彼の幸せを願っていたら、いつの間にか私も幸せになりました

Karamimi

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第32話:こんなに辛いなんて…~アデル視点~

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ローズに別れを告げた翌日、ティーナと兄上にも、ローズと別れた事を伝えた。

「どうして?あなた、ローズ様の事を好きなのでしょう?アデルを見ていればわかるわ。それなのに、どうして別れたの?」

あり得ないと言った表情で僕に詰め寄ってくるティーナ。

「僕は…彼女と付き合う資格なんてないんだ…僕は大切な人すら守れない、ダメな男なんだ。こんな僕と一緒にいたら、もっともっと彼女が傷つくかもしれない。だから…これでいいんだ。彼女を自由にしてあげたいんだよ…」

そうティーナに伝えた。

「でも…」

「ティーナ、アデルが決めた事だ。尊重してやろう。でもアデル、本当にそれでいいのかい?君はいつも相手の事をまず考えて行動し、自分の気持ちを押し殺すところがある。僕は君にも幸せになって欲しいんだ」

僕にも幸せに…か…

「僕はこれでいいのです。これが僕にできる、彼女への唯一の償いだから…」

そう伝え、2人の元を去った。正直今の僕には、ティーナと兄上を見るのもつらい。2人を見ていると、どうしてもローズを思い出してしまうから…

そして僕は、ローズと別れたとこを出来る限り皆に伝えた。既にローズの怪我の件は、学院中の噂になっていた。ここに来て僕がローズに別れを告げたことを皆に伝えた事で、僕を薄情者と思うだろう。

皆から軽蔑され、距離を置かれる。僕の悪口を言う者もいるだろう。どうせなら、面と向かって暴言をはいてくれたら…

僕が傷つけば傷つくだけ、ローズへの罪も軽くなる。そんな気がする。

それなのに、なぜか僕がフリーになった事を知った令嬢たちが、僕にすり寄ってくる。なぜだ、僕は怪我をした恋人を捨てた、薄情な男なのに…

そんな僕に対し兄上が

「アデル、君の人気はすさまじいな。君が少し薄情な事をしたからって、令嬢たちは何にも思わないよ」

そう言って苦笑いしていた。クソ、どいつもこいつも!思い通りに行かない苛立ちから、令嬢たちを睨みつけ、無視してやった。それでも休み時間のたびに、僕の元にやって来る令嬢たち。本当に、うざい事この上ない。

そして放課後。

「アデル、さっきローズ様の使用人から、“お嬢様は既に退院しました”と、連絡があったの。だから今から、ローズ様のお宅にお見舞いに行くのだけれど、あなたも来るでしょう?」

ティーナが僕に聞いて来た。

「僕はいかないよ。彼女は僕のせいで怪我をしたんだ。そして昨日、別れも告げている。僕になんて、きっと会いたくないよ」

本当はローズが心配でたまらない。でも…僕には会う権利なんてないんだ!

「アデル、本当にそれでいいのか?きっとローズ嬢なら、笑顔で会ってくれると思うぞ」

兄上までそんな事を言って!

「今更どの面下げてローズに会えと言うのですか!ローズに合わせる顔なんてありません!とにかく僕は、ローズには会うつもりはありませんので。でも…僕も途中まで一緒に行っていいですか?お見舞いの花を買いたいので。その花を、ローズに渡して欲しいのです。ただし、絶対に僕からと言わないで下さいね!」

せめてローズに花を渡したい。僕が選んだ花を飾ってくれたら、それだけで満足だ。

「アデルは本当に頑固だな…わかったよ。それじゃあ、一緒に花屋へ行こう」

馬車に3人で乗り込むと、花屋へと向かった。花屋には色々な花が置かれている。そういえばローズは、ラベンダーが好きだと言っていた。その事を思い出し、ラベンダーを花束にしてもらった。

「それじゃあ、僕は帰ります。この花束は、絶対に僕からと言わないで下さいね」

「ああ…わかっているよ。本当に頑固だな…」

呆れながらも花束を受け取ってくれた兄上。2人が乗る馬車を見送る。そして僕も家に帰る為、近くに控えていた馬車に乗り込んだ。

家に帰ってからも、考える事はローズの事ばかり。ローズ、退院したそうだけれど、痛みなどは大丈夫かな?あれだけ出血したんだ、体調を崩したりしていないだろうか…

昨日からずっと、そんな事ばかり考えている。正直、食事も喉を通らない。せめて一目でもローズの姿を見る事が出来れば…

退院したのだから、明日には学院に来るかもしれない。もし来たら、こっそりとローズの様子を見に行こう。もう僕は、ローズと一緒にはいられないが、それでも元気な姿を一目でも見られれば、きっと僕の気持ちも落ち着くだろう。

そう思っていたのに…

しばらくすると、兄上が帰って来た。

「兄上、ローズの様子はどうでしたか?体調を崩したりはしていませんでしたか?」

帰って来たばかりの兄上を捕まえ、ローズの様子をうかがう。

「アデル…そこまで心配なら、君もお見舞いに行けばいいだろう。ローズ嬢、君の事を気に掛けていたよ。傷が完治し、学院にまた通い始めたら、前の様に4人で過ごしたいと言っていたぞ」

「え…ローズは明日から、学院に通うんじゃあ…」

「顔に怪我を負っているから、包帯とガーゼが取れるまでは、自宅で過ごすらしい。大体包帯が取れるまで、2週間くらいかかると言っていたぞ」

そんな…
2週間もローズに会えないなんて…今でさえこんなに辛くて、ローズの事ばかり考えているのに…

「アデル、大丈夫か?とにかくしっかり食事をとれ。今のアデル、酷い顔をしているぞ。そんな姿をローズ嬢が見たら、きっと悲しむだろうな。それから、明日は一緒に見舞いに行こう。アデルが選んだ花束、とても喜んでいたぞ」

そうか、僕の選んだ花束を、ローズは喜んでくれたんだな…

「いいえ、僕は行きません。明日も花束を選ぶので、兄上が持って行ってください」

「アデル、いつまでも変な意地を張らずに…」

「兄上がなんと言おうと、僕は行きません。それでは」

後ろで兄上が何か叫んでいたが、無視して部屋に戻ってきた。

ローズ、元気そうだったんだな。僕が選んだ花も喜んでくれただなんて…

でも、2週間もローズの姿を見られないなんて…そんなの、耐えられない。
いっその事、兄上に盗撮機でローズの様子を撮影してもらおうか…て、僕は何を考えているんだ。これは僕に与えられた罰なんだ!

どんなに辛くても、僕は耐えるしかないんだ。
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