなので、少し頂いてきましたの」
「そうなのか。この小さなオレンジの花から香りが出ているのだな。そういえば、キーキの頭にもくっ付いていたな」
「はい、キーキもこのお花を気に入っておりましたので。今度中庭に見に行きましょう。とてもいい香りがするのですのよ」
「そうだな。そうしよう」
そう言うと、改めて私の方を向いた旦那様。
「ローラ、今日は本当にありがとう。俺は正直自分の誕生日なんて全く興味がなかった。だが、今日ローラに祝ってもらって、誕生日パーティーも悪くないなと思った」
「こちらこそ、旦那様のお誕生日に一緒に過ごせた事、皆でお祝いが出来た事を嬉しく思いますわ。これからは毎年、必ずお祝いをしましょうね。約束ですよ」
せっかく夫婦になったのだ。これからは私が毎年旦那様のお誕生日を祝いたい。
「わかった、そうしよう。もちろん、ローラの誕生日も盛大に祝わないとな。いつだ?」
「私の誕生日は再来月ですわ。ねえ、旦那様、私たちはまだまだ知らない事が沢山ある様です。これからはもっとお互いの事を話していきましょう。私、もっと旦那様の事が知りたいですわ」
私たちはまだ知らない事が多すぎる。でも、これから少しずつ知っていけたら…
「俺もローラの事をもっと知りたい。俺たちは夫婦なんだもんな」
その後は時間が許す限り、お互いの事を話した。旦那様のお誕生日をきっかけに、また私たちの距離が縮まった気がする。
それが嬉しいのだ。
まだまだ知らない事も多いけれど、これからゆっくりとお互いの事を知っていきたい。だって私たちは、まだまだ新婚なのだから。
※これにて「旦那様の誕生日パーティーを開きます」は完結です。
明日から第二章と投稿していきます。
あまり修正していない部分もあるので、三話ずつくらい一気に投稿していく予定です。
リアム&エヴァの婚約披露パーティーは年齢の都合(四歳で婚約は早いかなっと思いまして(;^_^A))で、削除しました。
ごめんなさいm(__)m
また、機会があったら書きたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
「キーキ、あなたも着替えてくれる?」
キーキの瞳の色に合わせた、赤いワンピースを作ったのだ。
「これ、ローラが作ってくれたの?ありがとう。とっても可愛いわ」
早速私の作ったワンピースを着たキーキが、嬉しそうに鏡の前でクルクル回っている。頭には今朝取って来たキンモクセイの花も付いている。キーキも立派なレディーね。
「さあ、もうすぐアーサー様がお帰りになりますので、そろそろ玄関へ」
モカラに促され、玄関へと向かった。
「ローラ、ただいま」
「旦那様、おかえりなさい。少し出てくるのが遅かったみたいですね。ごめんなさい」
既に玄関には旦那様がいたのだ。
「気にしなくていい。それよりも今日のローラはまた一段と綺麗だ。急いで着替えてくるから、食堂で待っていてくれ」
そう言うと、足早に部屋に戻って行った旦那様。
「もう、アーサーったら。私の可愛らしいこの衣装が目に入らないのかしら?」
そう言って頬を膨らませているキーキ。
「今日のキーキもとっても可愛いわよ。ほら、もう怒らないで。今日はあなたの好きなお菓子も沢山準備したのだから」
「そうだったわ。沢山のお菓子が待っているのだった」
嬉しそうにキーキが飛んでいく。そんな姿を見たら、つい笑いがこみ上げてきた。
「もう、ローラ。そんなところで笑っていないで、早く行きましょうよ」
「ごめんなさい。先に行っていてくれる?私は旦那様を迎えに行ってくるから」
そう、今回は私が食堂まで旦那様をエスコートする予定なのだ。急いで旦那様の部屋へと向かう。しばらく待っていると、旦那様が出てきた。
「ローラ、どうしたんだ?こんなことろで」
「旦那様を迎えに来たのです。一緒に食堂に向かいましょう」
「ローラが迎えに来てくれるなんて嬉しいな。それじゃあ行こうか」
差し出された手を握り、2人で食堂へ向かう。食堂に入ると
「「「「アーサー様、22歳のお誕生日おめでとうございます」」」」
使用人たちが一斉に声を上げた。
「これは…」
旦那様は大きく目を見開き、固まっている。
「旦那様、22歳のお誕生日おめでとうございます。今日はささやかですが、旦那様のお誕生日パーティーを開きました。さあ、こちらへ」
固まっている旦那様をイスへと誘導した。
「ローラ、俺の誕生日を知っていたのか?」
「はい、先週キーキに教えてもらいましたの。それで、せっかくならサプライズでお誕生日パーティーを開きたいとキーキと話をしまして」
「そうよ、アーサー。あなたの為に私は色々と動いていたのに。まさか私に嫉妬するなんて…本当に呆れるわ…」
キーキ、さすがに今それを言わなくても…
「おい、キーキ。誰がお前に嫉妬なんかした!そもそもお前、俺が来る前に、お菓子をつまみ食いしていただろう。頬に生クリームが付いているぞ」
旦那様が言った通り、どうやら私が迎えに行っている間につまみ食いをしたらしく、ほっぺたに生クリームが付いていた。もう、キーキったら。
「仕方ないじゃない。こんなに美味しそうなお菓子があるのよ。我慢なんて出来ないわ」
プイっとあちらの方向を向いてしまったキーキ。そんなキーキの頬に付いている生クリームを、ハンカチでそっと取ってあげた。
「キーキも旦那様も、今日は仲良くしてください。せっかくのお誕生日パーティーなのですよ。さあ、今日はたくさん食べて飲みましょう」
近くにあったローストビーフをお皿に乗せ、旦那様の口に入れた。キーキにもお菓子を…そう思ったが、モカラが既に取ってあげていたので、私の出番はなさそうだ。
「ローラに食べさせてもらうと美味しいな。ローラ、それに皆も今日は俺の為に色々と準備をしてくれてありがとう。キーキ、お前にも感謝している…その、ローラに俺の誕生日を教えてくれた事…」
恥ずかしそうにお礼を言う旦那様。
「珍しいわね。アーサーがお礼を言うなんて。別に気にしないで。私もこういうパーティーは大好きだし。それにしてもこのケーキ、とても美味しいわ。私が食べやすい様に小さめにしてくれたのね」
そう言ってキーキが笑った。よかった、旦那様もキーキも、仲良くしてくれる様だ。
そうだわ。
「旦那様、これ。お誕生日プレゼントです」
綺麗に梱包されたプレゼントを渡した。
「俺の為にわざわざ準備をしてくれたのか?ありがとう。開けてもいいか?」
「もちろんです」
ゆっくりと包み紙を剥がしている旦那様。緊張の瞬間である。
「これは、万年筆だな。俺の誕生日が刻印されている。それにこのピンクの宝石は…」
「はい、私の髪をイメージして選びました」
なんだか恥ずかしくなって俯いてしまう。そんな私を、ギュッと旦那様が抱きしめた。
「ローラ、こんなにも素敵なプレゼントをありがとう。でも、よく万年筆なんて思いついたな」
「実は何を贈っていいのか分からなくて、アルフィーお義兄様に相談したのです。買う時は、お姉様に付き合ってもらいました」
「それで先週アルフィーの家に行っていたのか。まさか俺の為に…それなのに、あの時は怒ったりしてすまなかった」
「気にしないで下さい。私も旦那様に黙って出かけた事は、悪かったと思っておりますので。それで、万年筆は気に入って頂けましたか?」
「もちろんだ。ローラが俺の為に選んでくれたプレゼントだ。これは俺の宝物にするよ」
旦那様が嬉しそうに笑った。よかった、どうやら気に入ってくれた様だ。
その後は使用人たちも交え、皆で旦那様のお祝いをした。
「それじゃあローラ、またね。このワンピース、ありがとう」
「キーキも今日は来てくれてありがとう」
ご機嫌のキーキを見送る。
「さあ、ローラ。今日は疲れただろう。俺たちももう休もう」
一旦自室に戻り、湯あみを済ませると夫婦の寝室へと向かった。
旦那様も湯あみを済ませ、寝室へとやって来た。
「なんだかこの部屋、とてもいい香りがするな」
「この香りは、キンモクセイという花のものです。最近マテオが異国から取り寄せたとの事で。とてもいい香りなので、少し頂いてきましたの」
「そうなのか。この小さなオレンジの花から香りが出ているのだな。そういえば、キーキの頭にもくっ付いていたな」
「はい、キーキもこのお花を気に入っておりましたので。今度中庭に見に行きましょう。とてもいい香りがするのですのよ」
「そうだな。そうしよう」
そう言うと、改めて私の方を向いた旦那様。
「ローラ、今日は本当にありがとう。俺は正直自分の誕生日なんて全く興味がなかった。だが、今日ローラに祝ってもらって、誕生日パーティーも悪くないなと思った」
「こちらこそ、旦那様のお誕生日に一緒に過ごせた事、皆でお祝いが出来た事を嬉しく思いますわ。これからは毎年、必ずお祝いをしましょうね。約束ですよ」
せっかく夫婦になったのだ。これからは私が毎年旦那様のお誕生日を祝いたい。
「わかった、そうしよう。もちろん、ローラの誕生日も盛大に祝わないとな。いつだ?」
「私の誕生日は再来月ですわ。ねえ、旦那様、私たちはまだまだ知らない事が沢山ある様です。これからはもっとお互いの事を話していきましょう。私、もっと旦那様の事が知りたいですわ」
私たちはまだ知らない事が多すぎる。でも、これから少しずつ知っていけたら…
「俺もローラの事をもっと知りたい。俺たちは夫婦なんだもんな」
その後は時間が許す限り、お互いの事を話した。旦那様のお誕生日をきっかけに、また私たちの距離が縮まった気がする。
それが嬉しいのだ。
まだまだ知らない事も多いけれど、これからゆっくりとお互いの事を知っていきたい。だって私たちは、まだまだ新婚なのだから。
※これにて「旦那様の誕生日パーティーを開きます」は完結です。
明日から第二章と投稿していきます。
あまり修正していない部分もあるので、三話ずつくらい一気に投稿していく予定です。
リアム&エヴァの婚約披露パーティーは年齢の都合(四歳で婚約は早いかなっと思いまして(;^_^A))で、削除しました。
ごめんなさいm(__)m
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