全てを失ったと思ったのですが…騎士団の隊長に拾われ溺愛されました

Karamimi

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第14話:私の事

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「リリア、その…リリアの事を…その…」

 ゼルス様が、急に何か言いたそうにしだしたのだ。一体どうしたのだろう。

「ゼルス様、一体どうされましたか?もしかして私があまりにもがつがつとタルトを食べていたので、引いてしまわれましたか?申し訳ございません、家政婦の分際で、図々しすぎましたよね」

 いくらタルトが美味しかったからと言って、さすがにがっつきすぎだ。恥ずかしい。

「いや、そうではなくて。その…君はどうしてシャールン市に来ようと思ったのかい?話したくないのならいいんだ。ただ…なんというか…その…」

 なぜ私がシャールン市に来たのかが、気になった様だ。助けてもらった恩もあるし、ゼルス様には正直に話しておいた方がいいかもしれない。

「私は元々、マルモル村という小さな村に住んでいたのです。両親を12歳の時に亡くし、叔父夫婦のお世話になっていたのですが…なんと申しますか、叔父夫婦は私の事を疎ましく思っていた様で…辛い生活の中、私を支えてくれたのが、幼馴染でした。彼は2年後必ず迎えに来ると約束して、シャールン市に行ったのですが…その後3年間音信不通になってしまって。

 そんな中、叔母から隣町のお金持ちの男性と結婚する様に命じられて。何もかもが嫌になり、幼馴染を頼って村を出てきたのですが。幼馴染は恋人と暮らしていて…それで途方に暮れていた所を、ゼルス様に拾われたのです。ですからゼルス様は、私の恩人なのです。本当にありがとうございました」


 今まで私に起こった事を、簡単に話した。

 なぜか口をあけて固まっているゼルス様。

「要するに、村では叔父夫婦から冷遇され、幼馴染を頼ってシャールン市に来たものの、その幼馴染にも裏切られていたという訳か…リリアは今まで、苦労してきたのだな…」

 ゼルス様が一気に怖い顔になった。まずい、ゼルス様を怒らせてしまった。

「確かに村では辛い生活を送ってきましたが、私を助けてくれる人たちもおりましたし。何よりもシャールン市に来てからは、自由に過ごさせていただいております。それもこれも、全てゼルス様のお陰です。ですが、いつまでもゼルス様に甘える訳にはいきません。ある程度お金が貯まったら、出ていきますのでご安心を」

「どうして出ていく必要があるのだ!ずっとここにいればいい!」

 急に机を叩き、声を荒げたゼルス様。完全にお怒りの様だ。私、何かまずい事を言ったかしら?

「あの…申し訳ございません。私が暗い話をしたのがいけなかったのですね」

「いや、俺の方こそ感情的になってしまって、すまなかった。俺はリリアが家の事をすべてやってくれて助かっている。だから、俺に迷惑をかけているとか、甘えているとかは考えないでほしい。本当に助かっているし、感謝しているのだから」

「ゼルス様はお優しいのですね。そう言って私の心の負担を、軽くしようとしてくださっているのですよね。ありがとうございます。ゼルス様にもっと快適に過ごしていただけるように、これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」

 改めてゼルス様に頭を下げたのだ。

「美味い食事に綺麗な家、石鹸の香りがする服やシーツ、これ以上何を望むというのだ。俺はこれ以上何も望むつもりはない。故郷では辛い思いをしたかもしれないし、幼馴染に裏切られ、傷ついたかもしれない。でも、これからは新たな気持ちで、この地で生活してくれると嬉しい。今まで辛い思いをしてきた分、今まで出来なかった事をめいっぱい楽しんでほしいと俺は思っている」

「今まで出来なかった事ですか…」

「そうだ、そもそもリリアは完璧に家事をこなしすぎだ。もっともっと手を抜く家政婦はたくさんいるぞ。リリアほど完璧に家事をこなしてくれる人材なら、今の倍の給料を出してもいいくらいだ!」

「今の倍ですって!それはさすがにもらいすぎです」

「いいや、それくらいリリアには価値がある人間なんだ。どうかもっと自分に自信を持ってほしい。それから、この街でやりたい事を見つけてくれ。出来れば、家で出来る事がいいな」

 家で出来る事か…

「そうですね、せっかくシャールン市に来たのですから、私がやってみたい事をやってみます。ゼルス様、お気遣いいただきありがとうございます」

「俺は別に何もしていないよ。さあ、残りのケーキを食べてくれ。まだまだたくさんあるぞ」

「はい、頂きます。実は私、両親が亡くなってから一度もケーキを食べていなくて。こうやってケーキを食べられること自体、とても幸せな事です。勇気を出して村を出て、本当によかったです」

 村を出るときは不安だったが、ゼルス様という優しいご主人様に出会えたのだ。彼がもっともっと快適に暮らせるように、私も頑張らないと。


 ※次回、ゼルス視点です。
 よろしくお願いいたします。
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