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第30話:街に出ます【6】
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「リリアはずっと虐げられて生きていたのだったな…過去はどうしようもできないが、未来は変えられる。前にも話したが、リリアにはこれから今まで出来なかった事を、目いっぱい楽しんでもらいたいと思っている。それを俺が支えていきたいと思っているんだ。さすがに迷惑かな?」
「迷惑だなんて、とんでもありません。この街に来て、ゼルス様に出会えて、私、本当に幸せで。ですがあまりにも幸せすぎて、なんだか壊れてしまいそうで怖くて。幸せが壊れるのは、一瞬ですので」
人の幸せなど、一瞬で壊れるもの。両親が事故で亡くなった時もそうだった。
「幸せが壊れるのは一瞬か…」
一瞬悲しそうな顔をしたゼルス様。そういえば彼の家族の話を、聞いたことがなかった。
「ゼルス様のご家族は、ご健在なのですか?」
「俺の家族か…俺は両親と不仲で、騎士団に入団してからはほとんど会っていないよ」
「まあ、そうだったのですね。余計な事を聞いてしまい、申し訳ございません」
「別に気にしなくてもいい。俺は昔から両親と馬が合わなくて。とはいえ、俺には騎士団で出来た仲間もいるから寂しいとかそういう感情はなかったし。今物凄く充実しているから」
「ゼルス様は、本当に強いお方なのですね。私も見習わないと」
ゼルス様はご自分の意思で騎士団に入団され、ご自分の意思でご両親と距離を置いている。ずっと言い訳をして、目の前の壁から背を向けていた私とは大違いだ。結局私も、追い詰められてやっと、あの人たちから離れる決心がついたくらいだ。
でも1人では何もできなくて、結局ゼルス様に助けられる形になってしまった。本当に情けない。
「俺を見習う必要はないよ。リリアは今のままで十分素敵な女性だと俺は思っている。だから、その…」
プイっとあちらの方を向いたゼルス様。きっと私に気を使って下さっているのだろう。それでも、素敵だと言ってもらえたことが嬉しい。
「ありがとうございます、たとえお世辞でも嬉しいですわ」
「お世辞などではない!俺は本当に…いや、何でもない。そろそろ日も沈みかけて来たし、帰ろうか」
「はい!さっきまで綺麗な青色をしていたのに、今は真っ赤に染まっていますね。夕日に照らされた海も、とても幻想出来ですわ」
「あまりよそ見をして歩くと、砂浜に足を取られるぞ。転ぶと大変だから」
そう言うと、ゼルス様がそっと私の手を掴んだのだ。大きくて温かい手。この大きな手で、どれだけの人を守って来たのだろう。そんな私も、彼に守られている人間の1人だ。
ゼルス様との日々は、まるで夢の様に楽しくてたまらない。ゼルス様と一緒にいると、なぜか心の奥が温かくなるのだ。
ゼルス様は隊長として困っている私を助けてくれただけ。そして行く場所のない私に仕事を提供してくれただけ。そう、ただそれだけなのだ。
それなのに私は…
そっとゼルス様の方を見ると、美しい金色の瞳と目があった。その瞬間、私に笑いかけてくれる。
その優しい微笑が、私の胸に突き刺さる。分かっている、私とゼルス様はただの使用人と主の関係という事くらい。
それでも、彼と一緒に過ごすうちに、私は彼に好意を抱くようになっていた。今まで気が付かないふりをしていたけれど、今日ゼルス様と過ごして、ゼルス様の温もりに触れて、私の気持ちは一気にあふれ出してしまった。
私は、ゼルス様が好きだ。
でもこの気持ちは、決して彼にバレてはいけない。もしバレてしまったら、この関係は終わってしまうだろう。
だから私は…
「ゼルス様、今日は街に連れて来てくださり、ありがとうございました。とても楽しかったですわ。また明日から、お仕事を頑張れそうです」
「リリアが喜んでくれてよかったよ。リリアが望むのなら、また街に行こう。今度は南の街に行ってみるのもいいな。それとも船に乗って、隣国に行くのもいいかもしれない。それからリリアは働きすぎだ。もっとゆっくりしてくれていいのだぞ」
ゼルス様はどうしていつも、私が欲しい言葉以上の事を言ってくれるのだろう。ゼルス様はいつも“リリアが望むことをしたらいい。もっとゆっくりしたらいい”と言ってくれる。
ゼルス様が私に優しくしてくれるたびに、少しだけ期待してしまうのだ。
でも、ゼルス様が私の様な女を好きになる訳がない。彼は優しいから、私に同情してくれているだけ。それでもやはり、優しくされると嬉しい。
でも今は…
「リリア、どうしたのだい?そんな悲しそうな顔をして。もしかして、怪我でもしたのかい?」
「いいえ、何でもありませんわ」
精一杯の笑顔を作り、ゼルス様に向ける。
決して結ばれることはないけれど、それでも私は、これからも彼の傍にいたい。
ゼルス様に愛する人が出来るその日までは…
「迷惑だなんて、とんでもありません。この街に来て、ゼルス様に出会えて、私、本当に幸せで。ですがあまりにも幸せすぎて、なんだか壊れてしまいそうで怖くて。幸せが壊れるのは、一瞬ですので」
人の幸せなど、一瞬で壊れるもの。両親が事故で亡くなった時もそうだった。
「幸せが壊れるのは一瞬か…」
一瞬悲しそうな顔をしたゼルス様。そういえば彼の家族の話を、聞いたことがなかった。
「ゼルス様のご家族は、ご健在なのですか?」
「俺の家族か…俺は両親と不仲で、騎士団に入団してからはほとんど会っていないよ」
「まあ、そうだったのですね。余計な事を聞いてしまい、申し訳ございません」
「別に気にしなくてもいい。俺は昔から両親と馬が合わなくて。とはいえ、俺には騎士団で出来た仲間もいるから寂しいとかそういう感情はなかったし。今物凄く充実しているから」
「ゼルス様は、本当に強いお方なのですね。私も見習わないと」
ゼルス様はご自分の意思で騎士団に入団され、ご自分の意思でご両親と距離を置いている。ずっと言い訳をして、目の前の壁から背を向けていた私とは大違いだ。結局私も、追い詰められてやっと、あの人たちから離れる決心がついたくらいだ。
でも1人では何もできなくて、結局ゼルス様に助けられる形になってしまった。本当に情けない。
「俺を見習う必要はないよ。リリアは今のままで十分素敵な女性だと俺は思っている。だから、その…」
プイっとあちらの方を向いたゼルス様。きっと私に気を使って下さっているのだろう。それでも、素敵だと言ってもらえたことが嬉しい。
「ありがとうございます、たとえお世辞でも嬉しいですわ」
「お世辞などではない!俺は本当に…いや、何でもない。そろそろ日も沈みかけて来たし、帰ろうか」
「はい!さっきまで綺麗な青色をしていたのに、今は真っ赤に染まっていますね。夕日に照らされた海も、とても幻想出来ですわ」
「あまりよそ見をして歩くと、砂浜に足を取られるぞ。転ぶと大変だから」
そう言うと、ゼルス様がそっと私の手を掴んだのだ。大きくて温かい手。この大きな手で、どれだけの人を守って来たのだろう。そんな私も、彼に守られている人間の1人だ。
ゼルス様との日々は、まるで夢の様に楽しくてたまらない。ゼルス様と一緒にいると、なぜか心の奥が温かくなるのだ。
ゼルス様は隊長として困っている私を助けてくれただけ。そして行く場所のない私に仕事を提供してくれただけ。そう、ただそれだけなのだ。
それなのに私は…
そっとゼルス様の方を見ると、美しい金色の瞳と目があった。その瞬間、私に笑いかけてくれる。
その優しい微笑が、私の胸に突き刺さる。分かっている、私とゼルス様はただの使用人と主の関係という事くらい。
それでも、彼と一緒に過ごすうちに、私は彼に好意を抱くようになっていた。今まで気が付かないふりをしていたけれど、今日ゼルス様と過ごして、ゼルス様の温もりに触れて、私の気持ちは一気にあふれ出してしまった。
私は、ゼルス様が好きだ。
でもこの気持ちは、決して彼にバレてはいけない。もしバレてしまったら、この関係は終わってしまうだろう。
だから私は…
「ゼルス様、今日は街に連れて来てくださり、ありがとうございました。とても楽しかったですわ。また明日から、お仕事を頑張れそうです」
「リリアが喜んでくれてよかったよ。リリアが望むのなら、また街に行こう。今度は南の街に行ってみるのもいいな。それとも船に乗って、隣国に行くのもいいかもしれない。それからリリアは働きすぎだ。もっとゆっくりしてくれていいのだぞ」
ゼルス様はどうしていつも、私が欲しい言葉以上の事を言ってくれるのだろう。ゼルス様はいつも“リリアが望むことをしたらいい。もっとゆっくりしたらいい”と言ってくれる。
ゼルス様が私に優しくしてくれるたびに、少しだけ期待してしまうのだ。
でも、ゼルス様が私の様な女を好きになる訳がない。彼は優しいから、私に同情してくれているだけ。それでもやはり、優しくされると嬉しい。
でも今は…
「リリア、どうしたのだい?そんな悲しそうな顔をして。もしかして、怪我でもしたのかい?」
「いいえ、何でもありませんわ」
精一杯の笑顔を作り、ゼルス様に向ける。
決して結ばれることはないけれど、それでも私は、これからも彼の傍にいたい。
ゼルス様に愛する人が出来るその日までは…
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