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第27話:アデル様が決めた事なら私は受け入れます
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「でも、ローズ様のご両親がいらっしゃらないのでは、さすがに心細いでしょう。今日は私がここに泊まり込んで、お世話をいたしますわ」
なぜか張り切るティーナ様。有難いのだが、グラス様がきっと許さないだろう。案の定
「ティーナ、君は一体何を言っているんだ。ここは完全看護の病院だ。それに彼女には使用人たちもいる。わざわざティーナが泊り込む必要は無いよ。さあ、ローズ嬢も目が覚めた事だし、僕たちはもう帰ろう」
グラス様がティーナ様の腕を掴み、病室から出て行こうとしている。ただ、今回ばかりはティーナ様も譲らない様で…
「グラス、何を言っているの?ローズ様はあんなに出血をして、意識を失ったのよ!それなのに、もう帰るだなんて。いくら何でも薄情すぎるわ」
珍しくティーナ様がグラス様に文句を言っている。困り顔のグラス様。
「ティーナ様、お心使いありがとうございます。でも、私はもう大丈夫ですわ。明日には退院できるそうですし。どうか私の事は気にせず、グラス様たちと一緒にお帰り下さい。あなた様も今日はお疲れでしょう。ゆっくり休んでくださいね」
「でも…」
「ほら、ローズ嬢もそう言っているではないか。それじゃあローズ嬢、今日はゆっくり休んでくれ。それじゃあ、僕たちはこれで」
ティーナ様を連れて出て行こうとするグラス様。
「ローズ様、明日の退院の時、また参ります。それでは、今日はゆっくり休んでくださいね」
「はい、ありがとうございます」
まだ少し心配そうなティーナ様に頭を下げ、病室から出ていくティーナ様とグラス様を見送る。あら?アデル様は一緒に帰らないのかしら?
「アデル様はお帰りにならないのですか?」
「ああ…君と少し話がしたくてね…」
話?一体何かしら?
何となくいい話ではない様な気がする。もしかして、ティーナ様を泣かせてしまった事を責められるのかしら?そう思っていると…
「ローズ、今回の件、本当に申し訳なかった。役とはいえ、僕は君を守る事が出来なかった。本当にすまない」
何度も謝るアデル様。本当に申し訳なさそうに頭を下げるアデル様を見ていると、胸が締め付けられる。
「アデル様、頭をあげて下さい。確かに私はあなた様の恋人役です。けれど…アデル様が心より愛していらっしゃるのは、ティーナ様ですよね。ティーナ様をとっさに庇うのは、自然の流れです。それに、ティーナ様に怪我がなくて本当によかったですわ。だから、どうか謝らないで下さい。そして、自分の行動を責めないで下さい。あなたが行った事は、正しかったのです」
「正しかったか…ローズ、君は本当に優しいね。いつも君は、僕とティーナの事を考えてくれている。でも僕は…君を傷つけてしまった。こんな僕と一緒にいたら、これからもきっと君を傷つけてしまう。だから…僕たちの契約を解消しよう…」
とても辛そうな顔でそういったアデル様。
「契約を解消ですか?確かに今回は怪我をしましたが、アデル様のせいではございませんわ。それに私は、アデル様に助けて頂いた恩があります。ですから、私の事は気にせず…」
「僕が気にするんだ!頼む…どうか僕の我が儘を聞き入れてくれ…」
アデル様が必死に訴えてくる。こんな顔をされたら私、これ以上何も言えないわ。それに今回の件で、もしかしたらティーナ様に責められたのかもしれない。もしそうなら、私のせいでティーナ様に責められたことで、私に嫌気がさしたのかもしれない…
「わかりました。アデル様がそこまでおっしゃるのでしたら、契約は解消いたしましょう。ただ…ティーナ様は私にとって大切な友人です。どうかこれからも、ティーナ様の友人でいる事を、お許しください…」
「その事に関して、僕がとやかくいう事は出来ないから、好きにしてもらって構わないよ。ローズ、君と過ごした時間は僕にとって、かけがえのない時間だったよ。ありがとう…どうか幸せになって欲しい…」
悲しそうに微笑むと、そのまま病室を出て行ったアデル様。私と過ごした時間はかけがえのないものだった?あぁ…要するにティーナ様が嬉しそうに過ごしていたからという意味か…
アデル様が私を好きになる事は絶対ない。それでも、アデル様の傍にいれたら…アデル様が少しでも穏やかに過ごすことが出来れば…
そう思っていたのに…
私は結局アデル様を苦しめ、傷つけてしまったのね…
「私…何をしているのかしら?」
気が付くと涙が溢れていた。たとえ契約の恋人だったとしても、アデル様の傍にいられる事がとても幸せだった。アデル様が嬉しそうにしているだけで、私も嬉しかった。
でも、もうそんな日々は訪れないだろう。だって私たちは、もう契約を解除してしまったのだから…
あっ、もしかしたら、契約を解除しても、今まで通り過ごせるかしら?そんな淡い期待をしてしまう。
でも、真面目でお優しいアデル様はきっと、もう私の前には極力現れないだろう。なんだかそんな気がした。
「アデル様…ごめんなさい。私は結局、あなた様を傷つけてしまったのですね…本当にごめんなさい」
1人静かに病室で涙を流したのであった。
なぜか張り切るティーナ様。有難いのだが、グラス様がきっと許さないだろう。案の定
「ティーナ、君は一体何を言っているんだ。ここは完全看護の病院だ。それに彼女には使用人たちもいる。わざわざティーナが泊り込む必要は無いよ。さあ、ローズ嬢も目が覚めた事だし、僕たちはもう帰ろう」
グラス様がティーナ様の腕を掴み、病室から出て行こうとしている。ただ、今回ばかりはティーナ様も譲らない様で…
「グラス、何を言っているの?ローズ様はあんなに出血をして、意識を失ったのよ!それなのに、もう帰るだなんて。いくら何でも薄情すぎるわ」
珍しくティーナ様がグラス様に文句を言っている。困り顔のグラス様。
「ティーナ様、お心使いありがとうございます。でも、私はもう大丈夫ですわ。明日には退院できるそうですし。どうか私の事は気にせず、グラス様たちと一緒にお帰り下さい。あなた様も今日はお疲れでしょう。ゆっくり休んでくださいね」
「でも…」
「ほら、ローズ嬢もそう言っているではないか。それじゃあローズ嬢、今日はゆっくり休んでくれ。それじゃあ、僕たちはこれで」
ティーナ様を連れて出て行こうとするグラス様。
「ローズ様、明日の退院の時、また参ります。それでは、今日はゆっくり休んでくださいね」
「はい、ありがとうございます」
まだ少し心配そうなティーナ様に頭を下げ、病室から出ていくティーナ様とグラス様を見送る。あら?アデル様は一緒に帰らないのかしら?
「アデル様はお帰りにならないのですか?」
「ああ…君と少し話がしたくてね…」
話?一体何かしら?
何となくいい話ではない様な気がする。もしかして、ティーナ様を泣かせてしまった事を責められるのかしら?そう思っていると…
「ローズ、今回の件、本当に申し訳なかった。役とはいえ、僕は君を守る事が出来なかった。本当にすまない」
何度も謝るアデル様。本当に申し訳なさそうに頭を下げるアデル様を見ていると、胸が締め付けられる。
「アデル様、頭をあげて下さい。確かに私はあなた様の恋人役です。けれど…アデル様が心より愛していらっしゃるのは、ティーナ様ですよね。ティーナ様をとっさに庇うのは、自然の流れです。それに、ティーナ様に怪我がなくて本当によかったですわ。だから、どうか謝らないで下さい。そして、自分の行動を責めないで下さい。あなたが行った事は、正しかったのです」
「正しかったか…ローズ、君は本当に優しいね。いつも君は、僕とティーナの事を考えてくれている。でも僕は…君を傷つけてしまった。こんな僕と一緒にいたら、これからもきっと君を傷つけてしまう。だから…僕たちの契約を解消しよう…」
とても辛そうな顔でそういったアデル様。
「契約を解消ですか?確かに今回は怪我をしましたが、アデル様のせいではございませんわ。それに私は、アデル様に助けて頂いた恩があります。ですから、私の事は気にせず…」
「僕が気にするんだ!頼む…どうか僕の我が儘を聞き入れてくれ…」
アデル様が必死に訴えてくる。こんな顔をされたら私、これ以上何も言えないわ。それに今回の件で、もしかしたらティーナ様に責められたのかもしれない。もしそうなら、私のせいでティーナ様に責められたことで、私に嫌気がさしたのかもしれない…
「わかりました。アデル様がそこまでおっしゃるのでしたら、契約は解消いたしましょう。ただ…ティーナ様は私にとって大切な友人です。どうかこれからも、ティーナ様の友人でいる事を、お許しください…」
「その事に関して、僕がとやかくいう事は出来ないから、好きにしてもらって構わないよ。ローズ、君と過ごした時間は僕にとって、かけがえのない時間だったよ。ありがとう…どうか幸せになって欲しい…」
悲しそうに微笑むと、そのまま病室を出て行ったアデル様。私と過ごした時間はかけがえのないものだった?あぁ…要するにティーナ様が嬉しそうに過ごしていたからという意味か…
アデル様が私を好きになる事は絶対ない。それでも、アデル様の傍にいれたら…アデル様が少しでも穏やかに過ごすことが出来れば…
そう思っていたのに…
私は結局アデル様を苦しめ、傷つけてしまったのね…
「私…何をしているのかしら?」
気が付くと涙が溢れていた。たとえ契約の恋人だったとしても、アデル様の傍にいられる事がとても幸せだった。アデル様が嬉しそうにしているだけで、私も嬉しかった。
でも、もうそんな日々は訪れないだろう。だって私たちは、もう契約を解除してしまったのだから…
あっ、もしかしたら、契約を解除しても、今まで通り過ごせるかしら?そんな淡い期待をしてしまう。
でも、真面目でお優しいアデル様はきっと、もう私の前には極力現れないだろう。なんだかそんな気がした。
「アデル様…ごめんなさい。私は結局、あなた様を傷つけてしまったのですね…本当にごめんなさい」
1人静かに病室で涙を流したのであった。
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