全てを失ったと思ったのですが…騎士団の隊長に拾われ溺愛されました

Karamimi

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第18話:自分が自分でないみたいだ【後編】~ゼルス視点~

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 彼女は掃除や洗濯、料理など家事全般をこなしてくれると言ってくれたのだ。自分は家事全般が得意だから任せてほしいと。

 正直俺は、そんな事をしなくてもいいのに…そう思ったが、きっと律儀な彼女は、なにかをしないと気がすまないのだろう。それなら家事全般を彼女に任せるのもいいだろう。

 いっその事、家政婦という名目で給料を払えば、彼女はこのままここにいてくれるのではないだろうか?そうか、彼女を住み込みの家政婦という形で雇えばいいんだ。

 早速彼女にその事を提案した。

 最初は俺が提示した金額が高すぎるとごねていたが、この街の相場はこれくらいだと言ったら、納得してくれた。こうして俺たちの契約は成立したのだ。

 そして彼女の名前は、リリアという事が分かった。リリア、とても可愛らしい名前だな。今日はこの街に来たばかりのリリアに、街を案内してやりたいところだが、生憎俺は騎士団の隊長。

 リリアに見送られて、騎士団に向かった。

「おはようゼルス、今日は随分遅かったね」

「おはよう、キース。すまない、ちょっと色々とあってな。すぐに稽古場に向かおう」

 昨日中々寝付けず、寝坊してしまった事は内緒だ。キースと一緒に隊員を鍛え上げていく。

「よし、休憩だ」

 既にバテバテの隊員たちを横目に、俺はそっとその場を離れた。

 リリアは本当に食が細く、俺がしっかり監視していないと、食事すらろくにとろうとしない。きっと碌な生活をしていなかったのだろう。そもそも、村を捨ててこの街にたった1人で来るだなんて、訳ありに違いない。

 昨日は随分と怖がらせてしまったからな、罪滅ぼしに何か彼女が喜ぶことをしたい。でも俺は、女が喜ぶ事なんて思い浮かばない。

 そういえば女は甘いものが好きだと聞いたことがある。ただ、どんな物を買えば喜ばれるのだ?

 俺は甘いものが苦手だ。特に菓子屋やカフェという場所は、女も多く絶対に近づかない様にしていたくらいだ。その為、そういった店の情報には疎い。

 そこらへんで適当に菓子を買うか?いや、せっかくなら、美味しい菓子を食べさせてやりたい。

 悩んだ末、隊員に聞く事にした。ただ、俺の部隊の隊員に聞いて冷やかされたらたまらない。他の隊の隊員なら、問題ないだろう。

 そう思い、隣の部隊が管轄する騎士団の稽古場へとやって来た。なぜか俺の姿を見て皆顔を引きつらせている。俺の稽古は厳しいと有名なせいか、しごきに来たと思って怯えているのだろう。

 どいつもこいつも、根性なしばかりだな。

 だが、今はそんな事などどうでもいい。

「ゼルス隊長、お久しぶりです」

「「「お久しぶりです」」」

 俺に話しかけてきた3人の隊員たち。ちょうどいい、こいつらに聞いてみよう。

「久しぶりだな。お前たちに聞きたい事があるのだが…」

「はい、何でしょうか?」

 少し困惑顔の3人。俺が何を言いだすのか、心配しているのだろう。

「その…この街で一番うまい菓子屋はどこだ?」

「「「へっ?菓子屋?」」」

 さっきまで緊張の眼差しをしていた隊員たちが、一気に間抜けな顔になる。

「だから、うまい菓子屋を知らないかと聞いていたのだ!」

「も…申し訳ございません。うまい菓子屋なら、3丁目にある、“ラ・モール”という菓子屋が美味いと今評判です」

「季節のタルトが絶品だそうで。今は苺だったかと思います」

「ただ、非常に人気で、夕方には売り切れてしまうとの事です。その上、2時間近く並ばないと買えないとの事」

「そうか、分かった。貴重な情報、感謝する!それじゃあ俺は、急用があるからこれで失礼する」

「「「えっ?ゼルス隊長?」」」

 後ろから隊員たちの少し腑抜けた声が聞こえたが、今はそんな事を気にしている場合ではない。そんな人気の菓子なら、急いで買いに行かないと。
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