彼の幸せを願っていたら、いつの間にか私も幸せになりました

Karamimi

文字の大きさ
69 / 87

第69話:旅立ちのときです

しおりを挟む
2人の言い合いをしばらく見守った後

「あの、出発の時間もありますし、そろそろ…」

私の言葉にハッとした2人。

「ごめんね、ローズ。つい熱くなってしまった。それじゃあマイケル、朝早くにお邪魔して申し訳ありませんでした。それでは、僕たちはこれで」

「マイケル様、わざわざお時間を頂き、ありがとうございました。それでは、お元気で」

マイケル様に頭を下げ、アデル様と一緒に部屋から出た。

「待ってくれ、俺も見送るよ」

どうやら玄関まで見送ってくれる様だ。

「それではマイケル様、わざわざお見送りいただき、ありがとうございます。ではまた」

マイケル様に改めて挨拶をして、馬車に乗り込もうと思ったのだが。

「ローズ、何を言っているんだ。俺もローズの見送りに行くと言っているだろう。さあ、行こうか」

なぜか私たちの馬車に乗り込むマイケル様。

「マイケル、どうしてあなたまで乗り込むのですか?ローズは僕がしっかりと責任をもって見送りますので、着いてこなくても大丈夫です。あなたは学院に行ってください」

「何を言っているのだ。友人が隣国に旅立つというのに、見送りにもいかない程俺は薄情者ではない。大丈夫だ、帰りの馬車はちゃんと手配してあるから」

マイケル様の指さす方向には、既に馬車が待機していた。

「さあ、早くいかないと、遅れてしまうよ」

確かにこのまま揉めていても仕方がない。そのまま馬車を出すことにした。

「それで、ローズのおばあさんの容態はどうなんだい?」

「はい、兄の手紙には、あまり良くない状況でして…ただ、詳しくは書かれていなかったので」

「そうか、それは心配だね。大丈夫だよ、また君が学院に戻ってきたら、俺が勉強を教えてあげるから」

「どうしてローズが、マイケルに勉強を教えてもらわないといけないのですか。ローズは僕の恋人です。僕が教えるので、ご心配なく!」

すかさずアデル様が話に入って来た。これまた喧嘩が始まるのかしら?そう思ったのだが、ナイスなタイミングで我が家に着いた。

よく見るとカルミアやファリサ、ティーナ様、グラス様も来てくれていた。まさか皆までお見送りに来てくれるだなんて。

「皆様、わざわざ私の為にお見送りに来てくださったのですね。ありがとうございます」

急いで馬車から降りると、待っていた皆に頭を下げた。

「ちょっと、ローズ。一体どういう事よ。どうしてマイケル様とアデル様と一緒に降りてくるの?」

「そうよ、一体何があったのよ」

カルミアとファリサが飛んできた。そうか、2人には何も話していないのだったわ。

「実はあの後…アデル様に告白…して頂いたの。それで付き合う事になって。でも、私に気持ちを伝えてくれたマイケル様にその事をきちんと伝えたくてね。それで今朝、マイケル様の家に行っていたの」

昨日の事を簡単に2人に説明した。

「ちょっと、あの後そんな事になっていたの?でも…よかったわね、ローズ。あなた、8歳の時からずっとアデル様の事好きだったものね」

「そうよね。長い片思いが実ってよかったわね」

そう言って2人とも喜んでくれた。

「お嬢様、そろそろ出発のお時間です」

「ありがとう。それじゃあ、皆様、行って参ります」

「ローズ、気を付けて行ってくるのよ」

「授業は私たちがしっかりと聞いておくから、安心してね」

「ありがとう、カルミア、ファリサ」

「ローズ嬢、アデルの気持ちに答えてくれてありがとう。僕が言うのもなんだが、アデルは今まで本当に我慢させてしまって…だから彼には誰よりも幸せになって欲しいと思っている。君はアデルが心から愛した唯一無二な存在だ。どうか、アデルの事をよろしく頼むよ」

「こちらこそ、どうか私の留守の間、アデル様をよろしくお願いいたします。それから、私は5年以上もアデル様を思い続けておりましたので、ご心配はご無用ですわ」

私の言葉を聞き、嬉しそうに笑うグラス様。この人、意外と弟思いなのね。

「ローズ様、寂しくなりますね。どうかお体には気を付けて下さい。また帰国したら、パフェを食べに行きましょうね」

「ええ、もちろんですわ。ティーナ様、お手紙書きますね」

「私も書きますわ。必ず」

寂しそうな顔のティーナ様の肩を抱くのは、グラス様だ。私もこの2人の様になれたら嬉しいわ。

「ローズ、俺の事、忘れないでくれよ。そうだ、学年末休みに入ったら、グラシュ国に遊びに行くよ!」

そんな事を言っているのは、マイケル様だ。

「ええ、是非来て…」

「マイケル、どうして君がグラシュ国に行くのだい?ローズ、マイケルの我が儘を真に受けなくていいんだよ。そもそも、すぐに帰国するかもしれないのだし」

すかさず間に入って来たのはアデル様だ。

「ローズ、正直僕も一緒についていきたいよ。やっと気持ちが通じ合ったんだ。1秒だって離れたくはない。でも…それは出来ない事は、さすがの僕でもわかるよ。だからこれ。通信機だ。これで毎日連絡を取り合おう。それから、このイヤリングを」

私の耳にサファイアがあしらわれたイヤリングを付けてくれた。

「ありがとうございます。まさかこのイヤリング、盗聴機能なんて付いていないですよね?」

「ああ、残念ながら付いていないよ。本当は付けようと思ったのだが、あまりにも距離がありすぎるからね。物理的に無理だったんだよ。せめて位置情報だけでもと思ったんだけれどね。もう少し時間があれば、出来たかもしれないけれど、昨日の今日じゃあ…」

残念そうなアデル様。やっぱり盗聴器を…

グラス様を見ていたら、もしかしてと思ったのだが…

とにかく、帰国したら肌身離さず盗聴防止の機械を持ち歩かないと!

さあ、一通り皆との挨拶も終えたし、そろそろ行かないと。

「それでは皆様、行って参ります」

ペコリと皆に向かって一礼すると、馬車に乗り込んだ。すると、なぜか一緒に乗り込んできたのは、アデル様だ。

「ローズ、本当に行ってしまうんだね。いいかい?毎日必ず通信をするんだよ。それから、通信機は肌身離さず持っている事。わかったね」

「はい、分かっていますわ。アデル様、どうかお元気で」

「ローズも」

ギュッと私を抱きしめてくれるアデル様。私もアデル様の腰に手を回し、強く抱きしめ返した。そして、どちらともなく唇を重ねる。

この温もりも、しばらくお預けだ。

ゆっくり離れがアデル様は、もう一度私を抱きしめた後、馬車から降りて行った。

ゆっくり走り出す馬車の窓から身を乗り出し、皆に手を振る。

「皆様、行って参ります」

そう叫びながら。

皆も私に向かって手を振り続けてくれた。姿が見えなくなるまで、ずっと…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく

たまこ
恋愛
 10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。  多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。  もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。 新聞と涙 それでも恋をする  あなたの照らす道は祝福《コーデリア》 君のため道に灯りを点けておく 話したいことがある 会いたい《クローヴィス》  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます 2025.2.14 後日談を投稿しました

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

【完結】そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして

Rohdea
恋愛
──婚約者の王太子殿下に暴言?を吐いた後、彼から逃げ出す事にしたのですが。 公爵令嬢のリスティは、幼い頃からこの国の王子、ルフェルウス殿下の婚約者となるに違いない。 周囲にそう期待されて育って来た。 だけど、当のリスティは王族に関するとある不満からそんなのは嫌だ! と常々思っていた。 そんなある日、 殿下の婚約者候補となる令嬢達を集めたお茶会で初めてルフェルウス殿下と出会うリスティ。 決して良い出会いでは無かったのに、リスティはそのまま婚約者に選ばれてしまう── 婚約後、殿下から向けられる態度や行動の意味が分からず困惑する日々を送っていたリスティは、どうにか殿下と婚約破棄は出来ないかと模索するも、気づけば婚約して1年が経っていた。 しかし、ちょうどその頃に入学した学園で、ピンク色の髪の毛が特徴の男爵令嬢が現れた事で、 リスティの気持ちも運命も大きく変わる事に…… ※先日、完結した、 『そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして』 に出て来た王太子殿下と、その婚約者のお話です。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

処理中です...