44 / 103
第44話:リリアは俺が助ける~ゼルス視点~
しおりを挟む
「ゼルス隊長の気持ちもわかるが、失敗すれば人質の命に関わるかもしれないのですぞ。ここは慎重に行きましょう」
命に関わる…
その言葉が、俺の胸に突き刺さる。もしリリアの身に何かあったら…考えるだけで、恐怖で体が震える。でも、もしこのチャンスを逃したら…
「ですが、ここであいつらをにがしたら、全てが振出しに戻る事になります。そうなったら、リリアにも再び不安と恐怖を与える事になるでしょう。やはりここで決着を付けておくべきです!」
「僕もゼルスの意見に賛成です。僕の可愛いルルに手を出すだなんて、絶対に許せない!必ず僕の手で、犯人を捕まえてやる!」
「ルーク、お前、放心状態で酷いありさまだと聞いたが」
「誰が酷いありさまだ。僕の大切なルルが攫われたのだよ。のんびりなんてしていられないよ!それで犯人からの連絡はあったのですか?」
「いや、まだだ」
その時だった、通信機がなったのだ。ゆっくりと通信機を手に取った。
“ごきげんよう、気分はどうだい?”
「お前がリリアを誘拐した犯人か?リリアは無事なのか?リリアを返せ!」
“この声は、ゼルス隊長ですね。ご安心ください、あなたの恋人は無事ですよ。私達の仲間を大人しく返してくれたら、私たちは君とルーク副隊長の恋人をお返しします”
「わかった、お前の言う通りにする。それで、どうすればいいのだ?」
“私たちの仲間を港に立ち並ぶ倉庫に置いて来てくださいますか?そうですね、3列目の右から2つ目の倉庫がいいでしょう。もちろん、待ち伏せして捕まえようなんて馬鹿な事を考えないで下さいね。そんな事をしたら、あなた達の大切な恋人は決して返しませんから。仲間が無事私たちの元に帰った暁には、あなた達の恋人をお返ししますよ”
「そんな話、信用できない!仲間を取り返したら、そのままリリアたちを連れて逃げてしまうかもしれないだろう!その場でお互いの交換が条件だ」
“ゼルス隊長、私をバカにしているのですか?そんな事をしたら、私たちが捕まってしまうではありませんか?先ほど話した条件でなければ、交渉は不成立です”
「分かった、倉庫に男を置いてこればいいのだな?」
“はい、そうです。ただし、男を置いてくるのは、一介の騎士団員2名でお願いします。もちろん、陰で見張ろうとしても無駄ですよ。私達はずっとあなた達の動きを見ておりますから。2人で私の仲間を置いていってください。仲間を置いたら、すぐにその場を立ち去る事。もし姑息な手を使ったら、あなたの大切な恋人は、二度とあなたの元には戻りませんから。それじゃあ、30分以内にお願いしますね”
「おい、30分以内とは…クソ!通信が切れてしまった…」
「相手はどうやら、こちらの動きをバッチリ見ている様ですね。きっと隊員を先回りして見張りを付けたところで、相手は現れないでしょう。それに30分以内だなんて…今から馬を飛ばして、何とか間に合う時間です。相手は卑劣な誘拐犯です。ここはやはり、お2人の救出を最優先にいたしましょう。相手の要求通りにしましょう」
「お言葉ですがゴーン隊長、俺は…」
「ゼルス隊長、今はリリアさんとルルさんを助けるのが専決です。一歩間違えたら、2度とお二人は返してもらえないかもしれないのです。居場所が分からない以上、相手の言う通りにしましょう。それに、迷っている時間はありません!すぐに男を連れて出発しないと、30分以内に倉庫までたどり着けなくなります」
ゴーン隊長だけでなく、オスカー隊長にも犯人の言う通りにする様に言われてしまった。確かにリリアの事を最優先に考えるのであれば、そうするべきなのだろう。
だが俺は…
「ゼルス、落ち着け。とにかく今は、ルルとリリアさんが心配だ。ここは隊長たちの指示に従おう」
珍しくルークが隊長たちの意見に従うと言い出したのだ。やはりルークも、婚約者の事が心配なのだろう。俺もリリアが心配でたまらない。
「わかったよ、ルーク。隊長たち、せっかく捕まえた主犯格の1人をみすみす逃がす形になってしまい、本当に申し訳ございません。犯人の言う通りに動くかたちで、よろしくお願いします」
隊長たちに頭を下げた。
正直俺は、リリアを狙った犯人が憎くてたまらない。それに卑劣な誘拐犯が、本当にリリアたちを返してくれるかもわからない。それでもここは、犯人たちの言う通りにしておくしか手がないのだろう。
すまない、リリア。俺がもっとリリアの事を気にかけていれば、こんな事件に巻き込まれる事もなかったのに…
とにかくリリアが無事に帰ってくることを、今は願うしかないのだろう。
※次回、リリア視点です。
よろしくお願いいたします。
命に関わる…
その言葉が、俺の胸に突き刺さる。もしリリアの身に何かあったら…考えるだけで、恐怖で体が震える。でも、もしこのチャンスを逃したら…
「ですが、ここであいつらをにがしたら、全てが振出しに戻る事になります。そうなったら、リリアにも再び不安と恐怖を与える事になるでしょう。やはりここで決着を付けておくべきです!」
「僕もゼルスの意見に賛成です。僕の可愛いルルに手を出すだなんて、絶対に許せない!必ず僕の手で、犯人を捕まえてやる!」
「ルーク、お前、放心状態で酷いありさまだと聞いたが」
「誰が酷いありさまだ。僕の大切なルルが攫われたのだよ。のんびりなんてしていられないよ!それで犯人からの連絡はあったのですか?」
「いや、まだだ」
その時だった、通信機がなったのだ。ゆっくりと通信機を手に取った。
“ごきげんよう、気分はどうだい?”
「お前がリリアを誘拐した犯人か?リリアは無事なのか?リリアを返せ!」
“この声は、ゼルス隊長ですね。ご安心ください、あなたの恋人は無事ですよ。私達の仲間を大人しく返してくれたら、私たちは君とルーク副隊長の恋人をお返しします”
「わかった、お前の言う通りにする。それで、どうすればいいのだ?」
“私たちの仲間を港に立ち並ぶ倉庫に置いて来てくださいますか?そうですね、3列目の右から2つ目の倉庫がいいでしょう。もちろん、待ち伏せして捕まえようなんて馬鹿な事を考えないで下さいね。そんな事をしたら、あなた達の大切な恋人は決して返しませんから。仲間が無事私たちの元に帰った暁には、あなた達の恋人をお返ししますよ”
「そんな話、信用できない!仲間を取り返したら、そのままリリアたちを連れて逃げてしまうかもしれないだろう!その場でお互いの交換が条件だ」
“ゼルス隊長、私をバカにしているのですか?そんな事をしたら、私たちが捕まってしまうではありませんか?先ほど話した条件でなければ、交渉は不成立です”
「分かった、倉庫に男を置いてこればいいのだな?」
“はい、そうです。ただし、男を置いてくるのは、一介の騎士団員2名でお願いします。もちろん、陰で見張ろうとしても無駄ですよ。私達はずっとあなた達の動きを見ておりますから。2人で私の仲間を置いていってください。仲間を置いたら、すぐにその場を立ち去る事。もし姑息な手を使ったら、あなたの大切な恋人は、二度とあなたの元には戻りませんから。それじゃあ、30分以内にお願いしますね”
「おい、30分以内とは…クソ!通信が切れてしまった…」
「相手はどうやら、こちらの動きをバッチリ見ている様ですね。きっと隊員を先回りして見張りを付けたところで、相手は現れないでしょう。それに30分以内だなんて…今から馬を飛ばして、何とか間に合う時間です。相手は卑劣な誘拐犯です。ここはやはり、お2人の救出を最優先にいたしましょう。相手の要求通りにしましょう」
「お言葉ですがゴーン隊長、俺は…」
「ゼルス隊長、今はリリアさんとルルさんを助けるのが専決です。一歩間違えたら、2度とお二人は返してもらえないかもしれないのです。居場所が分からない以上、相手の言う通りにしましょう。それに、迷っている時間はありません!すぐに男を連れて出発しないと、30分以内に倉庫までたどり着けなくなります」
ゴーン隊長だけでなく、オスカー隊長にも犯人の言う通りにする様に言われてしまった。確かにリリアの事を最優先に考えるのであれば、そうするべきなのだろう。
だが俺は…
「ゼルス、落ち着け。とにかく今は、ルルとリリアさんが心配だ。ここは隊長たちの指示に従おう」
珍しくルークが隊長たちの意見に従うと言い出したのだ。やはりルークも、婚約者の事が心配なのだろう。俺もリリアが心配でたまらない。
「わかったよ、ルーク。隊長たち、せっかく捕まえた主犯格の1人をみすみす逃がす形になってしまい、本当に申し訳ございません。犯人の言う通りに動くかたちで、よろしくお願いします」
隊長たちに頭を下げた。
正直俺は、リリアを狙った犯人が憎くてたまらない。それに卑劣な誘拐犯が、本当にリリアたちを返してくれるかもわからない。それでもここは、犯人たちの言う通りにしておくしか手がないのだろう。
すまない、リリア。俺がもっとリリアの事を気にかけていれば、こんな事件に巻き込まれる事もなかったのに…
とにかくリリアが無事に帰ってくることを、今は願うしかないのだろう。
※次回、リリア視点です。
よろしくお願いいたします。
585
あなたにおすすめの小説
【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません
Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。
家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに
“お飾りの妻が必要だ”
という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。
ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。
そんなミルフィの嫁ぎ先は、
社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。
……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。
更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない!
そんな覚悟で嫁いだのに、
旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───……
一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
【完結】没落寸前の貧乏令嬢、お飾りの妻が欲しかったらしい旦那様と白い結婚をしましたら
Rohdea
恋愛
婚期を逃し、没落寸前の貧乏男爵令嬢のアリスは、
ある日、父親から結婚相手を紹介される。
そのお相手は、この国の王女殿下の護衛騎士だったギルバート。
彼は最近、とある事情で王女の護衛騎士を辞めて実家の爵位を継いでいた。
そんな彼が何故、借金の肩代わりをしてまで私と結婚を……?
と思ったら、
どうやら、彼は“お飾りの妻”を求めていたらしい。
(なるほど……そういう事だったのね)
彼の事情を理解した(つもり)のアリスは、その結婚を受け入れる事にした。
そうして始まった二人の“白い結婚”生活……これは思っていたよりうまくいっている?
と、思ったものの、
何故かギルバートの元、主人でもあり、
彼の想い人である(はずの)王女殿下が妙な動きをし始めて……
【完結】想い人がいるはずの王太子殿下に求婚されまして ~不憫な王子と勘違い令嬢が幸せになるまで~
Rohdea
恋愛
──私は、私ではない“想い人”がいるはずの王太子殿下に求婚されました。
昔からどうにもこうにも男運の悪い侯爵令嬢のアンジェリカ。
縁談が流れた事は一度や二度では無い。
そんなアンジェリカ、実はずっとこの国の王太子殿下に片想いをしていた。
しかし、殿下の婚約の噂が流れ始めた事であっけなく失恋し、他国への留学を決意する。
しかし、留学期間を終えて帰国してみれば、当の王子様は未だに婚約者がいないという。
帰国後の再会により再び溢れそうになる恋心。
けれど、殿下にはとても大事に思っている“天使”がいるらしい。
更に追い打ちをかけるように、殿下と他国の王女との政略結婚の噂まで世間に流れ始める。
今度こそ諦めよう……そう決めたのに……
「私の天使は君だったらしい」
想い人の“天使”がいるくせに。婚約予定の王女様がいるくせに。
王太子殿下は何故かアンジェリカに求婚して来て───
★★★
『美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~』
に、出て来た不憫な王太子殿下の話になります!
(リクエストくれた方、ありがとうございました)
未読の方は一読された方が、殿下の不憫さがより伝わるような気がしています……
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる