全てを失ったと思ったのですが…騎士団の隊長に拾われ溺愛されました

Karamimi

文字の大きさ
70 / 103

第70話:俺の過ち【その4】~クロード視点~

しおりを挟む
「リリアの居場所を知っているというのは、本当ですか?リリアは今、どこにいるのですか?」

 今までどれだけ聞き込みをしても、見つからなかったのに。

「リリアさんは今、ゼルスの元にいるわ。シャールン市の東地区を取り仕切っている隊長のね」

 ゼルス隊長…シャールン市に住んでいる人間なら、誰もが知っている名前だ。美しい顔とは裏腹に、非常に強く若くして隊長までのぼりつめた男。あまりにも強すぎて、特に荒れている東地区を任されている人だ。

 彼が東地区を取り仕切る様になってから、随分治安もよくなり、俺たち市民も彼には感謝している。だが、どうしてそんな方の元に、リリアが?

「大丈夫?口があきっぱなしよ。どうやらリリアさんは行く当てがなく困っていたところを、ゼルスに拾われたそうなの。最初は家政婦として働いていた様なのだけれど、今では恋人になった様よ。本当にあり得ないわよね。ゼルスは元侯爵家の人間なのに。平民の、それも小さな村出身の娘を傍に置くだなんて」

「待って下さい。リリアがゼルス隊長の恋人だなんて。確かにリリアは美しいが、ゼルス隊長は極度の女性嫌いなのは、有名な話。近づく女性たちを、悪党を見る様な目で睨みつけ、一切近づかせない方と聞いております。そんな方が、リリアを恋人にするだなんて」

 あり得ない。確かにリリアは美しいが…

「そのあり得ないことが、起こっている様なの。でも、私とゼルスは近々婚約を結ぶことが決まっているの。あっ、自己紹介をするのを忘れていたわね。私はクレシレス王国の伯爵令嬢、レティ・ウレィシアよ」

 クレシレス王国の、伯爵令嬢だって。そんな身分の高い方が、わざわざ俺に会いに来ただって。ゼルス隊長も、元侯爵家の人間と言っていたな。20年前まで我が国でも存在していた、貴族や王族達。

 まだ身分制度が廃止され、民主主義になってから20年しかたっていないとあって、我が国では実質的に身分制度が残っている。もちろん、俺たち平民が元貴族や王族と接する事など、まず考えられないのだ。

 なるほど、元侯爵家の人間でもあるゼルス隊長と他国の伯爵令嬢の結婚、普通に考えられる事だな。

「あなた様とゼルス隊長の身分については理解いたしました。それでリリアは、どうなるのですか?もしかして、処罰されるとか…」

「さすがにそんな非道な事はしないわ。ただ、さすがに邪魔なのよね。それでね、いい考えがあるの。皆が幸せになれる方法よ。私がリリアさんを、あなたの元に連れてきてあげる。ただ、今あなたが住んでいる場所だと、すぐに見つかってしまうかもしれないから、シャールン市の外れの人気の少ないところに家を準備するわ。もう手配はしてあるの。

 そこでしばらくは、リリアさんと生活をしてくれるかしら?その後折を見て、我がクレシレス王国で暮せるように手配するから。もちろん、生活費は私が出すから安心して仕事を辞めて大丈夫よ」

 生活費も住む家も、レティ様が出してくれる。そのうえ、リリアを連れてきてくれるだなんて。

「ありがとうございます。そこまでして頂けるだなんて、光栄です。ですが、どうして俺たちが、クレシレス王国に向かうのですか?そこでひっそりと暮らしてもいいかと思うのですが」

「ダメよ!私、とても嫉妬深いの。ゼルスが愛した女がこの国にいるというだけで、虫唾が走るのよね。生活面は私が面倒を見ると言っているのだから、言う事を聞きなさい!」

 急に怖い顔で俺を睨みつけてきたレティ様。この人に逆らうと面倒だ。それに俺は、リリアと一緒に暮らせるなら、場所なんてどこでもいい。

「承知しました。あなたの言う通りにします」

「そう、物分かりがよくて助かったわ。私の考えた方法は、全員が幸せになれる、まさに完璧な方法なのよ。あなたは知らないでしょうけれど、貴族には貴族のルールがあるの。いくら身分制度が廃止されたと言っても、元貴族と元平民が結婚する事なんて、不可能なのよ。

 ゼルスはその事を本当に分かっていないのだから、嫌になるわ。いくら親から逃げようと、元貴族としての身分は消えないのにね。まあいいわ、さすがのゼルスも、リリアさんがいなくなれば、諦めるでしょうし」

 嬉しそうにベラベラと話をするレティ様。俺だってそれくらいは知っている。貴族世界は、家のために政略結婚をするのが当たり前だ。いくら身分制度が廃止されても、今まで根付いて来たしきたりは、早々変える事など出来ない。

 今後苦労する事が目に見えているゼルス隊長との生活よりも、俺のと生活の方がリリアにはあっているのだ。

 これでやっとリリアと一緒にいられる。そう考えると、嬉しくてたまらない。

 その後俺は、会社を辞める手続きをした。社長はいつでも戻って来てもいいと言ってくれたが、もう二度と戻るつもりはない。これからはリリアと一緒に、悠々自適な暮らしをするのだから。

 そして今日、リリアがやって来た。かなりショックを受けている様だが、元々リリアは俺の事が好きだったんだ。時間が経てば、リリアも諦めるだろう。

 明日からは目いっぱいリリアを大切にしよう。これからはずっとリリアと一緒だ。俺はこれからの未来に、胸躍らせながら、眠りについたのだった。


 ※次回、ゼルス視点です。
 よろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました

水都 ミナト
恋愛
最高峰の魔法の研究施設である魔塔。 そこでは、生活に不可欠な魔導具の生産や開発を行われている。 最愛の父と母を失い、継母に生家を乗っ取られ居場所を失ったシルファは、ついには戸籍ごと魔塔に売り飛ばされてしまった。 そんなシルファが配属されたのは、魔導具の『メンテナンス部』であった。 上層階ほど尊ばれ、難解な技術を必要とする部署が配置される魔塔において、メンテナンス部は最底辺の地下に位置している。 貴族の生まれながらも、魔法を発動することができないシルファは、唯一の取り柄である周囲の魔力を吸収して体内で中和する力を活かし、日々魔導具のメンテナンスに従事していた。 実家の後ろ盾を無くし、一人で粛々と生きていくと誓っていたシルファであったが、 上司に愛人になれと言い寄られて困り果てていたところ、突然魔塔の最高責任者ルーカスに呼びつけられる。 そこで知ったルーカスの秘密。 彼はとある事件で自分自身を守るために退行魔法で少年の姿になっていたのだ。 元の姿に戻るためには、シルファの力が必要だという。 戸惑うシルファに提案されたのは、互いの利のために結ぶ契約結婚であった。 シルファはルーカスに協力するため、そして自らの利のためにその提案に頷いた。 所詮はお飾りの妻。役目を果たすまでの仮の妻。 そう覚悟を決めようとしていたシルファに、ルーカスは「俺は、この先誰でもない、君だけを大切にすると誓う」と言う。 心が追いつかないまま始まったルーカスとの生活は温かく幸せに満ちていて、シルファは少しずつ失ったものを取り戻していく。 けれど、継母や上司の男の手が忍び寄り、シルファがようやく見つけた居場所が脅かされることになる。 シルファは自分の居場所を守り抜き、ルーカスの退行魔法を解除することができるのか―― ※他サイトでも公開しています

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。 家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに “お飾りの妻が必要だ” という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。 ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。 そんなミルフィの嫁ぎ先は、 社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。 ……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。 更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない! そんな覚悟で嫁いだのに、 旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───…… 一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……

【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

処理中です...