全てを失ったと思ったのですが…騎士団の隊長に拾われ溺愛されました

Karamimi

文字の大きさ
29 / 103

第29話:街に出ます【5】

しおりを挟む
 一体どこに向かうのだろう。よくわからないまま、2人で馬車に乗り込んだ。しばらく進むと、目の前には真っ青な海が広がっていたのだ。

「まあ、海に連れて来てくださったのですか?本当に美しいですね。この街に来る前、汽車の窓からずっと見ていたのですが、あの時も光に照らされてキラキラとかがいて本当に綺麗でしたわ。まさかこんな近くで見られるだなんて」

 汽車の中からも、海が見えて興奮したのを覚えている。

「せっかくだから、砂浜まで行ってみよう。砂浜は歩きにくいから、気を付けて」

「はい、ありがとうございます。十分気を付けますわ」

 ゆっくり馬車から降り、砂浜を歩く。

「この砂、とてもサラサラなのですね。こんな綺麗な砂、初めて見ました。あら?あそこにいるのは何かしら?」

「あれはカニだよ。海には色々な生き物がいるからね。せっかくだから、海に足を付けて見るかい?」

「いいのですか?」

「ああ、足くらいなら大丈夫だよ。ただ、あまり奥の方に行くと危険だから、気を付けてくれ」

「はい」

 早速靴を脱ぐ。砂がサラサラで気持ちいい。そのまま海の方に歩いていく。すると


「冷たい!でも、気持ちいいです。海の水はこんなに気持ちがいいのですね。それにとっても綺麗です」

「確かに、綺麗な青色をしているな。その…君の瞳の色の様に…」

「何かおっしゃいましたか?」

「いや、何でもない。リリア、あまり奥の方に行くと危険だ。それに波に足をとらない様に気を付けろよ」

「ええ、大丈夫ですわ。これくらい…きゃぁ」

「リリア!」

 つい調子に乗って、波に足をとられてしまったのだ。転びそうになったところを、間一髪のところでゼルス様に受けとめてもらった。

「ゼルス様、申し訳ございません。ちょっと調子に乗り過ぎましたわ。海があまりにも気持ちよくて」

「いや、俺の方こそ油断してしまったから。さあ、そろそろ海から出ようか。足が濡れているから、一度乾かさないとな」

 そう言うと、私を抱きかかえたのだ。

「あの、自分の足で歩けます。それに私、重いですし…」

 こんな風に男性に抱きかかえられるだなんて!一気に心臓の音がうるさくなる。

「足が濡れているから、このまま砂浜を歩くと砂が付いてしまうから。あそこに座って少し乾かそう」

 確かに濡れた足で歩くと砂が付くけれど。それにしても、ゼルス様の腕はとても立派だ。胸板も。それになんだか温かくて落ち着く。ただ、やっぱり心臓の音がうるさい。私、一体どうしてしまったのかしら?

「さあ、ここに座って。足を軽く拭かないと」

「あの、自分で…」

 拭きます!そう言う前に、ゼルス様が足を拭いてくれたのだ。どうしてゼルス様は、こんなに私に優しくしてくださるのだろう…

「ゼルス様は、本当にお優しい方なのですね。こんな私に、ここまでして下さるだなんて…」

 つい本音が漏れてしまう。唯一の肉親でもある叔父さん家族からは疎まれ嫌われていた私。ずっと信じていた幼馴染には裏切られ、私は無能で役立たずで、誰からも必要とされていない人間だと思っていた。

 こんな私に、なぜ騎士団の隊長でもある方が、こんなに良くしてくださるのだろう。それがどうしても不思議で仕方がないのだ。これは夢なのかしら?そう思う事もあるくらいに…

「俺は優しい男なんかじゃないよ…リリアこそ、こんな俺の為に色々としてくれているだろう?美味い料理を作ってくたり、家中を綺麗にしてくれたり。それに何よりも俺は、君の笑顔が好きなんだ。君が笑ってくれると、俺も幸せな気分になれるというか…」

「私が笑っていると、幸せな気分になれるですか?」

 “リリア、私の可愛いリリア。あなたの笑顔は本当に素敵よ。あなたが笑っていてくれたら、私はとても幸せな気持ちになれるの。だからいつも、笑顔でいてね!”

 まだ幼かったころ、いつもお母さんが私に言ってくれていた言葉。その言葉が、脳裏によぎったのだ。その瞬間、なんだか胸が熱くなり、涙が溢れだす。

「急に泣き出してどうしたんだい?俺が気持ちの悪い事を言ったから、引いてしまったのかい?すまない、君を悲しませるつもりは…」

「違うんです。私の亡くなった母も、いつも“私の笑顔を見ると幸せな気持ちになれる”と言ってくれていて…私の事をそんな風に思って下さる方がいるというのが、なんだか嬉しくて…」

 誰も私の事なんて見ていない、興味がない。ただの働き手としてしか見られていない。そんな世界でずっと生きてきたのだ。そんな中、ゼルス様と出会って、こんなに良くしてもらえて、その上私の笑顔まで褒めてくれて。

 それが嬉しくてたまらないのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。 家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに “お飾りの妻が必要だ” という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。 ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。 そんなミルフィの嫁ぎ先は、 社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。 ……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。 更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない! そんな覚悟で嫁いだのに、 旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───…… 一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……

【完結済】王女に夢中な婚約者様、さようなら 〜自分を取り戻したあとの学園生活は幸せです! 〜

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
王立学園への入学をきっかけに、領地の屋敷から王都のタウンハウスへと引っ越した、ハートリー伯爵家の令嬢ロザリンド。婚約者ルパートとともに始まるはずの学園生活を楽しみにしていた。 けれど現実は、王女殿下のご機嫌を取るための、ルパートからの理不尽な命令の連続。 「かつらと黒縁眼鏡の着用必須」「王女殿下より目立つな」「見目の良い男性、高位貴族の子息らと会話をするな」……。 ルパートから渡された「禁止事項一覧表」に縛られ、ロザリンドは期待とは真逆の、暗黒の学園生活を送ることに。 そんな日々の中での唯一の救いとなったのは、友人となってくれた冷静で聡明な公爵令嬢、ノエリスの存在だった。 学期末、ロザリンドはついにルパートの怒りを買い、婚約破棄を言い渡される。 けれど、深く傷つきながら長期休暇を迎えたロザリンドのもとに届いたのは、兄の友人であり王国騎士団に属する公爵令息クライヴからの婚約の申し出だった。 暗黒の一学期が嘘のように、幸せな長期休暇を過ごしたロザリンド。けれど新学期を迎えると、エメライン王女が接触してきて……。 ※10万文字超えそうなので長編に変更します。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...